※テンポ重視で「ふぃじかる・のっかー・おーきっどだうん ハルユキ×恵 
」 
 
 
今日も姫と直結した。 
直結するときのすこしだけ照れたような表情をみることができるのは、おそらく梅郷中の生徒のなかでもきっとわたしだけだろう。わずかに上気した肌を眺めているだけでもうっとりとしてしまうのに、今日はシャンプーのいい香りがする。このあいだわたしがすすめたものだった。その気遣いが嬉しい。姫。大好き……。ずっと一緒にいましょう。わたしは作業を続ける姫の髪を、気がつかれないように……そっと拝借した。 
 
今日は姫と直結できなかった。 
姫が直結したのは、すこし太りぎみで背の低い、精悍と言うよりもカワイくてナイーヴな雰囲気の男の子だった。生徒会長と話をしつつも、わたしの注意は、二人の動作に向いていた。仮装デスクトップをいじりまわしたあと、びしぃっ、と男子生徒を指さした姫は、なぜだかうっとりとした表情で男子生徒を眺めていた。 
 
今日も姫と直結できなかった。 
最後に姫と直結したのはいつだったろうか。姫の呼吸でケーブルが揺れて、首もとのニューロリンカーにわずかなわななきをつたえる。その振動に、安らぎすら覚えていたというのに。いまは姫が遠い。ねえ、姫。わたしのことは、もう忘れてしまったの? わたしはついに聞いてしまった。あの殿方は、姫にとってどんな存在なのか。帰ってきた答えは、わたしの心をぐちゃぐちゃにかき乱した。 
 
今日も姫と直結できなかった……。直結なんてしている状況ではなくなっていた。 
命の危険さえある事故と聞いて、彼女の搬送された病院に駆けつけたけど、そのときもあの男の子がいた。一日中番をしていたのだろう。毛布に包まれた男子生徒は、何かをだきしめたまま、眠っていた。そっとのぞき込むと、それは血塗れの生徒手帳だった。表面の傷の具合には覚えがある。それは姫のものだ。嫉妬にも近い感情をいだきながら、姫と男の子の絆を改めて思い知った気分だった。 
 
今日は姫とアドホックコネクションでつながった。 
奇跡的な回復力だという。病院食は飽きた、という姫をなだめたあと、持ってきていた櫛で、黒真珠のように艶めく、彼女の黒髪を梳いていく。持ってきていたシュシュで、彼女の髪をまとめおわるころ、あの子が室内に入ってきた。緊張した面持ちだった。わたしは涙をこらえながら、有田君へ姫を譲った。ひとときだけ、姫たちを二人きりにしたくなった。脳裏に姫の幸せそうな笑顔が目の前に浮かんで、複雑だった。 
 
今日は姫と直結した! 
外では話せない内容とのこと! 久しぶりの内緒話に、わたしは心を躍らせた。姫の相談内容が明らかになるまでは。姫はまず自分の身体の魅力について聞いてきた。わたしは語彙の限りのをつくして誉めたたえた。そして会話の中で、姫の本当の悩みを知った。彼女は――有田君に、自分をささげるつもりなのだ! でも、どうすればいいのかわからない。と涙ぐむ姫に、かける声が見つからない! わたしにはそういった経験がなかったから、姫にアドバイスができない……。 
 
今日は姫に泣かれた。 
ハルユキ君は、わたしにひとかけらの欲情も抱いていないのではないか……。思考発声で伝わる声は、いまにも消え去ってしまいそうなほど切なげだった。彼女は日に日に姫は苦悩の陰を、頬に刻んでいた。そんな姫の態度に心の深いところをじり……じり……と焦がされる。力になれない無力と――有田君への怒りで胸がいっぱいだった。こうなったら、もう手段は一つしかない……。彼がそういったことへ本当に興味がないのか、確かめるのだ。 
 
