大魔城は地下深く、まるでRPGのボスキャラが待ち構えて  
いそうな一角に不釣合いな畳敷きの部屋。  
なにを隠そう魔王領総帥小野寺剛士閣下の寝所である。  
別に魔王の居城だから地下に私室があるのではない。  
目下ワルキュラ市は戒厳令どころか戦場真っ只中なのだから  
しかたがない。いつお空からペガサス空中騎兵の編隊が襲って  
来るか分からない現状では当然の警戒なのである。  
もちろん魔王領首脳部としては最重要人物である総帥閣下に  
戦地に留まって欲しくはない。エアフォースワンならぬ  
ズウのお友達に乗っけて安全な場所で指揮を取ってもらいたいし、  
戦術ジン・ネットのお陰で遠方からでも十分指揮がとれるのだが、  
そこは剛士君、総帥自ら危険な戦場に踏みとどまることで  
魔王領民の模範となり一層の戦意高揚を、という訳ではなく、  
ただ単に自分一人が安全な場所に逃げるのが恥かしかったのである。  
もっとも<ヤヌス>計画の実務面はアーシュラちゃんはじめとする  
魔王軍のみんなががんばってくれているので剛士君がすべき  
仕事はそれほどない。大魔城には徹夜で働いている人もいれば、  
城下のワルキュラではそれこそ命がけで戦って、今この時にも  
死んでいく兵隊さん達がいるが、それでも今の剛士君の仕事は  
ゆっくり眠って万全の体調を整えることなのである。  
 
「あぶぶぶぶぅ。」  
布団にくるまり、指を咥えて悶えているのが主人公だったりする。  
剛士にとって夜は辛い時間になっていた。周りに人がいる時は  
総帥らしく体面を保つこともできたが、夜一人で布団に入ると  
色々なことが込み上げてくる。休むように言われてもすんなりと  
割り切れるものではない。布団にくるまり眠れない夜を過ごす  
毎日なのである。  
埒のあかない考えに没頭していた為に、部屋に入ってきた気配に  
気づくのが遅れた。  
(スフィア?)  
何か問題が起きたのだろうか? 疲労に淀んだ眼をこすりながら  
布団から這い出る。  
ぼんやりとした精霊光に包まれた室内にメリハリの利いた  
シルエットが浮かび上がる。剛士よりも大分上背がある、  
優美な曲線を描いた人影。  
「え? フィラさん? どうしたの。こんな時間に?」  
「フフフ。決まっておろう。女が恥を忍んで殿方の寝所を  
 訪れてきたのだぞ。状況を考えよ。夜這い以外にあるまい?」  
上体だけ起こした剛士の目線に合わせるべく、四つん這いに  
なって顔を近づけるフィラ。互いの吐息が触れ合う距離にまで  
近づく。エメラルドの瞳が強く輝き剛士を射抜く。  
「えええ!? それ、普通は逆でしょ! 夜這いって  
 男の人の方からいくものであって、その、フィラさん?」  
「おお。判っているではないか! お前様が私の所へ  
 来ないので、仕方なくこちらから行くことにしたのだよ。」  
躊躇せずに布団に手を掛け、剛士の隣に潜り込む。  
 
スフィアの事がムニャムニャで、アーシュラの事もアレな  
のだが、フィラに対しての感情というのもまた別なのである。  
あのワルキュラでの一夜の思い出が剛士の脳裏に蘇る。  
剛士としては恥かしい記憶なのだが、あの夜、剛士は確かに  
ヒーローでヒロインはフィラだった。いささか流された感はあるが  
情熱的な口づけも交わした。その相手が自分の隣、肌の温もりが  
伝わる距離にいるのだ。  
抑えきれない感情の昂ぶりはどうしようもない。  
「フィ、フィラさん。・・・ホントにいいんだね?」  
「うむ。いつでもよいぞゴーシ。さあ、来てくれ。」  
震える腕をフィラの肩に伸ばし、引き寄せる。  
柔らかい。薄衣ごしに伝わる肌の弾力に鼓動が跳ね上がる。  
軽く唇を触れさせる。こういう時は目を瞑るものかと  
思っていたが、フィラは僅かに細めただけで、剛士から  
視線をはずさない。  
「フィラさん・・・震えてる?」  
「うむ。まあ私もこういう事は初めてだからな。侍女達から  
 一通りのことは聞いて知ってはいるが、やはり緊張するようだ。」  
「できるだけ痛くないようにするけど、うまく出来なかったらごめん。」  
もう一度唇を寄せる。先ほどよりしっかりと密着させ、  
恐る恐る舌を差し出す。柔らかい感触が応じ、しばしの間  
互いの舌を絡めあう。フィラの柔らかく弾力のある双球が  
布地ごしに押し付けられる。  
「フィラさん・・・」  
僅かに身体を離し、視線を下げる。ほんのりと紅く色づいた  
豊かな谷間が視線を吸い寄せる。  
 
自分で言うのもなんだが、身体には自信がある。  
 むろん全てゴーシのものだ。好きにして良いのだぞ。」  
右手で夜着の帯を解き、白磁のごとく肌理細かい肩を  
露わにする。左手で胸を抱き、谷間を強調しつつも、  
全ては晒さない。  
剛士の右手がフィラの左手を押しのける。露わになる裸身。  
精霊達が剛士の昂ぶりに応じ、精霊光がフィラの姿を照らし出す。  
成熟した女の色香が匂いたつ、完成された曲線。  
普段から意識せざるを得なかった豊満な白球と、  
想像の中だけの存在だった、その頂を彩る桜色の色彩。  
「フィラさん!」  
もはや止めるものはない。いささか性急にすぎるが、  
フィラの胸に、未知の領域に、飛び込む剛士。  
抵抗せずに押し倒されたフィラが、己の胸乳に顔を  
埋める剛士の頭をそっと撫でる。  
「ああ! フィラさん! フィラさん!! フィラさん!!!」  
乱暴に顔を擦り付け、柔らかく包み込む柔乳を堪能する剛士。  
 
その時  
 
 

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