薫の帰りを待つちか。  
他の部屋では雅と妙子がそれぞれ忙しく働いていた。  
つねに開け放たれいつも誰かいるはずであろう居間には誰もいない。  
ティナ、葵を含め4人ともは自分の現状のことで頭が一杯でちかのことを  
すっかり忘れてしまってるようだ。  
やがてそのいつもと変わらぬように見えて何処かおかしい桜庭館に、薫が帰ってきた。  
どこかで買った雑誌を片手に、普段どおりに自分の部屋まで帰ってきた。  
ティナと葵が出迎えはもとより居間にいないことにほんの少し疑問があったくらいは。  
「二人とも自分の部屋かな?ま、いいや早く課題の残りを」  
と言いながら扉を開けた。  
 
布団の中にいたちかはビクッとしたが薫とわかり少しホッとできた。  
「あれ、ちかちゃん来てたんだ。葵ちゃんやティナのとこへは遊びにいってないの?」  
そのことを聞かれ先程までのもやもやがいっそうに増して自分を包んだ。  
「おにいちゃん・・・ぅぁぁああああっ」  
いきなりちかに抱きつかれ薫にはなにがなんだかサッパリだった。  
「どうしたんだいちかちゃん?泣いてばかりじゃなにもわからないよ」  
「恐かった、恐かったよぉ・・ヒック・・ぅぅ・・・」  
 
ちかは彼にしがみ付き、おにいちゃんと呼び続けながら、ぽろぽろと涙を零す。  
「大丈夫、とにかく大丈夫だよ。もうオレが付いてるから。恐くない、もう恐くないよ  
だからなにがあったか教えてよ」  
薫はちかの髪を撫でながら、背をぽんぽんと軽く叩いた。  
おずおずと目を開き、目元を擦るちか。  
やがて落ち着きを取り戻すと、葵の胸に頬をこすりつける。  
 
「さあ、なにがあったか教えて、ちかちゃん」  
ちかも話そうとはするものの、先程までの妙な孤独感から開放された  
反動からか、あのことで再び不安感にかられ再びしゃくり上げて上手く喋れない。  
「ああ、泣かないでちかちゃん。もう心配要らないよ、恐いことなんて何も無いんだ。  
何か困った事があっても必ずオレがちかちゃんを助けてあげるから・・・だから泣き止んでよ、ねっ」  
「・・おにいちゃん・・」  
ちかは薫を見つめると彼の頬を幼い両手で挟む。そして、彼をクッと引き寄せてキスをした。  
 
ちかが薫にキスをしたのは、彼を喜ばせたかったからだ。  
いつも自分にやさしいくて今も真剣に向き合ってくれる彼。  
そんな彼を自分に引き付けておきたい。離したくない。  
まさに少女の面影はあっても女の本能にも近い渇望だった。  
 
 
             本能   
 
 
突然のことで驚く薫。そんな様子が可笑しくって、もう一度彼にキスをする。  
・・・・今度は口を開けて唖然としてしまった。  
小さな唇でポカンと開いた薫の唇を愛撫する。  
どうすれば良いのか分からないので、先程見てしまったティナの真似をして舌を出して舐めてみた。  
唇、歯、歯茎、唇の裏など、思いつく限りの場所を舐め尽くす。  
 
「ちょ、ちょっとちかちゃん?ほんとどうしちゃったの??」  
薫はパニックに陥り、ずるずると布団に腰を降ろしてしまった。  
身体に回された腕がほどけたちかは立ち上がって薫の首に唇を這わせながら考える。  
(えっと・・・ティナ姉ちゃん、つぎはどうしてたかな?)  
 
