「萌乃香…」
そういったっきり少年は言葉を飲み込んでしまった。開き直ってしまえば、ここで少年が引け目を感じる筋合いは無い。かおりと付き合っているのは彼女から告白されたからだし、告白されたときにはフリーだった。浮気でもなんでもない。だが、かおりから聞かされて幼馴染が自分に心を寄せているのを知ってから、少年はどう言葉を交わせばいいのかわからなくなっていた。。
じりじりと照りつける日の下で少女はすこし苦しげに微笑む。
「お店、休みだったんだね」
「う、うん。ごめん。」
「いいの。ちょっと相談があったんだけど。お日様にあたりすぎたみたい。」
その言葉を聞いてはっとした。確かにこの暑さの中で立ったままではつらかったろう。
「ばかだなあ、そんなところにじっと立ってちゃ日射病になっちゃうよ。ほら、中に入って」
「うん、ありがとう」
そういって少女は少年の後に続いて勝手口から入っていった。
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「椅子に座ってなよ」
そう声をかけて少年は冷蔵庫をあける。冷たい麦茶を注ぐのを見ながら萌乃香は立っていた。
「座っていればいいのに」
そういいながら麦茶を渡してくれる。
「うん。大丈夫。いただきます。」
小さい声でそういって麦茶を飲んだ。気持ちが落ち着く。
「おいしぃ」
心からそう思った。
「味の助君が煎れたの?」
「母さんだよ」
「うふふ。おいしいものだと全部味の助君が作ったのかと思っちゃう。」
そう笑ってコップを返した。
「変だよ」
少年は笑って受け取ると流しで洗う。
「あのね、相談があって来たんだ。」
「うん、そういってたね」
少し緊張した返事が返ってくる。
(味の助君、隠し事が下手だなぁ)
こういう気持ちはなんと言うのだろうか。あきれながら相手を暖かいまなざしで見ることができる。そうだ、きっと自分のサンドイッチが下手だと言った彼もそういった気持ちだったに違いない。小さな声で、それでもはっきりと言う。
「あのね、私好きな人がいるんだ」
ぴくりと、少年の手が止まる。直ぐに洗う手を動かしながら
「え、そうなんだ」
と、狼狽を隠すように答えてきた。。
「うん。最近、彼のことが好きだって気づいたんだ」
「…そう」
「彼って素敵なんだ。不器用なところもあるけど、いつも好きなことに一所懸命で。」
少年は黙って聞いている。
「変だよね。ずっとそばに居たのに自分が彼を好きなことに気づかなかったの。」
「…」
「でもね、タッチの差でだめだったの。彼、恋人ができちゃった」
かろうじて、泣かずに言うことができた。まだ、涙声じゃない。少年は流しに向かったままじっと何かを見つめるようにして聞いている。
「バカだよね。もっと早く好きだって言っていれば、私だってチャンスがあったかもしれないのに。」
涙があふれてきた。ほほを暖かいものが流れていく。涙がこんなに暖かいなんて気が付かなかった。
「私、いいところないけど、きっとチャンスはあったと思うんだ。もっと早く言っていれば。」
「…」
「彼ね、彼女ができても私に気を使ってくれているの。それがわかるの。とってもやさしくて…」
声が震えてきた。いけない。まだ全部言っていない。
「…やさしくて。大好きなの。」
嗚咽をとめられなくなった。
「…大好きなの。…彼が…味の助君が好きなの。」
言えた。
とうとう言えた。何もかも手遅れだったが、涙でぐしゃぐしゃの顔だが、それでも言えた。
「好き」
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二人ともじっと立ったままだった。少年は流しを見つめている。少女は目を閉じて嗚咽を繰り返すばかりだった。
「ごめんね、こんな事言って」
ようやく少女が口を開く。
「萌乃香は悪くないよ」
流しを見つめたまま少年が言葉を返す。
「だって…ごめんなさい」
「謝らなくたっていいって」
「私…バカだから」
「萌乃香はバカなんかじゃないよ!」
そう強く言うと少年が少女に歩み寄って肩をつかむ。おびえたように少年を見上げた少女の表情が見る見る崩れていく。
「ごめんなさい…」
そういうとと少年にしがみついて声をあげて泣き始めた。
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「味の助君、お願いがあるの」
少女が口を開いたのはたっぷり5分ほど泣いた後だった。
「何?」
「…」
「黙ってちゃわかんないよ」
「ごめんなさい」
「また謝る」
「ごめん」
「…」
再び二人とも黙りこんだ。相変わらず萌乃香は味の助にだきついたままでいる。
「萌乃香、落ち着いた?」
体を離しながら少年が顔を覗き込む。
「味の助君」
「何?」
少女が少し間を置く。
「抱いて」
搾り出すような声だった。
「何言い出すんだよ」
言われた少年のほうは真っ赤になって応えた。まだ中学生である。いきなりこんなことを言われれば顔も赤くなる。だが、言った少女の方は悲しげな表情のままだった。
「一度でいいの。抱いて」
