【タイトル】
A・Iレボリューション
【キャラクター】
槙原 翠…通称『スイ』、ロボット工学の権威槙原博士の娘で、バーミリオンのマスター。
茶色い長い髪を持つ少女。
バーミリオン…槙原博士がつくった人間そっくりの男性型ロボット。名前は翠がつけた。
目が赤っぽく、髪が白みがかっている。
煌…槙原博士が設計し、かつて彼の元で働いていた榊の手によってつくられた男性型ロボット。
長い金髪で、口が悪い。以前殺人マシーンとして榊に操られていた。
【備考】
連載終了時より、SS内では2年ほど経過しています。
バーミリオンが買い物を終えて家に戻ると、
彼のマスターである槙原 翠の電磁波パターンが、
彼女の部屋から発せられていた。
彼女は少し前から高校のときの先輩とつきあいはじめてからは帰りが遅くなることがほとんどで、
休日もデートに出かけてばかりでしょっちゅう家を空けるようになっていた。
こんな時間に部屋に戻っているのはめずらしく、
バーミリオンは彼女の在宅を嬉しく思うと同時、なにかあったのだろうかと心配になった。
彼女の父親である槙原博士はドイツに出張に行っている。
もしなにか悩み事があるのなら、
今相談にのってやれるのは自分しかいないはずだ(煌の存在をすっかり忘れている)と、
どうしても気になり、部屋の前まで様子を伺いにきてしまった。
『スイ?』
部屋の中から声が聞こえた。高性能の耳は、微かな音でもよくキャッチする。
それはまぎれもなく、彼のマスターの泣き声だった。
『ど、どどどどーしたんですかスイ! なにがあったんですかっ!』
思わずノックもなしに部屋に飛び込んだバーミリオンが見たものは、あられもない翠の姿だった。
彼女はベッドの上、泣きながら片方の手を乳房に、もう片方の手を秘所に伸ばしながら、
熱い息を吐いていた。
乱入者に気づき、信じられないといった顔で手を止める。
予想もしなかった展開に、双方が固まった。
スイが、スイがこんなことをしていたなんて、
そりゃあもう高校3年生ともなれば性知識ぐらいあってもおかしくないですが、
私の知らないところでこうやって大人になっていくんですね、なんだかさびしい気がします……。
硬直からとけた翠が、気まずげに口を開いた。
「バ……、バーミリオン、帰って、たんだ」
そこで、ようやくバーミリオンの回路も動き出す。
『スイこそ、なにをやっているんですか!』
「なっ、なにをって、この状況でそれを聞くか普通!?」
『はぁ、すみません。ええと、自慰というやつですよね』
真面目な顔で知っている単語を言うと、翠は顔を真っ赤に染め上げた。
「うるさーい! もおいいから早く出てってよっ! さいってー、バカ!!」
『あ、あの、なんで泣いているのか気になっただけなんです。すみません、謝ります』
彼の謝罪も、翠の怒りにさらに油を注いだだけだった。彼女の投げた枕が顔に直撃する。
半裸になりながら、赤い頬、涙目でにらみつけてくる少女。
バーミリオンの世界で一番大切な存在。
『スイ』
「なによっ、出てってって言ってるでしょっ」
『あの、なんだかムラムラしてきたんですけど……』
「はぁっ!?」
バーミリオンは驚く翠にゆっくりと近寄った。
自分は機械だというのに、この気持ちはなんだろう。
「えっちょっ、バーミリオン、嘘でしょ……?」
『すいません、行動が制御できません』
言うが早いか、性欲のあるロボットは、己のマスターの唇を奪っていた。
「ふっ……うむぅっ!」
苦しそうな声を上げる主に申し訳ないという気持ちが回路の奥に芽生えたが、しかし止まらなかった。
舌を差し入れると、彼女の唾液の味がした。
人工知能の片隅で、コンピューターが成分分析を行っている。