自分がとんでもない事をしているとも知らず、それ以上にとんでもない事を考えながらちかは薫の上着に手をかける。  
そしてぎこちない手つきで薫のシャツのボタンを外す。  
(女の人にさわられると、男の人はよろこぶって前に夏樹が言ってたもんね)  
考えていることは実に年相応なのだが、やっている事は大胆そのものだった。  
ちかは上から四つのボタンを何とか外した。そしてシャツを開き薫の胸に唇を近づける。  
  ちゅっ  
音を立てて彼の胸を吸った。  
 
ちゅっ、くちゅっ、っっじゅっ・・・  
ちかは薫の胸にキスを繰り返し、時に舌を這わせる。  
そのくすぐったさに薫は思わず我に返った。  
「・・・・っ!! ちかちゃん、止めるんだ!」  
  ビクンっ  
少女は薫の胸に唇を押し付けたまま固まる。  
 
ちかは涙目になりながら薫を見上げた。  
(おにいちゃんおこってる! なんで? 嫌なの? ちかのこと嫌いなの?)   
シャツを握りしめながら、うるうると瞳を濡らして薫を見上げるちか。  
そんな少女を薫はやれやれといった顔で怒る気も失せてちかの頭をグリグリと撫でる。  
少女は彼の様子から、何か違うと考えるに至った。  
(キスじゃだめ? じゃあ、どうするとおにいちゃんがうれしいのかな?・・・・あっ、そっかぁ。あのときティナ姉ちゃんたちハダカだったんだ。恥ずかしいけど服をぬがなくちゃだめなんだぁきっと)  
今度こそ喜んでくれる! ちかは得意げに薫を見つめた。  
 
「おにいちゃん〜・・・ちょっと目を閉じてくれる?恥ずかしいから、えへへ〜」  
薫が目を閉じるとちかはに照れ笑いしながら、おもむろに身を翻し服に手をかけてズバッと脱ぐ。  
ちかは彼の顔を小さな手のひらでビタビタと叩き、もういいよとばかりに合図した。  
薫の目の前には当然恥ずかしそうに半ば背を向けたちかの下着姿。  
心の中では慌てても外面では呆気にとられる薫。  
 
ちなみに薫はちかのことを、『まるでジャガイモみたいだ』、と考えていた。  
その由来は数回だけ見たことがあるちかの体は、見慣れてるとこは見事な小麦色だが  
服の線に沿った内側は、神秘的のような白い肌をしていたからであろう。  
それが今、目の前に・・・もんどり打ったような薫をよそに上着に続いて下着にも手をかけるちか。  
ついこの前よりブラをつけ始めたちかが初々しい仕草でホックを外す。  
 
薫は相変わらず何か言いたそうに慌ててるだけである。  
ちなみにちかがブラを見せに来た時薫は、『みんな胸大きいのにちかちゃんは今頃ブラか、肌色で成長がおかしくなったのかな』、とジャガイモ娘を安否していた。  
 
たっぷり時間をかけてついに一糸纏わぬ姿になったちか。  
最初は背を向け恥ずかしそう両手で秘所と胸を覆っていたが  
くるりと振り向くと、ニコッと笑みを浮かべる。  
そして両手を広げると、  
「おにいちゃんー!」  
と大きな声で叫び、彼の首にむしゃぶりついた。  
先程の重く圧し掛かっていた不安はそこには少しもなかった。  
薫は薫で毒気を抜かれて怒る気にもなれない。  
布団に座り込んで縋りつくちかに頭をかきもうお手上げだと言わんばかの表情で手を回し、幼い裸体を抱きしめる。  
(よかった〜、おにいちゃんよろこんでくれてる。すごく恥ずかしいけど、勇気だしてよかった。あたしもうれしい)  
満面の笑顔で頬擦りしたあと、少女はチュッと口付けた。  
さらに、小さな手で薫のあちらこちらをまさぐり始める。  
顔を顰める薫。それでも、純粋で無邪気なこの幼い少女を叱責できなかった。  
それでも何とか心を落ち着かせながら、ちかに問う。  
「ちかちゃん、よく聞いてちかちゃんは年頃だからいろんなことを考えてると思うんだ。  
でもまだやらなくてもいいことだってあるんだよ。ましてやオレとなんて・・・」  
「・・・おにいちゃん、やっぱりわたしのこと・・・」  
「何でも泣けばいいって年じゃないだろ?ねっ、もっと素敵なことがこれからいっぱいあるって」  
それでもちかは瞳を潤ませたまま薫を離れようとはしない。  
「ふう、ほんとうにもう・・・だいたい、何処でこんなことを覚えたんだい?」  
少女はふいに顔をあげ、あっけらかんと答える。  
「さっき葵姉ちゃんとティナ姉ちゃんがしてた」  
「葵ちゃんとティナが!?」  
薫は愕然とうな垂れた。  
「やっぱりオレがいけないのかな、もっと二人にはっきりした態度をとってあげたほうが・・・・・・・」  
片手で頭を抱え小さく首を振り続ける薫。  
そんな様子を見てムッとしたちかは彼の首に噛み付いた。  
 
