『オリジナル&イミテーション』  
 
 僕が爺さんの家で過ごすようになってからずいぶんと月日が経った、そんなある日のことだった。  
「ただいま。」  
返事がない。今日はまだ彼女たちのうちの誰も帰宅していないようだった。  
そして玄関で靴を脱いでいると、どこからかガニメーデスの声が聞こえてきた。  
「おかえりなさいませ。玄関までお出迎えに参りたいのですが、私は今大変重要な作業のため地下室からでることができません。  
代わりに玄関のスピーカーから、声でのみお出迎えした次第であります。」  
「あーいいよいいよ、わざわざこなくても。ところで重要な作業っていったい何だ?多次元侵略体に関わることか?」  
ガニメーデスのことだ、重要な作業といっているが、どうせまたよからぬ事をやっているに違いない。  
僕は地下室へ行くことにした。  
 
「ガニメーデス入るぞ。」  
そういって僕は地下室のドアを開けた。  
「なっ…何やってるんだ!ガニメーデス。」  
「おかえりなさい。たった今完成したところです!どうですか?素晴らしいでしょう!」  
地下室にはガニメーデスとあろえが居た。しかし、あろえは実験台のような、ベッドのようなところに寝かされている。  
「ガニメーデス、あろえに何をしたんだ!」  
おおかたガニメーデスがあろえをうまく言いくるめて…、いや、あろえならうまく言わなくてもほいほいついていきそうだ。  
とにかく、何かいかがわしい実験の実験台にされたのだろう。  
「何をした?いえ私はあろえさんには何もしていませんよ。ああ、これですか?  
これはあろえさんではなく、私があろえさんに似せて作った人形です。どうですか?よくできてるでしょう?」  
 
実験台のような物に寝かされているあろえの人形は学校の制服着ている。まるで双子の姉妹だ。  
本物と並べて寝かせたらまったく見分けがつかないのではないだろうか?  
「一体どうしたらこんなにうり二つの人形ができるんだ?というか、こんな物作ってどうする気だ?」  
「前にあなたには話したでしょう。私はここで生活する彼女たちの体表面における弾力性に興味があると。  
しかし、あなたは私が感圧グローブを使用して彼女たちをさわってくださいという提案に反対したでしょう。」  
「当たり前だ。」  
「そこで私は考えたのです。感圧グローブがダメなら私の高性能CPUによって演算して弾力性を求めようと。  
それからは彼女たちの映像を細かく分析しはじめました。走ったときの胸の揺れる様子や、  
寝ている間の寝返りしている映像、もちろん脱衣所の映像もです!」  
しかし巴さんに感づかれたらしくなかなか撮影できる機会を与えてもらえなくなりました。ですが、  
あろえさんはあなたもご存じの通りそういうことに無頓着ですからね。とてもスムーズに彼女の映像だけは集まったのです。」  
「そんなことしてたのか…」  
「そうして私はCPUをフル回転させ計算したのです。計算が終わったあとは、その弾力性にもっとも近くなるよう物質取り寄せ、  
組み立てていきました。そしてつい先ほど完成したのです。」  
「なんて馬鹿らしいことを…」  
「馬鹿らしいとはなんですか!この人形にふれてみてください。私のやったことがどれほど素晴らしいことであったかあなたにもわかるはずです。そしてできればこの感圧グローブで本物とどのくらいの誤差があるのか…」  
げしっ!ガニメーデスを踏みつけるとそんな音が鳴った。  
 
「お前には反省が必要だ。ぐるぐる巻きにしてやるからまた僕の部屋で反省するんだ。」  
「そんな!せっかく完成してこれからいろいろしようと…もとい実験しようと思っていたのに!  
あんまりです!横暴だ!非道いです!恨みます!呪います!」  
わめくガニメーデスを僕は自室に連れて行った。  
 
 
「さて、あの人形どうするかな…」  
そのままにしておくわけにもいくまい、彼女らが見つけたら大騒ぎになるだろう。  
下手をすると、巴あたりに僕にも罪をかぶせられることになる可能性も高い。そう考えた僕はガニメーデスを縛り、再び地下室へ向かうことにした。  
 
 
 

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