(また…この場所に……)
視界が黒一色に覆われた景色。
このまま、どこまでも闇が広がっているのではないかと思わせる程に深く、暗い世界。
そこに、ディシャナは居た。
アイギストス大陸に来てからというもの、毎晩のように見る夢。
闇からは、いつも強烈なまでの悪意と、視線が伝わってくる。
「っ…私の…腕が……」
不意に、闇の中から現れた黒の触手が、ディシャナの腕に絡みつき、素早く縛り上げる。
抵抗する間すらなく、新たに数本の触手が現れ、足をも覆っていく。
それらはそうやって全身の動きを封じると、ディシャナの体を弄り始めた。
「っ…く…うぅ……」
ぬるりとした触手の先端が、薄い布地の服から露出する、ディシャナの艶かしい肌を、舐めるように這い回る。
触手が触れた部分は、粘ついた液体が糸を引き、じわりじわりと白い肌に染み込んでいく。
それはしばらくすると、彼女の脳を蕩けさせ、理性を鈍化させ、本能を剥き出しにする。
「ぐ…や…やめ…ッ…ぅ……」
その光景に思わず目を背けるディシャナ。
しかし、それとは逆にディシャナの体は熱を帯び始める。
「ん……っ…ん…ぅあ……っ」
頭に靄がかかった様な気分。
息が荒くなっていく。
肌を掠められただけで愉悦を感じてしまう自分がいる。
拒絶の意思が、懐柔されていく。
その変化と共に、表面をなぞるだけであった触手の動きが、次第に遠慮の無いものに変わっていく。
「はぁ…はぁ………あぅ!……ひっ……はぅ!」
身体中が燃えるように熱い。触れられれば触れられた分だけ、快感が送られて来る。
技巧も何もなく、ただ乱暴に体をねぶられるだけでも、全身が沸き立つように反応する。
「うく…う…ぁ…あぁ……」
おぞましい物に玩ばれる嫌悪、闇に侵される恐怖、そして快楽とがない交ぜになってディシャナを襲っていた。
(だ…め……このままでは…私は……)
体を快楽のままにもてあそばれながらも、ディシャナは懸命に自分を奮い立たせ、責め苦に抗おうとする。
(私が、私のままでいるために…堕ちる訳には……)
何度も言い聞かせ、惚けた意識を落ち着かせる。
そうして、ようやく正常な判断力が戻って来たディシャナは、
「なっ………!」
思わず、息を呑んだ。
目の前に現れた、一本の触手。
他のものと比べ、遥かに太く、黒く、男性器に酷似したそれが、
度重なる責めによってぐっしょりと濡れそぼり、愛液を滴らせていた、
ディシャナの、最も大事な部分を、
「そっ―――」
何の容赦も、躊躇いもなく、
「―――あああぁぁぁぁっ!」
貫いた。
裂けるような痛み、身体の奥まで突き刺される衝撃、そして、それでも『出来上がってしまった』身体が享受する、快楽。
許容限界を越える感覚の奔流にディシャナの意識が呑み込まれる。
「――――――――――! ――――――! ――――――――――ッ!!」
理性も、感情も、あらゆる思考が、弾けるような感覚に掻き消される。
追い討ちをかけるように、ディシャナの中に押し入った触手が滅茶苦茶に暴れ回る。
亀頭さながらに膨張し、硬くなった先端で、ひたすらにディシャナの膣をかき回す。
その動きに情などといったものは欠片も感じられず、まるで玩具を扱うかの様に、ディシャナを使っていた。
「―――ぁ…っ…………う……っぅ!」
全身を痙攣させ、額に脂汗を浮かべながら、只々声にならない叫びを上げ続けるディシャナ。
闇の底からは、いつの間にかおびただしい数の触手が現れ、彼女の精神が折れる時を待ち受けている。
そして、その時が遅くないことをそれらは理解していた。
「あ…ぁ…あっ………だ…め……」
抽送の度に膣壁にぶつかり、ぎこちなかった触手の動きが、徐々に滑らかになっていく。
。
膣が挿入された異物に慣れ始め、締め付けが和らいできたのだ。
ディシャナの声にも、艶が混じった、官能的な響きが増していく。
そして、肉体の変化と共に、ディシャナの感じていた嫌悪感が薄らいでいく。
『なぜ、拒絶する必要がある?』
『元々、同種のモノではないか』
『しばらく離れていたが故、戸惑っているだけだ』
頭の中で、誰ともつかない声が響く。
自分の中に何かが混ざっていく感覚。
ディシャナの意識は、少しずつその「何か」に染まっていく。
「はぁ…はぁ…は、ぁ…っ…つぅっ……」
内と外、両側から意志が剥がされていく。
快感を享受する肉体。
侵食されていく精神。
最後の一枚を剥ごうと躍起になって打ち付けてくる、肉の突起。
「っ…わ、たく…し、は――――っ!」
とどめとばかりに触手が子宮深くに突き刺さる。
「か、は……っ!」
一気に串刺しにされ、折れそうな程に背を反らすディシャナ。
内臓が押し潰され、圧迫された肺から空気が絞り出される。
同時に彼女の体に絶頂が訪れ、秘裂の隙間からぷしゅ、ぷしゅ、と勢い良く潮が吹き出す。
そして、触手の先端からは、大量のゼラチン質の液体が断続的に放出され、ディシャナの子宮いっぱいに満ちていった。
「はっ…はっ…は、ぁっ………は…ふ…ぅ……」
ディシャナは力無い目で、結合部から漏れ出る粘液を見つめていた。
子宮に出されたそれは、瞬く間に吸収され、ディシャナの内に流れ込んで来る。
そしてそれはディシャナを蝕み、彼女の存在そのものを変質させていく。
(これが、私の運命なのですね……)
どれだけ抗ってみても、所詮人形は人形。
闇から造られたものが、闇から抜け出せる筈も無い。
そう悟ったディシャナの全身から、力が抜ける。
それを待ち構えていた様に、辺りを漂っていた触手が、彼女に群がっていく。
そうして、際限なく増える黒の指先に覆い隠され、ディシャナは闇に沈んでいった。
永劫に続く悪夢の中、彼女の魂はどこまでも黒く塗り潰されていく。
全てが終わる、その瞬間まで。