薫の頭の中では舌の味覚神経が伝えてくる情報が洪水のように溢れかえっていた。  
 (しょっぱい……)  
 (……何の味だろう……)  
 (潮の……海の味がする……)  
 (でも……それだけじゃない……)  
 薫の舌が伝えてくる情報を噛み締める。  
 (これが……葵ちゃんの味なんだ……)  
 (美味しい……)  
 舌の先で彼女のクリットの位置を探りながら、葵の秘貝が吐き出す甘い蜜汁を薫はジュル  
ジュルと下品な音を立てて思う存分に啜った。喉を鳴らして飲めども飲めども、尽きない泉  
は後から後から滾々と新鮮な愛液を湧き立たせる。しかもその味が段々と濃く、味わい深く  
なってきているのだ。まったりとした上品なコクに薫は舌鼓を打った。葵は料理の腕も絶品  
だったが、その愛液さえも極上のスープに比肩する素晴らしさなのだ。薫は葵の吐露する果  
汁に酔い痴れた。  
 だがお目当ての宝玉の在り処は一向に判らなかった。舌の先で左右の陰唇の分け目を撫で  
回すのだが、その場所はプニプニとした柔らかい肉が捩れているだけで、童貞の薫が想像す  
るようなキンキンに尖り勃つ雌芯は何処にも無かった。  
 (……何処だ?……もっと下なのか?)  
 かつて見た男性向け雑誌のハゥトゥ特集で見た女性器の図を思い浮かべて舌の先でそれと  
おぼしき場所を探るのだが、それらしき器官は未だに見つからない。乳首のしこり具合とヴ  
ァギナの濡れ具合から鑑みるに、クリトリスも充血してピンと屹立していても良い筈だ。  
 だがその部分は透き通るような瑞々しい桜色の肉の隆起がただあるばかりでお目当ての肉  
真珠は何処にも無いのだ。  
 (……ん?)  
 ほんの僅か、舌の先に何かが触れた。  
 (此処か?)  
 その場所を丹念に探る。すると、まるでゼリーかプリンのようにプニプニとした柔らかい  
肉の盛り上がりの奥に、なにやら硬い芯のようなモノがあるのに薫は気が付いた。肉の重な  
り合う複雑な構造を舌だけで探索するうちに、ようやく薫は葵のクリトリスの造りを理解し  
た。  
 (葵ちゃんのクリット……皮を被っているんだ……)  
 (包茎ってヤツだな……)  
 分厚い包皮にくるまれた葵の雌芯は、余程気を付けていなければそのまま通り過ぎてしま  
いそうな程に小粒だったのだ。  
 (……皮を剥いてあげるよ、葵ちゃん)  
 
 舌の先をクリトリスフードの下に滑り込ませて捲り上げようとするのだが上手くいかない。  
生まれてこのかた一度も剥けたことが無いのか、クリットは被った鞘を容易に脱ぎ捨てようとはしない。  
頭巾の先がピラピラと捲れ返るだけで秘宝の肉真珠はその顔さえも覗かせようとはしなかった。  
 舌だけでは無理だと判断した薫は指と唇も使い始める。柔らかいヴィーナスの丘に指先を  
食い込ませてグイと寛げる。上下の唇で包皮ごとクリットを啄ばみ、舌の先でそれを激しく  
上下左右にブラッシングする。  
 「あひッ! ひっ、ひィ〜〜〜ッ!! やッ、止めッ……ひィんっ!!」  
 瞼を閉じ、舌の先に神経を集中させる。薫の精神は葵の膣の中に取り込まれてしまったか  
のようだった。その耳には息も絶え絶えな葵の喘ぎ声さえも届いていなかった。  
 唇の間の包皮の中で、葵のクリトリスがビンビンと弾かれてプックリと膨らみだす。薄皮  
はパンと張り詰め、今にも内側から弾けてしまいそうだ。恐らく葵は既に快感を通り越して  
痛みすら感じているに違いない。  
 (今……楽にしてあげるよ、葵ちゃん)  
 薫が更に激しいブラッシングを葵に送り込む。声を上げる余裕さえも無くなった葵は白い  
喉元を曝け出して海老反り、悶え狂うしかなかった。  
 ピッ!  
 葵の股間に小さく鋭い痛みが疾った。薫の執拗な愛撫に根負けしたのか、遂に葵の頑固な  
包皮がようやくその一端を綻ばせたのだ。包皮を裏返しながら徐々にその姿を現す葵の宝玉。  
 それは正に肉真珠と形容するに相応しい完璧な球形である事を薫は舌の先だけで感じ取った。  
大きさは米粒の半分ぐらい。  
 (こんなに……小さいんだ……)  
 だがこの小さな真珠肉には鋭敏すぎるほどの性感神経が集中しているのだ。薫は細心の注  
意を払って繊細に、かつ大胆に陰核への愛撫を続ける。  
 「ひッ……はひっ……ひィッ……」  
 葵はしなやかな肢体を仰け反らせて悶絶する。必死に薫の口から恥核を逃がそうとするのだが、  
彼はがっちりと腰を抱え込んで彼女の股間から顔を放そうとはしなかった。  
 だが精一杯の抵抗で身じろぎした所為なのか、葵の淫核は再びすっぽりと皮の中に隠れる  
事に成功した。初めて剥き下ろされたばかりの肉鞘はまだ剥け癖よりも被り癖の方が勝って  
いるようだった。  
 焦れた薫は肉鞘ごと葵の恥豆を口に含んで思いっきり吸引した。  
 ジュッ……ジュジュジュジュジュジュ〜ッ!!  
 「はッ!……はひィッ、ひィ〜〜〜ッ!!」  
 
