(よし、今日はせっかくの休みだし、新作ゲームの予約に行って来よう)  
今日は絶好の外出日和だ。  
 
(しかし本当にいい天気だな…日差しが暖かい……  
 ……あれっ?あそこにいるのって…あっ僕に気がついたみたいだ)  
 
「よう。りほっちの連れじゃないか。どうしたこんな所で…  
っておい! なに逃げようとしてんだ。」  
(しまった…夕月先輩に捕まってしまったぞ。  
これは何かに巻き込まれるフラグな気が…と、とにかく冷静に対処しよう)  
 
「僕はちょっと用事がありまして…」  
「なんだなんだそのつまらない回答は。  
もっと面白いこと言えよ〜」  
夕月先輩は相変わらずの、屈託のない笑顔で笑っている。  
 
「はははっ…すいません ところでそういう先輩はどうしたんですか、今日」  
「ん?俺か、俺はだな… こほん、アニメ研究会のやつらが  
『とにかくあの遊園地のファラオの謎ってアトラクションはやべえ!』  
って話をするのが聞こえてな。それでちょっと興味が湧いたって寸法だよ」  
「そうなんですか。それで一人で…」  
     ドガッ!!  
「そうなんだよ。誘えよって話だよな。  
愛歌も今日は用事があるみたいでな。」  
「いててて、そうですか。それじゃあ、お気をつけて」  
(ははっ、僕の思い過ごしだったかな。さて、ゲームの予約をしてこよう。)  
 
「…………ちょっと待った〜!」  
「…先輩、まだ何か用ですか…」  
「まだ何かじゃねえよ!  こう言うときはだな、  
『それでは一緒にいきませんか、夕月先輩』っていうのがお前の役目だろ。  
まったく輝日東の男子は野暮で困るよ。しまいにゃ輝日南にでも引っ越すよあたしは」  
「えっ先輩と一緒に遊園地に…ですか。」  
「そうだよ、そうそう。いいだろ減るもんじゃないし。  
それにこんな美人と遊園地だなんて滅多にないチャンスだぞ」  
(う〜んどうしようかな)  
 
・梨穂子が焼きもちを焼くと困るのでちょっと……  
○夕月先輩と一緒にいるところを噂されると恥ずかしいので……  
○飛羽先輩一緒に行けるのなら喜んでお受けしたのですが……  
 
 
「僕も出来ればご一緒したいのですが、梨穂子が焼きもち妬くと困るので…」  
「うん?りほっちが焼き餅?う〜ん、りほっちが焼き餅ねぇ。  
まぁさ、何かあったら私からちゃんとフォローしておくよ。  
…興味本位で出てきたけど、よく考えたら一人で遊園地ってのも。ねぇ…」  
「そうですか…」  
(う〜ん。なんだかんだ言って、夕月先輩にはいろいろお世話になってるし…  
あんまりお断りするのも失礼かな。ゲームの予約も今度すればいいし…  
それに一緒に遊園地に行くだけなら、大丈夫かな)  
 
「わかりました。行きましょうか。」  
「おお悪いね。よし!手でもつないで行くか。  
……おいおいそんな顔するなよ…流石の私もちょっとへこむぞ…  
クッ ぷっ、あはは いやいや、お前いいリアクションだったぞ。」  
「あはは、僕も夕月先輩と一緒にいるの楽しいですから。」  
これは本心だ。年上だけど親しみやすく、居心地がいい。  
「おおー!言うねぇ。いいのかい。あんたに惚れちまうよ。  
りほっちから略奪愛しちまうよ。」  
「それは大丈夫です。僕と梨穂子は深い絆で結ばれていますから」  
夕月先輩も少しイラッとしたようだ。  
「やだねー、まったく。真顔で言うかそんなこと。  
まったくこっちが恥ずかしくなってくるよ。熱い熱い。  
…っと、あんまりだべっていてもあれか。よし行くぞ。」  
「ははっ それもそうですね。行きましょうか。」  
 
 
ファラオの謎 内部は少し薄暗く遠くからはカップルの悲鳴らしきものが聞こえてくる  
ただそれ以外は静かで、二人の足音が静寂を物語っている。  
 
「しかし、結構凝ってるな。ほら見て見ろよ、この装飾とかさ。  
……とは言え、アニメ研究会のやつらはちょっと大げさだよな。」  
「確かに…良くも悪くも普通のアトラクション…って所ですかね。」  
「そうなんだよな。ただ、エジプトらしさってのは合格点だな。  
そうそう、エジプトで思い出したんだが、お前知ってるか?  
古代エジプトにはパピルス、まあ紙の原型みたいなもんだな。  
それを使ってファラオなんかは今で言うカードゲームみたいなものに興じてたって話だ。」  
「へぇ〜そうなんですか。知らなかったです。今初めて聞きましたよ」  
「はっはっは、そうだろ、そうだろ。なにせ嘘だからな」  
「ああなるほど嘘なん……ええ!嘘? もう、ちょっと信じちゃったじゃないですか。」  
「はは、信じるお前が悪いんだよ。まったくかわいいな、お前は。  
からかいがいあるってもんだ。」  
 