今日は生徒会長とセックスした。 
わたしにとって一番みじかな相手だから……というのが、理由だった。姫のためなら、痛みにも耐えられた。彼には秘密の厳守を命じた。セックスは、まわりの女の子たちがいうような気持ちのいい行為ではなかった。でもこれで条件はそろった。会長が持つ、ラウンジにあるカメラをマスキングするアプリケーションは、すでにわたしの手の内にあった。それもこれも、そう――彼が全部悪いのだ。姫の求める行為を理解しない、彼が――全面的に悪い。 
 
 
 
 
「あ、あの……若宮……先輩……。く、黒雪姫先輩は……?」 
 
 生徒会員からの申請で借りることのできる会議室で、若宮恵は有田春雪と向き合っていた。あまりこういうシチュエーションになれていないらしく、ハルユキはきょど、きょど、と落ち着かない様子だった。 
 カップに注がれたコーヒーに口をつけたあと、恵は昨晩から用意していた台詞をつぶやいた。 
 
「あなたに、聞きたいことがあるの。これは姫からの質問……だと思ってかまわないわ」 
「……は、はい」 
「……有田君。君は……不能じゃないのよね」 
「ふのう……?」 
 
 言葉の意味がわからなかったようだ。 
 数秒後、ハルユキはやっと質問の意味を理解したようだった。顔を赤らめながらソファーの端まで飛び退く。意外に機敏だった。 
 
「そ、そんなことありません! な、なんでそんなことを――」 
「そう……じゃあ、証拠を見せてください……」 
「へ? ……えええっ!?」 
「姫には内緒にして……いいえ、姫には内緒にしますわ……」 
 
 恵がここを借りられるのはあと三十分だ。手早くすませる必要があった。 
 話の流れについてこれない様子のハルユキをソファーに押し倒す。 
 行為の邪魔になるから、と下着は脱いで、デイバックの中に畳んである。そっと、スカートをめくりあげ、ブラウスの前を開け放つ。それだけで準備は終わった。昨晩、生徒会長相手に捧げたので、準備はばっちりだ。男の子を男にする術も、そのとき教わっていた。 
 おっぱいとそこを見せられると男は興奮するんだよ! とは生徒会長の弁だ。 
 
「さあ……どう……かしら?」 
 
 もちろん恥ずかしかったし、頬は熱をだしたときのように茹だっていたが、これは必要なことだった。ハルユキからよく見えるように片手でスカートを払い、もう一方の手を乳房の上に置いて……くっ、と形を歪ませる。 
 
「な――あっ」 
 
 ハルユキはすぐさま視線を背けたが、下半身は正直だった。手早くベルトを払い去ると、ズボンをずり下げた。生徒会長の言ったことは正しいようだ。トランクスがテントを張っている。 
 
「――! わ、若宮先輩! だ、だめです! ボクには――!」 
 
 その、あなたの大好きな姫のためなの――。 
 叫びを無視し、トランクスをずりおろすと、大きく膨らんだ野太い男根が、ぶんっ――勢いよく飛び出してきた。 
 
「――!」 
 
 まるで木の幹のような、そんな大きさのモノが、恵の前に露わになった。生徒会長よりもひとまわりも、ふたまわりも、大きい。それを見た瞬間、記憶の――魂の奥底でなにかがうずいた。これは、まるで――災禍だ。きっとこれから、いろんな女の子を泣かすだろうそれはまさしく、災禍の男根だ。 
 記憶の蓋がくすぐられたが、びくんびくんと脈動する男根に、恵は意識を奪われた。 
 
「お、お、お、大きいのね……!」 
「誰かとくらべたことが無いからわかりません――!」 
「そ、そう……!」 
 
 言いつつ、深呼吸した恵はおそるおそるその巨根をにぎった。じわ……と体温が伝わってきた。 
 
「うっ、うわ――!」 
「っ……硬い……」 
 
 恵は硬さが十分なことをたしかめると、生徒会長のアドバイスに従って、用意していたローションをバックから取り出した。見た目にはシャンプーボトルと変わらないそれのキャップをあけ、中身のぬるぬるを手のひらになじませる。 
 
