「あの……師匠、大丈夫ですか?」  
「……ええ。さっきよりずいぶん楽です。対戦で気を紛らわせてくれた鴉さんのおかげで  
すね」  
「……それならよかったです」  
 おずおずと差し出された楓子の手をとりつつ、ハルユキはほっとして、体から力を抜い  
た。  
 密度の濃い対戦だったが、現実では一秒とすこしの時間しか経過していない。  
 ハルユキはちら、と楓子の脚を見てみた。楓子が身体にまとった布団の上掛けからは彼  
女の義足が見え隠れしている。脚を追って視線をあげていくと、脚の付け根に乾ききらな  
い血のあとがある。  
 
 四埜宮謡との情事をどこからか聞きつけた楓子は、ハルユキのお仕置きを宣言した。一  
晩かかるというので、ハルユキは楓子を自室にとめることになった。ちなみに週末なので、  
ハルユキの母は会社に泊まり込みをおこなっていた。  
 自室での待機を命じられたハルユキは、時計をみつめながらガクプルしていた。  
 視界の隅にAR表示されたデジタル時計は八時を示している。いまはお風呂にはいって  
いる楓子が、あと五分でかえってきたとして、八時五分。夜はまだまだ長い。通常、睡眠  
時間にあてられるべき時間を、全部無制限中立フィールドでのお仕置きに当てられてしま  
ったら……もしかしたらお仕置きは数年ごしに及ぶかもしれない。  
 それから三十分経過しやっと現れた楓子は、倒れてしまうのではないかと思えるほど顔  
を真っ赤にしていた。  
「おまたせしました……」  
 と呟き、ハルユキと同じベッドにふわりと正座した。いつか見たネグリジェ姿の楓子に  
どきっ、としつつも、これから始まるオシオキの恐怖がそれに勝った。  
 そのころから、視線をうつむかせたり、ハルユキをじっとみつめてきたりと、やや怪し  
げな行動があったのだが、恐怖にふるえるハルユキはまったく気がつかなかった。観念し  
て用意していた二メートル強のXSBケーブルをさし出し、目をつぶってただ待っていた。  
「……もう。そんなにおっかないですか? わたし……」  
 戸惑い気味の楓子の声が聞こえてきて、ハルユキは目を開いた。  
 以前も見たことがあるネグリジェを着た楓子は、いつのまにかベッドに横座りしていた。  
いつもはほわほわと柔らかな髪が、お湯でしっとり濡れて輝いていた。  
 ケーブルの末端をニューロリンカーの挿入口に差し込んだ楓子は、いつもの微笑を――  
少しだけ紅潮していたものの――浮かべて、ハルユキへじりじりとにじりよった。  
 そのままイベイドもブロックも間に合わず、唇が重なった。  
 楓子は、驚くハルユキをそのままベッドに押し倒し――。  
 
 夢を見ているかのようなここちのまま、ハルユキは楓子を貫いた。その瞬間にあがった、  
絹を裂くような悲鳴に我に返り、あわてて性器を抜いた。  
 楓子が涙をながしていた。処女をうしなった楓子は痛みで泣きだし、その場でうずくま  
ってしまったのだ。  
 顔面を蒼白にして震える楓子に布団の上掛けをかけながら、ハルユキはVR空間への待  
避を楓子に提案した。フルダイブは肉体の感覚をシャットダウンする。その間にすこしで  
も痛みが引けば……と考えての提案だったが、楓子は少し迷うように視線をさまよわせた  
あと、そのあとそっと首を振り、ハルユキをなだめるように言った。  
「痛みも受け止めるつもりで、鴉さんとひとつになりました……。だからこの痛みは、そ  
の想いの証拠です……」  
 痛みをこらえて言う楓子の言葉の意味を、ハルユキはよく理解できた。  
 理解できたがそれでもハルユキは、あまりにも辛そうな楓子に、一時でも痛みを忘れて  
もらいたかった。ニューロリンカーの直結状態を利用して、ハルユキはまず初期加速空間  
