その日オレは浮かれていた。
先週会社の後輩に誘われて競馬に初めて出かけた。 どのみちゲームと割り切って
万馬券のみに賭けたらこれが大当たり。
急にまとまった金が入ったわけだ。 勿論その晩は後輩にもおごったが、それでも
まだ結構な額がある。
叔父がこのパターンで身を持ち崩したのを知っているので、忘れてしまうためには
泡銭を消すに限る、とそこで思いだしたのがこの間見つけたチラシだった。
和服美人――どのみち何処かのモデルの盗用だろうと思ったが、気を引いたので
かけてみるとほぼ毎日出ている、と言う。
『どうせそんななら期待できないか……まあ、どぶに捨てるも良いか』
割り切って予約を入れることにした。 幸い時間は自由だ、金もある。
一晩借り切りのコースを頼む――二十万ちょっとの残りは一気に消し飛んだ。
伊達に高級ソープをやってないのか、受付は声も乱さず「承りました」と来る
――少し悔しかったのは秘密だ。
駅からのリムジンでのお出迎え……かなりたまげたが何とか押し殺す。
受付で支払いを済ませて(全額先払い……値段相応の商売しなかったらあっという間に客が離れるな、こりゃ)控え室へ。
面通し――
「葵と申します――ようこそいらっしゃいました。 今宵は、ゆっくりお楽しみくださいね」
三つ指ついてにっこりと出迎える、藍染姿の美人――いや、美少女。
オレはこの娘を知っている。
「――二丁目ポスト前のひいらぎ荘」
ぼそりと呟くと顔色が変わった。 ああ、やっぱりあの娘か。 いつもは
古びたスカートやセーターだったので一瞬解らなかった――特に、和服の着こなしが
とても自然だったから。
「……コートを、お預かりいたします……」
言葉は何とか押し殺すけど、その瞳の揺れも指先の震えも隠せていない――頬も青ざめている。
ここで悪い奴ならネタを掴んだと脅しに掛かるのだろうけど、オレはそんなことが
出来る質じゃない……柄じゃあない。
「ああ、見間違えたみたいだ……いくら可愛いからって、一緒にしたらあの娘に失礼だな」
わざと明るく言うと、頬が赤みを取り戻した。 揺れるおかっぱの下辺りまで
赤くなっているのは……こんな仕事、を自覚させられたからか?
予想していた言葉の無礼をたしなめる台詞はないまま、コートを、スーツを脱がされ、
ネクタイを抜かれ……かいがいしく世話をされる。 朱を掃いた横顔にふと悪戯心が湧き
「お風呂の準備前にさ、ちょっとこっちに来てくれないかな?」
「はい?――ん、むぅ?(ちゅくっ)」
第一印象通りに無警戒な様子で近づいてくる手首を捉えると、顎先を摘んでキス
――そのまま唇を割って舌を滑り込ませる。
一瞬だけもがくけど客相手に拒否は出来ない――すぐに力を抜いた手が下に垂れる。
……その手で、情熱的に背中をひっかかせてやる。
決意と共に舌をうねらせる。 上蓋を舌先でくすぐり、
「んもおぉっ……ふ、んんっ(ちゅくっ)」
慄く舌を絡め取り、唇で甘咬み突き出される先端を弄び
「んぉ……ふ、んんっ♪(じゅ)んんぅ、ンあぁ……っ(じゅく、ちゅ)」
溜まる唾液を唇をぶつけるように密着させて、流し込む間も唇同士をぬるぬるとすり合わせる。
「ンぐ……む(ごくっ)ふぅ……ん、むぅんん……っ♪(ず……ごくっ)」
喉を鳴らしてオレの唾を飲みこまさせて、なおもキスを続ける。
★――どれくらい経っただろうか?