 葵が断末魔の声を上げた。背中が弓なりに反りかえり、尻が宙に浮いた。  
 初心なクリットは強烈な吸引に抗えず、とうとう肉鞘から吸いだされてしまう。葵の腰が  
排泄行為の後のようにブルッと震えた。  
 激しく吸った後は、今度は包皮にくるまれたクリットを西瓜の種でもそうするかのように  
プッと吐き出す。これ以上は無い位に大きく見開かれた葵の瞳には目の前の光景を映しては  
いなかった。頭の中で炸裂する色とりどりの光の瞬きだけが彼女の視界を占有しているのだ。  
 ほうほうの態で再び肉鞘の中に逃げ込んだ女芯はまたもや薫の吸引に引きずり出され息を  
つく暇もない。  
 こうして皮を剥かれては被されてという行為の繰り返しに固さの残っていた包皮はすっか  
り柔らかくほぐされて、とうとう薫の吸引が終わりを告げた後もズル剥けの状態になってし  
まったのだ。  
 それを舌の先で確認した薫はようやく彼女のヴァギナから口を離し、生まれて初めての御  
開帳となる葵の宝玉に見入った。  
 包皮を剥き下ろされてピンと屹立するクリトリスは余りにも小さい。皮の上からでさえ触  
れた事など皆無であろう。よく目を凝らせば葵の心臓の鼓動に合わせて陰核がズキンズキン  
と脈を打っているのが判った。こんなウブなクリトリスが薫の口唇前戯に応えてくれたのだ。  
泡立って白濁した愛液の海に溺れそうな、米粒よりも小さな葵の雌芯を薫は心から愛しく  
感じた。  
 再び薫が葵の恥豆にむしゃぶりついた。雌芯の根元から頂点に向けてざらついた舌でズル  
リと舐め上げる。  
 「ひッ……あひィッ!!」  
 クンッと葵の腰が一際高く跳ね上がり、頂点で大きくブルッと痙攣した。その瞬間、薫の  
顎から喉にかけて熱い飛沫が葵のヴァギナからブシュウッ!と噴き出した。達した瞬間に潮  
を吹いたのだ。桜庭葵の生まれて初めての絶頂体験は薫のクンニリングスによって迎えたの  
だ。  
 葵が頂点に達した事は童貞の薫にさえ判った。自分が葵をそこまで導いたという自信を面  
に浮かべ、口を手の甲で拭いながら薫は自分の股間を見下ろした。  
 これまでの人生の中でこれほど勃起した経験があったであろうか。先走りの涎に塗れた亀  
頭は禍々しく輝いている。陰茎がズキンズキンと裂ける様に痛み、亀頭は爆発してしまわん  
ばかりに膨張している。ずっしりとした重量感が股間にあった。反りかえった肉槍は下腹に  
ぴったりと張り付き、葵の膣に狙いを定める為には無理矢理下に押し下げなければならぬ程  
である。  
 こんな凶暴な一物が葵の小さな膣に挿入されるのだ。我ながら恐ろしくなるぐらいの猛り  
ぶりである。  
 「葵ちゃん……本当に良いんだね?」  
 薫の最後の問い掛けにも、息も絶え絶えな葵は力無く肯くしかなかった。  
 薫の手が葵の膝を割る。内腿をべたりと濡らしている葵の秘め処が余すところ無く薫の目  
に飛び込んでくる。  
 切先を葵の中心にあてがう。粘膜と粘膜が音を立てて触れ合った。  
 
