「拓也、せみとりに行こうぜ。ここだったら、カミキリムシとかもいるかもな」  
「あ、うん。待ってて、支度するから」  
「にーちゃ、みのもいくぅ」  
「実ちゃんがいくなら一加も行くわ!」  
「ぼくもいくでしゅ」  
「あーもう、ここまで来ても結局こいつらのお守かよ」  
いつもと変わらないにぎやかな声が、初夏の木々に吸い込まれて行く。  
 
「ほら実、帽子ちゃんと被って」  
「あいっ」  
「あとは・・・あ、あみとかごがないや」  
実の支度をおえて、虫取り網とかごを取りに戻ろうとする拓也にしな子が声をかける。  
「あ、あの、榎木君、ちょっとお願いがあるんだけど・・・」  
「あ、うん。ちょっと待ってて。藤井君ごめん、すぐ行くから、先に実連れて行ってくれる?」  
「ああ、わかった。ほら、一加、実連れてってやれ」  
「実ちゃ〜ん、一緒に行きましょ」  
「にいちゃぁ、にいちゃぁあ〜」  
一瞬でも兄と離れ離れになるのが嫌な実はぐずっていたが、  
一加に、半ば引きずられるように強引に連れて行かれる。  
 
「それで、お願いって何?」  
拓也がしな子の所へやって来て尋ねると、何故かしな子はうつむいたまま何も言わない。  
「・・・深谷さん?」  
それでも、拓也が再びしな子の名前を呼ぶと、  
突然、意を決したしな子が拓也に抱きつく。  
予想もしなかったしな子の行動に、拓也はしな子を受け止めきれずに転んでしまう。  
「ふ、深谷さん・・・どうしたの?」  
「榎木君・・・お願い、あたしと、・・・して、ください」  
「して・・・って、何を?」  
まるでその方面に疎い拓也は意味がわからず尋ね返してしまう。  
「だから、あの、その、・・・え、・・・・・・えっちな、こと・・・」  
耳まで真っ赤にしながらついに最後まで自分で言わされるしな子。  
「・・・!?、深谷さん、あの・・・」  
ようやく深谷が何を言っているかを理解した拓也。  
しかし、理解出来ても納得出来る訳でももちろんなく、  
かえって混乱するばかりだ。  
 
「ぼ、僕・・・皆の所へ行かないと・・・うわっ」  
拓也はその場を逃げるように立ちあがろうとするが、しな子に裾を掴まれてバランスを崩してしまう。  
どさり、と音を立ててしな子の上に倒れる拓也。  
「あ、あの・・・ごめんね、深川さん」  
今この場では悪いのは明らかにしな子なのだが、律儀な拓也はその都度謝ってしまう。  
「お願い・・・お願い、榎木君、女の子に、恥をかかせないで」  
ぎゅっと目を閉じて恥ずかしさに耐えながらしな子が言う。  
「一度だけ・・・でいいの。だから・・・だから、拓也君」  
「だ、だって、僕、そんなの、全然やった事ないし、  
それに、そういうのってもっと大人になってから・・・!!」  
最後まで言い終える前に、しな子に唇をふさがれる。  
拓也は思わず呼吸を止めて、しな子を見つめる。  
 
