「でも先輩苦しそうだし、……手でしてあげましょうか?」  
 
「ほ、本当に?」  
 
情けない声を上げながら七咲の顔を見上げる。  
七咲の目には僕の表情はどんな風に見えていたのだろう。  
きっと、期待と興奮が混ざり合った馬鹿な犬のような顔をしていたに違いない。  
そんな僕の表情を見ながら、七咲は―――。  
 
「うわっ…本気にしたんですか・・・」  
 
いっきに底へ落としてくれた。  
 
「こんな提案を鵜呑みにするなんて、先輩ってばちょっとおかしいんじゃないですか?」  
 
うぅぅ……汚らわしいものを見るような七咲の視線が痛い。  
にやりと冷笑を浮かべた七咲は、自分の甘い誘いにまんまと乗ってきた馬鹿な犬を切り捨てる。  
その馬鹿な犬である僕は、年下の女の子にいいように弄ばれて泣き出しそうになっていた。  
 
「ふふふ、もう、そんな泣きそうな顔しないでくださいよ。  
仕方のない先輩ですね。それじゃあ、こういうのはどうですか―――」  
 
僕の心情を察した七咲がした提案は、とんでもないものだった。  
 
 
 
「う…ふっ……ハァハァ……んうぅぅ……」  
 
床に座り込んでいる僕の前には、七咲の姿があった。  
部屋の隅に置かれていた椅子に逆向きに座りながら、こちらを見下ろしてくる。  
椅子の背もたれの柱に邪魔されて、スカートから生える足は太ももまでしか見えない。  
きっと七咲は意図的に下着は見えないように座っているに違いないんだ。  
切れ長の七咲の目が、いつもより更に鋭くとがって見える。  
上から僕を見下ろすその目は、容赦の無い軽蔑の視線だが、愉しんでいるようにも見えた。  
 
七咲の提案はこうだった。  
 
「足でなら、してあげてもいいですよ」  
 
その提案に今度はまず警戒した。  
先ほどのように馬鹿にされてはたまらない。  
そんな僕を尻目に、七咲は行動を起こしていた。  
部屋の隅にある椅子を手繰り寄せ、右片膝を立てて座る。  
ぎりぎりの所で見えないスカートの中身が僕の股間を熱くさせる。  
 
「先輩が嫌なら別にいいですけど」  
 
黒い革靴を脱ぎ、紺色のソックスをするすると脱いでいく。  
 
「それに今日は体育の授業でマラソンがあったから、ちょっと……臭うかもしれません」  
 
少し恥ずかしそうに七咲がほほを染める。  
その瞬間 僕は「お願いします」と口にしていた。  
 
先輩の威厳もなにもあったもんじゃない。  
股間のチャックから分身を取り出した僕は、手のひらを床について仰向け気味に床に座り込む。  
その間に七咲は椅子に座りなおして はぁ… とため息をついていた。  
このため息にはどのような意味が含まれているのか。  
恥も外聞も無く準備をする僕に対する侮蔑か、そんな提案をしてしまった自分に対してか、あるいはその両方にかもしれない。  
 
「これ、預けておきますけど 絶対に手で触っちゃだめですよ。  
あと、床に落としたらそこでおしまいですからね」  
 
僕の頭の上に脱いだソックスを置く。  
それは垂れ幕のように僕の顔の前に垂れていて、ちょうど指先の部分が僕の鼻先に来るような形で置かれた。  
ほのかに香るにおい……いや、ここは匂いと形容するべきだろう。  
今日一日七咲の足を包んでいたソックスから漂ってくる匂いに、僕は過呼吸状態に陥りそうになった。  
 
「先輩ったらそんなに鼻息荒くして…本当にどうしようもない変態なんですね」  
 
その言葉と同時に、七咲の足の裏が僕の股間に触れた。  
 
「あっ!」  
 
「なんか……もうガチガチなんですけど……私のソックスの臭いだけでこんなになっちゃうんですか」  
 
七咲の足の裏が僕のイチモツの先端をさする。  
それは優しく触れながらも、のの文字を描くように動かされる。  
僕は声を押し殺しながらも、その快感に酔いしれていた。  
 
