クリスマスまでに彼女を作るぞ!  
そう考えていた僕の純心は、二人の少女によってあっさりと崩されて、卑劣な欲望へと成り下がっていた。  
妹の美也を共通の友人とするその二人の少女の名は、中多紗江と七咲逢。  
二人の少女と毎日のように会って話すうちに、いつしか二人も僕のことを好きになってくれて。  
二人を選べなかった僕は、イヴの日に一年の転校生、中多紗江とデートして。  
そして、クリスマスの日に、一年の水泳部員、七咲逢に告白して。  
紆余曲折はあったけど、結局僕は二人と付き合うことになった。  
 
華奢で内気で可愛らしい空想家の紗江ちゃんと、蠱惑的で物静かなスポーツ少女の逢。  
タイプは違えども、二人とも恥ずかしがり屋だけど献身的で、それでいて性に積極的な女の子で。  
 
二人とのエッチな日々は、とにかく最高だった。  
でも、そんな穢れた蜜月は半年ほどで終わりを告げて、気がついたら僕は破滅の道を歩んでいた。  
大切なものを巻き込んで。それはある土曜日の昼。  
 
橘 「ん……あれ。ここはどこだ……確か僕は紗江ちゃんの家で一緒に遊んでて」  
橘 (確か紗江ちゃんの作ってくれたシチューを食べて、二人でゲームをしているうちに眠くなって膝枕をしてもらって……)  
七咲「気がつきましたか、先輩」  
橘 「う、うわっ!?あ、逢。どうして?」  
七咲「どうして……より先に聞くことがあるんじゃないですか?ここがどこかなのか、とか」  
橘 「あ、う、うん」  
七咲「それで場所なんですけど、ここは中多さんのお家の地下室です」  
橘 「さ、さえ……じゃなかった、中多さんの?ど、どうして……」  
七咲「どうしてここに私がいるの?って聞きたいんですか?それとも、どうして僕がここにいるの?ってシラを切りたいんですか?」  
橘 「あ……う……」  
七咲「どっちですか?」  
橘 「え、えっと……その、中多さんはどこ?僕、どうしてここにいるのか分からない」  
中多「先輩」  
橘 「さ、さえち……中多さん!」  
中多「ふふふっ。先輩って、やっぱり面白いですね」  
橘 「ど、どういうこと?」  
七咲「本当に何も気がついていないんですか?ご自分がどんな格好をしているのか、とか」  
橘 「か、格好……って、ええええええ!?」  
中多「くすくす。結構、上手にできましたよね。七咲さん」  
七咲「ふふっ。中多さんのお家って広くて色々な本があって驚いちゃった」  
 
そう。僕は全裸で。後ろ手で亀甲縛りをされた上に、椅子に胴と足を縛り付けられていた。足は大股開きで、M字に固定されている。  
裸の僕を見下ろす制服姿の紗江ちゃんと逢は、上気した頬。  
二人の瞳の中に微かな狂気を見出した僕は、予想される可能性は二つであるといい加減分かってきた。  
一つの可能性は……そう、バレたんだ。二股が。  
一つの可能性は……そう、夢だ……最近、二人とエッチしすぎて疲れていたんだ……  
後者と信じて僕が眠ろうとしたその時。  
僕は、自分の縛られた椅子の向こうに、黒い布にかけられてもぞもぞと蠢く塊を見つけた。  
蚊の鳴くような微かな振動音も聞こえる。頭が痛い。  
 
橘 「これは何……夢……?」  
中多「あえて言うなら、昨日までが私の夢です。これからは先輩達の現実」  
橘 「先輩……達?わ、分かんない。じ、冗談なら早くこれをほどいて。夢なら早く醒めて」  
七咲「……先輩」  
 
逢の表情が暗く激しい怒りに曇り、そして。  
ガスッ!  
橘 「うぐっ!」  
七咲「冗談か夢だと言いたいのは、私の方です」  
ガスッ!ガスッ!  
橘 「ひぎっ!」  
七咲「蹴られないと分からないんですか?それとも蹴られたいんですか?」  
橘 「ど、どういう……ぎゃっ!」  
ガスッ!ガスッ!ガスッ!  
橘 「うう……痛いよ、逢……もう許して……」  
七咲「冗談でも夢でもないということ、分かって頂けましたか?先輩」  
 
