詞は食事の時間が大嫌いだった。  
 
自分の事を気にもかけないくせに、やたらと権威だけを振り回す父。  
何も言えない母。  
そんな両親にちやほやされている、何も考えていない姉・・・。  
こんな奴らに囲まれて食事をするのが苦痛で苦痛で仕方なかった。  
 
でも唯一つ、クリスマスイブの日だけは違った。  
この日だけは、サンタさんがプレゼントをくれる。  
家族の中で誰にも相手をされない自分を、何時もどこかで見守ってくれている、優しいサンタさんが・・・。  
そう考えると、こんな苦痛なだけの食事時間も、なんとか我慢することが出来た。  
そして、今年もそうなるはずだった・・・。  
 
絢辻家では、毎年のようにクリスマスイブにはささやかなホームパーティーの真似事をする。  
でも、やることはいつもと変わらない。  
テーブルの上にはちょっとしたケーキや、ちょっと豪華な食事が並んでいるだけで、いつものように両親は自分を相手にしてくれず、いつものように姉ばかりちやほやされる、いつも通りの食事風景だ。  
(でもいいの。きょうはサンタさんがきてくれるから。)  
そう思うと、こんな茶番の中でも幾許かは我慢できた。  
プレゼントは概して粗末なものだったし、別段自分が欲しいと思っているものでもなかったが、でも「プレゼントを貰える」という事実だけが、今日の詞を支えていた。  
いつものように食事を終え、いつものように風呂に入り、いつものようにベッドへ潜り込む。  
驚くほどいつもと変わらない日常の中で、ベッドの片隅に置いていある小さな赤い靴下だけが、今日の特別な日をささやかに演出していた。  
幼い詞にとってはそれでも充分だった。  
「うふふ・・・。おやすみ、サンタさん。」  
そう言って、詞はベッドに潜り込んだ。  
これから始まる、残酷な運命を知らずに・・・・・・。  
 
 
「おい!起きろ!!」  
詞の頬を、鋭い痛みが走った。  
「いたっ!!」  
突然のそんな出来事に、詞の目は一瞬にして醒めた。  
「だ、だれ?」  
「私だよ、詞。」  
そこには、詞の父がバスローブ一枚をまとって立っていた。  
「お、おとうさん・・・?」  
「起きたか、詞。しょうのない娘だ。」  
「え?なに?サンタさんは・・・?」  
「サンタさん・・・?」  
そう聞くと、父は冷たく笑い始めた。  
「はははは、まだそんなモノを信じてたのか。まったくおめでたい奴だなオマエは。」  
「え?」  
「サンタなんていない。今までオマエにプレゼントをくれてやってたのは、この私だよ。」  
「え?え?う、うそ!うそよ、そんな・・・!」  
「本当は何をくれてやる義理も無いんだけどな、取敢えず世間様に向けては「いい家族」をやってなきゃならんから・・・」  
「なに・・・?なに・・・?」  
「仕方ないから今の今までサンタのふりをしてやってただけさ。オマエが学校で変なことを吹聴しないようにな。」  
「え!!??」  
「でも、それも今年で終わりだ。オマエも、丁度いい頃合いだからな。」  
「ころあい・・・?ころあいって、なに・・・・・・?」  
父は無言でバスローブをハラリと脱ぎさった。  
「!!!!!!!!!!」  
そこで見たものは、恐らく詞の脳裏から一生涯離れることは無いであろう、異様な物体だった。  
赤黒く隆起し、醜い皺が幾重にも刻まれ、根元はチリチリとした真っ黒い無数の体毛で覆われたその物体は、まるでそれ一個がなにがしかの生物であるかのように、醜く蠢いていた。  
今まで見た何よりも・・・そう、詞が苦手とする虫やヘビ、トカゲなんかよりも、もっともっと醜いものだった。  
 