へ移動し、インスコをひらいてスカイ・レイカーへ対戦を申し込み、さきほどのエキシビ  
ジョンマッチかつ、意識消失による《零化現象》体験会となったのだった。  
 
 楓子に導かれるように、ハルユキはその隣に体をよこたえた。  
 おもに右側面から感じる体温に安らぎを覚えていると、もぞ……とハルユキの腕に、楓  
子が頬をおしつけてくる。  
 楓子もハルユキも裸なので、肌と肌が密着した。しっとりと汗ばんだ楓子の肌が、ハル  
ユキには心地よく感じられた。  
 消え入りそうな声で楓子が言った。  
「まだ……少し痛いので、このままでいいですか?」  
「はい……」  
「じゃあ、もうすこしこのまま……。でも……さっき対戦していたとき、鴉さんにふれて  
もらったところはすごく気持ちよかったです……」  
 つぶやく楓子に、いつものたおやかな笑顔はない。眉をしかめ、目の端に涙をためる。  
 が――、唇をふるわせながら痛みに耐え、それでもなんとか微笑もうとしている楓子の  
姿にハルユキは目を奪われてしまった。胸がせつなくなる。  
 ハルユキはおそるおそる楓子の背中に手をあててみた。男性には絶対に存在しない、や  
わらかい感触が手のひらに返ってくる。  
「んっ……」  
 小さく漏らす楓子に目をひきつけられる。  
 上目遣いでハルユキを見上げる楓子の顔の造作が、意外に幼いことに気がついた。  
 本当はこわいレイカー師匠のイメージがハルユキの根底に根強く残っているため、幼さ  
とオッカなさとのギャップが、心のどこかをくすぐる。  
 薄暗い自室にあっても、栗色の髪は、眩く輝きながら胸元に落ち、大きめの乳房が楓子  
自身の呼吸によって小さくふるえていた。  
「もう……すこし……このままで……いてください」  
 そのまま楓子は目を閉じ、口をつぐんだ。  
 無言の空間の中、ただただ呼吸音だけが響く。  
 ハルユキには我慢の時間だった。  
 師匠のむ、胸がふにふに……して……それに、お腹とか柔らかいし……、い、息が熱く  
てくすぐったい……。  
 ハルユキも男性である以上、そんなことをされれば、ハルユキの意志とは関係なく反応  
してしまう。  
 すでに血のめぐりきった性器がひとつの槍のように天井を仰いでいた。  
 楓子の魅力的な肉体から、意識をはずそうとすればするほど、逆に意識してしまうとい  
う悪循環に陥りつつも、ハルユキは内なる獣と戦った。  
「あの、ねえ……鴉さん」  
「ひゃ、はっ、はい!」  
 誰かにいいわけしつつ、おそるおそる楓子に視線をむけると、彼女は唇をハルユキへ向  
けてとがらせていた。  
 楓子はハルユキの頭のうしろへ腕をまわし、腕枕をしつつ、もう一方の手を脂肪につつ  
まれた腹部にあてた。  
 楓吐息がまじりあうほど近くに顔をよせた。  
「鴉さん……キス、しましょう」  
「は――い……え、あ……ちょっと……」  
「いや、ですか?」  
「そんな! ぜ、ぜんぜんいやじゃないですけど……」  
「ふふ。さっきまでたくさん、していたじゃないですか。対戦したから忘れちゃいまし  
た? 本当に忘れてしまったなら……」  
 楓子の目尻に涙がたまりはじめるのをみて、ハルユキはあわてて口を開いた。  
「わ、忘れるわけないじゃないですか! 師匠の舌も口も、気持ちよかったです! でも  
さっきと雰囲気全然違うのでびっくりしているんです……」  
 ちなみにさっきのキスシーンとは、目をつぶりおとがいをわずかに上向かせる楓子に、  
ハルユキからキスするというシチュエーションだったため、いまこのときよりは難易度的  
にひくかったりするのだが、気恥ずかしいのはかわらない。  
「じゃあ……いいですか?」  
「も、もちろんです……」  
 
