「……ん………ふぅ………ぁ………んぅ………」
美也の口からは悩ましげな声が洩れ出している。
部屋―――というには少し手狭なその空間は、まだ日の落ちきってない時間帯だというのに暗闇に包まれている。
唯一、光源と呼べる物は星の光のみ。
実はその星も人の手によって描かれた人工的な光であるが、闇の中にぼんやりと浮かぶ星達は、美也の肢体を幻想的に照らしていた。
「………ふっ……く、ぅん…………ぁ……にぃ、に………」
口から洩れたのは、空間の主の名前。
胸に添えられた両の掌は、未発達な乳房をマッサージするように動いている。
ブラウスのボタンを外し上半身をはだけているその格好は酷く扇情的だ。
美也は兄に後から抱きかかえられて胸を揉まれる自分を想像してるのかもしれない。
うつむき、頬を染め、時折 「やだぁ……だめぇ……」 などと弱弱しく呟いている。
それでも休める事なく手を動かし続けているのは、そういった願望の表れだろうか。
同年代の女の子と比べると、平均以下と言わざるを得ない未発達な乳房だが、実のところ美也はそんなに気にしてはいなかった。
ただ、それをネタにからかって来る兄に対して、何かしらの応答をしたくての結果が【小さな胸を気にしている】というキャラとなっただけのことだ。
兄にからかわれるのは嫌じゃない。
むしろ、もっと遊んで欲しいとすら思っている。
だがここ数日で兄は変わってしまった。
自分の過去を克服して新しい世界を見つけ出し、美也だけの兄ではなくなってしまった。
それが美也には寂しかったのかもしれない。
兄の居ない部屋で、兄の秘密場所に入り、兄の匂いを感じながら、美也は自慰行為に耽っていた。
「………あっ………ふ、っぁ………」
なだらかな丘の頂上で存在を主張する小さな突起を指先でさすると、薄紅色のそれは小さな刺激にも過敏に反応を示し、更にぷっくりと膨れ上がってゆく。
だんだんとさするだけでは物足りなくなったのか、指で摘んだり、弾いたりをして更に快感を貪る。
絶え間なく快感を送り続ける指の動きは休む事なく、美也自身を高揚させていった。
「……んっ………にぃに……あぁ……」
ひとしきり胸の刺激を堪能した美也が次に起こした行動とは、体育座りの様な格好でもじもじとこすり合わせていた太ももを少しだけ開くことだった。
そのまま片方の手でスカートをめくり上げると、白い下着が現れる。
そして、自分の一番敏感な部分に手を伸ばし、そっと触れた。
「―――ふあぁっ!」
指先で少し触っただけなのに、その刺激は美也の心を快感に蕩けさせる。
下着と包皮越しに敏感な小豆を上下左右に擦り、円を描くように撫で回す。
「あっ、ああっ、ふぁ」
狭く暗い個室の中で、兄の事を考えながらの行為。
だんだんと弄る指の動きが早まり、美也は限界に上り詰めてゆく。
「だめっ!イっちゃう!みゃーもうイっちゃうよぉっ!」
動かし続けていた指を止め、指先に力を込めて小さな豆を押しつぶす。
「にぃに!にぃにっ!あっ、ああああぁっ!!」
ビクンと大きく体を痙攣させて、美也は絶頂に達する。
背を弓なりに反らせぶるぶると体を震わせながら、美也は快楽に心酔していた。
乱れた息がようやく整ってくる頃には、ブラウスのボタンを留め終えて乱れた衣服を正していた。
「はぁ……」
主のいない暗い個室を元の状態へ戻すと、美也は部屋を後にした。
「ただいまー」
「おかえりー、その顔だとデートは楽しかったみたいだね」
「良く分かったな」
「みゃーはなんでもお見通しなのだ!」
「ハハハ、それじゃあ僕は部屋に戻るよ」
「………みゃーは、にぃにの事ならなんでもお見通しなんだよ」
「うん?なんか言ったか」
「なんでもないよーオヤスミ!」
「あぁ、おやすみ」
――――――ポロ
「………にぃにの、ばか」