「あっ……」
その光景を見た瞬間、彼女は自分の行動を悔いた。
(こ……こんな風になっているだなんて……何て淫らなのかしら……)
浴槽の縁に片脚をかけ、己の股間の間に差し出した鏡に映る生殖器官を見ながら葵
は肌を粟立てた。
ゴクッ。
カラカラに乾いた咽喉に粘つく唾液を流し込み、それを嚥下する音が広い浴室に響
いた。
(……凄く……凄く……ひ、卑猥だわ……)
(雅さんや……ティナさんや妙子ちゃんのもこんな風なのかしら?)
(そ、それとも……私のものだけがこんなに……猥褻なの?)
生まれて初めて目の当たりにする己の股座の割れ目の有様。勿論他の女性のものな
ど今までに見る機会もなかった。己の持ち物が他人のものとどれほどの違いがあるの
かの判断基準を持ち合せていない事が、葵の胸を不安に慄かせる。
目を閉じて鏡の中に映る光景から逃げ出してしまいたい。そう思いながらも視線は
縛り付けられたかのようにその一点に釘付けになったままだ。
(……私の身体にこんなトコロがあっただなんて……)
艶やかに黒々と輝く葵の陰毛は、年頃の少女にしては堂々とした繁り具合だ。ヘア
ーの質も一本一本が太い剛毛であることがその密生の濃さと相俟って、少女の股間に
漆黒のジャングルを造り出しているのだ。デルタ型に生い茂った密林は、その発生か
ら今日に到るまでに只の一度の手入れもされた事がないのであろう、伸び放題に繁茂
している。クレヴァスの両端を縁取るような飾り毛は下に進むに従って徐々にまばら
になってはいたが、それでも裏門の周囲にも柔らかな和毛を数本生やしていた。
だが葵の目を釘付けにしているのは剛毛ジャングルの奥の秘密の部分だった。白魚
のような指先で梳き分けた漆黒の恥毛の狭間にひっそりと咲いた肉の華。見れば見る
程に複雑精緻な肉襞の重なりだった。ふっくらと柔らかく盛り上がった肉厚土手高の
恥丘は、中央に深々と刻まれたクレヴァスの縁をほんのりと桜色に染めている。色素
の沈着は微塵も認められない。
透き通るようなサーモンピンクに煌めくラヴィアは、あくまでも瑞々しく楚々とし
た佇まいだ。
押し広げられた肉の裂け目の奥には、桜庭家の御令嬢が育んできた肉の華が咲き綻
んでいた。上端の陰核は包皮に完全に覆い隠されており、その姿を垣間見る事は叶わ
なかった。だが、葵の性感はその奥に甘い疼きを覚えているのだった。
(……何かしら……あの辺りが……ジンジンと痺れてるみたい……)
浴槽の中の湯を汲み取った手桶で指先を湿らせ、妖しい電流の発信源と思しき個所
をそっと触れてみる。
「あはンッ!!」
余りに強すぎる刺激に葵は頤を仰け反らせてしまう。思わず漏らしてしまった甘い
声を誰かに聞かれはしなかったかと掌で口元を覆い、周囲を見渡してしまう葵。勿論
、こんな時間に誰かが浴室にいよう筈もなかった。
葵は初めから今晩はそのつもりで、わざと入浴の時間を遅らせたのだ。
(……そ、それにしても……)
あまりにも強すぎる刺激だった。
葵はこれまでに一度たりとて手淫をした事がなかった。万事につけて慎み深くあれ
と育てられてきた彼女にとって、自分で自分を慰める事など思いよる筈もなかった。
いくら深窓の令嬢とても人の子であることには変わりが無い。だが葵は、悶々とした
情欲に身を焦がす夜にも決して己の股間に指を伸ばすことはしなかった。堪えかねて
、脚の間に枕や布団を挟んでしまう事はあったにしてもだ。
そんな葵のバージンクリットは、包皮越しとはいえ初めて触れられるその感覚に敏
感な反応で応える。
(……な、何?)
