「あの・・・槍溝さん。ちょっといいかな?」  
しな子は、掃除の時間に槍溝を見つけると、  
前から気になっていた事を尋ねようと思って呼びとめた。  
「何〜?」  
「えと、ここじゃなんだから・・・こっち来て」  
しな子が槍溝を連れてきた先は、体育倉庫だった。  
「ここなら人来ないと思うから・・・」  
「人が来ないって・・・あなた、あたしを襲うつもり?」  
相変わらずのペースに巻きこまれそうになりながら、しな子は本題に入る。  
「そ、そうじゃなくって、・・・あの、逆セクハラって・・・いつから始めたの?」  
「ん〜・・・」  
人差し指を唇に当てて考え込む槍溝。  
「1年位前かしらね。拓也君にし始めたのは」  
「拓也君には・・・って、他の子にもしてたの?」  
「ええ」  
さも当然、と言った風に頷く。  
「あ、でも男の子は拓也君が始めてかな」  
「・・・って、まさか」  
「?」  
「・・・その、女の子にも・・・したの?」  
「ええ。可愛いと思ったら」  
「そ、そうなんだ・・・」  
思ってもみなかった槍溝の返答にそれ以上言葉を失うしな子。  
耳まで赤く染めてうつむいてしまう。  
「たとえば、今だって」  
すっ、と槍溝は顔を近づけると、しな子の頬に唇を押し当てる。  
「なっ、なっ、なにを・・・」  
「可愛いと思ったから」  
悪びれずに言うと、そのまましな子の身体に体重を預ける。  
しな子はあっけなくバランスを崩して倒れてしまう。  
 
「や、槍溝・・・さん?」  
「大丈夫よ、唇と大事な所はとっておいてあげるから」  
言いながら、体操服の中に手を忍び込ませる。  
「わっ、ちょっと待って、・・・きゃっ」  
しな子は慌てて体操服の裾を押さえるが、  
それではもちろん既にもぐりこんでしまった槍溝の手を止める事など出来ない。  
ほどなく槍溝の手は目指す場所に辿り着く。  
槍溝の指がしな子の胸に直接触れる。  
「・・・あら? あなた、まだブラしてないの?」  
指先でしな子の胸の頂をつつきながら言う。  
「んっ、だ、だって・・・お母さんに言うの、恥ずかしいし・・・」  
律儀なしな子は今されている事を拒否する前に質問に答えてしまう。  
「そう・・・でも、そろそろしないと形が崩れちゃうわよ」  
「ぅ・・・ぁ・・・そう、なの?」  
むず痒い感覚が槍溝の触れている部分から胸全体に広がって行く。  
「ええ」  
槍溝はお椀の形を作るようにしな子の、まだ乳房とは言い難い胸を揉む。  
「ほっておくとどうしても垂れてきちゃうし、  
ブラしないと揺れるから体育の時間に男子に見られるわよ」  
「っふ・・・・・・ゃ、だ・・・」  
しな子は指を噛んで声が漏れるのをこらえる。  
「感じてるの・・・? 気持ち良い?」  
「わかんない・・・でも、頭がボーっとして、なんだか、お腹のへんが熱いの」  
しな子は、クラスの友達が持ってきている本をたまに見せてもらって、  
そういう事をすると気持ち良い、というのはなんとなく知っていたが、  
自分でそういう本を買った事は無かったし、  
興味はあったけれど立ち読みするのも気恥ずかしかったので、その手の知識は無いに等しかった。  
「それがね、気持ちいいって事なのよ」  
槍溝は偉そうに語るが、もちろん自分も目の前で同級生の少女が  
感じている光景など見るのは始めてだったから、  
呼気を荒げ、声は上ずっている。  
「それじゃ、こんなのはどう?」  
槍溝の手は激しさを増しながら執拗に乳首を責める。  
自らの指の動きに敏感に反応して身体をくねらせるしな子に興奮したのか、  
徐々に指先に力が入る。  
「ん、んん、痛い、槍溝さん、痛い、止めて、ぅ、ぁああーっ!」  
しな子はひときわ高い声をあげると、ガクン、と身体を一度揺らして崩れ落ちた。  
 
それから、二人は無言のまま乱れた体操服を元に戻すと倉庫を後にした。  
「・・・ごめんなさい。それじゃ」  
目を合わせないまま、槍溝が普段よりも幾分ちいさい声でそう言うと、  
扉の前で立ったままのしな子に声をかける。  
その場を動こうとしないしな子に、槍溝はそれ以上何も言う事が出来ず  
立ち去ろうとする。  
しな子は顔を伏せて歩き始めた槍溝の足元をぼんやりと見ていたが、  
やがて意を決して呼びとめる。  
「あの、槍溝さん、今度の日曜日、あたしの買い物に付き合って・・・くれる?」  
槍溝は足を止めると、ゆっくりと振り向く。  
しな子が思わずどきっとする微笑をたたえながら。  
「・・・買い物〜? 何を〜?」  
「・・・いじわる」  
「冗談よ、冗談〜。日曜日ね、いいわよ。  
でもせっかくだから、思いっきり凄いの買って拓也君に見せる〜?」  
「もう!」  
二人は笑いながら、いつしか肩を並べて歩き始めていた。  
 
終  
 
 

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