この世には
弱者強者がいる
僕はあながち前者
いつも強いものに
いじめられ
又強いものに守られる
僕は弱い人間だ
強くなりたい
誰にも負けない強さを手に入れたい
そして全てを消し去りたい…
ミーンミンミンミンミ…
季節は夏だ。
僕は 朝いつものように登校していた。
そばから黄色い笑い声と ギャハギャハ笑う声が聞こえる…
その中の金髪の男がこっちに向ってきた
僕はアイツを知ってる勿論アイツも僕を知ってる。
僕は逃げようと踵を返そうした。
と…すると 誰かにぶつかってしまった。
「いたっ… ん どうしたヒロ」
叶くんだった
「まてよ広瀬ー!」 金髪の男が声を掛けてきた
すると「お前ら またヒロを…」
その一言からまた始った 喧嘩が始った
僕は一方的に殴られた叶くんも大して強いわけじゃないけど
なんとか警察がきて僕らは逃げて事は済んだ。
「いってぇなぁ ったく アイツら 今度あったら 蒲焼きにしてやる」 とワクワクしながら話す叶くん
僕は相変わらず
そして決まりごとのように 笑って辛いことを隠すために笑っていた。
僕にも力があれば…
変わりたい 変わりたいよ 僕は… そんな気持ちがユラユラと
痛みがつたう体の中に漂っていた
僕たちは
叶くんにとって姉さんである、また僕らにとっては 保健室の先生である女の先生がいる
保健室に向った 勿論治療の為だ
「っつぁ…」
「また喧嘩?懲りないわねぇ あんた体をもっと大切にねぇ……」
と兄弟喧嘩が始った
また喧嘩だった
僕はポツンと 治療の順番が来るのを 外を眺めながら待っていた
ガラッ
「太輔!広瀬くん また 喧嘩なの?」
定例の如く 僕らの幼馴染みである 彼女がきた。
「んだよメグか」
不機嫌そうな顔でうなだれながら治療を受ける叶くん
「広瀬くんの治療あたしがやっていい?」
彼女は 僕にとって掛け替えの無い存在だ
彼女は一人泣いていた僕に手を差し延べくれた
未だ その優しさは変わってない
彼女の名を落合恵といった
彼女とは小学生ね入学式で出会った
お母さんのいない 僕を 優しく見てくれる
「広瀬くん いっつも大丈夫?」
「ああ大丈夫だよ それに叶くんも助けてくれるし…でも僕がもっと強ければ…」
そうだ僕は強くなりたいんだ
こうやって周りに助けられてばかりいるのは御免だ。
すると彼女は
「そうかな 広瀬くん 充分強いと思うなぁ…」
叶くんの姉さんは 微笑ましくこちらを見ている 叶くんも大人しくなった
「確かに肉体的には強くないと思うけど 広瀬くんはなにをやられても絶対やり返さないよね それって傷付く壊さを知ってるからできることだよね…そんな強い子そんなにいないよ?」
なんだか涙がでてきた
「な〜に泣いてんだよヒロ?」
と気さくに声を掛けてくる叶くん
僕はとっさに言った
「さっき殴られた鼻が痛くなっただけだよ!」と。
僕は この人達に出会えてよかった。
なにより彼女の優しさ僕を何より理解してくれる 心地よさが堪らなかった。
夏休みに差し掛かったころのある日
僕は体の気分がすぐれず 保健室に向っていた
というのも口実で
ただ保健室が居心地がいいので 保健室に居たいだけの理由に過ぎなかった
そして彼女に会って 同じ空気を吸える唯一の空間なんだ
ガラッ
「あれ?ヒロシくんどうしたの?」
なぜか彼女が一人でいた
というより 言うべきことがひとつある
「広瀬だよ…」
沈黙だった
顔を心なしか紅く染めた彼女は 可愛かった
「あれ?叶くんとお姉さんは?」
「二者面談みたいよ」
「なんでこの時期に?」
僕は聞き返した
彼女はニヤニヤしながら言う
「さぁてねぇ…」
なんだか不思議だった
そのこともなんだか気になるけど
僕は落合さんがもっと気になる
彼女は鼻歌まじりに外を眺めている
なんだか気まずい
いつもは叶くん
落合さん
僕の三人
で行動しているからだろうか
いつもと流れる空気が違う
「…広瀬くんは毎日楽しい?」
無理やり話題を作ってくれたのだろうか
普段はしないような会話だ
なんだか心苦しい
よく見ると彼女は叶に対する態度と目が
僕に向ける視線態度とまったく違うときがある
それは 僕に対する特別な視線なのか
それとも叶くんだけにしかみせない視線なのか
分からない
ただ言えるのは
彼女は僕を手の掛かる幼子のようにしか見て無い
だから 「ほっとけないんだよね」 なんて言葉がでてくるんだ
そんな感覚まるで親と子供じゃないか
僕らは対等にはなり得ない?
やっぱり僕には力がないから?
しっかりしてないから?
「ちょーっと 広瀬くん聞いてる?」
「えっ あぁ…うん」
「毎日か…楽しいよ そりゃ辛いこともあるけどさ、なにより僕は…」
言いたいことが寸前まで きた
だけどためらった
言ってしまったらこの三人の関係は崩れるんだ
今までとは違うまったく別のものに成り代わる
やはり恐れているんだ弱いから…
『広瀬くん 強いと思うよ』
ふとあの言葉が過ぎる
そうだやはり彼女は僕を理解してくれる唯一の人…
だから伝えなくては この気持ち