涙が一筋こぼれる。
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幼馴染にいきなり抱いてくれと頼まれて困り果ててしまった。自分にはすでに恋人がいる。その恋人にしても自分のことを本当に必要に思ってくれている。抱いてくれと言われてはい、そうですかというわけにはいかない。一方で長年いっしょに遊んできた幼馴染が秘めていたいじらしい気持ちを聞かされて、胸が痛む気持ちもある。
「だめだよ、萌乃香」
やっとのことでそう応える。
「私のことが嫌いだから?」
赤く腫れた目でこちらを見つめる。
「ばかだな、そんなことあるわけないよ」
「かおりがいるからね」
核心を突く一言だった。
「うん」
ちいさく応える。
「ごめんなさい。私、わがままで。でも、思い出がほしかったの。」
「…」
「言い出せないうちに、味の助君がかおりと付き合いだして。それが悲しかったけど。仕方がないと思っていたの。だって私が悪いんだし。誰も悪くないんだし。」
「…」
「でもね、このまま味の助君が遠くにいっちゃうのは嫌なの」
「どこにも行かないよ」
「どこにも行かなくても、遠くになっちゃうよ」
悲しげに見上げてくる。返す言葉がない。
「このままじゃ嫌なの…一度でいいから思い出がほしいの。」
「…」
「わがままなのわかってる。お願い。一度だけ。やさしくして。」
ずっといっしょにいた幼馴染だった。それでもこれほど切ないお願いをされたことはなかった。胸が痛かった。
「ごめん。やっぱりだめだ。」
「…」
悲しげな目で見つめられた。見る見る涙があふれてくる。
「ごめんね。」
「…」
「私わがままだよね。」
「…」
「ごめんね。バカな子で。ごめんなさい、味の助くん。」
最後の言葉が嗚咽に埋もれてしまう。何も考えなかった。とっさに泣き崩れそうになる幼馴染を抱きしめた。
「萌乃香はばかじゃないよ!」
「味の助君…」
はかなげな声で少年の名を呼ぶ。心の中で恋人にわびながら、この幼馴染を他人のように突き放すことはできないと思った。
「今日だけだよ」
「え、…ああ…」
胸を打つような喜びの声だった。
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彼について部屋に入った。この部屋にはよく遊びに来た。中学生にあがってからあまり来なくなったのは、やっぱり異性として意識するようになったからだが、よく考えればそのときすでに好きだったのだろう。
「前はよく遊びに来てたよね」
「今でも来てるじゃない」
彼が笑って応える。
黙ってベッドに腰掛けて微笑みかけた。
「でも部屋には入りづらくなったよ」
「そうだね」
ちょっと悲しそうに笑って彼が横に腰掛ける。
「ねえ萌乃香」
「なに?」
小さな声で応える。
「本当にいいの?」
「…うん。抱いてほしいの。一度でいいから。それを思い出にするから。」
心臓がどきどきする。それでも、うれしかった。
「でも」
「やだ」
「え?」
「やだよ。いまさら『でも』なんて」
「ごめん」
「変なの。味の助君が謝るなんて」
くすくすと笑うと、彼もつられたように笑った。
笑い声が途切れると急に周りが静かに感じられた。少年も急にまじめな顔になる。どきどきと心臓が鳴り響いている。そっと目を閉じると、ゆっくりと引き寄せられた。
唇が触れた。
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初めてはやさしいキスだった。軽く振るれあっただけで離れる。目を開けると彼の顔が間近にある。胸がはちきれそうにうれしかった。
「うれしい」
そうもらすと、彼が微笑んでくれる。もう一度唇を吸われる。ちゅっちゅっと何度も吸われ、やがて舌が入ってきた。不思議と違和感を感じなかった。やってきた彼の舌が自分の舌を探し当ててちろちろと触ってきた。おずおずと伸ばすと絡めとられる。
ぼうっとなった頭でなすがままに舌を任せていると、やがて力が抜けてきた。彼の腕に抱かれたまま、ベッドにゆっくりと寝かされる。唇をふさがれたまま彼の手が棒タイにかかり、やがてそれが解かれた。
「ああ」
ようやく唇を開放されたときには、彼の手はすでに喉もとのボタンをはずしていた。恥ずかしさでほほを染めながら、彼のひとみから目を話せない。魔法にでもかけられたように動けないまま、ひとつづつ、ボタンをはずされていく。
制服のボタンが全てはずされ前が開かれた。
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目の前に現れた幼馴染の肌はびっくりするほど白かった。色白だとは思っていたが、日にさらされない服の下にはまぶしいほど白い肌が隠されていた。全体的にやわらかそうで、白い下着で隠された胸は思ったより大きかった。
背中に手を回してブラジャーのホックをはずす。押さえつけられていた胸がぷるんと震えるのがわかった。緩んだ下着を上にずらすと、その下の雪のように白いふくらみが姿をあらわす。
「きれいだよ」
