ある暑い夏の夜。この熱帯夜にも負けない程に、二人は熱く愛し合っていた。  
 
「あ、ん、ああっ!!」  
性的快感から来る嬌声が純一の部屋にこだまする。  
その声に興奮を覚え、彼女を突き上げる力はどんどんと強くなる。  
「ぐっ……あ!か、薫、そろそろイキそうだ……!」  
己の限界を告げると、彼女も快感に堪えかねながら言葉を続けた。  
「あっ、あたしも、もう……んんっ!!」  
 
どうやら互いに頂点は近いらしい。それを察し純一の速度は更に上がった。  
その動きに応えるかのように彼女の身体も淫らに動く。……そして、絶頂は訪れた。  
「あ、あ……っ!!」  
女の膣内が収縮し男根を絞り上げる。瞬間、男は装着していた避妊具に精を放った。  
 
「……今日は、五回もしちゃったね」  
「ああ、さすがに疲れたよ……。身体中が痛い……」ベッドの中でひそひそと囁くように話す。  
声を抑えるように努力はしているが、行為中にほぼ抑えられていないので無意味な気もする。  
「なーにオッサンみたいな事言ってんのよ。まだ若いんだからしっかり夜の相手くらいしなさいよね」  
 
まだまだ精力が有り余っている様子で、薫はくすくす笑いながら言い退けた。  
「こうしてあんたが一人でいられる貴重な時間を無駄には使えないでしょ?」  
「まあ、確かにそうだけど……」  
 
今、純一以外の家族は全員出払っている。  
夏休みという事もあり、美也は友人宅に泊まりに行っており、両親は旅行を楽しんでいるのだ。  
旅行には純一と美也も誘われたが、二人とも自分の時間が惜しいと考えて誘いを断った。  
……というのは純一の場合ただの口実で、初めから薫を家に連れ込むのが目的だったのだが。  
 
純一は、以外とフェミニストであり、古風な人間でもある。  
愛する人はどこまでも大切にし、気遣い、絶対に傷付けないと心に誓っている。  
そんな考えを持っている純一は、薫と恋人同士となったその日にある誓約を立てた。  
 
『高校を卒業するまでは清い関係でいよう』  
その意思を彼女に告げると、彼女は「あんたらしいわね」と言って誓いに同意してくれた。  
……はずだったのだが。  
 
高校三年生になってから、薫の態度が急変したのだ。  
常に純一を誘惑するかのような行動を取り、随分と彼の心を揺さぶった。  
春先には、意図的に教室で二人きりになる状態を作り、純一に何度も迫った。  
それでも自分が立てた誓いを曲げなかった純一だったが、夏になって更に薫の誘惑はエスカレートしていった。  
薄着なのを利用して、胸の谷間をあくまでも自然に見えるように見せ付けてきたり、何かとタイミングを見計らって抱き着いてきたり。  
 
「……わざとやってるよな?」  
「ふふーん、さて、どうでしょー?」  
 
そして、夏休みに入る直前、遂に純一は彼女の誘惑に屈してしまう。初めての場所は、やはり誰も居なくなった教室だった。  
「薫……お前の考えは良く分かった。もう、こうなるからには覚悟は出来てるんだろうなっ!!」  
お預けを食っていた犬の如く、純一は彼女に抱き着きかかった。わざとらしい悲鳴をあげる薫。  
「あ〜れ〜〜〜っ♪襲われるぅ〜〜〜♪」  
こうして、二人は多少彼女の強引な手段によって結ばれたのだった。  
 
 
「しかし、全く……。まさかああ来るとは思って無かったよ。  
 最初からそういうつもりで僕の誓いを聞いてたな?」  
ベッドの中で恨めしげに話す純一。すると薫は笑みを浮かべながら答えた。  
「とーうぜん。それを聞いた瞬間から『絶対その誓いを破らせてやる!』って思ったわね」  
 
純一は唖然たる面持ちになる。そしてはぁ、と溜め息をついた。  
「……お前……。僕の精一杯の紳士的配慮をなんだと思ってるんだよ」  
「紳士ぃ?何言ってんのよ。あんなに激しい紳士見た事無いわよ」  
「うぐっ!!」  
情事について突っ込まれると、何も言い返せない。しかし、彼もただ黙っているわけではなかった。  
 
