2学期が始まり、ようやく涼しくなって来た頃。
拓也は職員室での用事を済ませて、教室へ戻ろうとしていた。
ふと、気配を感じて後を振り向くと、そこには、
今まさに拓也に逆セクハラをせんとする愛の姿があった。思わず飛びのく拓也。
「・・・良く気付いたわね」
「やっ槍溝さん! もう、いい加減に止めてよ!」
言いながら、拓也は何か違和感を感じていた。
(あれ? そういえば、槍溝さんっていつも、気配なんか出さなかったような?)
けれどもちろん、そんな疑問を口に出来るはずも無く、
そういう日もあるのかな、とむりやり自分を納得させた。
「そ、それで、何か用?」
「そうそう、それよ。先生に明日の合同体育の授業で使う用具を準備しておけって
言われたんだけど、手伝ってくれない?」
「あ、うん。そういう事ならいいよ。じゃ、一緒に行こう」
「それで、どれを出しておけばいいの?」
先に倉庫の中に入った拓也が、奥に進みながら愛に話しかける。
「・・・槍溝さん?」
返事の無い槍溝に、拓也が後を振り返ると目の前に槍溝の顔がある。
「うわっ! や、槍溝さん、いるなら返事してよ」
「榎木君」
「あなた、深谷さんと、したんですって?」
拓也の脳裏にしな子と過ごした夏の日の事が思い浮かぶ。
しな子とセックスをした事を後悔はしていないけれど、
クラスの皆と違う所に自分が行ってしまった気がして、拓也はあまり思い出さないようにしていた。
「し、したって何を?」
「何をって、それを女の子の口から言わせる気?
榎木君、さりげなくセクハラするとはなかなかやるわね」
「セ、セクハラって・・・大体、それ誰から聞いたの?」
「さあ?」
(さあって・・・藤井君は知らないはずだし、
あとあの日の事知ってるのって・・・深谷さんしかいないじゃない!
なんで人に言っちゃうんだろう・・・恥ずかしくないのかな?)
「というわけで、あたしにも、してよ」
回想モードに入っていた拓也は、愛の言葉で我に返る。
「! そんなの、出来る訳ないよ!」
「あら、どうして? 深谷さんには出来て、あたしには出来ないって事?」
「ち、違うよ、そう言う事じゃなくて」
「じゃぁ、何?」
「だって、深谷さんと、その、しちゃったのに、槍溝さんともしちゃうのは、
大人が言う浮気ってやつでしょう? そんなの絶対ダメだよ!」
必死に否定してこの場から逃れようとする拓也だが、愛は意に介した風も無い。
「あ、それは大丈夫。あたし達、お互いにちゃんと報告すれば榎木君としてもいい、って決めたから」
「決めたから、って・・・僕の意見は・・・」
「ま、いいじゃない」
まるで答えになっていない事を言って、愛はポケットからスカーフを取り出すと、
拓也に目隠しをしようとする。
「ちょ、槍溝さん、何を・・・」
「あ、これ? 気にしないで。ちょっとした、おまじないみたいなものだから。そうだ、その前に」
何の前触れも無くキスをする。
「〜!!」
実の物にも似た、柔らかい唇の感触が目を見開いたままの拓也の動きを止める。
「ん・・・」
すこし愛が顔を傾けると、愛の髪の毛が頬に触れて、ほのかなシャンプーの香が漂ってくる。
「槍溝、さん・・・」
反射的に抗議しようとした拓也は、しかし、触覚と嗅覚とに妨げられて、
出てきたのは自分の物ではないような、かすれた力無い声だった。
「ごちそうさまでした」
愛が少し悪戯っぽく笑うと、妙に大人びて見えて、拓也は思わず顔に見とれてしまう。
「ごめんね、榎木君に見つめられていると、恥ずかしいから」
そう言うと、拓也の目にスカーフを巻き付ける。
拓也の目の前が真っ暗になると衣擦れの音だけが聞こえてきて、
なぜだか拓也は胸の鼓動が高鳴るのを感じる。
「これで良し、と」
満足気に愛は言うと、そのまま、拓也の顔中にキスを始める。
ついばむように、吸い上げるように、様々なキスを、試すように続ける。
「ぁ・・・ぅ・・・槍溝、さん・・・」
くすぐったさから逃れようと、拓也は愛の顔を手で払いのけようとするが、
愛に軽く肩を押さえられただけで何故かそれ以上力が入らなくなってしまう。
「じっとしてて」
なおもキスを止めない愛は、拓也の髪に手を入れてそっと、