 楓子は小さくうなずき目をつむりながら、ハルユキへ唇を近づけてきた。ハルユキは覚  
悟を決めて顔を固定する。  
「んっ……」  
 ハルユキも覚悟をきめ、楓子の背中に手をまわしてウエストあたりを抱きしめる。  
 やがて唇と唇がゆっくりと接触した。  
 押しつけあうだけのキスだが、それ故に暖かく、唇が燃え上がるようなキスだった。  
「はう……んっ、んっ……んっ……」  
 あまりのやわらかさに陶然としつつ、ハルユキは本能のまま、そろそろと楓子の胸へ手  
をむけた。やや赤みの強い乳首を指先ではじいてみる。  
「あ、んっ……」  
 楓子が唇を遠ざけた。  
「ンッ……いたずらしちゃ、だめですよ……?」  
「し、師匠こそ、さっきから僕のおなか――」  
「……さわり心地がよくて、つい」  
 楓子が笑った。「真空破」が付属しない「可愛い」笑顔に心臓が跳ねる。  
 右手を楓子の背中にまわしているので、空いた左手で楓子の腹部を撫でまわした。  
 やがて指が、きれいなひし形にととのった下生にかかった。さらさらするそれを、指先  
でくすぐりつつ、と楓子の足の間に指を差し入れる。  
 ぬる……。  
 指が温かいなにかで濡れた。  
「あ……んっ……」  
 か細いつぶやきが至近距離で発せられた。  
「そこ……いいです。自分でするより……。鴉さんの、指……すごく、気持ちよくて夢中  
に……」  
「そ、そうですか……?」  
 そんなほめられ方をするとは思いもしなかったハルユキは、ほんのすこし強めに楓子の  
肉芽をくすぐった。  
「ひゃんっ……んっ……んっ……」  
 気持ちよさそうに目を細める楓子。切なげな吐息が唇から漏れ、すぐそばにあるハルユ  
キの頬をくすぐる。  
「ひゃあ……あんっ、上手…鴉さん……っ」  
 うるみはじめたスリットから分泌される愛液が、ハルユキの指に絡んだ。濡れた指先が  
肉芽をくすぐる動きをスムーズにさせていく。  
「んっ……んっ……ひゃうぅ……」  
 水音が一つ響くたび、楓子は悲鳴をあげた。あまりにも甘い声に、どきどきしながら楓  
子をみつめてみる。楓子は切なげに眉をよせ、わずかに開いた唇からかすれた悲鳴を……。  
「あん……も、もう!」  
「いっ!」  
 夢中で秘芯をすりあげていたハルユキは、下半身からあたえられた刺激にふるえあがっ  
た。  
 刺激のでどころを確認すべく視線をさげていくと、楓子の指先がそそりたったハルユキ  
の性器を指先でつついていた。  
「さっき……一回、気持ちよくしてもらいましたから……お返しですよ」  
 楓子の指が、先走り液で先端をぬらすハルユキの性器に絡まった。硬くなった肉棒を上  
下にしごきはじめる。  
「あ、ああ……し、師匠……っ!」  
 性器がつたえてくる電撃のような快感が、ハルユキを直撃した。  
 そのうえ楓子は「鴉さん……」と小さくつぶやいたあと、ハルユキへ唇をよせてきた。  
再び、唇がかさなる。  
 
「んぐっ……」  
 同時にぬるっ、と何かが口内に進入してきた。なめらかで暖かいそれは、楓子の舌だっ  
た。。  
「んっ……んっ……」  
 淫らな水音をひびかせながら、楓子は丁寧にハルユキの舌をさらった。舌そのものを持  
って行かれるようなディープキスに誘われ、ハルユキはすぐに楓子と舌をからめた。  
 性器と口内からそれぞれ与えられる、別種類の快感がハルユキを焦がしていく。  
「んっ、ちゅる……んっ、んっ、鴉さん……気持ちいいですか……?」  
 微笑みながら聞かれ、ハルユキはこくこく頷いた。  
「はい……ぐっ……師匠……フーコ、さん……」  
 敬愛し、尊敬する女性に奉仕されるというシチュエーションがハルユキをさらに追い立  
てる。楓子が指をうごかすたび、先端を勃起させた彼女の乳房が、ハルユキの胸にすりつ  