「い・・・いや・・・」  
何をされるのか分からなかった。  
だが、自分の身に何かとてつもない危険が降りかかってくるであろうことは、幼い詞でも容易に察知出来た。  
「何を怖がる必要がある。縁だって同じことをしてるんだぞ。」  
「お、おねーちゃんも・・・?」  
「そうだ。だからオマエも大人しく言うことを聞きなさい。」  
「で、でも・・・・・・いや!!」  
そう言うと、詞はベッドから飛び出した。  
だが、父はそんな詞の腕を掴んで引き戻し、ベッドの上に投げつけるように倒した。  
「いや!!いや!!」  
「おとなしくしろ!!」  
父の大きな右手から繰り出される平手打ちが、詞の左の頬を襲った。  
「いたっ!!!!」  
「全く仕方のない娘だ。少しは縁を見習え。」  
「そんな・・・そんな・・・・・・」  
震えがとまらなかった。  
左頬に受けた痛みがジンジンと疼き、両目から涙が止め処なく溢れてくるのがわかった。  
「お、おとうさん・・・やだ・・・」  
「分かってるさ。オマエが私を嫌ってることくらいはな。」  
「・・・・・・」  
「だから、オマエみたいな生意気な娘には特別念入りにしてやる。二度と私に逆らうことが出来ないようにな・・・」  
父は、ベッドに倒れこんでいる詞ににじり寄ってきた。  
「お、おとうさん・・・」  
詞は、もうその場から一歩たりとも動くことは出来なかった。  
「これが私のクリスマスプレゼントだ。受け取れ!!」  
そう言うと、父は詞のパジャマに手を掛け、引き千切るように左右に押し広げた。  
詞の未成熟な胸が露になった。  
 
「いやああぁぁぁっ!!」  
必死で胸を覆い隠そうとしている詞の腕を、父は思い切り引き剥がした。  
そして、その幼い胸に舌をベロベロと這わせてきた。  
「いやっ!!いやっ!!」  
身をにじり、何とか振りほどこうとするも、余りに圧倒的な父の力の前にはそれも全く無力だった。  
ベッドの片隅にあった赤い靴下が、弾みに床に落ちた。  
「いやっ!!たすけて!!おかあさん!!おねーちゃん!!」  
「大人しくしろと言ってるんだ!!」  
父の掌が、2度、3度、詞の頬に舞った。  
唇の端が、少し切れた。  
「うっ・・・!うあああぁぁ・・・!!ああああぁぁぁぁ・・・!!」  
詞の目から大粒の涙が溢れ出し、喉の奥からは言葉にならない叫びが搾り出されてきた。  
「泣いても無駄だ。この家で私に逆らえる人間なんか誰も居ない。オマエも分かっているはずだ。」  
そうだ。  
母も、姉も、この父には何も言えなかった。  
いくら詞が泣いても、いくら詞が叫んでも、救ってくれる人間なんか誰もいなかった。  
分かってた・・・分かってたんだ・・・!!  
 
「ふん、大人しくなったか。」  
そう言うと、父は詞のパジャマのズボンに手を引っ掛け、パンツごと引き摺り下ろした。  
詞の足の間に深く刻まれた裂け目が露になった。  
まだ何も覆い隠すものの無い、生まれたままの姿の裂け目だった。  
父は、詞の両足を無理矢理こじ開け、その間に顔を埋めて来た。  
舌が、まだ未発達な裂け目にベロベロといやらしく絡み付いてきた。  
「う・・・!うぅっ・・・!」  
詞の顔は苦痛にゆがみ、体はバタバタと捻られた。  
(キモチワルイ・・・・・・)  
今まで感じたことの無い、異様なまでの不快感が詞を襲った。  
まるで、虫やトカゲやヘビが全身に入り込み、蠢いているような、そんな不快感だった。  
「フフフ・・・詞・・・」  
ひとしきり詞の裂け目を蹂躙した父は、体を起こし、いやらしい目つきで詞を覗き込んできた。  
「いやがってる割には気持ちいいんだろう・・・」  
「ち、ちがう・・・」  
「嘘をつくな。オマエのお○○コからいやらしい液がドロドロ出てきてるぞ。」  
「なに・・・?なに・・・・・・?」  
「これは気持ちいい証拠だ。口では嫌がっていても、体は全然嫌がって無いんだぞ。全く・・・いやらしい奴だなオマエは・・・」  
そう言うと、父は右手の人差し指で詞のドロドロとした部分をいやらしく弄ってきた。  
ゾワゾワとしたイヤなものが、詞の背を駆け抜けた。  
(なんなの・・・?これが「キモチイイ」の・・・?うそ・・・!うそ!!)  
詞の頭は混乱した。  
いや、むしろ混乱しすぎて何も考えられなくなっていた。  
(でも・・・キモチイイの?キモチワルイの?どっち?わたし、どっちなの・・・?わたし・・・・・・ねぇ!どっちなの・・・・・・!?)  
幼い詞には、もはやこれ以上の混乱を収拾つけることは出来なかった。  
全身から、力が抜け去った。  
 