 (葵ちゃんの処女を……俺が……)  
 グイッと力強く腰を突き出した。だが一息に貫通とは行かなかった。手ごたえはあった。  
場所に間違いは無いようだ。ガチガチに勃起した若く逞しいペニスはいまや鋼の矛と化して  
いるものの、処女の聖なる扉を流石に一突きで打ち破るには到らなかったのだ。  
 「痛ゥッ!!」  
 二突き。三突き。腰を突き入れ、引く度にヌチャヌチャと淫らな水音が響く。だが葵の入  
り口はきつく締まっており、薫の極太亀頭を容易に受け入れようとしない。しかし葵の豊富  
な自家製潤滑液が粘膜と粘膜との摩擦をやわらげる。薫の切先が徐々に葵の膣内に沈んでゆ  
く。  
 強烈な入り口の締め付けが亀頭をギリギリと締め上げ、薫は僅かに痛みを感じた。  
 (こんな痛み……葵ちゃんはもっと痛いんだぞ……)  
 葵は声を漏らさぬように、唇を噛み締めている。固く閉じた瞼のまなじりには涙が滲んで  
いる。  
 (葵ちゃん……ありがとう……)  
 (……葵ちゃんのバージンを……俺が……)  
 (破るっ!!)  
 ズルリと滑るような感覚とともに、薫の亀頭が一線を越えた。  
 「はァッ!……ああっ……」  
 ミチミチと締め付けてくる狭隘な肉路を一突き、また一突きと徐々に深く抉り込んでゆく。  
 だが薫の長茎がいくらも沈まぬ内に、再び葵の膣洞は頑なにペニスを拒んだ。まだ行き止  
まりでは無い筈だ。  
 (ここが……葵ちゃんの……)  
 (処女膜ッ!!)  
 いよいよ彼女が清らかな処女の時代と決別するのだ。薫は自分が承った重い使命が、尚一  
層血を凝集させたペニスがより硬く、より長く、より太くするのを感じた。  
 ミチィッ……メリメリッ……  
 環状になった処女膜が一箇所、また一箇所と断ち裂かれて、綻んでゆく。  
 葵はといえば純潔を失う激痛に声も上げる事さえも出来ずに、その唇が虚しく空気を貪る  
だけであった。処女の本能に従って腰を逃がそうとする葵だったが、若き雄の獣の前では彼  
女はあまりにも非力であり、童貞の薫にはそんな葵を気遣うような余裕は無かった。  
 「はぁッ……あッ、ああっ、ああ〜ッ!!」  
 肺腑に溜め込んでいた大量の空気を全て吐き出すかのような叫びが葵の喉を震わせるのと  
同時だった。  
 「あっ……葵ちゃんッ……くうっ……!!」  
 薫の口からもくぐもった声がもれた。薫の亀頭が遂に関門を乗り越えて、葵の股の奥にズ  
ンと打ち込まれたのだ。  
 