梳きあげるように手を入れながら、耳たぶを甘噛みする。
「うぁ・・・ぁ、くすぐったい、よ・・・」
本当は、くすっぐったい、ではなく、別の言葉があるはずなのに、
それを口にしてしまったら戻れなくなってしまうような気がして、心に嘘をつく。
「ん・・・榎木君・・・」
空いている方の手で、拓也の上着のボタンを探ると、
ひとつひとつ、拓也に今、何をしているのか教えるように時間をかけながら外していく。
一番下のボタンを外し終えると、服の内側に手を滑りこませて、
わき腹から、胸元へと撫で上げる。
愛の細い指先が、拓也の乳首に触れると、人差し指の先で軽く引っかく。
「んっ、槍溝さん・・・止めて、よ・・・恥ずかしいよ」
「あら、男の子は女の子の胸をこういう風にするじゃない。女の子は良くて男の子はダメなの?」
「それは・・・そうだけど、だ、って、僕はそんな事しないもん・・・」
拓也の必死の頼みも、愛はいとも簡単にかわしてしまう。
真っ赤になっている拓也の耳から唇を離すと、首筋に舌を這わせながら、
拓也のもう片方の乳首を目指す。
まだ体毛も少なく、女の子のように滑らかな肌を充分に堪能すると、
愛は拓也の乳首に吸いつく。
「んっ!・・・ん、あ、はぁ、ぅぅ・・・」
愛の、焦らすような、それでいて執拗な愛撫に、
拓也は声をあげてしまいそうになって、必死に下唇を噛む。
「榎木君・・・気持ちいい時は我慢しないで声出して良いのよ」
愛の囁くような声が、拓也の理性を弾けさせようとするが、
拓也は首を振ってなおも堪えようとする。
その表情を見ていた愛は、人差し指を口に当てて小首を傾げていたが、
ひとつ頷くと手早く衣服を脱ぎ始める。
突然外部からの刺激が途絶えた拓也は、大きく息をしながら事態を把握しようと辺りを見回そうとするが、
もちろん何も見えるはずも無く、本能的に不安が走る。
愛は拓也の前に立膝で跨ると、拓也の後頭部を優しく掴んで引き寄せる。
突然の愛の動きに、何が起こったか混乱する拓也の口に、
硬くなり始めた愛の乳首が押し込まれる。
同時に愛は拓也の腕を取って、あいている自分の胸を握らせる。
「これで、おあいこでしょう」
何か喋ろうとする拓也の機先を制して、
「あ、歯は立てたらダメよ。すごく痛いんだから」
思わず言う事を聞いてしまい、おとなしくなる拓也。
「そう・・・優しく、実君がママのおっぱいを吸うみたいに、吸って」
ママ、と聞いた拓也は一瞬身体を固くするが、
後頭部に添えられた愛の手と、手に触れている温かく、柔らかい愛の胸の感触と、
唇に甦る原初の記憶が、溶け合いながら拓也の心を優しく満たして行く。
(マ、マ・・・)
無意識に呟くと、おずおずと、拓也は愛の胸を吸い上げる。
「ん、榎木・・・君、そう、上手・・・っん、ん・・・」
すぐに、拓也の口の動きにあわせて愛の声が短く途切れ出す。
「ね、こっち、も・・・」
胸に置かれている拓也の手に自分の手を重ねると、愛は優しく促す。
「う、うん」
愛の手に導かれるまま、拓也の手は愛の胸をさまよい始める。
同学年の少女達の平均に較べて少しだけ大きい愛の胸は、
それでも、拓也の手の動きでわずかに形を変える事が出来る程度だったが、
初めて触れる女性の、柔らかな胸に興奮した拓也は夢中でまさぐり続ける。
「っ、ぁ・・・いい、わ、・・・っん、そ、こ・・・」
愛は愛撫を覚え始めた拓也の手を一人にすると、空いた手で拓也のズボンのボタンを外す。
「ね、榎木君、ズボン・・・脱いで」
その言葉で我に返った拓也は、急に顔を赤らめて、今まで触っていた愛の胸から手を離す。
「は、恥ずかしいよ・・・」
「榎木君」
少しだけ目を細めて、低い声で愛が言う。
思わず返事をしてしまう拓也。
「は、はい」
「あなたは今、目隠しされてるわよね」
「う、うん」
「と言う事は、今、誰に見られているか解らない。
つまり、恥ずかしがる事なんて何も無いって事なのよ」
めちゃくちゃな理屈で拓也をけむに巻く。
「そ、そんな事いった・・・うわ、ちょ、待ってったら槍溝さん!」
止める間も無く、愛は素早く下着ごと脱がせてしまう。
既に充分に硬くなって、反りあがっている拓也のモノが露出する。
慌てて手で覆い隠すが、