葵ちゃんはオレの背に腕を回すと爪を立て、こちらの動きの一つ一つに甘えた抗議を
返してくる様になった。
くちゅくちゅと隙間から粘りついた音がたつ度に、蕩けた鼻声が耳をくすぐる
――膝に力が入らないのか、すっかりこちらに体重を預けきって。
ちゅう、と少し強めに舌を吸い上げると、固く瞑られた瞼の隙間から快楽の涙をにじませ、
すがりつくようにしがみついて全身を震えさせる……。
情熱的とは違うが、何とも趣のある反応をたっぷり楽しんでから唇を離す。
「(ちゅ……)ふぁ…………ぁ?」
惚けきった表情と、半開きの唇から物欲しげに覗く舌。 ……キスのテクニックを
磨いておいた甲斐があるという物だ。
「それでさ、お風呂はいるんだから服脱がせてくれるかな?」
「ふぇ……え、は、はい!」
風呂に入ってからリップかな?そんな予想を立てたが、そこでまた意表を突かれる。
「は……失礼、いたします……ん♪(ちゅっ)」
ボタンを外しながら、剥き出しになった首筋にキス。 さらにはだけながらちろちろと
舌を這わせ、リップを続ける。
――汗ごとピンクの唇で拭う様なサービス。 驚くと共に快感が走る。
「む……ぅ」
「(くす)動かないでくださいね?脱がせられませんから……(ちゅっ)」
キスで惚けた表情は、いつの間にか小悪魔のような微笑みに取って代わられている。
そこに滲んでいる淫蕩さは、オレのキスで引き出された物だけど、おかげでより一層
魅力的な物になってしまっている。
見とれているうちにYシャツは剥がれ、シャツもたくし上げられ――首を抜く前に
ちゅうっ
「くぁ?!」
「ふふ……乳首、こんなに固くなってますよ?さっきのキスで……お客様も、興奮してたんですね♪」
からかうような言葉に反論の隙を与えないようにと、葵ちゃんの唇がきつく乳首を
吸い上げ、舌が乳輪を這う。
★巧い――だらしなく、それこそ小娘みたいに声をあげてしまうが、その声を聞くたびに
楽しそうな含み笑いを聞かされて抵抗する気がなくなる。 素直に快感に身を任せる方が得だろう。
ひとしきり両乳首を責められると、さっきの葵ちゃんのように立っているのが辛くなる
――彼女はそれを見て取るとオレをソファへと座らせて、動きを利用して
完全に裸になった上半身を更に丁寧に責め始めた。
「ン……ふ(ちゅっ)む……ん♪(ちろ、ちるっ)ふふ……んー♪(ちゅうう)」
胸板にキスマークを刻みながら頻繁に乳首に戻って責め立てる、快感の残響が消えないようにと。
声を上げるたびにより吸い付きはきつくなり、合間にしなやかな指先が肌を這い、
あるいは唾に濡れた乳首をくすぐる。
――恥ずかしながら、この日のためにと溜めていたせいか、もうでてしまいそうで。
「ま、待った!このままじゃイっちゃうよ」
「あっ?」
慌てて躰を引き剥がした。 びっくりした顔でこちらを見下ろしていた葵ちゃんは、
合点がいったと小さく首を振り
「はい……それでは、こちらも脱がして差し上げます」
実に楽しげにそう言うと、ベルトに手を掛けた。
こちらが腰を浮かせるのに合わせて手慣れた様子で降ろし、オレの興奮がある程度
治まるようにと脱がした服を畳み始めた――実に細かな気遣い。
畳み終える頃にはある程度落ち着いて、リップを再開しようとするのを
押しとどめることも出来るようになる。
「そのさ、葵ちゃんはオレで何人目の客?」
普通なら秘密ですと笑って流されるかたしなめられるような質問に、
葵ちゃんはオレが予想していたように
「(かあっ)あ……その、あなたで……50人、位だと思います……」