 葵が女になった瞬間だった。二人が繋がった場所からは純潔の証が滲んだ。  
 だがそれでも薫の剛直はまだ半分さえもインサートされていないのだ。バージンの聖扉を  
打ち破ったペニスの行く手を阻むものは何も無い。こなれていない処女の膣肉を無理矢理に  
抉じ開けて薫は女体の奥深くへと掘り進んでいった。  
 「かっ……薫……様ッ……も、もっと……優しく……ッ……」  
 薫がそれだけの経験を積んでいれば、初めての葵を気遣う余裕もあったのだろうが、それ  
を童貞の身の彼に望むのは無理からぬ事であった。行き着くところまで行く以外には、熱く  
滾った若い牡の勢いを止めることは誰にも出来ないに違いない。  
 「はッ……ああ〜ッ!!」  
 薫の亀頭が最奥に達した瞬間を告げるように葵が声を上げた。処女の身に咥え込まされる  
にはあまりにも長大な剛直は、いまやその全てが葵の胎内に収まったのだ。  
 「あっ……葵ちゃんッ……!」  
 葵の素晴らしい締め付けに薫は呻いた。葵の膣洞が彼の若茎にピッタリと密着し、キュキ  
ュンと肉路を絞り込んでくる。特に亀頭の周囲ではウネウネと膣襞が蠢き、まるでミミズか  
蛸が胎内でのたくっているかのようだった。  
 (なっ……なんて、気持ち良いんだッ!)  
 薫は身体を固くした。動かない。いや、動けなかったのだ。  
 今自ら腰を動かせば、二擦りとたたぬうちに葵の膣内にザーメンをぶちまけてしまうのは  
間違いなかった。  
 薫は必死に堪えた。挿入した瞬間に放出してしまうような無様な醜態は男の沽券に関わる。  
昂る精神をなだめ、心臓の鼓動を鎮めようとする。動きを止めた薫のペニスとは裏腹に、  
葵の膣は絶え間なく蠢動を繰り返している。ともすればその蠕動だけでも思いのたけをぶち  
まけてしまいそうにもなるが、間一髪で薫は耐える。  
 どれ程の時間がすぎたのだろうか。一分にも満たない時間であったような気もするし、一  
時間にも及ぶ長い間だったような気もする。  
 自分と落ち着きを取り戻した薫が葵に問い掛ける。  
 「葵ちゃん……」  
 「薫……様ッ……」  
 濡れた瞳と瞳が見つめあう。  
 「葵は……幸せですっ……初めてを……薫様に捧げる事が出来て……薫様に……女に……  
していただいて……」  
 「……俺もだよ、葵ちゃん……俺も葵ちゃんに男にしてもらったんだ……葵ちゃんは俺の  
最初の女の人で……そして、最後の女の人だ」  
 一瞬、葵が目を伏せた。しかし次の瞬間には何事も無かったかのように、目の前の愛しい  
薫を見詰めて今度は自分から唇を寄せた。薫は彼女の一瞬の逡巡に気付く事なく、口付けに  
溺れてゆく。  
 
 二人は互いの唇を貪りあうかのような激しい口付けを交わした。最早葵にも衒いはない。  
二匹の獣と化した許婚同士は互いの唇と舌と唾液を思う存分に吸い合った。  
 葵は胎内に収まった薫のペニスの脈動をしかと感じ取り、薫もまた葵の肉襞の蠢動を味わ  
った。  
  葵の若く瑞々しい膣が初めて受け入れた男根に馴染むのにそれほど時間は掛からなかっ  
た。しっかりと薫のペニスを包み込み、蠢く肉襞がその形を葵の脳に記憶させる。柔軟な肉  
路が、ギュンと弓なりに反りかえった逞しい若茎のカーブにぴったりと隙間無く密着した。  
たった今、葵の膣は薫のペニス専用の膣となったのだ。  
 心臓は未だに早鐘を打っているものの、挿入の瞬間のような爆発的な鼓動ではない。だい  
ぶ落ち着いてきたようだ。頃合充分と見計らった薫が葵に尋ねた。  
 「葵ちゃん……動かしても、良い?」  
 一体何を動かすのかさえも判らぬ葵は、彼の問い掛けにただコクンと頷くばかりであった。  
 密着していた二人の腰と腰との隙間が空いた。処女の証に赤く染まった長大な薫のペニス  
がズルリと姿を現す。亀頭のエラが葵の入り口に引っ掛かった所で、薫は再び剛直を打ち込  
んだ。  
 一度貫通させられた肉のトンネルはさしたる抵抗も無く薫の長大な剛直を根元まで呑み込  
んだ。勿論止め処なく湧き出す豊富な愛液の助けはあるものの、それ以上に葵の膣が薫の男  
根に馴染み始めているのだ。  
 ジュボジュボジュボジュボとあられもない音を立てる一突き毎に、愛液が薫のペニスを染  
めていた純潔の証を洗い流してゆく。  
 薫の腰が回転数を徐々に上げてゆく。  
 「ひッ……かっ、薫様ッ…もっ、もっと……ゆっくり……あひッ……激し過ぎます ッ…  
…」  
 だが童貞を捨てたばかりの薫に自重を望むのは酷というものであった。葵の声など耳に入  
らぬかのように、只々雄の本能に導かれるままに腰を突き動かす薫。  
 「だっ……駄目だッ……止まらないっ!!」  
 彼女の息も絶え絶えな喘ぎが聞こえぬ訳ではなかったが、まるで何者かに身体を乗っ取ら  
れたかのような錯覚を薫は覚えていた。  
 もっとゆっくりと、優しくしなければと思えば思う程、薫の腰は葵のヴァギナに容赦なく  
ペニスを打ち込んでゆく。  
 泡立って白濁した愛液が飛沫となって飛び散り、葵の部屋の湿度を更に高めた。繊細な粘  
膜が擦り切れるかと思われる程の荒々しい薫のピストン運動に、葵は豊潤な愛液で応える。  
二人の結合部から滴るラブジュースが布団の上に染め抜かれた純潔の証を滲ませてゆく。  
 
