「大家さん、もう少しくらい女らしくなっても良かとばい・・・」  
「ですが、もし薫さまに嫌われるようなことになってしまいましては」  
 
 
              憂い  
 
 
日差しの眩しいさに思わず瞼を伏せてしまいそうな良い天気だった。  
しかしそれに関することもなく桜庭館の住人たちは  
今日も忙しく働いている。管理人である雅は取引先の電話の対応に追われてる。  
ハウスキーパーの妙子は節操とあちらこちらの掃除や洗濯。  
薫は珍しく一人で出かけると言い残し何処かへ行ってしまっていた。  
そして居間ではソファーに座って考え込む葵をティナが相談相手をしていた。  
 
「では・・・私はどうすればよろしいのでしょう」  
葵は瞳を少しだけ潤ませてティナの方を見る。  
「大家さんの今のままでも凄く良かと。女のあたしでも凄く羨ましいたい」  
「え・・・そうなんですか?」  
葵は恥かしげに、でも嬉しそうに頬を染め、瞳をうつろわせた。  
「うん。その雰囲気に少しだけ艶を足して薫の所さ行くばい。あとは自分の心に素直にいること。そうすれば必ず上手く行く筈ばい」  
「ティナさん、艶とはいったい何の事ですか?」  
「簡単に言えば色気の事さたい。ハスっぽいのはダメ。下品なのもノー。微かに、でも確りと相手に伝えることが大事かと」  
 
「分かってます・・・分かってますけど」  
ティナは悩む葵を見つめる。  
不安な面持ちで身を震わせ、。好きな薫のことに思い悩む不器用な葵が妬ましく、でも少し愛しかった。  
「ふうっ・・・ここで考えていても思いつかんばい。うちの部屋さいかんかい?」  
「そうですね、じゃあお片づけだけしていきますのでお部屋でお待ちください」  
そう言って二人はそれぞれ別れた。  
 
「ティナさん、葵です」  
「はいはい、どうぞ〜」  
「ティナさんの部屋っていつもきれいですね」  
「そんなーいつも大家さんや妙子が  
掃除する時に最低限の片付けをしておくようなもんよ」  
そう言ってティナは笑った。  
「それは助かります。これからもお願いします」  
「そげいなこと保障できんばい」  
「それでは先程の話の続きをお伺いしたいのですが」  
ティナはあまり言いたくなかった。  
ほぼ全てとられてる自分の好きな人を  
全部渡したくないとまだ気持ちの整理ができてなかった  
と、彼女はとっさに閃いた。  
葵に少しイタズラしてやろうと。  
 
「じゃあ少しだけあたしを薫と思って、さあこっちへおいで」  
そういってティナは葵の背に腕を回し、軽く引き寄せる。  
葵は面白おかしくさ半分でそしてどこか気恥ずかしく  
思ったが興味本位もあって寄り添った。  
 
「いい?じゃあ静かに目を閉じて・・・」  
ティナも自ら少し戸惑いながらも薫のふりをして葵に  
話しかける。  
葵もそんなに悪いことと思わなかった  
ので言うままに目を閉じた。  
 
きっと本気でじゃない、まさかそんなこと・・・  
と考えていた。が、ティナはその気だった。  
「・・・あっ・・・」  
葵の身体がティナに包まれる。  
穏やかな抱擁と肌から伝わる温もりにおもわず目を開けてしまった。  
 
「あ、あのティナさん」  
「喋ったらいかんと。従順にしてないと薫に嫌われるばい」  
「そんな・・・葵は」  
そしてティナは彼女の耳元に口を寄せ甘く囁く。  
「大家さん、薫とキスをしたんばい。どう、気持ちよかと?」  
彼女の身体がビクッと小さく跳ねる。  
「そのあと薫さ抱きしめて貰ったんじゃなかと?たとえば、こんな風に」  
葵の腰骨から背にそって軽く指を泳がす。  
 
「・・・ぁぁ・・・」  
うなじに唇を押しあて、舌で舐め上げる。  
もう一方の手を膝から尻へ向けて這わせて行く。  
ぶるっと葵の身体が震える。  
「ティナさんやめてください・・・」  
 
離れようとする葵の背にティナはしっかりと腕を回す。  
そして、ゆっくりとソファーに身体をあずける。  
ティナは体重を少しずつ葵にかけてゆく。  
そのじょじょにかかる重みの心地よさに葵は驚き、思わずティナの背に自分の腕をまわしてしまう。  
彼女の身体がティナの下で徐々に開かれていった。  
 
ティナは葵の瞳を見つめて呟く。  
「大家さんってやっぱ可愛いわ。こんなに可愛い人に慕われる薫が正直羨ましいばい・・・」  
おもわず口から出た本心、それを隠すかのように勢いにまかせ唇をあわせる。  
初めは軽く、徐々に深く。  
「はあっ!」  
堪えきれずに葵が唇を離して喘ぐ。  
 
すうっと脇から胸へ向けて手を這わせながら彼女の唇を追う。  
「・・・・大家さん、ホントいい体してるたい」  
さらに深く、音が漏れるほどに唇を奪う。  
葵はその初めての感覚にもはや何も抵抗できず  
ただされるがままの状態であった。  
そんな己の痴態に耐えてる葵をティナは指を膝から内股へとすりあげる。  
「んあぁぁ・・・・ぅぁっ・・・」  
あわせた唇の合間から葵の溜息と喘ぎが溢れた。  
 
葵の身体から彼女独特の清楚な甘い匂いに本家アメリカ人には  
劣るものの男遊びを知らないがその国の人らしく色気のある女の匂いが混じる。  
自らも今この場の雰囲気に酔ってるように勢ったティナは  
唇を葵の首筋に寄せて舐め上げる。  
 
そして葵のその大きな乳房をゆくっりと柔らかく捏ねる。  
「はうっ・・・ああぁっ!」  
 
葵の背が反り、さすがにこれには羞恥と危険を感じ  
身体をティナから離そうと暴れた。  
だがティナは葵を追うように、自身の身体を更に深く葵へ重ねてた・・・・・  
 
 
いつごろなのからだろうか。  
ティナの部屋の前で身を硬くして中の様子を覗う少女の姿があった。  
その正体はちかであった。ついさっき遊びに来て薫がいないことを告げられ  
妙子が忙しくて構ってくれない。それならとティナと葵がここにいることを  
教えられ目の前まで来ていたのだ。だが中から聞こえる淫らな声に思わず  
怪しみが生まれそっと中の様子を覗いていたのだ。  
 
まったくと言っていいほど性知識も無く、ほとんどを外で過ごす純粋な心とあどけない身体をした少女にとって、ティナと葵が睦みあう姿は禁為以外の何ものでもなかった。  
(お姉ちゃんどうしちゃったの! なんで、なんであんなことをしてるの!)  
息を殺して、わずかな隙間から見える、目の前の恐怖にじっと耐えるちか。  
 
 

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