ほの暗い地下の底から 〜後編〜  
 
 
『能力使用からおよそ5分経過。対象者、つまり巴さんの様子は………』  
「あぁ……く、ぅぅ、だ、誰か…助けてください……こ、こんな…」  
『と言ったところですね。そろそろ我慢の限界のようですね?』  
「そ、そんなことはありませんん!! が……、お、かしくなりそ……」  
『さて、では凌央さん。巴さんがよく見えるようにカメラを動かしていただけますか?』  
「……(こくっ」  
『おお。何てすばらしい位置でしょうか!? 凌央さん、あなたわかってます!』  
  謎の声は、人間だったならば感動の涙で周り一面が洪水になりそうな程の勢いがあった。  
 そして、その勢いは留まる所を知らず自分の世界に浸りこむまでに到っていた。  
『ああ、それにしても普段があんな巴さんもこうなってしまうんですね。  
 この記録は何重にも何重にもコピーし、プロテクトをかけなくては。  
 後に巴さんに消されるような事が起きたとしても他に―――』  
 コンピュータにも思考の渦に飲まれることがあるらしい。  
 凌央は一人でそう納得していた。  
「り、凌央! たす…け…!!」  
  その後ろ。未だに両手両足を拘束されている巴は、ついに凌央に訴えかけた。  
  実験は成功だ―――。なら、巴の拘束を外しても何も問題は無い。  
 凌央はそう思っていた。だが、凌央には巴の拘束を解く事は出来そうになかった。  
  巴は、何も無い机のような場所に仰向けに寝かされている。もちろん全裸で。  
 体勢は、大の字と言えば解るだろう。少し違うところは、両膝を90度近くに曲げ、  
 且つ両手両足の自由を奪うように手首、足首を寝台に拘束しているところだろう。  
 もちろん、脚の方から巴を見れば、秘所は全て丸見えの状態である。  
  その拘束具なのだが。ベルトを寝台に括り付けているのではなく、SFアニメなどでよく見る  
 寝台からベルトが飛び出る仕組みになっているようだった。  
 残念ながら寝台周辺にはこれを操作するようなものは見当たらなかった。  
 
 きっと、謎の声がいる所でしか解除できないようになっているのだろう。.  
「これ、外さなくても、ぅ! い、いですからぁぁ! この疼きを、何と…か……!」  
  巴は息絶え絶えになりながらも目の前にいるまだ幼さが残る、と言うよりも  
 子供と言った方がいい少女に懇願を止めなかった。  
「………(こく」  
  さっきよりも少々頷きの早さが遅くなっていた。  
 凌央自身戸惑っているようだ。それはそうだろう。まさか自分がそんな事を頼まれるとは  
 夢にも思っていなかったに違いない。  
  凌央は、手に持っていた筆を恐る恐る巴の身体の上にもっていった。  
 一番初めに目指した場所は、仰向けに寝転んでいても全く崩れずに天井を向いている巴の豊かな胸だった。  
  能力を発揮していない今の状態の筆は、墨につける前のほぼ新品同然の毛の柔らかさを保っていた。  
 こんな状況などではなく、休日の居間などであろえや埜之香の頬を擦るだけでも  
 微妙なこそばゆさを存分に発揮してくれるであろうその筆先を、巴のつんと尖りきっている乳頭に  
 ゆっくりと掠めさせてみた。  
「はぁっ…く、くすぐっ! がっ、そ、それくらいでは全然足りません! はぁ…」  
  巴は不満の声を挙げてはいるが、先程の無刺激に比べれば全然マシだった。  
 だが、その微妙な刺激がさらに巴の性感を高めていった。数分間発情状態で放置され、  
 今さっきの愛撫とは言えない擽りのせいで身体の方は完全に出来上がっていた。  
(もっと……そんな筆の先でくすぐる程度などではなくて……刺激を…!!)  
  巴の中の性感が高まっていくに連れて不満も積もっていく―――  
  凌央はそれを気配で感じ取ったのだろうか、筆先でくすぐるのを止めた。  
「り、凌央!? な、何をしているのですか?! も、もっとするのです…!!」  
  巴にはもう恥や恥じらいなどは残っていなかった。彼女の性格を180°変える程の昂ぶりが襲っているのか、  
 あるいは元からこういう願望をもっていたのだろうか。それは彼女にすら解ってはいない。  
 