「も、元はといえばお前が迫って来たからああいう事になったんだろ!この淫乱め!」  
「な……っ!」  
みるみる薫の顔が紅く染まってゆく。  
「な、何よ淫乱って!!あんたがあんな守れもしない誓い立てるから楽にしてやったんでしょ!?」  
「おま、自分の事を棚に上げて……」  
「何よ!!」「何だよ!!」  
 
その後五分程言い合いは続き、あらかた言い終えた後、どちらからともなく吹き出した。  
 
「ぷっ……あはは。幸せって、多分こういう事を言うのよね」  
何となく可笑しくて、純一も笑いながら応える。  
「はははっ、そうだな」  
話しながら、自然に視線が合った。薫は、静かに何も言わず目を瞑った。そして純一はそっと顔を近づけ……。  
「薫」  
「……ん……」  
交わされる口付け。純一も薫もこの時間が好きだった。キスをするだけで互いの気持ちが伝わるような気がした。  
 
現在の自分達は間違い無く幸福に満ちている。好きな人がいつも隣にいて、笑いあってキスをして、そして……  
だが、薫はちょっとした不満を心に宿していた。後始末を済ませ、着替え終わってすぐに呟いた。  
 
「マンネリだわ……」  
「え?何が?」  
純一が問い掛けると、薫は、はっと口を押さえて言葉を濁した。  
「うえっ!?あ、あたし何か言った?」  
慌てた様子でとぼける薫に訝しげに聞き返す。  
「言ったな。何がマンネリなんだ?」  
 
自分で言った後に、純一もはっと何かに気付いたような反応をして、まくし立てるように言った。  
「ま、まさか……僕と付き合う事に飽きてしまったんじゃ……!  
 そんな、僕は何時だってお前の事を考えて……!」  
心底絶望したかのような彼の声色に、わたわたとその仮説を否定する薫。  
「ち、違うわよ!そんなあんたが悲しむような事絶対言わないし、考えてもないわよ!」  
 
彼女の性格上、この場面で嘘は言わないだろう。薫を心から信頼している純一はすぐに落ち着きを取り戻した。  
「そ、そうか。じゃあ、マンネリって何がだ?」  
再度質問をすると、とても言いづらそうに、ぼそぼそと彼女は喋りだした。  
「その……チが……」  
「え?なに?良く聞こえないぞ。なんだって?」  
聞き返すが、薫は黙ったままだ。  
更に聞き返すと、猛烈な勢いで純一の肩を引っつかみ、ゆさゆさ揺さ振りながら薫は言い放った。  
 
「もう!!エッチよ!エッチがマンネリだって言ってんの!!」  
「うわっ!何だよ……って……。  
 え、えええええっ!?エッチぃ!?」  
 
エッチがマンネリ。という事はつまり……  
「エッチ、っていうのは、あ、アレだよな?セッ……」  
「だーーーっ!!それ以上口に出さない!!」  
言うが早いか、頭を思い切り殴られた。  
 
「い、痛いじゃないか!いちいち殴るんじゃない!!」  
「あんたが悪いんでしょうが!デリカシーのない男は嫌われるわよ!!」  
「むぐっ……」  
そう言われては純一に反論の余地は無い。素直に話を聞く事にした。  
 
「で、どういう意味なんだ?エ、エッチがマンネリっていうのは」  
改めて聞いてみると、薫はぽつぽつと話し始めた。  
「う、うん……。なんていうか、今のままでも充分幸せなのよ?だけど……  
 ここの所、ほとんど毎日エッチしてるじゃない?」  
「そうだな。お前が毎日のようにムラムラして……ごふうっ!!」  
無言で純一の顔面を殴りつけながら、薫は話を続ける。  
 
「……でね?なーんか物足りないな、って感じてね。刺激が欲しいって言うのかな」  
「ぐぉぉぉ……。刺激……?」  
殴打された場所を摩りながら、疑問を含んだ声を出す純一。  
刺激が欲しいと言われても、どうして良いのか分からない。が、取りあえず浮かんだ考えを口にしてみる。  
 