「恥ずかしい」
搾り出すように返事が返ってきた。
「恥ずかしがらなくてもいいよ。すごくきれいだ」
「ああ」
幼馴染は誉められても素直に喜べないほど恥ずかしがっている。それでもじっと身を任している彼女の気持ちに軽い心の痛みを感じながら、一方で目は胸のふくらみにくぎ付けになっていた。子供だと思っていた幼馴染の胸は、いつのまにか大人のそれに代わりつつある。ふっくらと膨らんだ乳房は巨乳でこそ無いものの、内側からはちきれるように膨らんでいる。仰向けに寝ているのにつぶれず、一方で頂の乳首は可憐なほどに薄い色合いだった。
その美しい胸にしばらく見とれた後、やがて引き寄せられるように唇に乳首を含んだ。「はぁ」
と、小さな声をあげて少女がのけぞった。初めて異性の眼に肌をさらして羞恥に震えているところを、いきなり胸の頂を吸われた。そうされると感じるということは知識では知っていたが、実際に自分の体に走った電流は思ったよりもずっと大きかった。
「あはぁ」
抑えても体がのけぞり、声が漏れる。電流、というよりそれは波だ。少年が口に含んだ乳首を転がすたびに、そこを中心として大きな波が体を駆け巡る。ざらざらした舌で舐めとられて体をよじり、乳うんごと吸い上げられてのけぞる。
(だめぇ)
波に揺さぶられる小船のように少女は性感の波に揺さぶられた。こんなに感じるなどということがあるのだろうか。
(初めてなのに)
経験の浅いうちはあまり感じない。友達はそういっていた。本にもそう書いてあった。しかし自分の体を翻弄している未知のこの感覚は性感に違いなかった。少年はいつのまにか片手を少女のあいた胸にあて、もみしだいていた。この歳にしては大きな張り詰めた乳房をもみたてられるたびに彼女は声をあげて体をくねらせた。
(恥ずかしい)
太ももの奥にある女の部分が恥ずかしいほど火照っていた。少年から性感を与えられるたびに無意識にその部分をぎゅっとすぼめる。少女は気づいていなかったが、もじもじと大腿をすり合わせる様は紛れも無い女のしぐさだった。
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(萌乃香、感じやすいんだ)
少年にしたところで、セックスの経験は一度しかない。かおりと初めて愛し合った後は、忙しくてお互い時間が無かったのだ。だから女の子の体についてはまだ耳学問の域を出ていない。それでも、今目の前で雪のように白い体を震わせながら声をあげる幼馴染がどれほど感じているかはわかった。
彼女の乳首ははかないほど淡い。その淡い乳首を口に含み、舌で慈しむ。そのたびに彼女は声を漏らし、背中をそらせて快感を表現する。懸命に声を漏らすまいとしているのが見て取れるが、それも体を流れる性感の並みの前にはもろくも崩れ去っているようだった。
愛らしい乳首は少年の舌による愛撫を受けて、いじらしくも固くしこっていた。そして固くしこってもまた、それは柔らかさ感じさせる不思議さがあった。
乳首を愛撫しながら、右手であいた乳房をもむ。それは少年がただ一人知っているかおりの乳房の感触とはまったく違っていた。かおりの乳房は小ぶりな中にも若さいっぱいに弾けるような手触りがある。それでいて柔らかいといった感じだった。ところが幼馴染のそれは反対で、これが同じ歳の子かと思うほど大きく柔らかい。それでいてはちきれるような張りがある。好対照といっていいだろう。
随分長い間乳首を愛した後、少年は顔をいったん話すと今度は乳房の付け根のあたりに舌を這わせ始めた。これまでと違った感覚に再び少女が体をよじる。白い肌にブラジャーの痕が赤い線となって浮かび上がっているその線に沿って二度三度と舌を這わすとそのたびに幼馴染が体を震わせた。
そのまま片手で乳房の柔らかさを確かめるようにもみながら唇をわき腹に這わす。少女が切なげな声をあげた。
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(ああ)
さっきからすでに少女の頭の中は夢のようにぼんやりとしてしまっている。初めてだというのに彼の指や下が非と動きするだけで体にさざが走り、声が漏れた。恥ずかしい気持ちは当の昔に波にさらわれて、何も考えられずに性感に心が揺さぶられた。
(味の助君)
整った思考を組み立てられない中で、ただ一ついとおしい少年の名前だけが繰り返し心の中に浮かび上がり、そして悩ましい舌が送り込む漣の中に消えていく。それの繰り返しだった。
「萌乃香」
心の声が通じたのか、少年が声をかけてくれる。
「ああ、味の助君」
ようやく応えて、そして改めて、自分のあられもない姿に気がついた。夏服の前はすっかりはだけられ、スカートはめくれあがっている。そして、少年はまさに最後の布切れに手をかけていた。
(ああ、とうとう)
彼に見られる。恥ずかしさと、ようやく自分の全てをさらすのだという喜びの混じった複雑な思いが彼女の中に満ち溢れた。
パンティーが下ろされ、片足を抜き取られると、少年が膝に手をあて、そしてゆっくりと両側に開いた。
「ああ」