  凌央は、巴の不満を聞きながら、筆の上下を持ち替えると再度巴の胸のふくらみに擦り始めた。  
「あふっ! さ、さっきよりもいいですわ!」  
  先程までの筆先とは違い、今度は木で出来た柄の部分を擦りつけている。  
 当たっている面積は先程までとは比べほどにならないほど少ないが、木の硬さにより直接的な刺激を巴は感じていた。  
  だが、いくら性感帯を刺激しているからと言えど、指の先ほどしかないモノだけでは満足できなかった。  
「ひゃ、ふっ………も、もっとくださいな…」  
(………すごい)  
  そして、今巴を責めている凌央にも少しずつだが変化が見えるようである。  
 目の前で悶える少女を見つめる目は少し虚ろで、頬は少し紅潮し、筆を持つ手には汗が溜まってきている。  
  その変化など比べ物にならないほどの変容ぶりが見れる場所があった。  
 ―――彼女の秘所である。  
  今や、彼女の秘所は巴のモノの状態と比べたとしても勝るとも劣らぬほどの濡れようだった。  
 自分の手によって、巴が悶えている。その状況に彼女も興奮している証拠だった。  
  もちろん、表情を見る限りでは誰もそんな事は察知できないだろうが。  
  もし少女の顔色が変わっていたとしても、誰がそんな状態になっていると理解するだろうか?  
 彼女の普段の性格から言えば、全くありえない事だった。  
  これにもきちんとした理由はある。  
 
  先程凌央が飲み干した『能力増強剤』。謎の声にも解っていない事だったが、実は副作用があったのだ。  
 服用者の気分を高揚させるという効果。一言で言い表すならば"媚薬"という語が一番しっくりとくるだろう。  
 
 増強剤の服用からおよそ10分。その効果は完全に凌央の全身を隅々まで冒していた。  
「あ……ふっ、く……」  
  巴から聞こえてくる切ない喘ぎ。自分が彼女にその声をあげさせているという事実。  
 そこに先程の副作用と言う3段効果で、凌央の理性はもう僅かにも残ってはいなかった。  
 その証拠とまでは言わないが。彼女の右手は巴の乳房を弄り(筆の先でだが)、逆の手では  
 自分のあまり発達していない、乳房とは言い難いふくらみを触り始めていた。  
「んん……んっ!」  
  素肌をさらしていないので傍目には解らないが、きっと自分も巴と同じようになっているのだろうな。  
 凌央は、今や遠くになってしまった自己意識の中でひっそりとそう思った。  
「凌央……そ、その…ひ、非常に言いにくい事なのですが…」  
  いつの間にか巴への刺激がお粗末になっていたらしく、巴の息遣いは多少マシになっていた。  
「………(こくっ」  
 巴が全てを言い切る前に、凌央は相槌を打った。  
 そう、巴が何を欲しているのか。今はきっと、自分が一番良くわかることだろう。  
 なぜならば、凌央も―――欲しているのだ。巴と同じ事を。  
    
 ―――カランッ  
「凌央……? どうかしたのですか? ―――なっ!?」  
  凌央の筆が床に落ちる音が響いた。  
  その音に反応した巴が、五体の中で唯一自由に動かせる場所である首を凌央がいた場所に向けた。  
 何とか凌央の姿を見ることが出来た巴は、今の自分の置かれている状況、状態を一時的にすっぱりと忘れていた。  
 それほどの衝撃な映像がそこにはあったのだ。  
「りょ、凌央!? い、一体何をしているのですっ!?」  
 