女の子とは言え、椅子に固定された脛を蹴られるのは想像以上に痛くて、僕は涙を滲ませながら首をうんうんと縦に振った。  
逢に蹴られながら僕は気付いた。僕が蹴られて悲鳴を上げるたびに。黒い塊がびくりと蠢くことに。  
 
中多「先輩……私、何となく七咲さんとのことも、分かっていたつもりです。それでも、頑張って先輩のことを好きでいようとしました」  
七咲「ふふっ……いっぱいエッチなことをしましたよね、先輩」  
橘 「紗江ちゃん……逢……」  
中多「でも……ごめんなさい。先輩。もう、気付いてしまったんです。私、先輩に遊ばれてるって」  
橘 「そ、そんな……僕はそんなつもりで……」  
七咲「つもりがなければ、女の子の気持ちと身体を弄んでもいいんですか?」  
橘 「……ごめん……ごめんなさい……紗江ちゃん……逢……」  
 
どれだけ二人の名前を呼びながら謝り泣き続けただろう。二人はじっと立っていた。泣き疲れて僕が黙りこくった時。  
 
七咲「……分かりました」  
橘 「ほ……本当に!?」  
中多「騙されていた私にも、悪い所はあったと思うんです」  
橘 「そ、そんなことは……」  
七咲「中多さん、悪い所、じゃないよ」  
橘 「え……」  
中多「くすくす」  
七咲「中多さんに聞きましたけど、先輩って私だけじゃなくて中多さんの中にも出したんですね」  
橘 「あ……え、えっと……その……中に出すって……」  
七咲「悪い先輩の汚い精子を、中多さんの身体中、そこかしこに、です」  
中多「七咲さんのお腹やお口にも先輩のその、せ……精子が入ってたって聞いた時、私……驚いてしまって……」  
 
泣き出しそうな中多さん。激しい怒りを背中に漂わせる七咲。それでも、二人の顔は楽しそうに笑っていて。僕は背中を震わせる。  
 
中多「それで……私、気がついたら、悪い女の子になってしまいました」  
七咲「忘れられないんです、先輩のこと」  
橘 「ど、どういうこと?忘れられない?」  
中多「先輩と過ごした思い出……先輩の身体……エッチなことも……忘れられません」  
七咲「先輩の変態な所も。その人を傷つけてもとぼけ続ける考え方も……何もかも、私の頭に染みついて……だめなんです」  
橘 「ご……ごめん。でも、僕は……僕は……」  
中多「いいんです。先輩からはもうたくさん謝ってもらいました」  
七咲「でも、私。まだ大事な人から謝ってもらってません」  
橘 「だ……大事な、人……」  
中多「ええ。大事な人、です」  
 
ま。まさか……その黒い塊は……布が中多さんに剥がされる。  
 
それは、僕と同じように椅子に固定された……美也だった。胸と下腹部に小さなローターが貼り付けられて、微弱な振動に涙して震えている。  
猿轡をされた上に口の中には布を詰められているのだろう。呻き声も出ない。  
 
橘 「美也、美也あああああああ!!!」  
 
絶叫が地下室にこだまする。  
 
橘 「美也!どうして!どうしてこんな!逢!紗江ちゃん!」  
中多「私……信じていたんです。美也ちゃんのこと。私のことを、本当に大切に思ってくれて、先輩との仲を取り持ってくれたって」  
七咲「美也ちゃん。先輩が中多さんと何かあるんじゃないかって何度も相談したよね。その度に美也ちゃんは何もないよ、大丈夫だよ、って慰めてくれたよね」  
 