「……十分、できそう……」 
 
 様子をみるに「不能」ということはなさそうだった。 
 粘液が十分、指に絡んだのを確認し、恵は再びハルユキの分身を握りしめた。 
 
「あっ、あっ、だ、だめっ、です――!」 
「……お、女の子みたいな声をださないでください……!」 
 
 カサの張った男根にローションを塗りたくるようにし、びくびく細かくふるえる性器の様子を眺める。やはり、不能ではなさそうだった。 
 指を上下させて男根の硬さを確かめつつ、恵は言った。 
 
「……これなら……姫とでも……でも、確認しないといけませんし……種なしという可能性も……」 
「あ、あのっ、これ以上なにを……!」 
 
 ナニをいじられたままだったハルユキが、快感と不安の入り交じった瞳を恵へむけた。 
 
「もちろん……確認しますわ」 
「な、なにをですか……」 
「あなたが本当に可能かどうか……」 
 
 恵は立ち上がり、太い胴を跨いだ。 
 男根に指をそえたまま、事前にローションで湿らせておいたソコへと男根を押し当てる。 
 ぐ――ちゅっ――。水音がスカートの内側から響いた。普段あまり意識しないワレメに、丸みをもった男根の先端がくっついている。 
 
「わ、若宮せ、せんぱい、もしかしてなにも――!」 
「ええ。もう……準備も終わっていますわ……」 
 
 その準備として、姫を想いながら自慰行為で秘処を濡らした……とは、伝えなかった。 
 あたふたしながら、恵の脚の間から逃げようとするハルユキを、ローションのついた手で押さえつける。ハルユキのシャツにじわっ、とローションの染みができるが、効果はてきめんだった。ハルユキの動きがとまる。 
 それを見計らって――恵は一気に腰をおとした。 
 
「くっ――!」 
「う、うわ――!」 
 
 恵とハルユキは、それぞれの悲鳴を上げながらつながった。恵の想像よりもすんなり、ハルユキの性器は入り口をこじあけた。自慰行為とローションのおかげだが、巨根の質量は圧倒的で、処女をうしなったばかりの膣道を、ぐりぐりと割り込みながら、終着点をめざして押し進む。 
 
「ああっ、おっ、大きい――!」 
 
 ローションで満たされているの膣壁を、巨大な亀頭が押し広げていた。 
  
「ああっ、くっ、ふっ、びくびく、ふ、震えて――!」 
 
 性器の表面を刷られたことで生まれる、反射的なものなのだろうが、びっちりと埋まっているせいで、わずかな動きでも、膣壁を削りとられてしまう。じんわりひろがる快感にもだえていると、ハルユキが目を白黒させつつ、恵を見つめていた。 
 
「せ、先輩……どうして……こんなこと……むちゃくちゃです!」 
「ふふ……っ、そうかも……しれないけれど、しかたなくて……そ、それに殿方は、女性の裸をみると無条件でこうなるのでしょう? 節操のなさでは,、わたしも、あなたも……そう変わりませんわ」 
 
 そう。だからこそ、姫の代わりがつとまり、性行為の検証ができる。 
 ハルユキは頬の肉をふるわせて、首を横に振った。 
 
「ち、ちがいます! 若宮先輩が綺麗だから……それで……お、大きく……」 
「?」 
 
 恵は怪訝を露わに眉をひそめた。 
 綺麗などと言われるとは思わなかった。その言葉は、姫にこそ似合うはずで――。だが、ハルユキの瞳は、いっさいの曇りもなく、恵を見つめていた。嘘は感じ取れない。 
 
「う――」 
 
 見つめられているのが恥ずかしくなり、恵は目をふせた。しかし今度は、膣道を押し開く性器を意識してしまう。さざ波のような快感が下腹部をしびれさせていた。 
 ふるふると頭を振って本来の目的を思い出す。これは姫のための行為だ。 
 だが――わずかな好奇心が恵をかりたてた。 
 