そろそろ翠も酸素呼吸を必要とするころだろう、そう考えて唇を解放したとたん、
「バっ、バーミリオン、どこでこういうこと覚えたの!?」
『どこで……って、映像媒体からですね』
顔面を蒼白にして、まさかパパが……と言ったきり翠は黙ったので、バーミリオンは説明を続けた。
『やはり完璧な人間を目指すには、セクサロイドとしての機能も必要だと。
この間、プログラムを追加されたんです。
その折に勉強になるからと言って大量の映像記録を見せられました』
「なに考えてんのよパパってば! 信じらんないっ、やっぱり出てけ――!!」
『は、はい。嫌な思いをさせてごめんなさい、もうしません』
翠の剣幕にバーミリオンはたじたじとなって頭を下げ、命令どおり部屋を出て行こうとした。
そしてもしベッドから身を起こした彼女の言葉がなければ、
そのままリビングまで戻り、叱られた犬のようにしょげていただろう。
「バーミリオンっ!!」
『ハイ?』
振り向いた視界に入ったのは、脈拍が100を超えているマスターの顔。
「やっぱり行かないで……あ、あの、ね」
『ハイ?』
「最後まで、して」
耳を疑った。
いや、耳の故障を疑った。
バーミリオンはしばし目を閉じ、記憶を巻き戻して再生してみた。
記録された中でもスイは、「最後まで、して」と言った。
間違い、ない。
人工皮膚から汗が滲み出る。
『あ、あの、それはどーゆう……』
「あたし、先輩と別れてきたの」
『!』
「榊さんに似てて、それで……つきあってみたけど。やっぱり違うし、楽しくなかった」
スイはまだ、榊のこと。
そう考えるとバーミリオンの機械の胸は痛んだ。
しかしスイはそれに気づかずに続けた。
「ほんとは気づいてたんだ。あたし、あんたたちのこと本気で好きなんだって。
それを認めるのが怖くて、自分に嘘ついて逃げてただけ」
『あんたたち……?』
「うん。……バーミリオンと煌が、好きなの。大切なの」
『スイ……』
やはりどこか壊れているのでしょうか。
スイが私を好きだといってくれるなんて、集積回路が都合のいい映像を作り出しているのでは?
「バカでしょ、でも、やっぱり好き。だからさっきもね、
本当は……これがバーミリオンの手だったらいいのに、煌の指だったらいいのに、って思ってた」
えへへ、と笑う彼女のまつげのきわにたまった涙をぬぐって、バーミリオンは背をかがめた。
重ねていた唇を離して問う。
『いいんですね?』
「うん」
『では……』
マスターの御望みどおりに。
翠をベッドにきちんと座らせ、自分は傍らにひざまづく。
小さな爪をした片足を持ち上げると、爪先から順々に上へと舌を這わせた。
「ぁ……」
彼女の肌の味、彼女のDNAパターンが、バーミリオンの中にしっかりと記録される。
その声の響きさえ、自分は忘れないだろう。それがたまらなく嬉しかった。
「あ……っ、あ、あっ」
足の付け根に近くなるにつれて翠の反応は変わってくる。
声紋の音域、身体の状態の変化からも明らかなそれは、興奮しているということなのだろう。
舌が太ももの内側まで到達し、そこで止まった。下着にはうっすらと沁みが見える。
誘っているようなそこに、迷わず下着の上からかぶりつくように口をつけた。
「――――っ!」
びくん、と翠の背がのけぞり、そしてバーミリオンの頭にぎゅっとしがみつく。
薄い布地越しでも、そこを舐められ、しゃぶられていると思うとたまらないのか、
翠は頬を上気させて熱い息を吐いていた。
やがて分泌液と人口唾液でぐっしょり濡れた下着をはずすと、潤んだそこは女の香りを撒き散らす。
羞恥が勝ったか、とっさに閉じようとした翠の太ももを掴んで固定し、中心部を覗き込んだ。
「っゃあ、ああん」