「イテっイタタタタっ、何するんだちかちゃん!」  
「お姉ちゃんたちさんのこと考えちゃイヤっ!」  
「はぁ?」  
薫はちかを見つめた。  
少女はシャツを握りしめ、顔を真っ赤にして震えている。  
「おにいちゃん、あたしを助けてくれるんだもん。あたしを守ってくれるんだもん。お姉ちゃんたちのこと気にしちゃダメぇ!」  
もう一度ちかを見る。少女は体を赤くして、全身で訴えている。  
おにいちゃんはあたしのだ、と。  
ちかはまだ15歳。両親の袂を別ち合ってまだ数ヶ月しか経っていない。まだ親の優しさとの温もりが恋しいだろう。  
それなのに面には決して出さない。思えば異常なまでに元気に振る舞い聞き分けの良い娘だ。  
でも、それは薫達の中で迷惑がかからないよう本当の気持ちを押さえていたに過ぎない。  
うだうだ言って心配かけないように、嫌われないように。  
 「そうか・・・寂しかったんだね、ちかちゃん」  
薫は少女の髪を撫でた。気になる二人のことより目の前の娘を選んだのである。  
頭を撫でられたちかは安堵と共に嬉しさが募った。さっき部屋の中で自分が何を求めていたのか気付いた。  
だから、もう一度薫に飛びついて思いっきり唇を吸う。  
「!?!!〜〜〜っ」  
口を塞がれているので声にならない悲鳴を薫は漏らした。  
たっぷり十数秒、薫の唇を吸い尽くし、ちかは離れた。  
「ぷはっ」  
ふたりの唇の間で唾液の糸が光る。およそまだ恋愛経験もない15歳との間で成すことではない。  
 
このままじゃダメだ・・・とりあえず目の前のちかを諭そうと薫は考え  
キスして慌しく息をするちかを苦手なものを無理やり食べさせられたような表情で薫は呻く。  
「ちかちゃん、もうこんなことしてはいけないんだよ・・・これっきりにしないと」  
「なんで?」  
理由が分からないって感じでちかが聞いてきた。  
「なんでって、こんなことしてたら不健康な人になるからだよ」  
「じゃあ今の大人はみんな不健康な人たちなの?おかしいよ」  
おもわず失言したと悔やんだが薫は続けて言う。  
「みんなちかちゃんより大人に近づいてからやってるの!」  
「でも前テレビでわたしより小さい子たちがやってた」  
うっと後ろめたい気持ちになるが薫は続ける。  
「それはよその国であって日本じゃだろ?日本じゃダメなの!」  
「でもこの前授業で日本の未成年者の『ちゅうぜつ』は世界でも多い方だって・・」  
「とにかく!」  
ちかの発言を途中で遮るように薫が言った。  
「とにかく、いけないことはいけないの!だいたい、僕は葵ちゃんと言う人が・・」  
そこまで言いかけて薫はおもわず口をふさいだが、ちかは目に涙を浮かべこちらを睨んでいた。  
「やっぱり・・・やっぱり葵姉ちゃんの方が大事なんだ。ちかのことずっと守ってくれないんだ!」  
「違うよ、聞いてちかちゃん・・」  
「バカ!おにいちゃんのうそつき!わからずや!!」  
それだけ叫ぶようにして言うと服を持って飛び出していった。  
「お、おいっ!服を着なきゃダメ・・・」  
と言った時にはもうちかが走り去った後だった。はあ〜と一つ大きなため息  
をつきながら頭を抱えて薫はつぶやいた。  
「わからずやは、そっちだろ・・・・」  
 

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