「――じゃあ……どこが綺麗なのか、言ってくださいませんか?」 
 
 姫相手に失礼なことをいったら承知しない……、本音を口に出すようなことはせず、恥骨をすりつける動きで、ハルユキの性器を刺激する。 
 
「あああっ、そ、そんなこと、言われましても……」 
「んっ、ふっ……んっ……じゃあ、さっきの言葉は……嘘ですのね……?」 
「ち、違います! でも、言葉が浮かばないというか……」 
「はああっ、あああっ、いいですわ……。思ったままを言ってみて……」」 
「……じゃ、じゃあ……そ、その前に腰を止めてください! しゅ、集中できません!」 
 
 仕方なく、腰の動きをとめた。極緩やかな上下にとどめる。スカートのプリーツがさら、さら、と太股の上をすべり落ち、ハルユキの腹部へと掛って言った。 
 
「はあっ、はあっ、はあっ、これなら……平気……かしら?」 
 
 恵の問いにハルユキはがくんがくん首を縦に振った。 
 ハルユキはごくっ、と唾を飲み込んだ後、真摯な瞳を恵に向けつつ、答えた。 
 
「その……は、肌がすごく綺麗です……。それに胸元とか、……さ、さきっぽが、綺麗なピンク色で……花の蕾みたいで……その、かわいいです。」 
「え……」 
 
 たしかに乳房の形やその先端の淡色を姫にほめられたことがある。 
 
「はっ……くっ、つ、続けて……」 
 
 正体不明の感情にとらわれつつ、恵はハルユキをうながした。 
 
「は、はい……くっ、胸も……ふるえてて、見ていて……興奮します。その……ひょ、表情も、すごく……色っぽいです……」 
「そ、そんな……は、恥ずかしいことを……いわないで……」 
 
 想像以上に甘ったるい言葉に、恵は思わずハルユキから顔をそらした。 
 気まずい空気……よりも、わずかに甘さを含んだ空気が、夕暮れの黄昏にそまれつつある会議室を満たした。 
 
「あ、あの……だから、若宮先輩もすごく魅力的で……」 
「も、もうわかりましたわ! わかりましたから……」 
 
 恵は頬をそめつつ、腰の上下を再開させた。ウレタンを内部にひきつめたソファーがきしみ、苦しげな音を立てる。ハルユキと恵の体重を一手に引き受けているのだから当たり前と言えば、あたりまえだった。 
 やがてハルユキが腰をふるわせはじめた。 
 
「う――っ! はっ、ぁぁっ、若宮せんぱ……」 
「はあっ、はあっ、ここが……いいの?」 
 
 性器のつながる部分から水音が響く。すこし身体を前のめりにすると、納めた男性器がバネ細工のおもちゃのように跳ね上がった。 
 
「ぐっ……くっ――」 
 
 ハルユキが苦しげにうめいた。 
 
「ふふ……ここが……いいのね……はあっ、んっ、んっ――! でも……」 
 
 行為自体が不慣れな上に、ハルユキの巨根のせいでうまく身動きがとれない。 
 それでもなんとか、亀頭を膣壁へすり付け続ける。 
 ハルユキは苦しげに喘いでいた。 
 ――それが、恵の拙い腰遣いに満足ができず、理性と獣欲の間で揺れるハルユキの叫びだと、恵は最後まで気がつくことができなかった。 
 
「ぐ……ぐっ――わ、若宮先輩……ボク……ボク、もう――!」 
 
 泣き出しそうな表情で、ハルユキは恵の腰を両手でつかんだ。 
 意外に強い力で腰を捕まれ、恵は目を見開いた。 
 
「んっ――どうし……ました……?」 
「先輩ごめんなさい……もう……が、我慢できません!」 
「え? っ――、きゃあああああっ!?」 
 
 今度は恵が言葉を噛む番だった。下から猛烈なつきあげがあった。つたなく動いていた恵を、ハルユキが一気に貫き串刺しにする。 
 じゅぼっ、じゅぼ――! 
 スカートの内側、結合部から響き始めた水音を、恵は信じられない気分で聞いた。 
 
