「ね、さっき話したやつ、見せて?」  
夕食が終わって愛の部屋に入ったしな子は、早速さっき話題にのぼった下着の件を切り出す。  
「ちょっと待って…はい、これ」  
そう言って愛が差し出した物を見て、しな子は思わず絶句してしまう。  
「…………これを、榎木君が選んだの?」  
目の前にあるそれは、しな子の想像を遥かに超えたデザインだった。  
思わず手にとって引っ張ってみると、  
圧倒的に面積の少ないそれは生地の薄さと相まって、  
ほんの少し左右に広げただけで向こう側にある愛の顔がはっきりと見えてしまう。  
「透けてる…」  
愛はしな子が自分と全く同じ反応をしている事に思わず笑ってしまう。  
「何?」  
「ううん、私もね、最初見た時深谷さんと同じ事したから」  
「だって…これ、ほとんど何も履いてないのと同じじゃない!」  
しな子はそう言いながら、まだ下着を離そうとせず、  
いろんな方向から眺めたり透かしたりしている。  
「気に入った?」  
「え? う、ううん、その…ね、槍溝さんはもう履いてみたの?」  
「まだよ。さすがに学校にはちょっと…ね」  
少し照れたようにはにかんで笑う愛の顔が可愛くて、しな子はなんとなく目線をそらせてしまう。  
視線をさまよわせていると、視界に写真立てを見つけたしな子は、立ちあがってそれを手に取る。  
 
「これ…いつ撮ったの?」  
「修学旅行の時」  
そこには、恐らくバスの中だろうか、口を少し開いて眠っている拓也の寝顔が写っていた。  
「え、だって…槍溝さん、クラス違う…」  
「後藤君に撮ってもらったの」  
「そうなんだ…いいなぁ…」  
しな子は心底羨ましそうにため息をこぼす。  
確かにそれは、大抵の女性なら胸をときめかせるに違いない、天使のような寝顔だった。  
「欲しい? フィルムごと貰ったから、焼き増しも出来るけど」  
「うん!」  
即答するしな子に、愛はやや気圧されたように頷いていた。  
しな子はその後も本棚などを物色していたが、やがて寒そうに軽く身震いする。  
「寒いの?」  
「…少し」  
「湯冷めするといけないから、もう布団の中に入っちゃいましょう」  
そう言うと愛は自分からベッドに潜りこんでしな子の場所を空けてやる。  
「う、うん…」  
しな子はわずかに興奮を覚えつつも、愛の招きに応じてベッドに横たわる。  
いくら二人が小学生といっても、シングルベッドに横に並んで寝るのは少し無理があって、  
かなり身体を密着させないと落ちそうになってしまう。  
しかし、愛もしな子もむしろそれを楽しむように無言で身体を押しつけてしばらくの間じゃれあっていた。  
 
「あ、これ」  
ひとしきり遊んだ後、しな子はふと枕元に目をやるとそこに一冊の本を見つける。  
それはしな子が買うようになった雑誌の増刊号で、「過激な体験特集号」と派手な字で銘打ってある。  
「槍溝さん、こういうの買うのって…、その、恥ずかしくないの?」  
中を開きたい欲求に駆られたものの、愛に笑われてしまわないかと不安なしな子は、  
気持ちをごまかすように表紙を指でなぞりながら愛に尋ねる。  
「恥ずかしかったわよ。顔から火が出るかと思ったくらい」  
(…でも、槍溝さんって表情あんまり出さないからなぁ)  
しな子は軽く眉を寄せて愛が買う所を想像しようとしたが、どうしても思い浮かばないので諦める事にした。  
あまり興味を持っていないように装いながら、さりげなく表紙をめくると、  
その瞬間を待ち構えていたかのようなタイミングで愛が口を挟む。  
「それ、まだ私も買ったばっかりであんまり読んで無いから、一緒に読みましょうか」  
「え…うん」  
二人は肩を寄せて、あれやこれやと騒ぎながらページをめくっていく。  
「拓也くんのって…どの位の大きさだったかしらね」  
愛が記事を指差しながらしな子の方を見る。  
「え…えっと…」  
反射的にしな子が思い浮かべようとすると、  
「あ、今想像したでしょ」  
「もぅ!」  
まんまと引っかかったしな子は耳まで赤くして愛を軽く押す。  
「照れない照れない」  
「う〜〜」  
枕を抱えるように突っ伏せるしな子が可愛らしくて、  
愛はそっと肩に腕を回すと、指先にわずかに意思を込めてこちらを向かせる。  
しな子は、ほんの少しだけ怒っていたが、  
頬に指先を通して気遣う気持ちが伝わってくるのを感じると、すぐに機嫌を直して向きなおる。  
無言のまま愛がしな子の手を握り締めると、それをきっかけにどちらからともなく目を閉じて、  
ゆっくりとキスを始める。  
 
