榎木拓也の様子がおかしい。
中西亜由子はベッドの中で、ここしばらく感じていた疑問を考えてみた。
心ここにあらずといった感じで歩いている事もしばしばだ。
そうかと思うと、妙にそわそわしていたりもする。
さらに放課後もふらっとどこかへいなくなってしまう。
どうやら放課後に原因がありそうだ、と考え出したのは数日前からだ。
拓也の様子がおかしいのも、放課後どこかへいなくなるのも、夏休みが明けてから起こった変化だからだ。
よし、明日の放課後、後をつけてみよう・・・
亜由子はひそかにそう決意すると、眠りについた。
翌日の放課後、亜由子は授業が終わるとすぐに拓也のいる教室へと向かった。
まだ拓也はゴンたちと教室にいた。
大半の生徒が帰り支度を終えて下校しようとしている。
その様子を廊下からうかがう亜由子。
「拓也、一緒に帰らないか」
「先生に仕事頼まれちゃって・・・ごめんねゴンちゃん」
「そっかー。俺も手伝おうか」
「い、いいよ、すぐ終わるから」
ゴンの申し出に拓也は少し焦った感じで返事をした。
幸い、ゴンは怪しむ事もなく納得したようだった。
「わかった、じゃあ頑張れよ」
「うん、じゃあね」
ゴンを見送った拓也はほっとした様子を見せると、続いて教室を出た。
(やっぱり怪しいわ・・・何か隠し事でもしてるみたい)
亜由子は拓也の少し後を追跡し始めた。