けられた。ときおり「んっ」とか「あんっ……」とか、小さくうめくのは、楓子自身も乳  
首をすりつけることで性感を得ているようだった。  
 そんな手コキにハルユキは耐えられなかった。  
「あ、あ、し、師匠っ――!」  
「んっ……なんです……」  
「あ、あの、その……!」  
「ちゅっ……んっ……いい、ですよ……気持ちよくなって……鴉さん」  
 より容赦なく、楓子の指が上下する。指先でつくられた輪がカリ首の上をすべった。  
「う、うわあ……!」  
 耐えきれず、ハルユキは性器の先からしぶきをあげた。  
 ほぼ真上に吹き上がった精液が、ハルユキの腹部とそして楓子の身体に降りかかってい  
った。  
 アワアワするハルユキの目の前で、楓子は一度だけ大きく目を見開き、すぐにほほえん  
だ。  
「いっぱいだしましたね……」  
 手のひらを汚す白濁液をながめつつ、楓子が言った。  
 ハルユキはそれどころではない。優しく手コキされて射精した事実と、射精そのものの  
快感に頭がくらくらしている。  
 それはすぐに、安らかな眠りの誘いへとかわっていった。さきほどの対戦で精神を疲弊  
されていたという事情もある。  
 楓子はそっとハルユキの髪をなで、耳元でつぶやいた。  
「サっちゃんのときにも、優しくしないとだめですよ、鴉さん……」  
「ふぁ……い」  
 夢心地でつぶやきつつ、ハルユキは目を閉じた。  
 五感もまた眠りに落ちていくが、かたわらに存在する楓子の身体の柔らかさや暖かさを、  
ハルユキは最後の最後まで感じ続けた。  
 
 精液をかぶってしまった身体を洗い流すべく、ハルユキと楓子は再度浴室にいた。  
 ぴちゃん……ぴちゃん……。  
「あ、あのさ、さっき! 最後になにかいっていませんでした?」  
「はぁ……んっ、んっ……ああぁ……いいえ、なにもっ、んっ! ああ、鴉さんの、熱い  
っ!」  
 楓子はバスマッドに横たわるハルユキの上で腰を振りたくりつつ答えた。ハルユキの眼  
前で、スイカのような豊満な乳房がぷるんぷるん、上下にゆれる。  
 義足は装着されたままだ。  
 ハルユキは以前、楓子が黒雪姫とお風呂へ入っているところを(偶発的に)目撃してい  
る。そのときも、義足をはずしていた様子はなかったので、義足の耐水性は問題なさそう  
だ。  
 それよりも心配なのは――。  
 いろいろタガがはずれてしまったと思われる、楓子の様子だった。  
「あんっ、んんっ、ぅぅ……んっ! 気持ちいい……!」  
「……」  
 ハルユキにまたがりつつ、硬く太くなったハルユキの性器を自分の膣へ導いていく。ハ  
ルユキはやや呆然としながら、腰をスライドさせる楓子をみつめていた。  
 痛みにでまともに重なれなかったことを理由に、楓子は再度、ハルユキを求めた。  
 結果として、ハルユキは仰向けに寝転がり、楓子がその上に腰をおとして……、騎乗位  
の格好で重なった。最初こそ痛そうな表情をみせていた楓子だったが、すぐに愉悦乃表情  
をみせるようになった。そして激しくハルユキをもとめるようになり……いまにいたる。  
 楓子はぐっ、と唇をかみしめながら喘いだ。  
「んっ、んっ……んっ……奥に……っ!」  
「し、師匠――!締めすぎですっ!」  
「んっ、んっ……! か、鴉さんっ、んんっ、ぅぅ、んっ、な、なにか、いいました――  
っ!」  
「い、いえ……なにも……」  
「そう、ですか……んっ……もう……きもちよすぎて……」  
 楓子は、はぁ、はぁ、と激しい呼吸をくりかえしながらも、腰の動きをとめない。  
 義足はすくなくとも人体よりは「重い」オブジェクトであるため、楓子の臀部や下腹部、  
背筋はほどよく鍛えられている。そのせいか性器を締める圧力が強い。ハルユキは呑み込  