明らかに、いま自分の指先が触れた個所に変化が起きていた。プヨプヨとしたフー
ドの奥では内側からムクムクと何かが膨張している。
(ああっ……こ、怖い……触ってはいけなかったんだわ……)
既にその奥は痛いほどの感覚を葵にもたらしている。
(ど、どうなってしまうのっ……お、お医者様を呼ばなくてはならないのかしら
……)
自分の股の間を触って病院に担ぎ込まれるなど、それ以上はないほどの屈辱だ。
何よりも愛しい薫にそんな事を知られるぐらいなら死んだほうがましとも思われる。
(い、嫌ッ……な、なんだか、どんどん大きくなってきているみたい……)
包皮の内側では、既に陰核が充血勃起しているのであろう。甘い刺激はもはや痛み
に近い程である。
「あっ!……」
ついに明らかな変化が葵のクリットに訪れた。包皮の影からなにやら小さな突起が
顔を覗かせたのだ。
(……む、剥けてるの?……皮が、剥けちゃう……ど、どうしましょう……)
(お、お薬を塗れば直るのかしら?……ああっ、誰に相談を……)
(あっ……と、止まらない……どんどん、剥けちゃってる……)
(こ、これ以上剥けちゃったら、も、元に戻らなくなっちゃう……)
もはや当初の好奇心など何処かへ霧散していた。もう手鏡など見てい
る余裕も無かった。刻々と変化してゆく己の女陰を見るのが怖かったのだ。
葵は殆ど恐慌に陥りながら、反射的に包皮を元に戻そうとした。
指先が「傷口」に触れたその瞬間。
「かはァッ!」
小振りなヒップが跳ねる様に後ろに引いた。どんどん敏感になっていくよう
だった。余りにも敏感なクリットはもはや直接触れる事を許してはくれなかっ
た。
(も、もう手遅れなのっ?)
いまにも泣き出さんばかりに瞳を潤ませる葵。もう彼女にはこの事態が自分
の手に余る事は明らかだった。事が事だけに母親にも相談出来ない。
(か、薫様にこんな事が知られてしまったら……)
脳裏に愛しい男性の面影が浮かぶ。
ズキンッ。
葵のクリトリスは更に充血肥大していくのであった。
まるで火がついたかと錯覚する程に股の間で熱く燃え上がる炎を消そうと
して、葵はシャワーに手を伸ばした。「傷口」に障るといけないと思い、
入念に温度を調節してから水流の矛先を羞恥の源泉へと向ける。
「うんッ……」
ソフトなぬるま湯の当たりが葵の身体を疼かせた。
(……き、気持ちいい……)
ブルッと身体を震わせるのとシンクロして、葵の胸元にたわわに実った
釣鐘型の乳房もプルンと揺れた。彼女自身はまだ気が付いてはいなかったが、
その膨らみの先端を飾るベビーピンクの慎ましやかな小粒の乳首も、ピンッ
と尖り勃っていた。
葵はほとんど本能的に、そう、快楽を追い求める雌の本能でシャワーの
勢いを徐々に強くしていった。
敏感な神経はシャワーの先端から迸る一本一本の細い水流が今、肉豆に
当たっているのか否かすらもはっきりと感知できるほどに冴え渡っていた。
だが、火照った部分を冷ます為に始めた筈のシャワーは、一層葵の敏感な
神経を昂ぶらせてしまう。これでは逆効果だと判断した葵は腰掛けの上に
尻を置き、桜庭家の令嬢にはあるまじきあられもない角度に脚を拡げて、
身を屈めるようにして己の股座を覗き込んだ。怖くはあったが、自分の目で
確かめなければさらに不安が増大するばかりであった。
(こ、こんなに……もう、もう取り返しがつかない……)
葵の可憐なクリトリスは既に包皮を完全に脱ぎ捨て、パールピンクに濡れ煌く
しの全貌を露わにしていた。時折ピクピクと震えているのは、初めて目の当たりに
した外界の様子に戸惑っているのか。だが、当の葵のうろたえ様はそれどころでは
なかった。
(ど……どうしましょう……こんな身体になってしまって……)
(薫様に、薫様に合わせる顔が……)
肥大したクリトリスをまじまじと見詰めながら途方にくれる葵。初心な葵はこの
身体の火照りを鎮める方法すら知らないのだ。
(もう……薫様に顔向けの出来ない体になってしまったんだわ……)
それにしても、あらためて見れば見る程に自分の脚の間にこんなモノがパックリ
口を開けているとは信じられなかった。
なんという醜さだろう。生々しい肉色をした薄いラヴィアが幾枚も折り重なって
複雑精緻な迷宮をつくりだしている。まるで内臓が露出しているように葵の目には
映った。黒々とした陰毛の艶がサーモンピンクのヴァギナをより一層際立たせていた。
(男の人の……薫様のものは……ココに挿るのかしら?)