ファラオ  「ウオオオ〜〜〜〜ン!!」  
 
どこからともなく不気味な声が響く  
「あれ?先輩?今何か言われました?」  
「バカ、なに言ってんだ!あんな変な声、出すわけないだろが!」  
 
二人の前に立派な人形らしきものが姿を現す。  
その姿はどことなく威厳を漂わせている。  
 
ファラオ『我の眠りを妨げる者よ、  
     千年王国の呪いを受けるがいい!』  
 
 
「おっと、びっくりした!これが親玉なんでしょうか。」  
「そうだな。たぶん真打ち登場ってとこだろう。  
よう、ファラオ!元気にしてたか?お前、なにアテンだ?それともアメンのほうか?」  
つかつかと夕月先輩はそのファラオに歩み寄る。  
「あっ!先輩。不用意に近づくと危ないですって!」  
「なあに〜大丈夫心配すんなって。ただのアトラクションだろ。」  
 
キング『その罪、自らのみで思い知るがいい!  
    ウォォォオオオオォォ〜〜ン!」  
 
          ポゥーン!!  
 
 
なにか紫の霧のようなものに辺りが覆われたところまでは覚えている……  
それと共に急に眠気に襲われ意識がなくなっていった事も………  
 
 
意識が戻るとそこは、先ほどと変わらない風景が広がっていた。  
エジプト風の装飾、薄暗い証明、まだ自分たちはファラオの謎の中にいるようだ。  
「う〜ん……あれ、ここは…そっか、夕月先輩と遊園地に来てたんだっけ……  
ははっ、まだ頭が痛いや…あっ?そうだ!先輩は大丈夫かな?  
ってあれどこ行ったんだろう?」  
「お〜い!ここだ〜!」  
声のする方向にはお茶の道具だろうか…茶碗の中には抹茶が入っており側には茶筅もある。  
しかし先輩の姿は……ない。  
「こっちの方で声がしたはずなんだけどな…  
あれっ??お茶の道具なんてさっきまであったかな?  
いいや、そんなことより先輩のことを探さないと!」  
「だから、ここにいるって言ってるだろうが!!」  
声は確実にする。けど声のする方向には茶道具しか……も、もしかして  
「………この抹茶……先輩?先輩ですよね!!」  
「えっ?何言って?……もしかして…あんたには、私がお茶にでも見えてるって事か?  
あはは!傑作だなそれは。凄いアトラクションだぞこれ!」  
「先輩!確かに凄いですけど、それどころじゃないですって!」  
「…………そうだよな……どうやって元に戻るんだ?」  
「すいません…僕もどうしていいかは…わからないです」  
 
う〜ん、こういう時どうすればいいんだろう。  
先輩が抹茶になったときの対処法なんて知らないぞ…  
けどじっとしていても仕方ないよな、よしこうなったら…  
 
「夕月先輩…先輩のお茶を点ててみてもいいですか?」  
「えっ?な、なに言ってるんだお前は!!」  
「ですけど…元に戻る方法の見当も付きませんし、、  
なにかアクションを起こしてみた方がいいと思います。」  
「確かに…う〜ん…そうかも…な。で、今どういう状況になってるんだ?  
「ええっと、先輩の茶碗の中に液体の抹茶が入まして…。」  
 
「ふんふん、なるほどな。それならなら後は、  
茶筅できめ細かな泡が出るまでかき混ぜてくれ。  
ははは、どういう原理になってるのかはわからないけど、  
お湯を入れるところから始めていたら、火傷していたかもな」  
 
しかし…本当にお茶を点てれたら先輩は元に戻れるんだろうか…  
いや、考えても仕方ないよな。選択肢はこれしかないんだし……  
「では…かき混ぜますよ。先輩!」  
「よし来い!女は度胸だ!」  
 
シャカシャカシャカシャカシャカシャカ  
「あっ、ああっ、あ、んんっ、うあぁ、んんぁ!!」  
かき混ぜ始めたとたん、夕月先輩は甘い声をあげた。  
「せ、先輩。だ、大丈夫ですか?」  
「ぁっん、もっ、もっと……優しくしてくれ……」  
「こ、こうですか」  
「ううぁん、いぃ、だ、大丈夫だ…」  
 
(どうしよう、本当に大丈夫なんだろうか、  
優しく、優しくまずは全体をなじませるように……  
茶筅はこうなぞるように……)  
「はぁぅぁん、うん、んっ、ぁん」  
 
(よし、次は手首のスナップを利かせてみよう)  
「ぅあ…あぁぅ…はぁぅぁん…ぃぃ」  
(どうしよう…なんか興奮…  
先輩がいやらしい声出すから、変な気分になってきた…  
ち、違うぞ。ぼ、僕はただお茶を点ててるだけだ!  
それに、僕は先輩を元に戻したいからであって、  
言ってみればこれは医療行為みたいなものだ!)  
 