「〜〜!!」  
至近距離で目があってしまったしな子は、思わず再びぎゅっと目を閉じる。  
けれど、あまりに拓也の反応が無いので、うっすらと目を開けてみると  
ずっと息を止めていた拓也は顔が真っ赤になっていた。  
慌ててしな子が顔を離すと、大きく口を開けて息を吸いこむ拓也。  
その形相に、思わずしな子はぷっと噴出してしまう。  
「くすっ、榎木君、別に、キスしてる時に息したっていいのよ」  
「え、あ、そうなの? もう少しで息止まるかと思っちゃったよ」  
拓也は、いつのまにかすっかりしな子のペースに呑まれてしまう。  
「・・・ね、榎木君も、キス、初めて・・・だよね?」  
少し嬉しそうにしな子が尋ねるが、しかし、その答えはしな子の予想を裏切っていた。  
「僕、初めてじゃないんだ・・・」  
「え!?」  
「ちょっと前にね、近所の・・・お兄さんと・・・」  
当時の忌まわしい記憶が甦ったのか、涙ぐむ拓也。  
「え・・・お兄さん・・・って、男の人・・・?」  
「うぐっ、だって、だって、いきなり、されて・・・」  
「あ、あの・・・嫌な事聞いちゃったみたいで、ごめんなさい」  
「ひっく、うん、いいんだ・・・、あ、でも・・・女の子とは、今が、その・・・初めてだよ」  
「えへへ、本当? ちょっと嬉しいな。じゃ・・・こういう事も?」  
拓也の手を取ると、自分の胸に重ねる。  
「ちょ、ちょっと、深川さん・・・!」  
「まだ、全然大きくないけれど、それでもね、榎木君の事考えると、どきどきするの」  
重ねた手に力を込めて、そっと掴ませると、薄衣越しに拓也の手の温もりが伝わってくる。  
「おね、がい・・・直接、触って・・・」  
キスをした辺りから、だんだんと股間がむずがゆい感覚に襲われ、  
頭もぼーっとしてきた拓也は言われるままにしな子の服の中へと手を忍び込ませる。  
少し汗ばんでいるしな子の肌をお腹から上へと登って行くと、  
やがてなだらかな曲線を感じとる。  
しな子のそれは記憶の中の母の物とは確かに大きさが違ったけれど、  
どこかに共通する懐かしさを感じて握り締める。  
 
すると、指の腹に硬い物が当たった。指でつまんでみるが、思わず力が入ってしまう。  
「痛っ!」  
いきなり敏感な所を強くつねられて、思わず苦痛に顔をしかめるしな子。  
「あ、ご、ごめん・・・痛かった?」  
「だいじょうぶ・・・ちょっと、刺激が強かったから・・・お願い、続けて」  
「う、うん・・・」  
再びしな子の乳首を弄び始める拓也。  
今度はしな子を痛がらせないように、恐る恐る触る。  
「ぅ・・・ぁ・・・榎木君、気持ち、いい・・・」  
まだ未発達なしな子の胸は、強く、激しく快楽を伝える。  
乳首は一層硬さを増し、弾けんばかりに膨れている。  
「あ・・・榎木君、榎木君・・・!」  
身体を反らせながら拓也の名前を連呼するしな子。  
その声には微かに甘い物が混じり、それが聴覚から拓也の本能を刺激する。  
 
しばらくしな子は拓也のされるがままになっていたが、  
「あ、あたしも、榎木君の、さわってみる、ね・・・」  
そう言うと、しな子は手を伸ばして半ズボン越しに拓也の物を撫で始める。  
「う・・・ぁ・・・深川さん、そんな所、汚い、よ・・・」  
けれど、拓也の意思とは無関係に、刺激を与えられる度に拓也の物は硬さを増していく。  
「榎木君の、すごい、硬い・・・」  
まだ、自分を慰めた事の無い拓也にとっては、  
しな子のぎこちない、ただ上下に擦るだけの指使いでさえも強烈な刺激になって伝わってくる。  
「ね、深川さん・・・僕、なんか変だよ・・・お願い、やめてよ」  
拓也は目に涙を浮かべて懇願するが、それはかえってしな子の興奮をそそる事になってしまう。  
「直接、さわる、ね・・・」  
しな子はズボンのボタンを外すと、拓也の下着ごと一気に引き降ろす。  
露になった拓也の物をそっと握ってみる。  
 