 葵にとっては永遠にも等しく思われたピストン運動も、薫にしてみればまだほんの一瞬に過ぎなかった。  
 だが、悲しいかなこれが童貞の限界なのか。  
歯を食いしばって必死に射精本能を押さえつけようとする彼の意思とは裏腹に、肉棒の先端の鈴割れからはジクジクとザーメンが漏れ出してしまう。  
 一摺り毎に近づいてくる決壊のリミット。頭の中で他の事を考えて気を紛らわそうとする薫だったが、  
葵の肉壷の具合の良さは彼の努力を灰燼に帰さしめるのに充分だった。  
 (すっ……凄いッ!……)  
 (こんなに良いなんてッ……)  
 ヌメヌメと濡れた肉襞がペニスにしっとりと絡み付き、時には食い千切られるのではないかと思うほど強烈に締め付け、  
またある時は真綿で包まれたかのようにふんわりと己の剛直を受け止めてくれる。  
この感触を知ってしまった今では、自分の手で欲望を慰めるのが如何に虚しい行為であったかと思い知らされた薫だった。  
 (……自分でするのとは全然違う……)  
 気持ちよさだけではない。高まった欲望を好きな時に解き放てばいいマスターベーションとは違い、相手を慈しみ、思いやり、  
二人で一緒に頂点を迎えなければならない。断じて男の自分だけが達してしまう事だけは避けなければならぬというプレッシャー。  
 だが、薫の忍耐もここまでだった。  
 「あっ……葵ちゃんッ……俺……俺……もうッ……!」  
 ガクガクと腰を震わせながらうなだれる薫。  
 「薫……様ッ……」  
 「もうッ……我慢……出来ないッ!」  
 ようやく謝罪の言葉だけを吐き出すと、薫は葵の腰をグイと抱え込んで今まで以上の激しいストロークを膣奥に叩き込んだ。  
 「ああっ……あひッ……だっ……出してッ……ひィッ……出して、下さいッ!!」  
 ストロークの合間に切れ切れに応える葵。  
 