「大人しくなったか。いい娘だ。」  
そう言うと父は、あの醜い物体を詞の裂け目に押し当ててきた。  
「え・・・・・・?」  
何が始まるのか、何が待ち受けているのか、幼い詞には見当すらもつかなかった。  
次の瞬間、詞の下腹部を激痛が走った!  
「ぅあああああああぁぁっっ!!!!」  
何が起こったのか、理解できなかった。  
ただ、全身を引き裂かれるような激しい痛みだけが、詞には感じ取れていた  
「フフフ・・・流石に縁よりはキツいな・・・」  
不適にそう笑むと、父は体を大きく動かしてきた。  
その度、激痛が詞の体を走りぬけた。  
事ここにいたって、詞はようやく今の状況が理解できた。  
いや、理解できたというより、嫌でも伝わってきたというべきか・・・  
(はいってるの・・・?わたしのなかに・・・?おとうさんの・・・・・・”あれ”が!!!!)  
 
「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」  
詞の体の奥から、そんな叫びが搾り出されてきた。  
まるで心が引き裂かれるかのような、そんな叫びだった。  
「いやっ!!いやっ!!」  
「いいぞ詞・・・その顔だ・・・もっと叫べ!わめけ!」  
「やだ!!いたいよ!!ぬいて!!ぬいて!!・・・・・・おとうさん!!」  
「無駄だ!何を言っても・・・誰もオマエを助けちゃくれないさ・・・」  
「そんな・・・!いたっっ!いたいっ!!・・・やだ!!やだあああぁぁっっ!!!!」  
だが、そんな叫びも無駄だった。  
詞が叫び声を上げれば上げるほど、父はより速く、激しく詞を蹂躙してきた。  
世界一嫌いな男に無理矢理ねじ伏せられ、世界一醜いものをねじ込まれ、体を引き裂かれる・・・  
そして、それを止めてくれる人間は誰もいない・・・・・・  
何と言う地獄!!  
何と言う絶望!!!!  
(ダレモ・・・タスケテクレナイ・・・・・・)  
もう、詞は抵抗すら出来なくなっていた。  
今はただひたすら、この地獄の責め苦のような現実が通り過ぎるのを待つしかなかった。  
(イタイノ・・・?イタクナイノ・・・?ナニモイエナイノ・・・?ドウシテ・・・?ワタシ・・・・・・)  
 
「フフフ・・・やっと大人しくなったか・・・」  
「・・・」  
「いい!・・・詞の中・・・いいぞ・・・縁よりも・・・」  
「・・・・・・」  
「うっ!出る!」  
「・・・・・・・・・」  
「私からのプレゼントだ・・・受け取れ!!」  
「・・・・・・・・・・・・!!!!!!」  
父の体が激しく動いた。  
どうなっているのか、詞には全く分からなかった。  
ただ、父に蹂躙された部分に、何やら生温かい感触が広がっていっていることだけは感じ取れた。  
それが何を意味するのか、幼い詞には想像すらもつかないことだった。  
 
「ふぅ・・・よかったぞ詞・・・・・・」  
父は立ち上がり、ローブを羽織った。  
ベッドの上には、服を裂かれ、下半身を蹂躙され、虚ろな目で虚空を見つめる詞がいた。  
「フン・・・オマエみたいな娘にも、取り柄はあったんだな・・・」  
「・・・・・・」  
何も聞こえなかった。  
ただ、体の中に残る痛み、そして、下半身から垂れ流れてくるネバネバとした不快感だけが感じ取れた。  
「聞こえないのか・・・フン、まぁいい・・・・・・」  
父はそう言うと、詞を見下してこう言い放った。  
「だが、これだけは覚えておくんだな。オマエは私の娘だ。もう一生、私から逃れることは出来ない・・・・・・」  
そう言うと、父は部屋を出て行った。  
 