「熱い・・・これが、榎木君の、・・・・・・」  
しな子の手の中から逃れるように脈動を繰り返す、拓也の物。  
なんだか直接見てしまったら勇気が逃げてしまう気がして、  
手探りのまま触り続ける。  
しな子の指先が拓也の先端に触れた時、拓也の身体がびくっと跳ねる。  
「っ!・・・ぅ、ぁ・・・」  
「ご、ごめんなさい、痛かった?」  
謝りながらも、拓也を握る手は離さない。  
拓也の先端はまだ全てが露出している訳では無かったが、  
その多くはない露出している部分に触れてしまったらしい。  
「ね、あたしのも、触って・・・」  
しな子は拓也の手を取ると、自分の股間へと導く。  
されるがままにしな子の秘所へ導かれた拓也の指先が湿り気を感じる。  
「すごく・・・濡れているでしょ。女の子は、好きな人とこうしていると、こんな風に濡れてくるのよ」  
言いながら、全く動こうとしない拓也の手を更に動かす。  
「ここが、女の子の大事な所・・・拓也君の、おちんちんが、入る、ところよ」  
周辺部をたどらせた後、拓也の中指を中心部へと埋める。  
「!・・・っふ、榎木君、お願い、少し、指・・・動か、して・・・」  
状況の異常さに思考が止まってしまったのか、拓也は、言われるままに、中指をしな子の中へと動かす。  
「ぁ、そこ・・・そう、榎木君、上手・・・」  
拓也の指が自分に触れている。そう考えただけでしな子は、自分の中から新しい蜜が溢れるのを感じる。  
しな子の秘所は、初めて侵入してきた物に対しても本能に従って締め付けを始める。  
「う・・・ぁ、深川さん・・・すごい、指、締ま・・・る・・・よ・・・」  
目の前で口を薄く開けて快感に酔いしれている切なげな顔と、  
この、獲物に噛みつく肉食獣のような下半身の動きが同じ人の物とは。  
ごくわずかに残った拓也の理性がそう思った時、拓也の物の先端から熱い液が垂れる。  
しな子のへそと茂みの間に落ちた拓也の蜜を、しな子は掬いとって興味深げに見る。  
 
「男の子も、濡れるんだ・・・初めて、知ったわ」  
少し粘り気のある、透明な色をしたそれを、しな子はそっと口に含んでみる。  
「榎木君の、味・・・」  
「深川さん、そんなの汚いよ!」  
自分の身体から出たそれが、なんなのかも判らないまま、拓也は恥ずかしがる。  
そんな拓也の表情を見て、しな子は、わざと見せつけるようにゆっくりと動かしながら  
自分の指を口に含む。  
「榎木君も・・・気持ち、良いのね・・・嬉しいわ」  
「ね、そろそろ・・・」  
再び拓也の物を手に取ると、自分の、まだ茂みとは言いづらい、まばらに生えた陰毛の辺りに押しつける。  
「で、でも、どうすればいいのか、僕、全然わからないよ」  
うろたえる拓也に微笑みながら、身体をずらして自分の入り口に拓也を押し当てる。  
「ここ・・・だから、お願い、榎木君・・・」  
「う・・・うん、いくよ、深川さん」  
言い終わらない内に、しな子の中に想像を絶する異物感と痛みが走りぬける。  
(!! 痛い・・・痛いよ、でも、痛がったら、拓也君が怯えちゃう・・・)  
必死に声を抑えるしな子は、無意識に拓也の背中にしがみついて爪を立てる。  
「痛っ・・・!」  
突然背中に感じた痛みに拓也は驚くが、それよりも、深谷に挿入した自分自身から、  
これまで感じた事の無い快感が身体中に爆発的に弾けていく。  
指を差し入れた時の感じとは比べ物にならない、直接的な、柔らかく、熱い肉壁。  
二人はお互いに抱き合ったまま、しばらく動けないでいた。  
ようやく最初の痛みが去ったしな子は、改めて自分と拓也が遂に繋がった事を認識する。  
まだ頭は大半が鈍い痛みに思考を奪われているが、  
それでも、胸のほうから込み上げてくる物に徐々に全身を満たされる。  
「あたし、拓也君と、ついに・・・ひとつに、なれたんだ・・・」  
しな子の頬を一筋の涙が零れ落ちる。  
「あ、あの、深川さん、だいじょうぶ・・・?」  
心配げに尋ねる拓也にしな子は痛みをこらえて笑ってみせる。  
「うん、だいじょうぶ・・・だから、え・・・拓也君、動いて・・・」  
瞳に涙を浮かべながら、ほのかに顔を赤く染めるしな子に拓也は不意に胸が高鳴る。  
しかし、湧きあがった自分の想いを相手に伝える言葉がまだ無い拓也は、  
結局何も言えずに、動き始める。  
 