「あ、ああああっ! ――っくっ、ふああっ、あああんっ! い、いきなり――な、なにをす――あああんっ!」 
「くっ、はっ、ああっ、若宮先輩――!」 
 
 本能のままに付き込んでくるハルユキに、恵は声を抑えることができなかった。 
 
「はぐっ……っ、つっ――!」 
 
 挿入が深い。まるで身体の芯に杭をうちこまれているようだった。 
 男根自体が野太いので、抜かれるときは恵の膣壁をごそっ、となぶっていく。あまりの心地よさに頭の芯がしびれ、視界が涙でゆがんだ。揺らされるたびにブラウスの布地と乳首がこすれ、下腹部から響くものとは別種の快感が伝わってくる。 
 
「はうっ、あああぁぁっ、だめぇっ、だめぇ! 止まってぇ――!」 
 
 腰から力がぬけた。しなだれかかるようにハルユキの上半身に身体をあずける。 
 
「だ、だめです。ボクもう……止まれません!」 
 
 ハルユキは、より激しく恵を貫きはじめた。性器を力強く打ち込み、容赦なく恵を責める。さらにボタンの開け放たれたブラウスの内側に手を忍ばせた。まるっこい指先が胸の先端にかかり、丸みを押しつぶす。 
 
「ああああっ、だめっ、そんなぁ――! うそ――!」 
 
 乳首から走った鋭い快感が、乳房全体に広がった。ハルユキは恵の肩からブラウスを抜き、むき出しになった乳房へ吸いついた。 
 
「ひぐっ――!?」 
 
 乳房の先を甘噛みされ、じゅる――、と吸われてしまった。指よりも数段強い快感に背筋がふるえてしまう。熱いのは口内だけではなかった。口がふさがれているので、ハルユキは鼻孔で呼吸していた。肺に収まり、暖められた吐息が胸の上を滑っていく。 
 
「くっ、んっ――! はうっ、はあっ、はあっ……く、くすぐったい――! はあっ、やぁ……んっ! んっ、うぅ――!」 
「ちゅっ、ちゅる……わ、若宮先輩っ!」 
 
 しばらくしてぐぐっ、男性器が持ち上がった。 
 
「あっ――!?」 
 
 恵はおもわず結合部をはじめて凝視した。ハルユキがスカートごと腰骨をずっと掴んでいたので、スカートはいつの間にか重力に逆らってめくれ上がり、結合部が露わになっていた。 
 ハルユキの股間から延びた太い肉茎が、の秘部を押しのけ挿入されている。ふくらんだカリ首が入り口に至るたびに、サーモンピンクの肉ひらが輝いた。 
 よく知らない、見つめるだけでもみだらに思えてしまう恥部に、野太いものが突き刺さる光景は恵を大いに揺さぶった。 
 
「っ――!」 
 
 強烈な羞恥心が胸をひっかいた。ほとんど本能的に男性器を抜こうとした時、膣内で大きく男根が跳ねまわった。 
 
「はう――くっ――んっ、え……も、もしかして……」 
 
 そして気がついた。はっとしながらハルユキを見つめる。 
 
「あああっ、んっ、だ、だめっ、中は――ああっ、あんっ! 中はやめてぇ!」 
 
 生徒会長としたときはコンドーム越しだったが、いまは直接ハルユキを受け止めている。膣内で性を受け止める危険性が、熱と快楽に浮かれていた恵の思考に冷や水を浴びせかけた。 
 