葵はポッチリと尖り勃った陰核のすぐ下の、周囲の肉色よりはやや濃い目の紅に
色づいた小さな孔を小指の爪の先で軽く擦った。
「……ッ!!」
あっ、と思った時には既に葵の股間で黄金色の飛沫が弾けた。
「ああっ!………」
あちこちに乱れ飛ぶ放物線の行く先がようやく一点に定まり、ジョボジョボとはしたない音を立てて浴室の床を叩く。驚きのあまり、葵は只々己が垂れ流す一条の奔流を見つめている事しか出来なかった。
葵の黄金水がうっすらと白い湯気を立てている。先の住人が浴室を使ってからだいぶ時間が経過していた事もあり、室内の空気は既に冷え切っていたのが思いがけない失禁を呼び寄せたのか。
それでも入浴前に用を足していた事もあり、膀胱の中の小水はそれほど溜まってはいなかった。やがてその勢いは徐々に衰え、濡れそぼった下生えを伝い落ちる。ほんの僅かの排尿を終えた葵の身体が小便に体温を奪われて小さく震えた。
(ああ………なんて事を……こ、こんな所で……用を足してしまうだなんて……)
(………卑らしい事をした罰が当たったんだわ……あんな場所の皮が剥けてしまったのだって……)
もっと自分の身体の事を知りたいという好奇心と、こんな事をしてはいけないという自制心とがせめぎ合う。だが、葵の指はぞくぞくする背徳の愉悦に突き動かされてしまう。
歪な形で押さえ込まれていた年頃の少女の性欲の力はそれほどに強かったのだ。
コリコリにしこった肉豆を指の腹で転がす度に身体が震えた。最初は痛みを覚えていた筈だったのに肉の真珠を捏ねれば捏ねる程、ジンとした痺れが股間の一点から全身に疾る。
不思議なことに、弄っていない筈の両の乳首からも甘い疼きが波紋のように拡がってゆく。胸元に目を向けるといつもは薄桃色だった乳首が濃く色付き、あまつさえ小さかった
筈のそれが充血してピンと肥大勃起しているのにようやく気が付く。
(ああ……胸までこんな風に……)
じっくりと目を凝らせば可憐な乳輪までもがふっくらと浮き出している事も判る。乳房全体が重く感じられ、張りが増しているのが葵にも判った。
(………怖い……胸が……破裂してしまいそうっ……)
乳房を指先で揉みほぐそうとするがそれは逆効果だったようだ。軽く握っただけなのに、想像を上回る衝撃が身体の奥にズンと響いた。
(こっ、これが……『感じる』という事なの?)
