黒雪姫の手を借りて何とかスカートとストッキングを足元まで降ろす作業がようやく終わった。  
たかがこれだけの事にどんだけ苦労してんだ僕…胸中ではぁ〜っとため息をついて後ろ向きな  
過去の自分に戻ろうとするのを何とか踏みとどまる。  
そして視界を黒雪姫に戻すと、もはや遮るものは下腹部の小さな布切れ一枚で、ただでさえ  
白い彼女の肌は夕暮れの日差しを反射してあたかも心意の過剰光の如く光り輝く。  
それはあまりに神々しくて、不順な気持ちで見てはいけないのでは、とハルユキの胸に  
ちくりと刺が刺さる。  
「ン…どうしたんだい、ハルユキくん。こちらへ…きてほしい」  
そっと差し出す右手に導かれ、ハルユキは黒雪姫の華奢な身体に覆いかぶさる。  
彼女の身体はとても柔らかで、繊細なガラス細工を思わせる。  
太っちょな己の肉体をこれほどうらめしく思った事は生まれて初めてかもしれない。  
それでもそーっと、そろりとハルユキは自分の身体を愛しいひとのそれに融合させるように  
密着させて行く。  
自分みたいな奴にこんな体験をする日が来ようとはー。  
誰かと、いや愛しい人との触れ合いが全身全感覚を通じ、多幸感を引き起こすとは  
夢にも思わなかった。  
下世話な話、これまでハルユキは性の対象というものをZ級アダルトゲームにしか見出して  
いなかったので、事が終わればすっかり興味を失うものだと感じていた。  
でもほんとうの事は…全然比べ物にならない。もっとくっつきたい、先輩を全身で感じたい。  
少しの焦燥感と探究心を以ってハルユキは黒雪姫の唇、耳元、鎖骨、そして乳房に  
キスの雨を降らせる。  
場所によって反応が違うのは何となくゲームとおんなじだな、などと彼女が読心術を  
使えたたなら速攻ほっぺた拡張の刑になりそうなかなり情けない想像をしながらも  
少しでも喜ばそうとハルユキは奮戦する。  
と、喘ぎ声に近い声質で黒雪姫が語りかける。  
「…ハルユキ、くん。その…ああ…ええと…まだ、脱いでないそれ…なんだが」  
はい?予想外の問いかけにハルユキはキスを中断してしばし考えこむ。  
「まったくキミってやつは…下着を、脱がせて…もう、ちょっと大変な事態になりつつ  
あるんだよ…」  
あっと驚き、そういえば一番大切な部分に気を向かせることに失念していた事を思い出す。  
は、はい。ちょっと…待ってください。  
本日最大の見せ場、乙女の貞淑の証の小さな三角の衣にアタックする時が来たのだ。  
焦るな焦るなボク、そーっとやるんだ。お前ならできる!  
その小さな布は見た目に反して弾力に富み、差し入れたハルユキの手にわずかながらの  
抵抗を見せる。  
片手だけでは難しいかな、としばし考えていると、痺れをきらした様に黒雪姫が自ら  
腰を浮かし、ハルユキの動作を手助けしてくれる。  
その甲斐あってとりあえず最後の下着を黒雪姫の足から抜き去る事に成功した。  
手に残ったその下着をふと観察してみると、何だかやたらに濡れているのが確認  
できた。  
あれ?先輩暑いのかな。などと間抜けな思考に浸っていると、前方から電光石火の  
速度で黒雪姫の手がその布切れを取り上げる。  
「ば…馬鹿かキミは!?み…るんじゃない!!」  
これ以上無いほどの赤ら顔をみせつつ、取り返した布を自分の背中に隠してしまう、  
「だ…だいたいキミが悪いんだぞ。そんなにまどろっこしいとたとえ私でも我慢が…」  
と言ったきりぷい。と横を見てしまう。  
怒ってる様でもあり、それ以外の様でもあり、ハルユキには何だか可愛い人だな、と  
じんわり暖かな気持ちが満ちていく。  
 
「そ…それにだ、わたしばっかり脱がせて…ズルい」  
あ、そうか。服着たままじゃダメだよな。  
ハルユキもネクタイを抜き去り、シャツも脱ぎ捨てる。  
Tシャツを脱ぐときちょっと気後れする事が有る。  
あの…先輩、僕で…いいんですか?  
今更ながら、醜く太った自分の身体を見せるのに抵抗を感じたのだ。  
しかし黒雪姫は微笑を浮かべながら  
「ホンっとにキミはバカだなぁ…わたしはキミだから好きになったんだよ。その心も、  
身体も、ぜんぶ」  
その言葉を聞いたハルユキは思わず視界を涙で濡らせた。  
生まれてこのかた、誰かに無条件で肯定された事など記憶にすら無い。ずっと卑屈に、  
できるだけ目立たぬ様にひっそりと生きてきたハルユキにはまさに福音であっただろう。  
少しばかりの自信を取り戻し、自分も思い切って生まれたままの姿になると、先程よりは  
強く彼女に密着する。  
「うれしいよハルユキくん…キミはわたしのものだ…そしてわたしも…キミのものだ」  
僕もうれしいです先輩。あなたの…全部が欲しい、です。  
「ン…じゃ、きて」  
黒雪姫の右手が密着した二人の間を器用にすり抜け、ハルユキ自信に到達する。  
エロゲでしか想像しえないその行為にハルユキは軽くめまいを起こした。  
「すごい…こんなになるんだな、男の子って」  
子、じゃありませんと旨の中でそっと反論するハルユキだったが、これまでの経緯を  
鑑みるとそれもやむなしか、と考える。  
しかし黒雪姫の次の行動はハルユキが肉声で声をあげるものであった。  
すなわち、彼自身を上下にグラインドしだしたのである。  
黒雪姫の柔らかい手の中で行われるその行為は。これまでのどんな快楽にも  
勝る最終兵器としか思えない。  
あっ…せせせん、ぱい。それ…  
「ン?やはり下手かな。わたしなりに色々調べたのだが…実地ではまた違うのかな」  
いえ…いえ!きもち、いいです。すごく。  
「そうかい…?うれしいな、キミが喜んでくれるなんて。」  
格別の笑顔を見ていると、ハルユキはとんでもなくヒートアップしてしまう。  
いかんいかんえええとににんがし、にさんがろく…やめてほしいようなそうで無いような。  
「ふふ、もっと気持ちよくなってくれたまえ」  
このひと絶対Sだ、楽しんでるし…!と心で呟いたものの、それが最後の堤防を貫通さししめた。  
あ…あ…  
ああなんてことだ。よりによって先輩の手の中に…!  
すすすみせんせんぱい。汚いから早く洗ってください。  
「何をいう。キミはわたしのものだと言ったはずだぞ。よってキミの身体から分泌されたものも  
当然わたしに所有権がある」  
所有権というのも何か違うような。そう思っている間にも黒雪姫はハルユキの分泌した  
液体を宙にかざして物珍しく観察している。  
ハルユキはただひたすらに恥じ入るしかなかった。  
 

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