 「……薫様ッ!……薫様に、気持ち良くなって……はっ……はうッ!……いっ、頂くのが……私の……務めですッ!!」  
 擦れ合う二人の性器が愛液の飛沫を撒き散らした。陰毛と恥毛が絡み合う。葵の薄ラヴィアがカリ高のエラに引き摺り出されては、剛直のストロークに巻き込まれて裏返しになる。  
 薫の精嚢が悲鳴を上げた。股間にぶら下がった肉袋に痛みが走った。溜まりに溜まったザーメンの貯蔵量はとっくの昔に限界を超えていたのだ。  
 「だっ、駄目だッ! 葵ちゃんッ!!」  
 葵がアクメを迎える前に自分だけが達してしまう不甲斐無さをもかなぐり捨てて、断末魔の咆哮が薫の食いしばった歯の間から迸った。  
膣肉に包み込まれた剛直が最奥に達する。股間にぶら下がった睾丸袋が収縮する。  
 ドクッ!  
 半ば固形化したザーメンが薫の恥垢を根こそぎ吹き飛ばしながら葵の胎内で渦を巻いた。鈴割れから大量の精液が勢い良く噴き出し、精液の土石流ともいうべき奔流が葵の子宮を直撃した。  
 「ああっ!!熱ひィッ!」  
 灼熱のマグマのようなザーメンに女の命を撃ち抜かれて葵は悶絶した。  
 「うおおおおおおッ!!」  
 獣のような雄叫びを上げ、薫は殆ど本能的に腰を引き、一拍置いて再び葵にペニスを打ち込んだ。  
 ドキュゥンッ!!  
 間髪を挟まず男根が脈動した。尿道を凄まじい勢いで駆け抜けてゆく薫のスペルマ。精嚢に溜め込まれた在庫精子の一斉処分だ。濃厚な白濁樹液が葵の胎内の奥深くまで注ぎ込まれる。  
 「うわああああああああああああッ!!」  
 粘液にヌラヌラと輝く肉のピストンがストロークした。  
 ドビュウッ!!  
 一週間の禁欲生活に鬱屈したパトスは留まるところを知らない。二度の脈動ですっかり通りの良くなった精管をこれまで以上の大量の精虫が通り抜けてゆく。  
 それを受け止める葵のヴァギナはもう限界だった。只でさえ狭い上に、未開拓故に奥行きも浅い葵の膣はその可憐な佇まいとは不釣合いな程の雄渾たる一物を咥え込まされている事も災いして、  
それだけ大量の精液を受け入れるだけのキャパシティはもう無かったのだ。  
 行き場を失ったザーメンは、葵の純潔の証と愛液と混ざり合いながら二人の結合部の間からブリブリと噴き出した。二人の性器が一部の隙間もなく密着しているために下品な音がするのだ。  
 それだけの大射精をしてもなお薫のフィニッシュはまだ訪れない。勢いこそは流石に先程の大噴火には劣るものの、今度は小刻みにペニスを震わせながら子種汁をドクドクと絶え間なく流し込む。  
薫はその間も休み無く腰を振り続けているために折角流し込んだザーメンがドボドボと溢れた。  
 
 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」  
 荒い息遣いと共に徐々にスローダウンしてゆくピストン運動。  
ようやく薫の精液貯蔵庫の底が見えたかと思われる頃、彼から遅れること三十秒余り。葵の膣がキュンキュンと痙攣した。  
 「ひッ……!!」  
 葵の腰が浮き、小振りなヒップがはしたなくカクカクと前後に揺れた。  
深窓の令嬢としていかに慎み深く育てられようとも、桜庭葵も一人の女に過ぎなかったのか。彼女の中の雌の獣の遺伝子が腰をあられもなくグラインドさせたのだ。  
 紛れも無く、葵が気をやった証だった。そう、彼女はアクメに達したのだ。十数年想い焦がれてきた許婚との交合で、桜庭葵は生涯で二度目のオルガズムを迎えたのだった。  
 既に一足早く達していた薫は狼狽した。慌てて葵と腰の動きを合わせようとするが、彼女の膣の締め付けが彼から冷静さを奪った。  
 これが名器というものか。驚くべき事に、咥えこんだペニスをまるで雑巾でも搾るかのようにきつく締め込みながら膣奥へ膣奥へと引きずり込もうとするのだ。  
豊潤なラブジュースの助けを借りてさえびくともしない。完全に腰振りの主導権は葵に奪われてしまったのだ。  
 貪欲な膣の蠕動は貞淑な葵の持ち物とは思えぬ淫蕩さだった。肉襞のざわめきが若幹を前後に扱き上げ、  
尿道に僅かに残っていた精液が最後の一滴まで搾り取られる。葵の肉筒の吸引性能は間違いなく一級品のそれであった。  
 だが、その淫らな動きも長くは続かなかった。痛みすら感じたほどの強烈な締め付けは消え失せ、再びしっとりと柔らかくペニスを包み込む慎ましい風情を取り戻す葵のヴァギナ。  
ゆっくりと収縮してゆくペニスを名残惜しむかのように葵の膣は真綿のような柔らかさで包容する。  
それでも萎えた状態でさえ平均的な日本人男性の勃起時に近い大きさを誇る薫のペニスは、やはり小振りな葵の膣には大き過ぎて充分過ぎる程の締め付けを保っている。  
 ゼンマイが切れた玩具のように、ゆっくりと腰振りを停止する葵。  
 大きな仕事を成し遂げたという安堵の溜息が薫の口から零れた。自分の身体の下で気息奄々とする葵の姿を見つめ、今夜の出来事が夢ではなかったのだと改めて確信した。  
 しどけなく半開きになった薔薇の花弁のような彼女の唇を見ているうちに、つい先程大射精したばかりのペニスに再び血が凝集してゆくのを薫は感じていた。  
 