茶碗の抹茶からはきめ細やかな泡が立ち、茶筅と絡み合っていた。  
「先輩、もうそろそろ完成すると思うので…我慢してくださいね」  
「はあぁぅ、あっぁああ、頼む…」  
(最後はしっかりかき回して……)  
「ぁん、ぅあん、はぅうううああ、ふぁぁあぁあ」  
(これでよし、あとは茶筅を引き上げれば……)  
「あっ…ぁっ…はぅ…んっ…んふ…ぁふぁぁ」  
 
茶碗の中の抹茶は細かな泡を立て、テラテラ光っている。  
茶筅の先からは、絡み合った滴が茶碗に落ち溶け合っていた。  
 
「先輩…点て終わりましたよ…大丈夫ですか?…先輩?」  
「…ハァ…ハァハァ…ゥゥァ」  
先輩の息は荒くなっていたが、その吐息は疲れ以外にも甘美ななにかを含んでいた。  
「せ、先輩?夕月先輩!?」  
「えっ…?あっ…ああ、大丈夫…だ…」  
「すいません、先輩。結局、元に戻りませんでした。」  
「そっ、そうだな、ははっ 仕方ないさ。も、もう何もせず元に戻るまで待とうな?」  
 
どうやったら元に戻れるんだろ?お茶を点てても戻らなかった…  
まてよ。ファラオの呪いでお茶になったてことは、  
先輩がお茶じゃなくなれば元にもどるってころだよな。うん、そうに違いない。  
それにせっかくお茶を点てた事だし…試してみるか。  
 
「先輩!その…先輩のお茶…飲んでみてもいいですか?」  
「………お、お前は何言ってるんだ!そんなの駄目に!…ダメに…決まってるだろ…」  
「けどお茶を点てた以上は飲むのが礼儀でしょうし、  
それにこれで先輩も元に戻れると思うんです!!」  
「どこからそんな自信が湧いてくるんだお前は!  
…わかったよ、好きにしろ。」  
「いいんですか?先輩!」  
「ああ、頼んだぞ。だから…その…やさしく…な」  
「まかせてください」  
 
(けど先輩のお茶を飲むって現実ではどういう意味になるんだろ?  
待てよ…茶碗に口付けることは先輩と口付けってことにならないか?  
…‥いや、そんなことを考えてる場合じゃないよな…集中しないと)  
 
「先輩…今から口、付けますよ」  
「そんな事いちいち報告すんな!こっちは恥ずかしいんだぞ」  
「すいません。……いただきます」  
 
ゴクゴク  
(これは!! なんて美味しいんだ!匂いも…いい。  
それになんかこう舌に絡みついて来るみたいだ。  
なんだろう。ムラムラしてきて体が熱くなってきたぞ)  
 
「バカ、そ、そんなに吸い付くな!あっ…ん」  
(駄目だ!美味しくて止まらない!)  
「だ、だからそんなに!し、舌とか出してくんな…っぁ」  
(ああ、なんて美味しいんだ。もっと、もっと飲みたい!)  
「んんっ!そ、そんなに激しくすっぅあぁぁぁ、、も、もうだめぇえ」  
 
        ポゥーン!!  
 
 
なにか紫の霧のようなものに辺りに覆われ、視界が遮られた。  
それと共に再び、意識が遠の…いて…………  
 
 
「あれ…?僕は……」  
どうやら意識を失っていたようだ。  
ただ、先ほどとは違う。隣に暖かい感触がある。  
夕月先輩も目が覚めたようだ。二人の目が合う。  
「あっ!夕月先輩!よ、良かった元に戻れ、……んん!」  
二人の唇が重なり合う。というよりも夕月先輩から強引に重ねてきたのだが…  
 
「………ぷはぁ、ちょ、どうしたんですか先輩!」  
いつもの先輩とは様子が違っていた。  
目は潤み、頬はうっすらと赤くなり。女性のその表情を浮かべている。  
「はぁ、はぁ、……頼む、今は、今はちょっとだけ…我慢できないんだ……んん」  
再び唇が重なり、舌が絡み合う。  
二人の唇からは甘美な液が交換され、混ざり合っていった。  
 
