竹中七海はその日、どのようにして帰ったかほとんど記憶にない。  
深谷しな子の後を追って社会科資料室に侵入した七海は、そこでしな子と槍溝愛のレズシーンを目撃してしまった。  
女の子のように見られることの多い七海とは言え、人並みに女性に対する興味はある。  
見てはいけないのでは、という後ろめたさはあっても、結局最後まで目を離すことが出来なかった。  
そして行為が終った後、槍溝愛と目が合った。  
その目を見た瞬間、それまでの興奮もなにもかも吹き飛んでしまった。  
急にそこで見ていることが恥ずかしくなり、慌てて資料室を出た。  
教室でランドセルを取ると、家までダッシュで帰った・・・らしい。  
気が付いたときには、汗だくで家の玄関の前にいた。  
 
七海は帰宅するとすぐに自分の部屋にこもった。  
ランドセルから今日借りた本を取り出して読もうとしたが出てこない。  
どうやら気が動転していて、どこかで落としたようだ。  
焦るのだが、こればかりはどうしようもない。  
(どうしよう、今からとりに行って、槍溝さんや深谷さんに会ったら・・・)  
多分見てはいないはずなのである。  
だが、今彼女たちに会ったら、自分がどんな反応をしてしまうかわからない・・・  
(・・・仕方ない、明日学校で探そう・・・)  
七海はあきらめて、自分の持っている本を読むことにした。  
とは言え二人のことがちらついて、なかなか集中できない。  
それでも無理矢理本を読もうとするのだが・・・結局、そんなことをしてる間に、夕飯になってしまった。  
 
夕食の味もほとんど覚えていない。  
母親と何かの話をしたのは事実だが、内容も覚えていない。  
その後、七海は風呂に入ってそのまま寝てしまうことにした。  
部屋に入ると、電気を消してベッドに横になる。  
そして、布団に包まりながら今日のことを考える。  
冷静に考えてみると彼女に見えたとは思えない。  
間に書架があったし、細い隙間から見ていた。  
(たまたまこっちを向いただけだよ、きっと・・・)  
そう自分に言い聞かせることにした。  
何度も繰り返すうちに、安心してきたのだろうか。  
今度は行為そのものを思い出してみる。  
しな子と愛の肌の記憶は、まだ七海の脳裏に鮮明に焼きついていた。  
(綺麗だったな・・・)  
記憶の中で、しな子と愛のブラウスのボタンが外されていくシーンが、スローで再生される。  
二人の細い首筋と鎖骨があらわになる。  
そして――  
そこまで思い出した瞬間、七海は顔を真っ赤にして掛け布団を頭からかぶった。  
布団の中で七海は目をつぶっている。  
いけない、と思いつつも、頭の中では二人の行為がなおも続いている。  
しな子のブラウスのボタンはさらに外された。  
ブラウスの下から、パステルに彩られたチェックのブラジャーが顔を出す。  
まだ小さいながらも、その胸はわずかに膨らんで丸みを帯びており、男子のものとは明らかに違う。  
一方の愛もボタンを外されていた。  
ピンクのブラジャーの下に隠された胸は、しな子のものよりは多少大きかった。  
とはいえ、まだわずかに膨らんでいる程度なのだが。  
それでも母親以外で初めて生で目にする異性の下着姿である。  
七海にはとてもインパクトのある光景だった。  
さらに愛の指先は動き、やがてしな子のブラをずらしてしまう。  
 