 
 朝靄に煙る桜庭館。ようやく東の空が白んできたこんな早い時間に、玄関の扉を開けて外に出てきた人影が一つあった。  
 この館の主、桜庭葵その人であった。一体何処へ出掛けるつもりなのか、大きなトランクを引きながら小さなバッグも小脇に抱えている。  
 彼女のお気に入りのいつもの紬の着物を着てはいるものの、その足取りはどこかおぼつかなかった。  
 (……まだ……薫様が入っているみたい……)  
 結局あれから明け方まで、二人は一睡もすることなく互いの躯を求め合った。短い時間ではあったが様々な体位で躯を重ね、薫は葵の胎内に五度も精を放ったのだ。  
流石に最後の後背位のラーゲで放出したのと同時に薫はそのまま気を失った。無理もない。前日までも提出しなければならないレポートに追われて徹夜徹夜の連続だったのだ。  
 眠りこける薫の体にそっと布団を被せ、葵は身支度を整えて抜け出してきたのだ。  
 だが下着を身に着ける際に少々困った事態になった。大量に注ぎ込まれた薫のザーメンが葵の割れ目からボタボタと零れ落ちてきたのだ。  
 たとえ精液と云えども愛する薫の放ったものをシャワーで洗い流す気にもなれず、しかたなく葵はナプキンをあてがい、着物の下に生理用のショーツを穿いて出てきたのだった。  
 足を一歩前に出すたびに股の間に鈍痛が奔る。  
 (……夢じゃないんだわ……間違いなく薫様と一つに……)  
 交合の記憶を噛み締める葵。  
 門の所に館を出てきた葵を待つもう一つの人影があった。門の外には彼女の愛車が静かなエンジン音を篭らせている。  
 「……お迎えにあがりました」  
 神楽坂雅は葵に深々と一礼をした。  
 「……昨夜は本当にありがとうございました」  
 葵も雅に頭を垂れた。  
 「いえ……もう私に出来る事はそれぐらいしか……」  
 雅は頭を下げたままで沈痛な声を絞り出した。  
 
 「雅さん……これ、ありがとうございました」  
 雅に向かって差し出された手の上には小さな包みがあった。  
 「……!……使われなかったのですか?」  
 コクリと、葵が恥ずかしそうに頷いた。雅はこれまで仕えてきた葵に言いかけた言葉を飲み込んで、黙って彼女が差し出したコンドームの包みを受け取った。  
それは二人が生身と生身で交わった事の証だった。  
雅なりに気を使ったつもりだったが無駄になってしまったようだ。いつもの雅であれば、たとえ主人の葵と言えども厳しく叱責するところであった。  
だが、葵がどれ程の悲壮な決意を胸にして薫と躯を重ねたのかを知っている雅は何も言わずに避妊具をポケットに仕舞った。  
 「では……」  
 雅が車のドアを開けて葵を促す。  
 だが、葵は後ろ髪を惹かれるようにたった今出てきたばかりの館を振り返った。  
 様々な思いが去来した。短い間ではあったが、桜庭の家にいた頃とは比べられぬ程の充実した時間だった。  
 薫との再会。  
 二人を取り巻く人達と過ごしたかけがえのない日々。  
 そして……  
 