「つまり、何かエッチの方法に変化が欲しいって事か?」  
「そそ。そんなところ。何か良いアイデア無い?」  
薫に言われて、頭を捻る。方法に変化……へんか……。  
 
「うぅ〜ん。そうだなぁ。……体位を変えてみるとかはどうだ?」  
提案してみるものの、すぐにその案は却下された。  
 
「あ、ダメダメ。それは私も考えたけど、大体やっちゃったでしょ」  
そう薫は言うが、記憶を手繰り、純一が言葉を返す。  
「いやいや、まだ後ろからは一回も……」  
言っている途中で、薫は素早く「や。後ろからは嫌」とまたも純一の提案を弾いた。  
 
「な、なんでだよ。多分だけど、かなり変化がつくと思うぞ」  
薫は、少し視線を落としながら、却下の理由を述べる。  
「だって、後ろからじゃ……純一の顔が見られないじゃない」  
 
純一の心が、その台詞に撃ち抜かれた。思わず涙が出そうになる。  
「か、薫……」  
「だから、後ろからは嫌。他になんか考えて」  
一瞬、胸が一杯になってしまった純一だったが、息を整えて、言った。  
「なあ、その前にちょっと良いか?」  
「ん?なあに?」  
 
「……抱きしめてもいい?」  
間を置いて、ぽかんとしていた薫の表情が綻んだ。  
「いきなりね。でも……いいよ」  
 
純一は、力いっぱい愛しい彼女を抱きしめた。互いに、自然と笑顔になっていた。  
 
と、その時。彼の頭の中で、閃いた。先程の『変化』の名案が。  
「お、おお……!良いアイデアが思い付いた!!」  
「きゃっ!純一?」  
唐突な大声に驚く彼女を尻目に、大発見をしたかのように自称名案を発表する。  
「薫!これは名案だぞ!間違い無しだ!」  
珍しく自信ありげな雰囲気の純一に、興味をそそられる薫。  
「ああ、さっきまで言ってたヤツね。で、なになに?名案って?」  
「……それはだな……」  
 
「薫……青姦って知ってるか?」  
 
彼の『名案』に、彼女は先程とは違う意味で吹き出した。  
「ぶっ!!……あ、青姦っ!?あんた本気で言ってんの!?」  
「やはり知識としては知っているようだな。さすが淫乱な……がふぅ!!」  
右フックが顎に入った。懲りずに果敢に攻めて、敗れる。ある意味勇ましい男の姿といえよう。  
 
「ぐ、痛ててて……。その直ぐに手が出る癖は直した方が良いぞ!  
 でも、これは間違い無く名案と言えるだろう?『野外でする!!』  
 こんな単純明快な変化の付け方は他にないぞ?そして、きっと一生記憶に残る夜になるはずだ!」  
 
終始、顔を真っ赤にして話を聞いていた薫であったが、さも冷静に聞いていたように振る舞う。  
「あ、あんたにしちゃ上出来ね。……良いわ。やってあげるわよ。  
 で、何処でするつもりでいるの?そこんとこしっかり考えてるんでしょうね?」  
 
「ああ、決まってるよ。……丘の上公園だ」  
この発言にまたしても薫が吹き出す。  
「ぶほっ!!あ、あの公園!?あそこ、夜も以外と人通るのよ!?もし見られたら……」  
しかし、全く動じずに純一はきっぱり答える。  
「そのスリルが良い刺激になるんじゃないか。いやあ、今から楽しみだな、薫」  
「べ、別に!ただあんたがやりたいって言うんなら、あたしが断る理由が無いだけよ!」  
強がりを言う発案者薫。元はといえば彼女から関係の昇華を希望してきたのだから、確かに断られる理由は無い。  
純一はその強がりを、微笑ましく見守っていた。  
「ははっ、そうか。じゃあ決まりだな。  
 明日、丘の上公園の入口向かいのベンチに十時集合。な?」  
「わ、分かったわ。」  
全ての要項が決定した……かと思いきや、純一は最後にこう付け足した。  
「おっと、最後に一つ!」  
 