拓也は自らの物を締めつけ、呑み込もうとするしな子の肉壁に翻弄され、  
相手の事など考える余裕も無く、ただ腰を動かす。  
「ぅ・・・あ・・・っ・・・」  
拓也の物が位置を変えるたびに、おさまりかけた鈍い痛みが突き上げるように  
しな子を襲う。  
一つの痛みがおさまる前に、容赦無く次の痛みが波のように寄せてくる。  
しかし、その痛みも、それほど長い間は続かなかった。  
「うぁ、深川さん、何か、来る・・・よ」  
既にしな子は痛みでほとんど何も考えられない状態だったが、  
それでも反射的に  
「お願い、外で、外で、出して・・・っ!」  
しな子の哀願が届いたか否か、拓也はしな子の中の自分の物を引きぬく。  
それと殆ど同時に、拓也の物から白い液が放たれて、しな子のお腹にかかる。  
「はぁ、ぁぁ、はぁ、はぁ・・・っ」  
拓也は生まれて初めての射精が強烈すぎて声も出せない。  
そのまま力が抜けてしまい、しな子の上にくずれ落ちてしまう。  
「たくや・・・君・・・」  
しな子は、拓也の頭を抱えたまま行為の余韻に浸っていた。  
 
気が付いた拓也は、しな子の上に乗っていた事に気がつくと慌てて起きあがる。  
「あ、あの・・・ごめんね、深川さん」  
「ううん・・・謝らないで。もともと、あたしの方が誘ったんだし」  
「で、でも・・・」  
「拓也君は、あたしに謝らないといけない事した、って思ってるの?」  
女の子らしい、巧みな意地の悪さで拓也を返答につまらせる。  
「そ、そんな事・・・ないけど・・・」  
「良かった。あたしこそ、ごめんなさい・・・でも、ありがとう」  
うつむいて、一語一語絞りだすように話すしな子。  
拓也の、さっきも感じていた情感が溢れ出す。  
「あ、あの・・・深川さん」  
「あの、その、こんな事しちゃったのは良くないと思うけど、  
でも、その、深川さんとまた遊べたら良いな、って思ったんだけど・・・」  
「・・・嬉しいけど、責任を感じて・・・とかだったら、あたし、あたし・・・」  
まだ感情が高ぶっているのか、言葉を詰まらせて涙を浮かべる。  
「ううん、そんな事じゃないよ。その、何て言ったらいいか、さっきとか、  
深川さんの事、かわいいって思えて」  
「・・・普段はかわいくなかったって事?」  
あまりの嬉しさに、つい憎まれ口を叩いてしまう。  
「ううん、違う、違うよ・・・その・・・」  
「う、そ」  
しどろもどろになっている拓也に抱きつくしな子。  
「嬉しい・・・嬉しいわ、拓也君」  
拓也は今度はしっかりとしな子を受け止める。  
「うん・・・これからも、よろしくね、深川さん」  
二人は自然と見つめあい、唇が近づく。  
「に〜ちゃぁぁぁ〜」  
「お〜い拓也、何やってんだ〜!」  
実と藤井の声が重なるように二人の耳に飛び込んでくる。  
「大変、みんな戻ってきちゃった!」  
「うわぁ、早く着替えないと!」  
慌てて身支度を整えると、拓也は立ちあがってちょっとためらった後、しな子に手を差し出す。  
「行こう、深川さん。」  
「・・・うん!」  
二人は遠慮がちに手を繋ぐと、玄関に向かって歩き出した。  
二人の夏休みが、今、始まる。  
 
 

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