「・・・・・・」  
詞は、しばらく動けなかった。  
下半身に残る鈍い痛みが、今起こったのはまぎれもない現実であるということを突きつけてきた。  
やがて体を起こし、自分の体を見つめた。  
ジンジンとした痛みの元から、真っ白く粘ついた液体が止め処なく溢れ出し、恐らく体を裂かれた時に出来たのであろう傷から出てきた赤い血液が、その中に混じっていた。  
(ヨゴレタノ・・・?ワタシ・・・ヨゴサレタノ・・・?オトウサンニ・・・カラダノナカヲ・・・・・・)  
吐き出しそうだった。  
せっかくのクリスマスの豪華な食事も、甘いケーキも、口の中から全て吐き出されそうな、そんな不快感が詞の中に充満していた。  
(ヨゴサレタ・・・ワタシ・・・ヨゴサレタ・・・・・・!!!!)  
次の瞬間、その不快感が口を通って体外に迸った。  
「うえっ!!」  
ベッドから落ちていた赤い靴下に、詞から迸ったものがベットリと降りかかった。  
「うえっ!!うえぇっ!!」  
詞の腹の奥に沈殿していた不快感の塊が、詞の口を通って次から次に床に迸った。  
止めようと思っても、次から次に体の奥底から湧き上がってくるこの言いようもない不快感を、もはや押し留めることはできなかった。  
赤い靴下は、見る間にその不快感の塊の中に沈んでいった。  
あれだけ楽しみにしていたクリスマスが、こんな最悪な形で汚された・・・・・・  
突きつけられた現実は、幼い詞にはあまりにも過酷で、あまりにも無残で、そして、あまりにも残酷だった。  
 
ふと、机の上の鏡を見てみた。  
そこに居たのは、髪が乱れ、頬が腫れ上がり、口の端に少しだけ血が滲んだ、虚ろな目をした少女だった。  
(アナタ・・・ダレ・・・・・・?)  
分からなかった。  
(ダレ・・・アナタ・・・ワタシ・・・?アタシ・・・?)  
やがて、鏡に映った少女の虚ろな目から、ボロボロと涙が溢れ出してきた。  
(ワタシ・・・わたし・・・・・・)  
その時、そこに居たのが誰なのか分かった。  
「あ・・・う・・・ぅああああああああああぁぁぁぁっっ!!!!」  
詞は、そのまま床に跪いた。  
「あああああぁぁぁっっ!!うぅああぁぁああぁあぁぁああぁぁっっ!!!!!!」  
詞は汚された自分の体を抱きしめ、激しく叫んだ。  
まるで魂の奥底から搾り出されているような、そんな悲痛な叫びだった。  
(うそ・・・うそよ・・・こんなの・・・こんなのわたしじゃない!!)  
詞は、もう一度鏡を見た。  
そして、その鏡に映る虚ろな目をした少女に話しかけた。  
「そうよ・・・これはわたしじゃない・・・わたしは・・・もっとつよいの・・・・・・」  
詞は、そのまま鏡から目をそらした。  
まるで、今起こった現実から目をそらすかのように・・・。  
「ふふふ・・・そ、そうよ・・・。わたしはこんなによわくなんてない。そうよ・・・”私”は強いの・・・!」  
詞の口から、力の無い笑いがこぼれ出してきた。  
「はははは・・・・・・そうよ・・・私は強くなるの・・・強くなって、お姉ちゃんもお母さんも、お父さんも見返すの!・・・そうよ・・・そう!!」  
詞は、まるで取り付かれたかのように笑いつづけた。  
「ははははははは・・・そうよ・・・私は”私”よ・・・。こんな弱っちい”わたし”じゃない!もっともっと強くて、もっともっとみんなが認めてくれる・・・・・・」  
だが、その声には全く感情が篭っていなかった。  
「そうよ・・・。あんたみたいな弱虫、私じゃない!私、強いの!誰よりも強いの!そうよ・・・ははは・・・はははははははははは・・・・・・」  
暗く冷たい部屋の中で、ただ少女の虚ろな笑い声だけが、空しく響いていた・・・・・・  
 
 
そして、少女は仮面を纏った。  
 
傷ついた自分を捨て去るため。  
 
心と体に受けた残酷な傷を覆い隠すため。  
 
そして、理不尽なまでの圧倒的な力に、自分自身を押し潰されないため・・・・・・  
 
 
 
絶望に満ちた日々が、今始まる・・・・・・  
 
 
 
<END>  
 

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