――その時はスカート、ノーパンで来る事――  
 
純一が『名案』を思い付いた翌日の夜。純一は、丘の上公園に居た。  
「遅いな……。あいつ、何やってるんだ?」  
逸る気持ちを抑えつつ彼女を待っていると、電灯の明かりに照らされた人影が近付いてきた。  
 
「お、お待たせ〜」  
その人影は、彼の予想通りの人物……薫だった。  
万が一警官でも来てしまったら、彼の『名案』も水泡に帰してしまう。純一はほっと息を吐いた。  
実際は十五分程度の時間だったが、純一にはひどく長く感じた時間であった。  
それも、これから始まる事への期待感から来るものなのかもしれなかった。  
 
「遅いぞ。何やってたんだよ」  
「仕方ないでしょ!?あんたと違ってあたしはスカートなんだから!  
 慎重に慎重を重ねながらやっと来たのよ?褒めて貰いたいくらいだわ」  
そう薫に言われると、純一はにやりと笑って彼女の要望に応えた。  
「分かったよ。それじゃあお前にご褒美をあげよう……どれどれ?」  
 
言いながら、純一は薫の秘所へと手を伸ばした。彼女は、下着を身に付けていなかった。  
「んあぅ!」  
びくりと身体を硬直させる薫。そこは、既に湿り気を帯びていて、純一の指を容易に受け入れた。  
 
「おお、本当に穿いて来なかったんだな。偉い偉い。  
 で、やっぱりもう濡れてるな。さすが淫乱なだけの事はある」  
「い、淫乱なんかじゃっ……ない……!」  
口答えをする彼女を制するように、彼は行動に出る。  
「ほほう、ここをこんなにびしょびしょにしてか?」  
そうして話しながら差し込んだ中指をゆっくりと動かす純一。すると、さっきよりも甘い声で薫は鳴いた。  
 
「ふっ、あ、あ」  
差し入れた指を上下左右に動かす度、面白い程に彼女は反応を示した。  
「毎日、家に帰った後我慢出来なくて一人でしちゃうんだろ?」  
意地悪く純一が問うと「ち、違う……毎日なんて……」と薫は弱々しく反論した。  
すると、純一は更に意地が悪くなり、どんどんけしかけていく。  
 
「へえ。そうやって嘘吐くんだ?じゃあ、もうここ触るの止めちゃおうかな」  
言いながら、伸ばしていた腕を引っ込める。  
途端に、名残惜しいのか「あ……」と小さく薫が声を上げた。  
 
純一は、行為中のしおらしい薫を手玉に取る事に、一種の快感を覚えていた。  
勿論、普段の彼女の事も好きだが、そちらの事となると奥手になる彼女を  
自分の思い通りに出来る事が、どうしようも無く嬉しかったのだ。  
それで、ついつい意地を悪くし過ぎてしまう。純一の悪い癖だった。  
 
だが、慣れぬシチュエーションに、今、純一も興奮を抑える事が出来ていなかった。  
「純一ぃ……。もっと……もっと、ここ触ってぇ……。  
 ほ、本当は毎日してるからぁ……。お願い……」  
なまめかしく懇願する薫に、純一は耳元で囁いた。  
「いや……悪いけど、今回は前戯はここまでだ。お前ももう準備は出来ているだろうし、それに……」  
 
言葉を続けながら、自分のズボンのファスナーを下げる純一。  
それまでデニムの生地を押し上げていた男根が、束縛から開放され、勢い良く顔を出した。純一もまた、下着を付けていなかった。  
「っ!」  
その様相に息を呑む薫。今まで見てきた中でもそれは、最も大きく膨張していた。  
「僕も、もう我慢出来ないんだ。……それに手で触られるより、こっちの方がお前も良いだろ?」  
 
「そ、それは……」  
羞恥で、思うように声が出ない薫。幾らそちらの方が良くても、『そっちの方が好き』などと言えるはずが無かった。  
しかしこういう時の純一は察しが利く男で、皆まで言わせなくとも彼女の心情を察した。  
「ああ、口に出さなくても良いぞ。恥ずかしいだろうし。  
 僕も本当はもっと前戯に時間を掛けたいんだけど、人に見つかっても困るしな……よいしょっと」  
 