薫の背中にそっと胸を押し当てた時にも乳房が火照るのを感じた。だが今のこの感覚とは比べ物にならぬほどの幼稚な快感だったと今更ながらに思う。
小刻みに跳ねるムッチリとした尻たぼが腰掛の上から滑り落ちるかも知れぬと思った葵は、直に浴室のタイルの上に腰を落とした。
(……さっきの所は……オシッコが出る場所だったのだわ……)
(それでは……薫様の……アレが……挿ってくるトコロは何処なのかしら?……)
つい先程小便を漏らしてしまったことをようやく思い出した葵は浴槽の中の湯を手桶に汲み、脚の付け根を二度ほど湯に潜らせて洗い清める。
浴室の灯りの下に湯に濡れた少女の羞恥の源泉が余す事無く曝け出される。己の股間を身を屈めて覗き込む葵の瞳に縦一列に並んだ生殖と排泄の器官の全てが飛び込んでくる。
目を背けたくなる程に淫らだった。それなのにじっと食い入るように己の媚肉を凝視してしまう葵。
白魚のような指先がバージンピンクの海を泳ぐ。複雑に折り重なった処女のラヴィアは朝露に濡れる薔薇の花弁に酷似している。その花弁を一枚一枚捲り返して膣孔の在り処を探す葵。
(……ど、どこかしら……おかしいわ……)
(ひょっとして……私の身体に欠陥があって……もしも……)
(………薫様を受け入れられなかったら……)
葵の拙い性に関する知識では、女性には男性を受け入れる為の孔がある筈だった。リアリティを伴わない男女の結合時の断面図が彼女の脳裏に浮かんだ。
勿論、葵の身体に何の欠陥もあろう筈がなかった。生まれてから今日まで異物挿入オナニーの経験も無く、ずっとナプキンしか使った事のない葵にはその所在が判らないだけに過ぎない。
只の一度も何物の侵入をも許した事の無い葵のの処女膣は上下左右からせめぎ合う肉に押し潰されてその入り口を閉ざしているのだ。
(……見つからないわ……どうしたら……)
「あ……」
媚肉の割れ目をまさぐる葵の指先が窪みを捉えた。
(こ……此処かしら?)
窪みの深さを確かめるかのように指を動かす。むず痒いような今までに体験した事のない不思議な感覚が背筋を駆け上がる。
「ああっ……」
悩ましげな溜息。それと意識しなくても、その声に甘いものが混じりつつある。
己の指先を濡らしているのはもはや湯ではなく、自分の体内から溢れ出したものだという事も気付かないほどに行為に没頭する葵。
(ああっ……薫様……ゆ、許して下さいっ……)
なぜ薫に謝らなければいけないのかも判らない葵だったが、この自分の行為が後ろめたい行いだということは本能的に認識していた。
心の中で愛しい人に詫びる葵だったが、その指先は一向に一人遊びを止めようとはしなかった。
もはや上体を起こしているのさえも辛くかった。葵は股間を覗き込んだままの姿勢で額を床につける。丸くなっていた背中が一転して弓なりに反り返り、クイと尻を天井に向けて突き出す。
ムッチリとした尻肉の谷間にココナッツブラウンの菊花が可憐に咲いている。葵の激しい息遣いに合わせて放射線状に深く刻み込まれたアナル皺が収縮を繰り返して、
その奥のサーモンピンクの肛門粘膜が見え隠れしている。
ヴァギナから溢れ出した肉汁は内腿をべったりと濡らしながら、まるでナメクジが這った跡のような粘液の帯を膝まで描いている。
葵がクナクナと細腰を振る度にラブジュースが浴室の床を汚した。
「……いいッ……いいの……」
貞淑な少女の身体の中で目覚めた性欲は彼女の心まで支配してしまったようだ。淫らな行為にふける葵を咎める者もいない浴室に甘い喘ぎ声が響き渡る。
葵が上体を半身に起こして捩った。完璧な曲線を描いていた胸の片球は彼女自身の指で鷲掴みにされて惨めに形を変えてしまっている。
わしわしと揉みしだく度に指の隙間から柔らかく蕩けた乳肉がはみ出す。コチコチに硬くなった乳首を指の股の間で挟んで扱く。
(ああっ……も、もう一本……もう一本、腕が欲しい………)
おあずけを食らっているもう一方の乳房も同時に愛撫できないもどかしさゆえに、床のタイルに膨らみを押し付け、擦り付ける事で寂しさを誤魔化す。
(……き、気持ち……イイ……どうなってしまうの、私……)
(何処へいってしまうの……薫様……私、怖いんです……)
初めて知った悦楽の、その底知れぬ深さに葵は慄きを隠せない。
(薫様ッ……葵が、葵が遠くに行ってしまわないように……抱きしめて下さい……強く……もっと強く……)
だが、遅ればせながらようやく発情期を迎えた葵のおんなの本能は一向に指戯を止める気配を見せない。
それどころか、彼女が心の中で愛しい人の面影を思い浮かべれば浮かべる程、その動きはより一層激しさを増すばかりであった。
(薫様っ……薫様っ、薫様っ……ああっ……いけない葵を……許して下さいッ……)
ドロドロとした葵の恥汁は尽きる事無く滾々と湧き続ける。その源泉は初心な指先が探り当てた小さな窪みの奥からのようだと葵は気が付いた。
(ひょっとして………この奥が、薫様を受け入れる処なの?)