『スイのここは、こうなっているんですね』
機械のさがか、バーミリオンはまじまじと濡れた花弁を観察した。
毛の生えた恥丘を少し下りると裂け目があり、赤く充血した肉は内側から溢れる蜜で濡れ、
明かりを反射しててらてらと光った。
「い、言わないでっ」
『どうしてですか? スイ、気持ちよさそうですよ』
そう答える間に、とろりとまた蜜がこぼれだす。
「そんなこと、ない、っ」
『スイ、嘘は良くないですよ』
「う……うそなんか、ついてな、ぁ――っ……!」
『嘘です。体温・脈拍・発汗率が上昇しています』
「そ、それはっ、でも、ちがっ」
『ああ……陰核も勃起するというのは本当だったんですか』
ふ、とした息でこすれたのか、翠が身じろぎした。
『なるほど、血液が溜まってますね、確か女性はここがイイんでしたっけ』
顔を埋め、ぞろりと舐めあげた。
とたんにバーミリオンの頭の上から甲高い悲鳴があがり、
少女の太ももの筋肉に強い力が加わったのがわかった。
ベッドに上半身が倒れこみ、荒く、熱のこもった呼吸を繰り返している。
『スイ? イったんですか? ……スイ?』
弛緩し、快感の余韻を味わっている翠に、バーミリオンは声をかけた。
返事がないのをいいことに、絶頂の後ひくつくそこに指を差し込む。
つぷりという音が聞こえたような気がした。
「っあ!」
翠の肩が大きく震えて再び声があがったのを合図に、中の指を動かしてみる。
熱く溶けたそこは溶解炉のようで、
バーミリオンは自分の指先が溶けて蒸発してしまいそうな錯覚に駆られた。
水音が部屋に響き、その音に煽られるかのようにますます指を動かした。
「ひうっ」
それにつれて、シーツの上に散らばった翠の長い髪が模様を変える。
『スイ、増やしますよ、大丈夫ですか?』
「っ……なこと、ち、いち聞かないでっ……!」
その答えを大丈夫と受け取って、なか指も入れて押し広げた。
「はぁ……ん」
悦楽に酔った、幸福な声があがる。
自分が彼女をそうさせているのだと思うと喜びがこみあげてくる。
人工血液の脈打つのを感じた。
下半身に集まりだすその熱を、はやく外へ出したい。
バーミリオンは指を引き抜いた。
そのときにこすれたのが気持ちよかったのか、翠の裸身がわずかに震える。
その間に上着を脱ぎ、穿いていたジーンズを脱ぎ、下着も脱いで素裸になった。
『スイ』
目をとろんとさせているマスターの名を呼び、バーミリオンは彼女の身体をベッドから持ち上げた。
「な……に?」
『すいません、こちらへ……』
床へ降ろすと、翠は力なくぺたりと座った。
その肩を片手で支えながら、自分も真向かいに同じように腰を下ろす。
『あの、大変申し訳ないんですが、この上に乗っていただけますか』
「は……?」
『私、こう見えて120キログラムもあるので、私が上に乗ってはスイがつぶれてしまいます』
「床……なのは、なんで……?」
『スイの体重に私の体重が加われば、ベッドも壊れてしまいます』
わかりましたか? と笑うバーミリオンには悪気はないことを知って翠がいわれるままに足を開くと、
怪力ロボットは少女の身体を自分の伸ばした足の上に乗せた。
翠の腰を引き寄せて、勃ちあがった男性器の動きをコントロールすると、割れ目に沿って上下させた。
『わかりますか?』
「あ、入り口に当たって、る……なんか、熱い」
『表面温度を上げてるんです』
「ね、挿れて……挿れて、お願い……」
もう羞恥も正常な判断力も、どこぞへ行ってしまったのだろう。
大事なマスターの願いを叶えない道理はない。
受け入れる器官に押し付ける。体液が先を濡らした。
いきますよ、と断って、中に割り入った。
「ひぅっ……ん、あ……!」
『……っ』