美也が目を逸らす。僕と美也。どちらが言い出したわけでもない。ただ、美也は親友二人と僕の関係の狭間で、嘘を突き通すことを選んだ。  
 
七咲「信じてたんだよ。美也ちゃん……それが、こんな形で裏切られるなんて」  
中多「もっと早く、本当のこと教えて欲しかったな。美也ちゃん」  
橘 「違う!美也は関係ない!僕が悪いんだ!美也は……二人のことを傷つけたくなくて……それで!」  
七咲「それで美也ちゃんは、二股を知りながら私達のことを騙していた、と」  
橘 「どうしてそういう風に言うんだよ……逢……逢はそんな女の子じゃなかっただろ……」  
七咲「先輩……今さら私のことをとやかく言える立場ですか?」  
橘 「ううっ……でも美也は……」  
中多「ふふっ。分かってます。美也ちゃんはとってもお友達思いで……とっても優しくて……」  
 
にこにこと笑う紗江ちゃんから狂気を感じ取って、美也は首を横に振り続ける。  
 
中多「とっても、お兄さんのことが大好き。なんですよね?」  
七咲「大変だったんだよね、美也ちゃん」  
橘 「……紗江ちゃん……逢?」  
七咲「大好きなお兄ちゃんのために、付きたくもない嘘をついて。我慢して。でも、安心して」  
中多「先輩」  
七咲「先輩」  
 
紗江ちゃんと逢が僕に向き直る。美也を見ている時の狂気は消えて。いつも学校で見るような制服姿の二人に逆に僕は動揺する。  
 
中多「今日は、大好きな美也ちゃんの思いを叶えてあげようって思っていたんです」  
七咲「今までたくさん私のことを思ってくれた先輩と美也ちゃんにお礼を、と思いまして」  
 
まだ僕は、これがただの悪夢だと思っていた。  
震える美也の背中に紗江ちゃんが立ち、怯える僕の左隣に逢が立って。  
逢が僕の性器をいつものように優しく触れた時。それが悪夢より重い未来につながっていることに、僕は否応なしに気付かされる。  
 
猿轡を外されて泣き叫ぶ美也。二人への罵声は……すぐに謝罪に……そして、にぃにを許して、という懇願になって、僕は涙が溢れる。  
紗江ちゃんは美也の涙を、逢は僕の涙を舐め取りながら、くすくすと笑う。  
 
中多「美也ちゃん……やっぱり優しいなあ」  
美也「さ……紗江ちゃん、やめて……やめて……」  
七咲「ほんと。美也ちゃんみたいな子が妹に欲しかったな……んっ……ちゅぶっ……」  
橘 「あ、逢、やめて……美也を離してあげて……うっ……」  
 
紗江ちゃんが美也の胸のローターを外して、小さな手で平坦な胸を優しく撫でる。  
手で性器をさすっていた逢は、少し僕の性器に血が流れたところを見計らって、跪いてフェラチオを始める。  
先端をゆっくりと舐めて。唾を含んで咥えて。思い切り吸いながら離して。  
湿り気を帯びて堅くなった所を、ゆっくりと奥まで含んで、裏側の筋を舐めながら、激しく上下に顔を動かす。  
半年かけて僕を悦ばせてくれるために努力してくれた逢の献身が、陰惨な饗宴のために使われることに、僕は後悔の涙をこぼしつづける。  
 
七咲「ふぇんふぁい」  
橘 「……やめて……お願いだから……許して……逢」  
七咲「ちゅぱっ……下のお口は正直ですね」  
橘 「……だって……うあっ」  
七咲「私、一度言ってみたかったんです。いつもは先輩が言うばっかりだったですから」  
 
尿道を逢の舌で軽く刺されて僕は快感にのけぞってしまう。そうだ。僕はエッチする時はいつもそう言った。  
「意地悪です……先輩」って言いながら、逢はいつも期待に瞳を潤ませながら僕を迎え入れてくれたっけ。  
僕の現実逃避は、美也の悲鳴で引き戻された。  
 
美也「ダメ……こんなの、ダメ……紗江ちゃん……」  
中多「はぁ……美也ちゃんの肌、すべすべして気持ちいいなあ……ずっとこうしていたいです」  
美也「うぅっ……ぐすっ」  
中多「美也ちゃんも、いつも私がダメって言ってもやめてくれなかったよね」  
美也「ひくっ……あっ……だって……だって、紗江ちゃん、んっ……喜んでくれるって思ってた……」  
中多「うん。美也ちゃんとこうしてるの。大好きだよ。だから、今日は私が美也ちゃんにたくさんしてあげるね」  
美也「あ……ひっ、あっ、ああっ、嫌。こんなの嫌。助けて。助けてにぃに……」  
 