まれるたびに生まれる快感に痺れていた。  
「ふぁ……あんっ、んっ……ぐりぐりっ、してっ――!」  
 わずかなサーボ音がきこえる以外、生体とまるで変わらない義脚を、がくがくと稼働さ  
せ、身体を動かしていた。  
「ああっ、んっ……」  
「師匠……痛く、ないですか……」  
「んっ、んっ……んっ……だいじょうぶ……ああ、これなら……これなら、ういういが夢  
中になるのも――んんっ!」  
 刹那、楓子が悲鳴をあげながら、背を反らした。適度に鍛えあげられた腹部が汗とお湯  
で光り輝く。  
「し、師匠……そんなに締め、たら……」  
「はぁっ、ああっっ、ああっ、気持ちいい――!」  
「わ、わわわっ!」  
 性器を包む柔肉が、きゅうっと狭まった。  
 ぐちゅぐちゅと、リズムカルに淫音が打ちなる。  
 頬をゆるめ嬌声をあげる。胸元まで真っ赤だ。丸見えのスリットは、ハルユキの性器を  
飲みこみつづける。  
「ああっ! んっ、いいっ、よぉ……! ふ……ああんっ! あっ、あっ、いい……あは  
んっ、んはああっ! ああ……んっ、んっ、んっ……はあ……鴉さんの……気持ちいい…  
…」  
 
 「し、師匠……」  
 理性の人たる年上の女性を夢中にさせている事実が、ハルユキを際限なく興奮させる。  
「じゃ、じゃあ……僕も……」  
 程良くしまったウエストに手を添えて、彼女の上下を助ける。  
「ああああっ!」  
 楓子の嬌声が一オクターブ高くなる。浴室に悲鳴が反響した。  
「ああぅ、またっ……ま、またっ……」  
 限界が近いのか、楓子は小刻みに身体をゆらした。乳房の先に色づいた桜色も身体にあ  
わせて揺れる。お湯に濡れた乳房から水滴が散った。  
「ああ、あああああぁっ――!」  
 ひときわ大きな声で泣き叫んだ楓子はそのまま達してしまった。柔肉が強く締めつけら  
れる。  
「んっ、く……うぅ……んっ……」  
 楓子は小刻みに震えながら腰の動きを止めた。  
「くっ――うっ――!」  
 しかしたまりにたまった性欲を解消できない苦しさにハルユキは、呻きながら腰を突き  
こんだ。  
「ひゃうっ!」  
 指の人差し指と中指で乳首を挟み込む。そのまま指をうずめると楓子がひときわ高い声  
をあげる。  
「ああっ……! ま、まって……!」  
 イったばかりで敏感な膣をくすぐられたせいか、楓子は眉をしかめた。しかし、楓子の  
感情とは別に、敏感な柔筒がハルユキの性器を締めつけていく。一度、達した楓子の膣道  
は灼熱していた。  
 びりびりと痺れるような快感が頭を貫き、ハルユキは性器からしぶきをあげた。  
「ふぁ……ああ……ああ……鴉さんの……中で……」  
 楓子の下腹部がふるえながら、内側へへへこむ。  
 絶頂したての状態で性を注ぎ込まれた楓子が目をとじながら脱力した。  
「ああ……ああ……これが……んっ……鴉さんの……」  
楓子がハルユキの耳元で熱い吐息を吹きかける。ハルユキは楓子の汗ばんだ身体を抱きし  
めつつ、感動に酔っていた。  
 最後の一滴まで楓子にそそぎ込む。膣壁はおろか、子宮の奥まで汚し尽くし、やっと射  
精がおさまった。男根はきつくしびれ、いまだ楓子の膣をむさぼるように小刻みに震えて  
いた。  
 心地よい射精感に溶けてしまいそうだった。  
「はぅ……あんっ……んんっ……」  
 楓子は小刻みに震えつつ、頬をハルユキの鎖骨に当てた。  
「まだ……暴れて……。ふふ……熱いです……溶けちゃい、そうです……」  
「ぼ、僕も……」  
 顔をあげた楓子が口の端を笑みにかえた。ハルユキもあわせて微笑み、ぐったりと倒れ  
込んだ。  
 
 
 バスマッドのうえで、仰向けになる楓子の姿に、ハルユキはおもわず唾をのみこんだ。  