優れたコンピューターが、人工皮膚に触れる感覚をひとかけらも残さず認識する。
男性器にからみつく少女の細かなひだが、回路がとびそうなほど気持ちいい。
電気信号の洪水が頭の中に渦を巻く。こんな感覚が存在したのか。
残さず膣内に埋め込んでから、腰を浮かせてひとつつきあげる。
「はぁんっ!」
大量の空気が翠の肺から吐き出されたのを確認する。息をつく間を与えて、もう一度。
バーミリオンの首に巻きついた少女の腕は細く、しかししっかりと力がこめられている。
『スイ、自分で動けますか?』
ゆるゆると首が横に振られる。
バーミリオンは彼女の腰に手を当てて軽く持ち上げた。
「ん……」
鼻にかかった甘い息が翠からぬけていき、粘着質な音とともに、中に入っていたモノの付け根が覗く。
そのまま手の力を抜いていくと、バーミリオンは再び体内に埋没した。
『呑み込まれてしまいました』
「……っ」
きゅうっと締め付ける圧力は心地良くバーミリオンを責めたてた。
作り物の肌なのに、作り物の男根なのに。けれどこんなにも、気持ちいい。
『ほら、スイ』
途中まで引き抜いては、持ち上げる手を弱めて何度も頬張らせる。
互いの分泌液をまとったそこからは、たえまなく卑猥な音が聞こえていた。
「やっあん、ああっ! あ、はん! ぅうんっ、あっ、ん!」
いつしか翠も自分から腰をゆすっている。
すべてを逃すまいと貪欲にうごめいては絨毯の上に愛液をこぼす花は、
バーミリオンを咥えこんで歓喜に打ち震えている。
「やっ、やらぁ! いやぁっ、やめ!!」
『そう言われましても……スイが動いているんですよ?』
「ちっ違、だっ……らって、止まんな、あ、あ、あああっ」
『また嘘を……』
ぐりっと中をえぐるように陰茎を動かすと、たちまち反応が返ってきた。
「バッ……リオ、ン、あっ、こんなっ……あんっ!」
バーミリオンの手は横から翠の胸元に潜りこみ、柔らかな肉をまさぐっている。
甘美な期待に膨れて硬くなった桃色の突起が主張しているそこへ、指先を到達させる。
優しく押しつぶすし、指のひらでこねた。
内部の圧迫感が強くなる。
人工血液とは別の物質が、バーミリオンの内側に集まりだした。
あえぐ彼女の腰を揺さぶる。最後まで一緒に。
「あっ、ああああん! も、……っめ……!」
『ええ、そろそろ限界みたいですね』
「やっ、いっ……ゃ、いっちゃ……! っぅ―――――……!!」
筋肉が収縮を繰り返して締まる。
それとともに、バーミリオンは溜めていたものを思い切り放出させた。
びくびくとしなる内蔵の機械が、とろけるような快感を伝えてくる。
おそらくは少女も同様に。
かくりと力の抜けた翠の身体を抱きしめて、最高の満足感に浸る。
腕の中で乱れた息を整えようとしているマスターが愛しかった。
「……っねぇ」
『なんですか?』
「最後……っの、あれ、なに……?」
『あああれは、ただのタンパク質です』
「タン……?」
『摂取した食物をエネルギーに変換する装置で作られたものです。人体に害はありません』
「ふーん……そっか……そうだよね、バーミリオンはロボットだもんね。結婚とか、出来ないもんね……」
何物にも代えがたい少女は、悲しげに微笑んだ。
その剥きだしの肩をそっと抱きしめる。
翠の身体は汗が引きはじめて体温が下がりだしていたので、
風邪などにかからないようにとバーミリオンは自分の表面温度を上げた。
『スイ。あなたが望む限りずっと、私も煌もあなたのそばにいます』
「……ほんとう?」
『ええ。耐久年数が過ぎて、壊れるまでずっと。あなたのものです、スイ』
たとえ、機械と人間の恋が認められなくても、
この気持ちはプログラミングされたものではないのだと言えるから。
【 終 】