先ほどまで暗いところにいたせいか、外が眩しい。  
ただ心は晴れなかった。  
さっきの出来事は嬉しかったし良かった。それは事実だ。  
けど、僕は先輩に悪い事をしてしまったんじゃないか…とにかく謝らないと。  
 
「先輩…今日は、その…すいませんでした。」  
「えっ?…まあ、そのなんだ、別にさっきの事は…そんなに気にしてないからさ、  
ほら、そんな深刻な顔すんなって」  
夕月先輩はにこっと笑った。慰めようとしてくれているのだろう。  
「けど、今思えば、先輩に…その…失礼な事をしていたんじゃないかって…」  
「そりゃあさ、確かに、…あれだったけど…  
なんて言えばいいのか、…凄く、気持ち良かったからさ……  
いや、今のは聞かなかった事にしてくれ。  
と・に・かく、こっちもさ、お前に強引にキスしちまったてのもあるからさ、  
今日のはお互い様ってことで、な」  
「先輩…ありがとうございます」  
「ああ、それと、わかってるとは思うけど今日起きた事は他言無用だぞ。  
成り行きとは言え…その…キスしちまったわけだし…  
こういう事は誰かに話すと変に広がっちまうからな。  
もし、今日の事をりほっちが知ってしまうのは…私も辛いからな。  
私もお前もりほっちは悲しませたくない、だろ。」  
「そうですね。…今日の事は胸の中にしまっておきます」  
 
夕月先輩は一呼吸おき、いつもの調子に戻りまた話し始めた。  
「さてと、まだ時間もある事だし、  
どっかで適当にうどんでも食って他のアトラクションも回ってみるか。」  
「そうですね、食事できそうな所は…あっ、あそこはどうですか?」  
「そうだな、行ってみるか。  
おっと!言い忘れてたけど今日の飯代はあんたのおごりだぞ。」  
「……はははっ、わかりました!今日は僕が出させていただきます!」  
「うんうん。素直でよろしい。まったく、可愛い後輩だよ、お前は」  
 
 
(よし今日はこの前予約したゲームを取りに行くぞ〜)  
(しかし今日は寒いな………  
 あれっ?あそこにいるのって…  
「先輩? 飛羽先輩じゃないですか」  
「橘…か。どうした…」  
彼女の名前は飛羽 愛歌。梨穂子がお世話になっている先輩。茶道部の副部長だ  
「僕はゲームを買いに出てきたんですよ。先輩は今日、どうしたんですか」  
「………遊園地だ…」  
遊園地…その響きを聞いて少しビクッとしてしまった。この辺にある遊園地といったら…  
「…ゆ、遊園地ですか?あ、あの、近くの…ファラオの謎がある所ですよね?」  
「そうだ…夕月が『あのアトラクションはやべぇ〜ぞ。愛歌も行って来い!』…てな」  
夕月先輩、あの事喋っちゃったのか…いや、まさかな。ははっ……  
「そ、そうなんですか。はははっ…な、アトラクションについて何か言われてました?」  
「いや…私も……気になる」  
「今日は…それで今日はお二人で行かれるんですか。」  
「いいや…しばらくはいいそうだ。だから、今日は独り…」  
「で、では僕は、これで……」  
「ほう、ほう〜…るりことは行けて、私とは行けないと…」  
「いや、それは…その…」  
(そっか、夕月先輩は僕と一緒に行ったって事までは話したのか…  
とりあえず、うまく言って断った方がいいよな。けどなんて言えば…)  
 
「……一緒に行くぞ。……ついて来い…」  
 
ああ、行っちゃった。断る機会を無くしたぞ。  
…覚悟を決めるしかなさそうだ。  
きっと…大丈夫だよな  
 
 
 
 
 
おまけ  
 
ファラオ  「ウオオオ〜〜〜〜ン!!」  
 
再びあの不気味な声が辺りに反響する。あのファラオだろうな…  
 
(ああ、やっぱりそうだ……今度も駄目かな…)  
不安そうな彼をよそに飛羽先輩は表情を変えない。  
「ほうほう…これは…」  
そしてすっとファラオに近づく。  
 
「先輩!そのファラオは危険です!下がってください!」  
「案ずるな…」  
 
キング『その罪、我ら三千年の呪いを受け思い知るがいい!  
    ウォォォオオオオォォ〜〜ン!」  
 
          ポゥーン!!  
 
なにか紫の霧のようなものに辺りが覆われたところまでは覚えている……  
それと共に急に眠気に襲われ意識が……はっきりしている?  
……変化しない?  
 
「あれ?何ともないぞ?どうなっているんだ。」  
「………秘技。呪い封じ……」  
「の、呪い封じですか?」  
「そうだ、もう悪さはすまい」  
 
こうして輝日東の平和は守られた? fin  
 
 

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