「ん…」  
愛が舌を伸ばしてくると、しな子も愛の腰に手を回して迎え入れる。  
しな子の口の中に甘い感触が広がっていき、うっとりと身を任せかける。  
(いけない、今度こそ)  
頭の片隅に風呂場で自らに誓った事を思い出すと、機先を制するように愛の方にのしかかる。  
そのまま愛の上になると、愛が驚いたように目を丸くする。  
「どうしたの? 今日は随分積極的じゃない」  
しな子は答えようと口を開きかけたが、愛の前髪が少し乱れて額に張りついているのを見ると、  
たまらなくなって再び愛の唇を吸い上げる。  
愛の口腔に入ってきたしな子の舌はまだまだぎこちない動き方しか出来なかったが、  
情感に溢れていて、かえって自分の思うとおりにならないもどかしさに愛は興奮を覚える。  
自分から舌を絡めていきたい誘惑に耐えながら、しな子の舌に身を委ねていく。  
次第に背筋をぞくぞくとした物が走り始めて、愛はわずかに背を浮かせながらその快感を味わう。  
(してもらうのも…結構、気持ちいいのね)  
そんな事を考えながら、愛は下から手を伸ばしてしな子のパジャマのボタンを外そうとするが、  
意図に気付いたしな子に両手を掴まれて頭の上に押しつけられてしまう。  
身動きが取れなくなってしまった愛は、軽く目を細めてしな子の顔を見るが、  
しな子はその視線を軽くかわすと、首筋に吸いつく。  
「んっ…」  
唇の先だけで挟みこんで、やわやわと口を動かす。  
強弱をつけながら少しずつ耳の方へ唇を寄せていくと、それにつられるように次第に愛の顎が上がりはじめる。  
ほつれたように首筋に残る髪の毛ごと口に含むと、  
シャンプーしたばかりの甘い香りがしな子の鼻腔をくすぐる。  
「槍溝さん…髪、きれい……」  
顔を起こしたしな子は、そっと愛の髪を梳きあげながら呟く。  
その途端、愛は突然腕で顔を覆ってしまう。  
 
「な…なに? あたし、何か変な事言った?」  
「ううん、その…」  
いつもの愛らしくなく、そこで口篭もってしまう。  
「なんだか、嬉しいっていうか…」  
「……」  
「そうやって褒められると…恥ずかしいのよ」  
目元をほんのりと赤く染めながら、消えいるような声で告白する愛。  
その告白を聞いた途端、しな子はたまらなくなって愛の頬に顔をすりつける。  
「な…なに?」  
「槍溝さんが、すごく…可愛いから」  
愛はその言葉にくすぐったそうに首をすくめるが、  
しな子は構わず頬に軽く口付けると、そのまま顔中にキスを浴びせる。  
「ちょっと、深谷さん…んんっ」  
抗議しようと開いた口も塞がれて、奥深く舌を差し込まれてしまう。  
愛はわずかにためらったものの、すぐに舌を伸ばしてしな子に答える。  
 