後ろから胸を揉んでいた紗江ちゃんが、横に回ってつるつるした脇に舌を這わせる。大胸筋に沿ってキスをしながら、胸を口に大きく含んで乳首を舐め回す。  
 
中多「先輩にいつもこうしてもらってたんですよ。先輩、とっても上手なんです……いつもこうやって私の胸を優しく触ってくれました」  
美也「にぃ……に……?」  
中多「私でこんなに気持ちよくなってくれるなら……きっと、先輩ならもっと気持ちよくしてくれるんだろうなぁ……」  
 
照れた紗江ちゃんが可愛くて。もっともっと悦ばせて、もっともっと意地悪してみたくて。  
紗江ちゃんのふかふかを半年間研究した成果が、美也の未成熟な身体にも効果があることをありありと見せつけられる。  
 
七咲「ちゅぶっ……んっ……先輩の部屋で私や紗江ちゃんがエッチしてた時、きっと美也ちゃんは私達の声、聞いてたんだよね」  
美也「あぁ……にぃに……にぃに……助けて……」  
七咲「私や紗江ちゃんがいやらしい声を出している所を聞いて……笑ってたの?美也ちゃん」  
美也「そんなことない……そんなこと……あんっ、ああっ……ない」  
中多「じゃあ、悦んでたんだ」  
美也「よろこんでなんて……あっ……ないんだから……よろこんでなんて」  
七咲「ふふっ。だったら、嫌だったのかな。お兄ちゃんが私や中多さんとエッチしてる所に、嫉妬してたとか?」  
美也「そんなこと……そんなこと、ない……そんなこと……あるわけ……にぃにはにぃに……ああっ……」  
中多「美也ちゃん、可愛いなあ……ちゅっ」  
七咲「あ、先輩。すみません。美也ちゃんと話すのに夢中になってしまって……ちゅぷっ……ぶちゅっ……」  
橘 「美也……うあっ……だめだ、逢……」  
美也「だめ……だめぇぇぇぇ。紗江ちゃん、だめぇ……」  
中多「下のお口は、正直ですね……くすっ。私も、言ってみたかったんです、七咲さん」  
 
中多さんと七咲が目を合わせて微笑む。言葉を交わすこともあまりなかった二人が、まるで十年来の親友のように。  
美也の股間のローターを外して紗江ちゃんが美也のつるりとした性器に触れると、水音が僕の耳にも聞こえる。  
 
僕は逢にゆっくりと、焦らされるようなフェラを続けられる。  
これから来るであろう時間を想像して縮め縮めと願っても、何度も逢瀬を重ねた逢の奉仕に勢いむしろ勢いを増すばかり。  
 
中多「七咲さん、上手だなあ。何だか少し妬けちゃいます」  
美也「うああぁぁぁっ!!ダメ!ダメなの!紗江ちゃん!」  
 
紗江ちゃんが美也に跪いて美也の性器を舐めさする。閉鎖された地下室での修羅場にむせ返る空気。  
僕が見たこともなかった美也の上気した顔。僕が経験したことの無かった長い焦らし。  
どれだけの時間、そうされていたのだろう。僕も美也も、段々意識が朦朧としてきた頃、目配せをして二人は立ち上がる。  
 
美也「ふぁ……さえ、ちゃん……あい、ちゃん……」  
中多「美也ちゃん。少し動かすから、じっとしててね……」  
七咲「よい、しょっ、と。中多さん、立てる?」  
 
椅子と身体を縛っていた縄を解いて。後ろ手M字開脚に縛られた美也が二人の少女に持ち上げられる。  
身体中を縛られ、意識が朦朧とした美也は、首を横に振り、譫言で抵抗をすることしかできない。  
 