不意に七咲の足の指が、イチモツのカリ首にひっかかる。  
まったくの不意打ちに、僕は あふっ と情け無い声を上げてしまった。  
僕の上げた声に気を良くしたのか、七咲は足の親指でぐりぐりと僕のイチモツを踏み潰す。  
こうなると快感より痛みのほうが増してくる。  
 
「ちょ、ちょっと七咲っ!痛いよ」  
 
「男の子なんだから少しくらい我慢して下さい。それよりソックス、落ちそうですよ」  
 
「あっ!」  
 
危ない危ない。七咲の指摘がなければ落とすところだった。  
何とかソックスは落とさないように出来た。出来たけど……。  
この格好はいかがなものだろう。  
股間のチャック全快でイチモツを丸出しにした男が、ソックスを顔に乗せた格好で仰向けになり、年下の女の子に踏みつけられている。  
しかも踏みつけられている部位は丸出しのイチモツだ。  
まあ、今更自分の格好なんて気にしても仕方ない事だ。  
それより、仰向けに寝転んだおかげで、顔の上に乗せられていたソックスの付着面積が大きくなった。  
おかげでよりいっそう七咲の匂いを感じられる気がする。  
 
そういえば七咲は「手で触ったらだめ」と言ってたよな……ならば―――。  
 
「ちゅぱ、ちゅ、はむはむ」  
 
「ちょ、ちょっと先輩!なにしてるんですかっ!」  
 
「んむぅ?なにって、手で触ってないから、反則じゃないだろ」  
 
「―――っ、そうは言いましたけど、うぅ………もういいです」  
 
勝った。  
ものすごく駄目な勝ち方な気もするけど一矢報えた。  
 
「―――いっぅ!」  
 
次の瞬間、これまでにない痛みが僕のイチモツを襲う。  
何事かとソックスを咥えたまま上体を起こしてみると、僕のイチモツが七咲の足の親指と人差し指の間に挟まれていた。  
七咲はそのまま器用に足を上下に動かし始める。  
僕のイチモツは下腹部に押し付けられたまま、七咲の足の指と足の裏によって激しく擦られた。  
 
「ひょ、ひょっとななひゃき!」  
 
ソックスを口に咥えたままなのでうまく喋れない。  
僕の抗議の声に気づいているはずなのに、七咲は足の動きを更に早める。  
気づいているからこそ早めているのか?  
いや、それよりももう限界に近い!  
このままだと、自分の制服に、ぶっかけることに――――。  
 
「あうっ!――――――――っ、ふぅ……」  
 
ぎりぎりセーフだった。  
果てる瞬間に口に咥えていた七咲のソックスを離した。  
するとソックスは万有引力の法則に従って、落下する。  
ちょうど僕のイチモツの先端から制服にかけての部分に落ちたおかげで、ソックスは僕の出した白い欲望を浴びる事となった。  
多少制服にも付いたけど、大部分はソックスが受け止めてくれたからラッキーだ。  
 
「先輩……?」  
 
七咲の声で僕は賢者タイムから現実へ引き戻された。  
 
「信じられない……なんてことするんですか」  
 
七咲は僕の白い欲望を受け止めた自分のソックスを、指でつまむように持ち上げている。  
さすがは僕の欲望だ。多少の重力じゃビクともしないぜ!  
粘り気の強いそれは、付着したソックスから垂れ落ちる事は無く、少しずつ下に向かって侵略するだけだ。  
七咲は何とか振り落とそうとしているが、余計に被害が広がってるだけにも見える。  
 
「私のソックス……先輩の唾液と精子でべとべと……」  
 
「あ、ごめん…」  
 
「はぁ、もういいです」  
 
そう言って七咲は当然のようにソックスを履き始めた。  
 
「ちょ!何してるの!」  
 
「何って、ソックス履いてるだけですよ?」  
 
先輩こそ何を言ってるんですか?といった顔でこちらを見てくる。  
いや、確かにソックスは履くものだけどさぁ、でもさぁ、僕の白い欲望まみれなんだしさぁ、なんていうか―――。  
 
「ん、ちょっと指に付いちゃった。―――ちゅぱ」  
 
正直たまりません!  
 
その後七咲は帰っていった。  
その際に、『情けない先輩の精子は、いま私に踏みつけられてるんですよ』という爆弾発言を残して。  
うーん、あの言葉がこんなに耳に残るなんて、僕ってこんなにドMだったかなぁ……。  
 
 
 
 

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