長いキスの後、舌が離れると、顎の端に糸を引かせたまま、愛が囁く。  
「深谷さんって、キス…好きなのね」  
「うん……槍溝さんは…嫌い?」  
「……いいえ」  
その言葉を口にすると同時に、再びしな子に唇を奪われてしまう。  
より激しく求めてくるしな子の舌と絡み合って音を立てる度に愛の頭の中が痺れていき、  
身体から力が抜けていく。  
さっきまでのキスの余韻がまだくすぶっている舌を、しな子は容赦無く吸い上げる。  
 
愛は流石に苦しいのか、少しでもしな子の舌から逃がれようとするが、  
すっかり蕩けてしまったのか、身体が言う事を聞かず、ほとんどなす術なくしな子に弄ばれる。  
(ぅ……ぁ…、キ…ス、こんな…気持ち、いいなんて……)  
しな子の唾液が流れ込んできて、自分のそれと混ざりあう。  
(深谷さん…の……)  
首筋が羞恥に粟立つのを感じながら、ゆっくりとそれを飲み下す。  
その音は、しな子の耳にもはっきりと届いていた。  
(今、もしかして、槍溝さん…あたしの…つば、飲みこんだ…?)  
そう考えた時、しな子の頭の中で嬉しさと恥ずかしさがひとつになって一気に爆発する。  
愛が息も出来なくなるほど強く舌を吸い上げると、しな子は夢中になって愛の舌を貪り続けた。  
 
「槍溝さん…」  
ようやくキスを止めたしな子は、愛の両頬に手を添えながらそっと囁く。  
「……」  
しな子の呼びかけに、愛は焦点の合わない瞳でしな子を見つめる。  
その表情にしな子は自分でもどうしてよいか判らないほど興奮して、愛の胸元に手を置く。  
「もっと…してあげるね」  
返事を待たずにパジャマの上から胸の膨らみを撫でる。  
微かに手触りが違う所に気が付くと、そこを集中的に責め始める。  
「っん、ん……」  
散々キスで感じさせられた愛は、軽く触られただけですぐに甘い声を上げてしまう。  
服の上からでも硬くなり始めたのを感じ取ったしな子は、  
直接見たい欲求に駆られ、二つだけボタンを外して、手を滑りこませる。  
汗で湿った掌に、陶器のように滑らかな肌が吸いついてくる。  
すぐに小さな頂を捉えたしな子は、爪先で軽く引掻く。  
「っ……ん…」  
愛が短く声を上げると、それに呼応するように乳首が硬さを増していく。  
初めて触れる他人の乳首を、しな子は興味深そうに指先でつまんで弄び始める。  
 
「ん……………っぁ、…ぅ…」  
しな子より成長が早い分、性感も発達しているのか、  
胸を触られるだけでも身体中を電流のように快感が走りぬける。  
「…気持ち…いいの?」  
しな子は普段愛が尋ねる時のように静かに、羞恥を煽るように話そうとするが、  
声が上ずってしまう。  
「……ええ…」  
それでも、愛は充分に恥ずかしかったのか、少し返事をためらった後に小さく答える。  
「じゃ、続き…するね…」  
しな子は更にボタンを外すと、果物の皮を剥くように襟を大きくはだけさせて胸を露出させる。  
肌の色に溶け込んでしまいそうな淡い桃色の乳首は、硬く尖る事でかろうじてその存在を主張している。  
呼吸に合わせて緩やかに波打つそれを、いとおしそうに撫で上げると、愛が手を重ねてくる。  
しっとりとした汗を手の甲に感じながら、そっと掌で乳房全体を覆う。  
気持ち良さそうに目を閉じる愛に、しな子は柔らかな愛撫を加えていく。  
「あ……ん……」  
もう片方の胸に顔を寄せると、舌先で乳首を突つく。  
目を閉じていた愛は突然の濡れた感触に驚いて、思わずしな子の手をぎゅっと握ってしまう。  
「や、んぁ、それ………」  
舐めた事はあっても、舐められた事は初めての愛は快感の大きさにとまどったように声を上げる。  
(すごい…気持ち良さそう…)  
愛の反応に気を良くしたしな子は、口を大きく開いて愛の乳房を本格的に吸い始める。  
自分が愛にされた時の事を思い出しながら、蕾を舌で転がし、軽く歯を当てながら吸いたてる。  
「……っふ…………んぁっ、や……」  
 