美也「にぃに……逢ちゃん……あぁ……こんなの……」  
橘 「美也……僕のことはいいから……僕のことはいいからどうか美也は許して……」  
中多「先輩。美也ちゃんの何を許してどうしてあげればいいんですか?」  
橘 「紗江ちゃん……美也は……美也は関係ない……関係ないんだ……」  
七咲「関係ないという言い方はおかしいですよね。先輩は、美也ちゃんを巻き込んでいたんですから」  
橘 「違う……美也は……美也は僕のことも、二人のことも気を遣って……」  
中多「ふふっ。だったら、そんな優しい美也ちゃんに先輩からご褒美をあげて下さい」  
 
僕の目の前に美也が掲げられた。紗江ちゃんと逢のそれで女性器そのものは見慣れていたけど。  
美也のそれは、二人と比べても細く小さくて。そして、紗江ちゃんの丹念な愛撫で、艶やかに光っていた。  
 
橘 「頼む……やめてくれ……」  
七咲「もし中多さんとこういうことをしているって知ってたら……きっと私もやめてって言ったんだろうな……」  
美也「紗江ちゃん……逢ちゃん……だめ……だめだよ……こんなの、悪いことなんだから……」  
中多「美也ちゃん。七咲さんと先輩のこと、私に黙っててくれたのって、美也ちゃんがみんなに気を遣ってくれたんだよね」  
美也「ふぇ……?だって……言えるわけない……そんなこと……」  
七咲「本当は悪いことだって知ってても、みんなのことが好きだから、言えなかったんだよね」  
美也「美也が黙ってれば……みんな幸せになれるって……」  
中多「美也ちゃん。優しいね……でも、もう我慢しなくていいんだよ」  
 
美也……耳を貸すな。そう叫ぼうと思ったけれど。言えるわけがない。今さら泣き叫んでどうなる。  
縛られた僕に何ができる。これ以上、美也を苦しめるくらいなら……僕は……  
二人は美也と僕の性器を触れ合わせて位置を合わせる。性器が擦れる度に、僕と美也は嬌声を上げる。  
 
中多「美也ちゃんはお兄ちゃんのことがスキなんだよね」  
美也「いや……好きだけど……こんな意味じゃない……にぃにはにぃにで……」  
七咲「悪いことだから、言えなかったんだよね」  
 
――お兄ちゃんのことが、大スキって――  
 
二人の少女の美しく重なり合う声に、まるで生まれた赤ん坊のような美也の悲鳴が不協和音になって。  
美也は、畜生に純潔を奪われて。二人の少女は、人の道を踏み越えて。  
全ての元凶のはずの僕は、脊髄を走り抜ける激しい快感に全身を震わせた。  
 
美也「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!痛い、痛いよ、にぃに!」  
橘 「美也!僕のせいで……僕のせいで……」  
中多「先輩は優しいから……きっと全部ご自分で抱え込もうとしてしまうんですよね」  
七咲「悪いのは、私達も同じですよ」  
中多「だから、先輩も美也ちゃんも、今は何も考えずに楽しんで下さい」  
美也「ああっ!かっ、はっ……痛い……お願い、紗江ちゃん、逢ちゃん……助けて……あああっ!」  
 
目を閉じると二人の声と美也の悲鳴が心に突き刺さるから、僕はずっと涙に濡れる美也の顔を見つめていた。  
二人は美也の後ろ手の拘束を解き、肩と足を担ぎ上げて、ゆっくりとピストン運動を作り出す。  
痛みを和らげるように美也の胸を愛撫して、身体にキスをしながら、ゆっくりゆっくりと。  
僕はいっそ舌を噛んで死のうと思ったけれど、そうしたら僕の死相を見る美也はどうなる。  
紗江ちゃんの丹念な愛撫で美也の中は十分に潤っていながら、締め付けは二人の初めての時よりもきつい。  
ただでさえ意識が朦朧としていた僕は、二人の演出する美也の優しい対面座位のセックスに、少しずつ脳内が麻痺してきた。  
 
七咲「先輩。だめじゃないですか。美也ちゃんが痛くて叫んでいるのに先輩だけ気持ちよさそうな顔をして」  
橘 「ううっ……だめなんだ。こんな……」  
中多「美也ちゃんのこと、ちゃんと褒めてあげて下さい。正直に、感想を伝えてあげて下さい」  
七咲「そうしたら、美也ちゃんを少し楽にしてあげられるかもしれないですよ」  
 