 巴の問いに、凌央は全くの無反応だった。否、反応できなかったのだろう。  
  凌央は、スカートを下ろし、ショーツの上から自らの秘所を刺激していたのだった。  
 もちろん、巴の目の前で。  
  四肢を固定されている巴には、凌央のソコがどんな状況になっているのかはきちんと把握は出来ていない。    
 それでも、普段は感情を持っているのかさえ怪しいほどの無表情の凌央の今の顔を見れば一目両全だった。  
「はぁ、くふっ……ん―――」  
  頬は真っ赤に染まり、目には恍惚の色が浮かんでいる。息も絶え絶えといったところか。  
 当人達同士には全くわかってはいなかったが、今の凌央は、つい数分前までの巴そのままの姿だった。  
  そして、その凌央の姿を見て、今の自分のおかれている状況、状態を再度思い出してしまった巴に、  
 再度我慢しきれないほどの疼きが襲った。  
「凌央……あなたばかり、ずるいですわ……」  
  巴にはその言葉を言い切るので精一杯だった。  
 他に人がいないここでは、凌央が自意識を取り戻すまでまた我慢しなければならない。  
  だが、先程の凌央の胸への刺激、そして凌央の淫行を目の当たりにしたことが合い重なったことにより、  
 身体の内を迸る熱い疼きは先程の比では無いくらい激しいものになっていた。  
「くぅ………誰か……」  
 内股を擦り合わせる事すら出来ない巴は、両目を思い切り閉じ、いつ止むとも解らぬ疼きに耐えていた。  
 両目を閉じ、必死に身体の疼きを抑えることに必死である彼女は、自らの秘所に近づく姿に気付けなかった。  
 この状況下で気付くことが出来るのは、気配を察知する事に特出している達人くらいではないだろうか。  
 普段の巴ならば分からなかったが。  
 
「―――ひぁっ!? な、ど、どなたです?!」  
 それまでには無かった直接的な刺激を巴は感じた。その場所は言うまでも無い、巴が一番弄って欲しい場所である。  
「んっ、くっ!」  
  先程までの凌央による胸へのおどおどとした愛撫ではない、弄るためだけの接触。  
 ここはどう言う風になっているのか。どこをどう刺激すればどんな反応をするのか。  
 そう言った反応を一つ一つ試すような触り方だった。  
「ぃぁっ!? や、それ、は―――」  
  そして、巴の膣内に細長い何かが侵入していく。  
 まだ何も異物を身体に入れたことの無い巴には、それがどんなに小さいものでもものすごい異物感を感じていた。  
  だが、それを上回るほどの快楽を感じてもいた。今入っているモノが非常に細く柔らかかったからかもしれない。  
「ふくっ、ひっ…はぁっ! らめぇ―――」  
 巴の秘裂に侵入し、内側から巴を刺激していたモノは、これなら大丈夫、と思ったのだろう。  
 巴を侵すモノの数を1本から2本へと増やした。そう、巴の膣口や膣内を刺激しているモノは、刺激者の指だった。  
「えっ! ふ、増えっ?! んん!!」  
 中に入っている指が2本に増えたところで、その動きには全く遠慮が無かった。  
 それどころか、先程よりも勢いが増しているようである。  
  1本の時は軽い出し入れのみだった。時折、膣肉を掠めることも忘れてはいなかったが。  
  だが、それが2本になったことで巴との接触箇所が増え、感度も上がっていく。もちろんそれだけでは刺激者は満足しなかった。  
 3本目の指が、巴の割れ目の端にある、小さな突起物を捕らえようとしていた。  
「――っ! っっ!」  
  巴の中を行き来している2本の指―――人差し指と中指は、子供のわき腹をくすぐるように柔らかく内壁をこする。  
 そして、新たに第3の指―――親指が、充血し肥大している敏感な部分を刺激する。  
 
「!! ――ぅぅっっ……」  
 その刺激により、巴は声も無く達した。  
  激しい膣の収縮により、2本の指を思いっきり締め付け、全身に軽い痙攣が襲った。  
 巴が張付けられている寝台の下には、巴から滴り落ちる液体によりちいさな水溜りが出来ていた。  
「はぁっ、はぁっ、んっ……」  
 気持ちのいい倦怠感に身を任せている時に、巴の中から指が抜かれた。  
  未だ朦朧とする頭の中、巴は一つ、信じられない事に思い当たった。  
 まだ、巴は、自分を陵辱した人物が誰か把握していないのだ。  
 声をかける訳でもなく。顔を覗き込まれるわけでもない。ただ、その場所と行為に興味を抱いただけと思える人物。  
 感覚から言って、男性ではないだろう。というよりもあって欲しくない。  
 そんな一縷の望みをかけて、少女は首を自分の足元に向けた。  
  そこに立っていたのは。さっきまで自分の胸を弄っていた少女だった。  
「凌央!?」  
 先程までとは打って変わっての荒々しさに、同じ少女の仕業とは全く想像だにしなかった。  
 今まで巴を責めていた少女は、巴の顔を見て、はにかんだ。  
  少女の笑顔に、巴は困惑した。いつも無表情な凌央が笑顔をつくったことにではない。  
 その笑顔は、少女の年齢からは考えられないほどの妖絶さを感じ取ってしまったのだ。  
  そして、同時に辛そうな表情だ、とも巴は感じた。つい先程までの自分と姿が被る。  
 巴とは違い、凌央の身体は自由だ。だが、まだ幼い少女には自分で直に触る、という事が怖かったのだろう。  
「凌央、こっちに来るのです。あなたも辛いのでしょう?」  
 凌央は、四つん這いになりながらも巴の隣に移動した。  
  さっきは見辛い位置にいたのでよく分からなかったが、凌央の顔は高揚し、呼吸も乱れていた。  
 いつの間にかショーツも下ろし、下半身は完全に裸になっていた。  
 