愛の足の間に自分の膝を割り込ませて、股間に押しつける。  
ほんの少し力を込めるだけで、しな子の膝に熱い感触が伝わってくる。  
「槍溝さん…膝…熱いわ…」  
愛はしな子の意地悪な言葉にも感じてしまうのか、うっとりとした目でしな子の方を見ると、  
更に膝に押し付けるように腰をずらす。  
しな子がパジャマを脱がせようとすると、さりげなく腰を浮かせて手助けをする。  
露になった薄い桃色の下着は、しな子が恥ずかしくなってしまうほどぐっしょりと湿っていた。  
下着に手をかけて、少しずつ降ろしていくと、  
もう擦れるだけでも感じてしまうのか、太腿を喜びに震わせながら吐息を漏らす。  
しな子は、うっすらと陰毛が生えている愛の股間に、吸い寄せられるように顔を近づけていく。  
「………」  
まじまじと自分の性器を見つめるしな子に愛は今更のように足を閉じようとするが、  
ほとんど力は入らず、しな子に逆に両太腿を抱え込まれてしまう。  
「こんな風になってるんだ…」  
まだ襞も広がっていない、薄いピンク色をしたスリットは、  
ときおりひくひくと蠢きながら新たな蜜を溢れさせている。  
少し匂いが強くなってきたそこに、そっと舌で触れてみる。  
軽く触れただけでしな子が驚くほど愛の身体は大きく跳ねて、  
太腿がしな子の頭を挟みこむように内側にすぼまる。  
(今…もしかして、イっちゃったのかな?)  
しな子は聞いてみたかったが、愛の両足に頭を挟まれて顔を上げる事ができなかった。  
それどころか、愛は頭を掴むと、更に強く押しつけてくる。  
(もう少し、奥まで…)  
しな子の方にも、汚い所を舐めているという感覚は無い訳では無かったが、  
愛の感じているところをもっとみたいという気持ちの方が上回っていた。  
 
舌先をすぼめて、奥へと潜りこませる。  
生暖かい感触が愛を襲う。腰が自分の物でなくなったみたいに跳ね、ガクガクと痙攣する。  
「うぁっ…! ふか…や…さん…」  
ほとんどうわ言のようにしな子の名前を呼ぶのが精一杯で、  
頭が急速に空白に染まり、電流が走ったように身体がうねる。  
「深谷さん…も、ダメ…私……、私…やっ………やっ…!」  
絶頂に達した愛は、ひときわ大きく身体を震わせると、ベッドの上にぐったりと沈みこむ。  
しな子は愛の傍らに身体を横たえると、額の髪をかき分けてやりながら、  
ぐったりとしている愛を幸せそうに眺めていた。  
 
 
「やーりみーぞさん」  
ようやく呼吸を整えた愛に、しな子はありったけの愛しさを込めて呼びかける。  
「…なに」  
愛はすました顔をしようとしたが、その試みは半分ほどしか成功せず、  
口元から笑みをこぼしてしまう。  
「へへー…気持ちよかった?」  
しな子の問いに、愛はわずかに目線を逸らせながら口をとがらせる。  
「……深谷さんがこんなにエッチだなんて思わなかったわ」  
「そんな事言って槍溝さん、感じてる時すっごい可愛い顔だったよ」  
しな子は全てお見通し、といった風に悪戯っぽく笑うと、布団の中の愛の手を握る。  
愛はその手を強く握り返しながら、今度はどうやって先手を取ってやろうか考え始めていた。  
 
 

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