いままでハルユキの男根でうがたれていた秘処から、愛液と精液がまざりあったものがゆ  
るゆると流れ出ている。  
 その左右には生体である股下とさきほどまでハルユキを責め立てて稼働していた義足が  
ある。  
 楓子の骨から上を支えて稼働する義足は、やはり一つの芸術品のようだった。  
「……あ、あんまり……そんな……じろじろ……恥ずかしいです……」  
「も、もういまさらな気がしますけど……」  
 ほんの五分ほどまえまで、ハルユキをあっとうするほど乱れていた楓子が、今度は羞恥  
心に顔を染めている。しかしそれでも気になるのか、ちらちらとハルユキの性器をとらえ  
ていた。  
 そんな愛らしい姿を見せられても、普通の男性ならまだまだインターバルが必要だ。し  
かし、ハルユキの性器はすでに硬さを取り戻している。  
 過剰なまでの再生能力はかのエンハンスド・アーマメントのようだ。  
 これなら大丈夫そうだ……とハルユキが濡れそぼったそこに亀頭を押し付けようとした  
とき、楓子がストップをかけた。  
「あの……鴉さん。ひとつお願いがあって……」  
 おどおどしながら、楓子は指先を宙に向けた。仮想デスクトップを操作しているようす  
だが、直結接続もアドホック接続も行っていないハルユキには、なにをどうしているのか  
がさっぱりわからない。  
 しばらくして楓子が宙に浮かべていた手を握り締めた。  
「お、おわりました……。脚をさわってみて、くださいませんか?」  
「あ、脚……ですか? でも師匠の脚は……」  
 以前話をきいたところでは、義足が楓子に伝えるのはおおざっぱな圧感のみ。生体の鋭  
敏が感覚からは程遠い……とのことだった。  
 ハルユキは脳裏に浮かんだ疑問を口にしようとして、失敗した。瞳に涙の膜をはる、楓  
子の姿が視界に入ってきた。  
 心のなかでごめんなさいしながら、緩いM字を描く脚に触れる。まずは足指のあたりを  
こちょこちょ……。  
「ひゃんっ!」  
 予想よりも大きく楓子が反応した。  
「え、ええっと……大丈夫ですか?」  
「へ、平気です……。さあ、続けて……ください……」  
 でも反応が良すぎなような……。  
 あまりにも気持ちよさそうな――それこそ、秘処や乳房を愛撫したときのように反応す  
る楓子に、ハルユキは心中で首を傾げた。  
 すす――と、今度は膝の裏からかかとまでを指でなぞってみる。  
「ふあ……っ、ああ……んっ……」  
「し、師匠ほんとうに大丈夫ですか? さっきから、反応が……」  
「……あ、あの……じ、じつは……その」  
 楓子が脚をぴくぴく痙攣させながら呟いた。  
「サっちゃんに義足の感覚置換パッチをつくってもらって……」  
「感覚置換パッチ――ですか……」  
 楓子が呟いた言葉を反芻する。  
 キーワードと脚に触れたときの反応が頭の中でつながる。  
 息をのみながら、ハルユキは言った。  
「も、もしかして……感圧センサーの触感覚を、性感におきかえている……!?」  
「……はい」  
 
「た、たしかに反応が良すぎるなとは思っていましたけど……」  
 さすがの無茶に、あぜんとするハルユキの前で、楓子が子供のようにうなだれる。いつ  
もとは立場が逆になったかのようだ。  
 叱られた子供のように消え入りそうな声で楓子が言った。  
「でも……でも、鴉さん。こんなに……脚に触れてもらいたくなったのは、はじめてなん  
です。脚はどこまでいっても、生体の触感覚にはかないません。でも、どうしても鴉さん  
を……感じたくて……」  
 言葉を詰まらせつつ、楓子が言った。先ほどとは違う色合いの涙が目尻にたまっている。  
「だから……その……」  
「あ、あの!」  