葵は恐る恐る股の間をくぐらせた指先を窪みの中心にあてがう。瞼を固く閉じて、唇を噛み締めて、息を止めて。そして、指先に力を入れた。
ニュルンッ!
溢れ零した豊潤な愛液にも助けられたのか、葵の中指はさしたる抵抗にも遭わずに第一関節の辺りまで沈み込んでしまった。
「っ!…………」
吃驚したのは葵だ。まさか指先が入ってしまうという事態を全く想定していなかったらしく、予想外の成り行きにじっと身を強張らせている。
(は……入ってしまうなんて……ど、どうしましょう……)
(でも……何だか気持ちがイイ……)
痛みにも似た鋭い刺激が電流の如く駆け抜ける乳首やクリトリスとも、肺が押し潰されて息が出来なくなるほどの衝撃をもたらす乳房とも違う、
空閨を満たされる充足感は葵の心を落ち着かせた。
(………本当にこの場所が薫様をお迎えする処なのかしら?)
ようやく人心地ついたのか、溜めていた息を吐き出す。そして彼女の指先が来るべき薫との交合の下見でもするかのように己が胎内を探索しはじめる。
自分の内側は想像していたよりもずっと熱かった。
(……こんなに熱いなんて…………ひょっとして感じているからかしら………薫様のものが火傷されてしまわれないか心配だわ……)
(……この奥から……オツユが溢れてくるのね………私の身体がおかしいのかしら…………それとも女の人はみんなそうなの?)
指先に感じるぬめりが、先程股間を流したお湯のものではないことは明らかだった。指先を蠢かせる度にクチュクチュと湿った音がした。
処女膣が細い指をキュンキュンと締め付けてくる。柔肉に埋もれた指先を捏ね回すとうっとりするような快感がこみ上げてくる。
(どこまで挿るのかしら?……)
ゆっくりと、慎重に指を沈めてゆく葵。やがて中指は第二間接まで彼女の胎内に消え、遂にはねもとまでずっぽりと潜り込んでしまった。
(挿っちゃった……根元まで、挿っちゃった…………)
窮屈な葵の肉路の中で軽く指先を曲げてみる。指先がなにやら小さな粒々がびっしりと並んでいるような部分に触れた瞬間、葵の腰がブルブルと震えた。
「はうッ!?」
(な、何?……ここにも、物凄く気持ちのイイ処が……)
指先であらためて探ってみるとその粒が密集している場所はごくごく狭い範囲だった。その範囲を確かめる為に指を数回往復させただけで、葵はもう腰が抜けたようになってしまっている。
膝立ちでヒップを高く掲げ上げた姿勢もこれ以上は維持していられない程だ。
これ以上摩擦を繰り返せば行き着く所まで行ってしまう、という事がアクメを知らない筈の葵にもはっきりと判った。
名残惜しそうに中指を咥え込む自分の媚肉をなだめすかしてそれを引き抜く。
ヂュポン。
「くゥッ!……」
背筋が痺れた。指を抜くという行為だけでも感じてしまうのだ。葵は感じやす過ぎる女の肉体を恨めしく思った。
己の胎内に埋没していた指先を目の前に持ってくる。ヌルヌルとした粘液がべっとりとこびり付いている。好奇心に釣られて己の匂いを嗅いでみる。
僅かに鼻をヒクつかせて、すぐに顔を背けた。今晩幾度目の後悔であろうか。濃厚な自分の恥臭が鼻についた。
官能の炎に炙られて動作の鈍い身体をのろのろと動かして、遂には背を床にして仰向けになる。そして和式の便器で用を足すときでも拡げたことの無いような大きな角度で
