「隙ありだっ! ひーくん」  
「へ?」  
 突然頭の上から聞き覚えのある声が聞こえ  
「なんだ? うわ! 危ない!?」  
間髪いれずになにか大きなものが僕に向かって落ちてきた!  
 正体不明の物体の猛襲に僕はたまらず逃げ出し、すぐ後にその場へと女の子が着地した。  
 僕がとっさに避けたのはカーディガンを羽織った小柄な女子高生だった。  
「…………」  
「え? ちょっと、君ダレ?」  
 その疑問もすぐに解消されることになる。  
 1階と2階を結ぶ階段から半分身を乗り出した琴梨がアリスをからかうチェシャ猫のような笑顔で手を振りながら  
「長門ユキだよっ! 驚いたっ?」  
なんて言っているからだ。  
 と言うか、やめようよ、こういうくだらないネタは……  
 
「ねえ、琴梨っ。あたしはいつ飛び降りればいいんだいっ?」  
 はて、琴梨の隣にもうひとり琴梨がいるような気がするんだけど、僕の目は乱視になってしまったのだろうか?  
 でも、よく見たらそのもうひとりの琴梨は平安美人のような見事な長髪を生やしたまったくの別人であることがわかった。  
「「鶴屋さんcv松岡ユキっさっ!」」  
 二人揃ってどうだと言わんばかりに胸をそらしてそう言ってのけた。  
 アニメ版でなきゃ通じないネタもどうだろう?  
 
「あともうひとり、ユキちゃんってひとも連れてこようと思ったんだけど、学校の許可がおりなかったんだよっ。ゴメンよっ!」  
 やめてくれ。僕の主人公としての立場がなくなりそうなマネは……  
 
 

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