「榎木君」
再び低くなる愛の声。
「は、はい」
「ここまで来たらもう諦めなさい。でないと、もっとひどい事するわよ」
もっとひどい事って、今されている事以上にひどい事なんてあるのかしら。
そう拓也は思ったが、結局、愛に手を掴まれて、そのまま屹立を愛の眼前に晒す。
「これが、男の子の・・・」
初めての、しかも勃起している男性器を見てさすがの愛も言葉を失う。
それでも、やはり好奇心が勝るのか、すぐに手を伸ばして指先で触れてみる。
「う、ぁ・・・」
瞬間、拓也の身体が跳ねる。
「熱い・・・それに、こんなに硬いなんて・・・」
興味深げに、ゆっくりと擦り出すと、すぐに拓也から声が漏れる。
「っあ、やり、みぞ、さん・・・」
気持ちよさそうに声を出す拓也を見て、愛は、そっと手全体で握ってみる。
にちゃり、と粘液質な音がして、愛の指に拓也から既に分泌されている液体がまとわりつく。
(あ、これ・・・本で読んだやつだわ。本当に出るのね)
妙な感触に手を引っ込めかけたが、すぐに、少女向けの雑誌で事前に仕入れていた知識と
照らし合わせて答えを出すと、再び握り直す。
まだかろうじて愛の手の中に収まる大きさのそれは、愛が握ると、更に大きさと硬さを増していく。
吸い寄せられるように顔を近づけて行くと、舌先で触れてみる。
「んぁっ!・・・ 槍溝さん、何・・・してるの?」
「何って・・・なんでしょう?」
愛はそれがフェラチオ、と言う行為なのは知っていたが、
さすがに口に出すのは恥ずかしいのか、拓也の問いをはぐらかす。
「それよりも、どう、気持ちいい?」
再び、今度はさっきよりも大きく舌を動かす。
「う、うん、すごく、・・・気持ち、いい」
「そう、よかった。それじゃ、もう少し続けるわね」
愛はそう言うと、再び舌技を開始する。
拓也は、徐々に自分の中から、
しな子とした時の最後に感じた、強烈な爆発感が立ち上って来るのを感じる。
「や、槍溝さん、僕・・・僕、ぅ、ぅぁぁぁっ!」
それは一旦生じると、止める間もなく、一気に拓也の身体から外に出ようと出口を求めて
拓也のモノへと集まって行く。
愛が顔を引く間もなく、拓也のモノから白濁した液が噴出する。
「きゃっ・・・これ・・・精液、ってやつかしら・・・」
鼻をつく匂いに顔をしかめながら、自分の頬にかかった拓也の精液を掬い取ってみる。
(なんだか・・・ヘンな感じ・・・おしっこ出る所から、こんな、全然違う物が出るなんて)
それでも、何故だかあんまり汚い、とは思わなかった。
しかし拭かない訳にももちろんいかず、
ポケットからティッシュを取り出すと、丁寧に拭き取る。
粘り気があって上手いように拭けず、
何枚も消費してしまったがなんとか一通り自分の顔を綺麗にすると、
余ったティッシュで拓也のモノも拭き取り始める。
一度放出を終えた拓也のモノは、時折脈動して射精の余韻を残しながら、
少しずつ硬さを失い始めていた。
黙々と拭き取り続ける愛に気まずくなった拓也が声をかける。
「あ、あの・・・」
「榎木君」
タイミングを計ったかのように、拓也の言葉に被せる愛。
これが拓也が、愛にペースを握られてしまう大きな原因になっているのだが、
拓也はそこまでは気付かない。
「は、はい・・・」
「続きは、いつする?」
「え、ええっ?」
「だって、結局まだ最後まではしてないじゃない。それに」
そこで一度言葉を切ると、少し怒ったような、意地の悪い口調で続ける。
「男の子が先に出しちゃうのって、すごく失礼な事なのよ。おまけに顔にかけるし。
まだなんだか顔が突っ張った感じがして気持ち悪いわ」
「そ、そうなの・・・? ごめんなさい」
怒られているかのように、上目遣いで愛を見る拓也。
(やっぱり可愛いな・・・)
思わず拓也を抱き締めそうになるが、寸前でこらえると怒っているふりを続ける。
「そう。だから、もう一回は言う事聞いてもらわないとね」
「そ、そんな・・・」
「わかった?」
「あいっ」
自分が実を叱る時と同じ口調の愛に、思わず実のように返事をしてしまう拓也。
はっとして拓也は両手で口を塞ぐが、自分を見ている愛の眼差しに気付くと、
愛のペースからはこれからも逃れられそうに無い事を痛感した。