ブラの下から、しな子の可愛い乳首が登場する。  
そこは既に待ちわびていたかのように、ピンと立って自己主張をしている。  
そこに愛の指先が触れるたび、しな子は声を上げながら全身を震わせる。  
官能的な表情でしな子と愛は交わる――  
七海は思い出しながら、既にかつてない興奮状態にあった。  
心臓はなんどもドキドキと早鐘を打ち、全身はどうしようもなく火照っている。  
悶々とした思いをどう処理すればいいのかわからず、七海は布団の中で何度も左右に寝返りを打った。  
「あっ・・・!」  
何度目か寝返りの瞬間、七海のペニスに初めての新鮮な感覚が走った。  
何時の間にか勃起していたペニスが、布団とわずかにこすれたらしい。  
(なんだろう、今の感じ・・・)  
恐る恐るという感じで、七海はパジャマの上から自分のペニスに手を添えた。  
「んっ!」  
ペニスから再び七海の全身に電流のような刺激が走る。  
七海は思わず声を上げてしまった。  
――エッチなこと考えながらさぁ、自分のちんちん触ると気持ちいいんだぜ――  
不意に七海は、クラスの男子が話していたオナニーの話を思い出す。  
教室での休み時間、通りがかりに聞いた話だ。  
まだそういうことに興味がなかった七海は、赤面しながら通り過ぎたのを思い出す。  
実際にはもっと詳しい話に踏み込んでいたようだが、そこまでは聞いてはいなかった。  
(もしかして、このことなのかもしれない・・・)  
そう思いながら七海は、再び半信半疑にパジャマの上からペニスを押さえてみる。  
「ん・・・!」  
再び全身に刺激が走る。  
それが気持ちいいという感じなのかは七海にはわからなかった。  
しかし、どことなくいやらしい気持ちになってくるのは自分でもわかった。  
(不思議な感じがする・・・なんかエッチな感じ・・・)  
右手をさわさわと、撫でるように動かす。  
ペニスを中心にやんわりとした刺激が全身に広がっていく。  
まだぎこちない動きだが、慣れていない刺激に七海のボルテージは確実に高まっていく。  
 
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」  
ベッドの中で身悶えながら、七海は右手を不器用に動かしていく。  
既に七海は初めて味わうこの感覚を、心地よいものとして受け止めていた。  
(今、僕は、エッチなことを・・・してる)  
その認識が七海をさらに興奮させていた。  
頭の中に再び、しな子と愛の姿が浮かぶ。  
愛がしな子を巧みに責めているシーン。  
(二人もエッチなことをしてた・・・)  
愛としな子と混じっていやらしいことをする自分の姿が浮かぶ。  
セックスに関する知識のない七海には、ペッティングがせいぜいだったが・・・  
それでも、今日の記憶と想像力が合わさって、七海の脳の中では淫靡な光景が展開される。  
「はぁ・・・あぁっ・・・」  
自分の手がしな子の胸に触れる。  
愛の指が自分のペニスを複雑に刺激する。  
「はぁ、うぅ・・・」  
声が出ては困ると、七海は夢中で手近にあった布団の布地を強く噛んだ。  
口の中にあふれていた唾液が、布地に染み込んでいく。  
しかし、今の七海はそんなものに構っている余裕はなかった。  
いつしか想像の中で七海は愛のブラジャーを外し、見たことのないはずのない愛の胸を見ていた。  
愛としな子は微笑を浮かべつつ、七海のペニスを刺激する。  
 
(あぁ、何か変、変、変っ・・・!)  
七海の絶頂は既に近かった。  
左手は布団を強くつかみ、口は布団を強くかみ締めている。  
右手がいつしか、強く押し付けられるようにして、ペニスをさすりあげる。  
真っ白になりそうになる意識の中で、しな子と愛の胸や艶めかしい表情が浮かんでは消えていく。  
「んん・・・んっ・・・!」  
そして最後の瞬間、あの槍溝愛が意味ありげな表情で七海を見据える。  
艶めかしい、あるいは謎めいた表情――  
「ぅん、ん、ん・・・んんんんーっ!!」  
(ああぁぁぁーっ!)  
その瞬間、七海のペニスが激しく脈動し、精液を噴出する。  
七海は思わぬ快楽に硬直して動くことが出来ずにいる。  
その間もドクッ、ドクッ、という続く。  
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」  
ようやく脈動が終わる。  
生温かい精液は、トランクスの中にあふれ返っていた。  
そのままペニスを伝い、お腹のあたりにあたる。  
しかし、七海はもはやそんなことはどうでも良かった。  
七海は快楽の余韻と疲労感でそのまままどろみの中に落ちようとしていた。  
落ちていく意識の中で、もう一度槍溝愛のあの目が浮かぶ。  
『全部わかってるわよ・・・』  
そんな声を七海は聞いた気がした――  
 
(続く)  
 

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