顔を真っ赤にして答えてくれた――これは、彼女の素なんだろう。
「そう、そんなにたくさんの人にこんなことしたんだ?」
鳩尾の辺りに頭を抱きしめて促す――どうせなら、娼婦の葵だけでなく、
素の彼女にも唇を捧げて欲しい。
僅かに躊躇うようにしたけれど、離さないと解ると躊躇いがちに舌が伸ばされて肌をくすぐった。
「ッ……は」
また味の異なる舌の奉仕に声が漏れる。 それに後押しされてか、僅かずつ巧みになる舌と唇。
味わうように肋を這い、躊躇い無く腋にキスが降り、唾液のぬめりを塗り伸ばすように
さわさわと指が踊る。
上半身にくまなく唇を捧げ終える頃には、さっきにも増したテクニックを凝らした責めが
オレを翻弄していた。
「は、ハァ……く、凄いね、葵ちゃん」
「ありがとうございます……ここも、もうこんなに濡れてますよ?」
「っ!ま、まった!そ……く」
溢れ出した先走りはトランクスをじっとり濡らして、がちがちに突き立ったチンポの形を
浮き彫りにしている。
★そこをそっと包むように葵ちゃんの掌が被さったからたまらない。 オレとしては
突き上げてくる衝動を必死で噛みつぶすしかできなかった。
「ぴくぴく言ってます……もう、射精しそうなんですね?
びゅっ、びゅって……せいえき、出しちゃいたいんですね?
おちんちんの先から、どろどろした物、噴き出しちゃいそうなんですね?」
「くぁ……や、待っ……」
葵ちゃんは掌の中の脈打ち方で限界を見透かして、わざと激しくしない、
オレが耐えられるぎりぎりの動きを続けたまま言葉で興奮を煽ってくる。
ことさらに卑語を使ってくるからかうような声は、日頃の挨拶や姿を知っているオレにとっては
とんでもなく強烈に作用する。
「このままじゃ、パンツ汚れちゃいますね」
それすら理解して、彼女はそっと刺激を与えないようにトランクスを脱がし
「ここなら、射精しても汚れませんよ♪(はぁ)」
さわさわと熱い風がチンポをくすぐったのを感じて目をやると、そうやって目が
向けられるまで動かず待っていた、突き出された舌と唇、淫靡に笑う瞳に迎えられ
「は……む♪(ちゅぷ……ぢゅううっ!)」
熱い舌を貼り付けられ、擦りたてながらカウパーでとろとろの亀頭を吸いつくように呑まれ
――我慢を突き崩すようにバキュームフェラをされた。
無論耐えきれるはずもない
どくんっ!
「うあぁ……く、ううぅ、うっ!」
「んぐ……む、んっ♪(ごく、ごくんっ!……ずずっ)」
どくどくと大量に射精する間じゅう、吸い上げと舌のくねりを加えられて腰が
溶けそうな快感に襲われ続けることになった。
一瞬とも永遠とも思える時間が過ぎて、ようやく外部が認識できるようになると
「ン……ふむ、ンふぅ……♪(ちゅぱ、じゅ)」
射精が済んだペニスをゆっくりしゃぶり続けている葵ちゃんに――そして、そこからの
快感に気づかされることになった。
激しくすると辛いと解っているのかその動きはごくゆっくりと、いたわるような物で。
その奉仕を受けるうちにオレの物は萎えることなく再びさっきまでの大きさを取り戻すことになっていた。
「(ずる……ちゅっ)ふぁ……いかが、でしたか?」
「さいこうだよ……こんなに気持ちいいフェラ、初めてだ……」
「ふふ……あなたもまだこんなにたくましくて……素敵です♪(ちゅ)」
いかにも愛おしげに鈴口にキスをする葵ちゃんの姿は、演技だと解っていても
男心をくすぐらずにいない。
「つ、次はお風呂に行こうよ、脱いだんだしさ」
「(くすくす)はい、承りました♪」
愉しげに笑う葵ちゃん……次はこっちが主導権取れるか?