……そうなのか?だけど。虚ろな意識の中で美也が痛みに泣いているのを見ていると、このままではいけないような感覚にとらわれてくる。  
褒めてあげれば、楽になるのかな?分からないけど、少なくとも美也も悪い気はしないんじゃないかと思って。  
 
橘 「気持ちいい……」  
美也「にぃ……に?」  
橘 「美也の中……とっても気持ちいい。暖かくて、きつくて……」  
美也「いや……そんなの、聞きたくない」  
中多「ふふっ。美也ちゃんは、気持ちいいって言われるのは嫌なんですって」  
七咲「じゃあ、かわりにこう言ってあげたらどうですか……」  
 
――スキ、って――  
 
逢は耳に口を当てて、ひび割れた僕の心の隙間に囁きかける。  
もう美也の純潔は戻ってこない。二人の愛も戻ってこない。  
妹と性を交わしながら、気持ちいいとさえ言ってしまった僕は人の道にも戻れない。  
僕に残されたものは。ただ一つだけしかないのかもしれない。逢の優しい囁きに導かれるままに僕は。  
 
橘 「美也……スキだ……」  
美也「ひくっ!?」  
 
――美也……スキだ……――  
 
その瞬間、美也のただでさえきつい締め付けが一瞬、ちぎれるほどにきつくなるのを感じて僕は喘ぐ。  
僕の絶頂を二人は悟ったんだろう。さっきより激しく上下に動かされて美也の身体がぐらぐらと揺れる。  
ごめん。美也。僕のせいで……だからせめて……少しでも楽に……  
 
橘 「美也……スキだ……スキだ……」  
美也「にぃに……だめ……そんなの、だめなんだよ、ねぇ、にぃに……」  
七咲「美也ちゃんも、先輩も、ダメなこと、いっぱいしてきたんだよ」  
橘 「スキだ……スキだよ、美也……」  
美也「いや……こんなのにぃにじゃない、きらい……」  
中多「美也ちゃん。もう自分に嘘をついたらダメだよ」  
七咲「それに、美也ちゃんがお兄ちゃんのことを嫌いになって、お兄ちゃんにもし嫌われちゃったら、美也ちゃんはどうするの?」  
美也「あっ……!?」  
橘 「美也……スキ……スキだ……」  
美也「ああ……美也は……美也は……」  
 
僕の心と同じように。美也の心も崩れかかっているんだ。僕のせいで、二人の友達を騙して。良心の呵責に苦しんで。  
純潔を失って。二人の友達を失って。楽しい日常を失って。兄との望まぬ情交に身をやつして。美也に残されたものは僕と同じ。  
 
美也「みゃーは……にぃにが……」  
橘 「うん……美也は、にぃにが……」  
美也「だめ……やっぱり、こんなの……」  
橘 「心配しないで……美也……」  
美也「にぃ……に……?」  
橘 「僕は。美也のこと……嫌いにならないから……スキだから……心配しないで……」  
中多「なんだか、妬けちゃいます……」  
美也「にぃにが……みゃーのことを……」  
橘 「スキだ……ああ、紗江ちゃん……逢……もう……もう僕は……」  
七咲「美也ちゃん……ほら、先輩が苦しそうだよ」  
美也「みゃーは……みゃーは……」  
 
二人が肩にかけていた美也の腕を離して、僕の首に託せば、美也は僕の首を抱き寄せて。  
 
美也「ス……キ……」  
橘 「み……や……」  
美也「にぃに……スキ……スキ……」  
橘 「美也……美也……」  
美也「どうして……痛くない……スキって言ってると、痛くない……」  
橘 「うん……スキだよ、美也」  
美也「どうして……にぃににスキって言われると……」  
橘 「言われると、何……?ああ、もう、だめだ……」  
美也「わかんない……わかんないけど……おねがい、おねがい……」  
橘 「美也……スキ……スキだ……スキだから……!」  
美也「にぃに……にぃにがスキ……スキ……スキ……」  
橘 「だから……だから!美也!!スキだ!!!」  
美也「にぃに……にぃに……にぃに!!!」  
 