 さらに巴の目を引いたのは、少女の脚は何故か濡れていた。自分の愛液か、とも疑ったがそう言うわけでもなさそうだった。  
 少女の花弁から垂れ出しているのは誰の目から見ても明白だったからだ。  
「凌央。わたしの手の上に腰を下ろせますか?」  
 こくん。  
  静かに、でも力強く少女は頷いた。  
 巴が横たわっている寝台は、そんなに背の高いものではなかった。せいぜいワークデスクくらいだろう。  
 だが、副作用やら先程の胸への刺激等のせいで、凌央は腰が抜け掛かっていた。  
 満足に立つ事も出来そうにない。凌央は、何とか寝台の端に手をつけ、よじ登ろうとする。  
「っっ!!」  
 脚を上げることによって、秘所が擦られる。その刺激が凌央の腰をさらに落とそうとしている。  
 ―――まるで、少女がこの台に登る事を否定するように。  
「はっ……んんっ!」  
 勢いに任せ、寝台の上に登りきる。そのまま、巴の腕の上に倒れこんだ。  
「凌央。苦しいのですよね? 先程までのわたしなら痛いほどにあなたのことを分かってあげられることでしょう」  
「はぁ、はぁ、はぁ………」  
 凌央はもう息絶え絶えと言う状態だった。  
 巴は母のように優しい声で凌央にささやいた。  
「凌央……準備はよろしいですか?」  
   
   
 
  翌朝。巴は目を覚まし、辺りを見回した。  
「わたしの、部屋ですね」  
 もちろん、寝巻きをきちんと着込んでいる。下半身も濡れてはいないようだった。  
 やはり先程のことは夢だったのだろう。そういう風に考える事にした巴。  
「あぁ、それにしてもあんな夢を見てしまうなんて―――」  
 いくら夢の中の出来事だとしても、アレはないだろう。巴は先程までの夢を思い浮かべる。  
  あの後、凌央が自分にした事とほぼ同じ事をしてあげた。その最中にまた感情が昂ぶってしまい、  
 結局二人でずっと慰めあっていた。何回達したのかは数えたくも無い。よくよく考えなくても赤面モノだ。  
「このことはすっぱり忘れましょう。気分転換にガニでも引っ叩くのも悪くないですわね」  
 そう呟いた巴は、朝食が準備されているであろう食卓へと向かっていった。  
  巴は寝巻きから着替えなかったので気付くことはなかった。  
 昨夜とは下着の色が変わっていること。そして、寝巻きのボタンが一つ掛け間違っていることを。  
 
 ―――これは余談だが。  
 朝食中、何故か巴が凌央の方を見て真っ赤になったり、凌央が微妙にいつもと違う瞳で巴を見つめていたりしていた。  
 秀明がそれに気付き、巴に問い質してみたが  
「そんな事はありません。寝起きだったのでぼーっとしてしまっていただけでしょう」  
 といい切り、凌央に到っては我関せずの精神でこの場を去っていってしまった。  
 ちなみにガニメーデスは、秀明がこの家に来てから、いや、それ以前の頃からとしても一番テンションが高かった。  
 あろえがそう言うので間違いないだろう。その理由は誰にもわかってはいないが。  
 ただ一人だけ―――  
 コレクションが増えた、という旨の独り言を秀明は聞いたような気がした。  
 

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