、すなわち桜庭葵のこれまでの人生の中で最も大きな角度で、太股を左右に開いた。
青い静脈が透けて見える程の仄白い内腿はその付け根の筋をクッキリと浮かび上がらせている。
葵が噴き零した肉汁に濡れそぼった陰毛はピッタリと恥丘に張り付いて、ふっくらと盛り上がってしまったその形を露わにしてしまっている。
葵が自分の目でクレヴァスの状況を確かめなかったのは幸いだったのかもしれない。惨々たる有様なのだ。
小粒なクリトリスはまだ充血が続いており、ピンピンに尖り勃っている。
左右からぴったりと寄り添ったサーモンピンクの媚肉は、その狭間からジュクジュクと泡立って白濁した涎を物欲しそうに垂れ流している。
零れ落ちる愛液は瑞々しい葵の肢体の中にあって唯一ヶ所だけ捩れて皺になっている蟻の門渡りを伝って裏菊までをもしとどに濡らしているのだ。
桜貝にも似た、よく手入れされた爪を乗せた指先が胎内への再突入を試みる。先ほどの挿入で感覚を掴んだのか、葵は躊躇う事なく、だがゆっくりと、最初の挿入に使った中指を再び根元まで埋め込んだ。
待ちきれなかった蜜壷がもう逃さぬと云わんばかりにギュンギュンと締め付けてくる。
「うンッ……くぅっ…………」
意識的に粒々のある部分に指を這わすのは避けた。その部分は後の愉しみに取っておくつもりだった。
完全に埋没した指をゆっくりと引き抜く。狭隘な肉路の微細な襞が指に絡みついて獲物を放そうとしない。それを引き剥がすようにして指先をようやく入り口近くまで引き摺り出す。
そしてさっきの挿入よりも若干スピードを上げて中指を埋め込む。
指の付け根が恥丘に食い込み、蜜壷いっぱいに満ちていた粘液が居場所を無くして膣から溢れ出す。
潤滑油のおかげでますます滑りの良くなった指ピストン。その動きに合わせて淫らがましく湿った音が葵の耳にも届いた。
(な、何て卑らしいの……私の身体が……こんなエッチな音を……)
彼女には今までに感じたことの無い形容のし難い何かが自分の身体の内側で膨れ上がっていくのを止める手立てを持っていなかった。]
ただ情欲に身を任せて指を繰る事しか出来ないのだ。
正常な思考はとうに消え失せ、狂ったように快楽を追い求める一匹の牝。そこにはもはや淑やかで慎ましい、名家桜庭の深窓の令嬢の姿は無かった。
床にあった筈の葵の背中が弓なりに反り返り、タイルとの間に隙間をつくった。
「イイっ……イイのぉ……気持ちッ……イイッ」
指が出入りする度に、葵の背は床から離れてゆく。肩とヒップで支えられた優美なブリッジ。一片の贅肉をも見出せぬ葵のお腹にはびっしりと汗の玉が浮かび、
その瑞々しい円弧の頂点に刻まれた縦長の臍の穴は葵の汗で溜まり小さな水溜りになってしまっていた。
いつしか葵は中指を前後させながら親指と小指で器用にクリットを転がしていた。二本の指の間で右へ左へと翻弄される雌芯は真赤に充血して今にも弾けてしまわんばかりだ。
オナニー擦れのしていない初心で小粒なクリットが限界まで肥大しきると、次には葵の尻がジワジワと浮いてゆく。
ベッタリと床を濡らした彼女の恥汁が幾本もの糸を引いた。