「――!? じゃ、じゃあ早く腰をどかして……!」 
 
 ハルユキのうわずった声が焦りに拍車を掛けた。射精が近い。 
 
「わ、わかりまし、――!」 
 
 身体を離そうとしたが、脚に力が入らず、ハルユキの下腹部に尻餅をつくように腰かけてしまった。 
 
「あっ――!」 
 
 最後の一つきが、恵の堰を決壊させた。 
 
「あっ、ああああぁぁぁ! んっ――!」 
 
 子宮がぐぐっ、と押し上げられ、快感が理性をやきつくした。腰が勝手にびくびくとふるえてしまい、全身から力が抜けた。 
 
「ひっ、あああっ――ああああああああっ!」 
 
 無意識のうちに膣道がきゅう――っとせばまり、うがたれたままだった性器を引き締めた。 
 
「ぐっ――!? あああっ、ご、ごめんなさい――!」 
 
 ハルユキの叫びとともに、男根の先から何かが吹き出した。 
 体中が脱力する中、粘液が下腹部でふくれあがり、膣や子宮に塗りたくられていった。 
 
「んんっ――!? え――あ、う、うそ――んんっ――! 中で――!?」 
 
 唖然とする恵を生まれて初めての膣内射精が、さらに責め立てる。絶頂したてで敏感な身体を、再び絶頂へと誘っていく。 
 
「ふああっ、あああんっ、だめっ、だめぇ――!!」 
「――! せんぱいっ! そんなに、締め付けられたら――!」 
 
 一度はじまった射精はとまらなかった。それどころか高ぶる恵にさそわれるように、一滴残らず恵の中へ吐き出した。 
 
「ふあっ……ああっ……ああ……」 
 
 ホースを伝う水が勢いをなくすように、ハルユキが吹き出す性の量はすこしずつ少なくなっていった。 
 
 
 
 
 
「……」 
「……」 
 
 梅郷中の校門を出てすぐ左。ファミレスの一席には、気まずい空気が流れていた。 
 下校時間になってしまったので、ハルユキと恵はふたりで校門をくぐり、そばのファミリーレストランで直結しなおした。 
 下腹部はまだ熱い液体で満たされている。下着は身につけているが、それが漏れ出していないかどうか不安だった。 
 しかしそれにしても――。 
 恵はオレンジジュースのストローを吸い上げつつ、思った。 
 こんなに気持ちがいい行為なら、姫もハルユキ君も、はやくしちゃえばいいのに……と。 
 
『あ、あの……す、すみません……その、中で……』 
 
 おずおずとした声が、ケーブル越しに伝わってきた。物思いにふけっていた恵は慌てて居住まいを正す。 
 
『お、おほん! さっきあれは事故だったわかってます……。種なしじゃないのはわかりましたし……』 
 
 無意識に下腹部へ手を当てる。膣道には、大量の精液がのこっているはずだ。 
 
『でも、姫とセックスするには、君はまだ実力不足です! まずは避妊から覚える必要がありますわ』 
『は、はい……すみません』 
 
 冷静に考えればハルユキが謝る理由はほとんどない。ちなみにいままのいままで内緒にしていた「黒雪姫」の名前もだしてしまったので、計画そのものをばらしたようなモノだったが――、幸いにも、うつむくハルユキは気がつかなかったようだ。 
 ほんのすこし申し訳ない気分になりつつ、恵は言った。 
 
『だから……しばらく、わたしが相手をしてあげます』 
『へ? わ、若宮先輩が……ですか?』 
『ご、ご不満かしら? それともさっきわたしのことを綺麗って言ったのは、嘘だったのかしら……?』 
『そ、そ、そんなことはないですけど……』 
『じゃあ……』 
 