畜生の叫び声が地下室に響き渡り。恋人だった二人の笑顔に見送られながら。僕は意識を失った。僕の精を胎に受けた美也と、二人で一緒に。  
 
 
目を覚ました時は、僕と美也は椅子から下ろされて、つながったまま二人で縛られていて、紗江ちゃんと逢は部屋にいなかった。  
後ろ手だった戒めは今やお互いの背中に手を回すようにかけられていて、それはまるで抱擁する恋人。  
美也に何も声を掛けてあげられなかった僕に、美也は「みゃーは大丈夫だから」と声をかけてくれて、僕は少し泣いた。  
 
美也「くっついていると暖かいね、にぃに」  
橘 「そうだな」  
美也「にぃに」  
橘 「どうした?」  
美也「……紗江ちゃんと逢ちゃんのこと、恨んじゃだめだからね」  
橘 「それは分かってる」  
美也「約束だよ!あ、あともう一つみゃーと約束」  
橘 「何だよ、美也」  
美也「にぃに、自分のことも、絶対恨んじゃだめだよ」  
橘 「っ……!」  
美也「にぃに……だめだよ。どこかに行ったら」  
橘 「……大丈夫だよ、どこにも行かないから」  
美也「嘘。嘘だ。にぃには絶対自分のことを責めてて……それで……」  
 
美也には敵わないな。僕は多分、無事に帰れたら死のうと思っていたのかもしれない。  
だけど、やっぱり無理だ。死ぬのは怖くないけど。美也を置いていくのは怖い。  
 
橘 「どこにも行かないってば……んむっ……んっ……ん……」  
美也「嘘。嘘だ。だってにぃには……う……んっ……んんっ……ん……」  
 
そして、僕は、美也と長いキスをした。言葉より、もっと美也を安心させてあげられる。  
美也の隣に、僕はずっといるんだって。言葉より、信じられる交わりを僕も美也も知ってしまった。  
 
……もう美也は、僕が動いても痛いとは言わなかった。  
 
日曜日、お風呂を使わせてもらって紗江ちゃんと逢の料理をご馳走になって、僕と美也は解放された。  
僕は紗江ちゃんの家で、美也は逢の家で遊んでいることになっていて、誰にも何も咎められなかった。  
――これは私達が二人で話し合って決めた復讐です。もちろん、この後のことも覚悟しています――  
二人はそう言ったけれど、僕達は警察にも学校にも親にも何も言わなかった。  
美也はそれを望まなかったし、僕に彼女達を責めることなんて到底できない。  
むしろ、少しずつ狂っていく僕達を、持ち前の献身で庇い、友人として面倒を見てくれた中多さんと七咲に、僕達は感謝していた。  
そして……  
 
美也「あっ、あっ、あん、あん。にぃに、にぃに!」  
七咲「中多さん、ここの英訳ってどうやってやるの?」  
橘 「美也!……スキだ、美也!」  
中多「あ……七咲さん、これは仮定法の問題でね。ここの過去形がね……」  
美也「にぃに、ダメ。もうイっちゃうよ、にぃに、スキ、にぃに」  
七咲「……女の子だっけ?」  
橘 「美也!僕も、僕ももうイクから!美也ぁ!」  
中多「出産予定が修学旅行と重ならないといいね」  
美也「あ、ああ……みゃーも……イっちゃった……にぃに……スキ……スキ……」  
中多「ふふふっ。美也ちゃん。赤ちゃんの面倒、私も見てあげるからね」  
美也「うん……紗江ちゃん……ありがと……大好き」  
七咲「郁夫もきっと妹ができたって喜んで一緒に遊んでくれるよ」  
美也「うん……逢ちゃん、ありがと……でも、この子はにぃにとみゃーの子供だから、逢ちゃんにはあげないからね」  
七咲「ふふふっ」  
中多「くすくすっ」  
 
僕の部屋で、3人の少女が微笑む。僕はこんな幸せな暮らしをしていていいんだろうか。  
身重になった僕の恋人の美也。今まで以上に大切にしてあげないとな。  
 
美也「にぃに……大スキだよ」  
橘 「……美也。大スキだよ」  
 
〜美也 スキ・エピローグBAD〜  
 

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