彼女の柳腰がうねるように円を描きながら虚空に突き出されてゆく。己のヴァギナが向かうその先に、葵ははたして薫のペニスを思い描いているのだろうか。
葵の腰はもう浴室の床から30センチは優に浮いていた。踵までもが宙に浮き、爪先だけで下半身を支えている。
……やはり桜庭葵の遺伝子にも浅ましく淫蕩な牝の本能が組み込まれていたのか。細い指は相変わらず激しいピストンを繰り返していたが、遂には腰の方からも積極的に動き出して指を迎えに行く。
腰だ。腰を使っているのだ。腰が淫らに揺れる度に、パンパンに張りつめた乳房の頂に鎮座する勃起乳首が上下左右に激しく揺れ動いた。
セックスの事など何も知りません、という顔をしていたのは葵の仮面だったのか。いや、実際に何も知らないに等しい葵だったのだが、今の葵の痴態は見る者の目を疑わせるのに充分すぎる程の乱れ様だった。
腰を振る度に汗が撒き散らされ、浴室の灯りを受けて煌めいた。重く粘った愛液は糸を引いたまま葵の股間で時計の振り子か空中ブランコの様に大きく振れ、反動が付いた分だけより遠くへと飛び散った。
葵の股間から立ち昇るおんなの発情臭が浴室にこもる。牡を誘うムンとしたフェロモン臭に女の葵までもが中てられたかのようだ。頬にも、額にも、葵の艶髪が汗でべっとりと張り付いている。
「ああっ……もうッ……もうッ、駄……目ッ……私っ……!」
切れ切れの喘ぎ声の間からその言葉を搾り出したのが最後だった。葵の唇は陸に上がった魚の様に空気を貪るだけで、意味のある言葉はもうこれ以上は紡ぐ事が出来なくなっていた。
或いは……「イク」という言葉すら知らず、生まれて初めてアクメを迎える葵には今の己をどのように言ったらいいのかすら分からないのかもしれない。
(……か、薫様ッ……私は、葵はッ……)
(もうっ……い、何時でも……薫様をお迎えする準備は………)
(…………準備はっ、出来て、出来ていますッ!!)
(だから……だからッ!……早く……早く、葵を、葵を、薫様のものにっ……!!)
そして自分に止めを刺すつもりなのか、遂に葵の指先が禁断のスポットを擦り潰す。
「はうッ!!……おっ……ほおッ!!……かはァ……おおンッ!!」
彼女の唇から発せられたとは思えぬ、獣じみた喘ぎ声。葵の柔軟な身体は完璧なブリッジを形作り、
若鮎のような肢体が宙に浮かんばかりにビクンビクンと跳ねたその瞬間。
ぷしぃッ!
葵の股間で飛沫が弾けた。
ぷしッ、ぷしししッ!
間欠泉の様に、二度三度と吹き上がる液体。小便ではない。葵の膣がラブジュースを噴出させたのだ。
オルガズムを感じた瞬間、気をやった瞬間、絶頂に達してしまった瞬間にに潮を吹いたのだ。
流石に小水ほどの持続性も噴出量も無く、まるで単発の打ち上げ花火のように数回吹いただけで葵の潮吹きショウは幕を閉じた。
散々撒き散らした愛液のぬめりが爪先をズルズルと滑らせる。脚をおっぴろげたままでペタンと尻が床に落ちた。
自分の発情汁をこびり付かせた中指を目の前に持ってくる。先刻の後悔は今は跡形も無かった。
熱く濡れそぼった膣の中で時を過ごした指先は愛液でふやけていた。葵は躊躇う事なくその指先を唇に含んで舐め清める。
(……これが……私の……味……)
苦い筈の背徳の蜜の味は、予想に反して甘やかだった……
完