 わたしが姫におしえるんだから……。 
 顔を真っ赤にするハルユキの眼前で、恵はストローに口をつけた。オレンジの酸っぱさが舌に広がった。 
 
―――― 
 
 
今日はハルユキ君と体操着でセックスした。 
もちろん、彼の趣味趣向を知ることで、姫が「そういう性行為」をうまくできるように、だ。体育倉庫のマッドをベッドがわりに、体育の授業の後すぐに重なったので、汗くさくないか心配だったけれど、力強くのしかかってくるハルユキ君は気にしないようだった。それどころか、なんども首筋あたりに顔をよせて息を吸い込んでいた。恥ずかしかったけど、すこしうれしい……。汗フェチなのかもしれない。いつか姫にもつたえよう。 
 
今日はハルユキ君の自宅に泊まった。 
彼の好きなものを探ろうと、ショッピングモールで食材を買い込んだ結果、手作りピザになってしまったのは、当然の帰結だったのかもしれない。そのあとは、一緒にお風呂にはいったり、同じ布団で寝たりした。もちろん、夜の営みも経験した。長い夜だった。彼はいったい何度で果てるのか――調べるつもりだった。でも結局わたしのほうが先に尽きてしまった。回数と速度には、姫も満足できると思う……。持ち込んだシャンプーとボディーソープの香りは、ハルユキ君も気に入ってくれたみたいだった。姫にも教えてあげないと……。 
 
今日はハルユキ君とトイレで直結した。 
直結――という言葉は、わたしとハルユキ君の間では、特別な意味を持つようになっていた。直結は、ニューロリンカーをケーブルでつなげる行為以上のものを意味する、隠語になっていた。もちろん特殊なシチュエーションに対して、ハルユキ君がどんな風に反応するかを調べるためだ。男子トイレにはぞくぞくと人が入ってきて、いつ見つからないともかぎらなかった。誰かに見られてしまったら……。そう思うと興奮した。一度だけ、ハルユキ君の幼なじみの彼女が、天井から顔を出したが、私のお尻に夢中だったハルユキ君は、のぞかれていたことに気がつかなかったようだ。ハルユキ君はお尻も上手……。姫にも伝えないと……。 
 
今日はハルユキ君と水着で――――。 
今日はハルユキ君と私服で――――。 
今日はハルユキ君と校庭で――――。 
今日はハルユキ君とホテルで―――。 
 
もう少し、もう少しと続ける行為に、わたしはもう――夢中になっていた。 
 
―――― 
 
 
「あ、あの……ハルユキ君! 今日、すこし時間をくださいませんか? あの……研究したいので……」 
「あ、は、はいっ! で、でも……今日――先輩は」 
「姫はすぐに下校するわ。ちょっと用事があるみたい」 
「な、なら……いつものところですか?」 
「ええ……待ってますね」 
 
 姫には秘密の、ハルユキ君との秘め事は、今日も、明日も続いていく――。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 じゅぷ――、じゅぷっ……ちゃぷっ――。 
  
 卑猥な音が、生徒会用の会議室から聞こえてきていた。 
 わずかに開いた扉の向こうで、親友と誰よりも愛おしいと想っている少年が性行為に及んでいる。 
 親友は、彼女が見たこともない、表情で彼の胴を跨いでいた。水音はちょうど彼と彼女が重なるあたりから漏れている。 
 乱れる親友は美しかった。二の腕までずり落ちたブラウス。こぼれ落ちる乳房。窓から注ぐ黄昏の光が、メリハリのある身体に妖しい陰をつくりあげる。 
 そのうち、少年と親友はこそこそと話をはじめた。彼女には、それが恋人同士のさえずりあいに見えた。 
 やがて少年が耐えかねたように腰をゆらしはじめた。親友は最初こそ戸惑ったような表情を浮かべていたが、やがて目元を妖しくとろけさせた。腰をおとして、突き上げられるたびに親友は色気に満ちた嬌声をあげていた。 
 
 
 彼女は――黒雪姫は息をつめながらよろめくように一歩、二歩、扉から下がった。 
 
 ――恵も……なのか……。恵も……楓子やういういと同じように……ハルユキ君と……。 
 
 クラつく頭のまま、黒雪姫は目の前の光景を脳裏に刻み続けていた。 
 

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