 薫との、永遠の別れ。  
   
 雅はじっと待っている。これからの葵の人生に降りかかる過酷な運命を思えば、最後の名残を惜しむ彼女を急き立てる事など出来る筈もなかった。  
 「……行きましょう、雅さん」  
 「……もしも……」  
 「……え?」  
 「もしも葵様が望まれるのであれば……何処か誰も知らない遠い地で、貧しくとも薫殿と二人きりで暮らせるように手筈を整える事も……」  
 「……ありがとう、雅さん……」  
 「……」  
 「……薫様と一緒になろうと決めたあの日に……桜庭の家は捨てたつもりでした……でも……私一人のことならばいざ知らず、父の元で働いている皆様やその家族の方にまで累が及ぶとなれば……」  
 「……自分の気持ちに素直になりなさい。後のことはこちらで何とかします……そうお母様は仰っていらっしゃいました」  
 「……今まで我侭をさせてもらいました。桜庭の家の娘として生まれてきたからには、せめてもの親孝行として私が出来るのはこれぐらいの事しか……」  
 車に乗り込む葵を見ながら、雅は何も言えなかった。葵の荷物を車のトランクにしまい運転席に座る。隣の葵の視線はまだ館の方に向けられたままだ。  
 「……出します」  
 「……ええ、お願いします」  
 桜庭館を後にして、車がゆっくりと動き出した。それでも葵は遠ざかってゆく館を見詰めていた。どんどん、どんどん小さくなってゆく、思い出の地。  
 車が交差点に差し掛かり、ウィンカーを出しながら曲がる。  
 桜庭の館が視界に入らなくなってからも、まだ葵はその方向を見続けていた。  
 
 
 「ん……」  
 目を覚ました薫は一瞬、自分がどうしてこんな場所にいるのかと訝しんだ。見慣れる天井、そして壁。窓に掛けられたカーテンを通して差し込んでくる日の光が余りにも眩しく、彼は目を瞬かせた。  
 昨晩の記憶が甦る。  
 (俺は……とうとう葵ちゃんと……)  
 夜明け前に五度も精を放ったにも関わらず、薫の逸物は毎朝の生理現象にあくまでも忠実だった。愛の記憶が反芻されると薫の下半身に熱い血が滾った。  
陰茎の皮に突っ張るような痛みがあるのは、葵の愛液をこびり付かせたまま眠りに落ちてしまった所為に違いなかった。  
 体を起こして隣を見る。そこに彼女はいない。だが、二人が確かに交わった証が布団の上に滲んでいた。  
 (台所かな?)  
 雅達が戻ってくる前に自分の部屋に戻らなくてはいけない。  
その前にちょっと台所を覗いて葵に声を掛けておきたいと思った薫はきちんと折り畳まれた下着とパジャマを身に着け、部屋から出るときには充分に周囲を確認してからいそいそと台所に向かった。  
 
 「おはよう、葵ちゃ……」  
 覗き込んだ台所に彼女の姿は無い。  
 「あれ……もう庭の掃除にでも行ったのかな……」  
 踵を返そうとした瞬間、食卓の上で湯気を上げている御飯と味噌汁が薫の目に止まった。その側には何か書かれた封筒のようなものが置いてある。  
 薫の胸が騒いだ。  
 近付き、それを手にとって見る。やはり封筒だ。表には『薫様へ』とだけ書かれている。葵の筆跡だった。  
 言いようの無い不安に駆られて、薫は封筒の中の便箋を取り出した。  
 
 そこには葵の実家が経営するさくらデパートを中核とした桜庭グループが株を買い占められてIT企業に乗っ取られてしまった経緯が書き記されていた。  
ここ数年でプロの野球チームやサッカークラブ、更には銀行やTV放送局さえも買収して急速に成長した会社だった。  
薫と十歳も違わないその社長は様々なTV番組にも積極的に出演し多くの芸能人とも浮名を流す、いわば時の人だった。  
会社の資産評価額は今や一兆円にも迫る程の勢いだが、法律の網の目を潜るようなその強引な経営手腕や歯に衣を着せぬものの言い方に加え、色々と後ろ暗い噂も付きまとう人物だった。  
 その彼が桜庭グループ解体と引き換えに要求してきたのが桜庭家の一人娘、葵だったのだ。  
 おそらく彼と結婚することになるだろうという文面の後に、短い別れの言葉が書置きを締めくくっていた。  
 読み終わるや否や、薫は桜庭館を飛び出した。  
 
 まだ人通りの少ない街中を薫は全力で走った。何処に向かっているのか自分でもよく判らなかった。  
葵の実家か。或いは例の会社が都心の一等地に建てた超高層の自社ビルへか。ただ、じっとしていられなかったのだ。  
 ガッシャーン!!  
 薫は出会い頭に接触した新聞配達員の自転車を突き飛ばして尚も駆ける。  
 「おい! こら! 待ちやがれ!」  
 怒鳴る配達員を振り返りもせずに薫は走り去った。  
 途方にくれる配達員の足元には『桜庭グループ買収さる!』との大きな活字が躍る今日の朝刊が散乱していた。  
 
第一部完  
 
 

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