そう言いつつ、ベンチに腰を掛ける純一。そして薫にこう促した。  
「……ほら、跨がって。この体位ならお互いの顔も見れるだろ」  
それは、いわゆる対面座位の格好になる。対面座位は、彼女が最も好む体位だった。  
 
「ふ、ふうん。まあ、良いわよ。限界とか言っといてなんか余裕ぶってるのがムカつくけど……。  
 嫌いじゃないのは当たってるし、す……するには良い体勢かもね」  
忘れていた意地張りを、思い出したように発揮する薫。  
いつもは小憎らしいそれも、この状況では可愛くしか見えない。純一はにこりと笑った。  
「……おいで」  
「ん……」  
 
 
彼に跨がり、膝立ちになる。そして自分の秘所を彼の男根に合わせ、ゆっくりと腰を落としてゆく。  
「あ……ぃっ……!」  
 
充分に濡れていたお陰か、予想していたよりするりと男根は飲み込まれていく。  
半分程入った所で、一旦薫は動きを止めた。  
「うんん……はぁっ……」彼女の身を案じた純一が声をかける。  
「くっ、大丈夫か?……動いても良い、か?」  
「う、うん……大丈夫。私も動くから、純一も動いて……」  
 
承諾が得られたのを皮切りに、堪らず少々乱暴に腰を動かした。  
「ん!!んあ、あ!!ちょ、いきなり激し過ぎ……ああっ!!」  
自分が原因なのに、その大きな声に驚く純一。その声は予想外に公園中に響いた。  
「こ、こら!薫!もうちょっと声抑えろ!」  
「無理言わないでよ!……ふぁあ!!」  
 
とんでもない快感だった。外でするのがこんなに気持ち良いなんて。いつもより、気持ち良い部分、性感帯が増えているような。  
行為を進めていく内に、若い二人は完全にこの快楽の虜になっていた。声の調節など、到底出来なかった。  
 
「うっ、あ!か、薫っ!」  
「純一、純一ぃ!!もうダメぇ!!」  
普段より数段早く、絶頂は訪れようとしていた。どんどんと上り詰めていく。  
 
「くっ、もう、イくぞっ……!」  
「来て、来てぇ……!!」とうとう二人が限界を迎えようとしていた……その時。  
 
公園の入口から、光が差し込み、動いた。  
 
「!!」  
不運な事に、二人のように深夜に出歩く物を取り締まる見回りの人間が、この公園に来てしまったようだった。  
このベンチは公園の奥まった場所に位置している。だが、隈なく捜索されてしまったら間違い無く見つかってしまう場所だ。  
行為を中断し、急ごしらえの身繕いをして息を潜める二人。しかし絶頂の直前だった為に、荒くなった息遣いを止める事は出来なかった。  
 
「はぁ……はぁ……」  
全く動かずに光の行方を伺う二人。反対側のベンチを照らし、少し手前の石畳を照らす光。  
暫くあちらこちらを通った光は、二人には気付かずに、出口へと消えていった。  
 
 
一気に体中の力が抜け、脱力する純一と薫。  
「うはぁ〜〜〜……。危なかったぁ〜〜〜……」  
安堵の表情を浮かべる純一。それは薫も同じなようだった。  
「ふぅ〜……。寿命が一年縮まったわよ……」  
薫が全身の力を抜いて呟くと、純一が続けて言った。  
「でも、残念だったな。……もう少しでイケそうだったのに」  
かっと全身が熱くなる薫。照れ隠しに純一の背中を打つ。  
「バ、バカッ!」  
 
身支度を整え、ベンチで寄り添う二人。何気ない言葉を交わす。  
「なんか、今日はもうやる気無くなっちゃったな」  
「そうね。興ざめってヤツかな」  
「……また、しような。今度は最後まで、さ」  
「……うん」  
 
その後、外でする事にすっかりはまってしまった二人は、更なる刺激を求めて様々なプレイを野外で試しているとかいないとか。  
 
 
 
<了>  
 

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