 涙をこぼしてしまいそうになる楓子に胸のうちを伝えるべく、ハルユキは言葉をさえぎ  
った。  
「あの……師匠。ぼ、ぼくに……その役目に、僕を選んでくれて……ありがとうございま  
す……。その……すごく、うれしいです」  
「……だって鴉さん以外、考えられません。それに、鴉さん以外に身体をゆるしたりは…  
…しません。絶対に……」  
「フーコさん……」  
 頬を真っ赤に染めた楓子は、ハルユキを見つめながらそんな告白をした。  
 胸の奥がじんわりと暖かくなった。尊敬の念すら抱いている女性に認められ、信頼され  
ているのが素直にうれしい。  
「じゃあ……さわりますね……」  
「はい……」  
 期待に答えるべく、ハルユキは早速、もはやひとつの性感ユニットと化した脚をなでる。  
敏感に反応した楓子が、背筋をわななかせる。同時に、ビンビンに充血した乳首がこまか  
に震えた。仰向けになってもなお、形を崩さない双丘はみごととしか言いようがない。  
「ひゃう……んっ……もっと、強くしても大丈夫ですよ…?」  
「わ、わかりました……ちなみにどんな感じが……するんですか……」  
「か、鴉さんに……胸や、あの、あそこを撫でてもらったときのような感じがします…  
…」  
 いいながら、脚をもじもじと閉じてしまう。  
 師匠……フーコ、さん……!  
 いじらしい態度に我慢が効かなかった。  
 ハルユキはぐぐっ、と楓子の足を押した。ふくらはぎのあたりを自分の肩に乗せつつ、  
性器を秘処におしつける。  
「あっ――!」  
 脚ぜめの影響で新たな愛液を分泌した膣は、すみやかにハルユキを迎え入れる。膣道の  
間を満たしていた愛液が、性器の間からもれだしていく。  
 性器が楓子の奥を小突いたのを確認し、おそるおそる腰を動かした。愛液でとろとろに  
とろけた膣道は、絶えずハルユキへ快感をもたらしてくる。  
「ひゃあ……んっ、深いっ…そこ……いいです……ひや……んっ、んっ……んっ……んっ  
……」  
 想像以上の乱れぷりで楓子が小さくうめいた。うっすらと鎖骨のまわりが赤くなってい  
る。締め付けも激しくなっていた。心地よい波のような快感を得ながら、楓子の様子をみ  
つつ腰を動かす。  
「ひゃんっ……んっ……、はぁっ……脚をそんなふうに触れてくれる人に出会うなんて…  
…触れられてうれしいと思うときがくるなんて、すこし前まではおもいもしませんでした。  
鴉さんのおかげですね……」  
「師匠が……気持ちいいなら、それがいちばんです……」  
 折られた膝部を指でいじりまわす。間接部はやはりメカニカルなさわり心地がするそこをく  
りくりといじりまわした。  
 
「くふっ……ん、んっ……んぁっ……!」  
 楓子が切なげな表情を浮かべて、声をもらす。  
 そろそろと手を下げていくと、足先にふれる。感圧センサーは足指の間にも存在するら  
しく、ハルユキが親指と人差し指の間を指でくすぐると、楓子の柔筒がきゅきゅっと狭ま  
った。  
「んっ、ぅぅ……んっ……もっと、私がこの脚を持って生れてよかったと思えるくらい…  
…触れて、くださ……い……」  
「はい……」  
 お願いに頭をくらくらさせながら、ハルユキは自分が達しないように動きを制限しつつ、  
楓子の脚を手で味わった。  
 膝の裏のあたりをくすぐり、ふくらはぎをもてあそぶ。人工皮膚の表面を傷つけないよ  
うにやさしく撫でまわしつつ、膣道へ腰をおしつける。  
「んっ…、やぁっ、んっ、んっ、脚も……鴉さんのも………」  
 長いまつげを震わせながら、楓子は切なげな表情で訴えかけてくる。  
 膣道が、脚からの刺激をうけてさらに狭苦しくなる。油断すれば腰がくだけてしまいそ  
うだった。  
 たゆんたゆんと揺れていた。ほんの少し先を陥没させた乳首を空いた指で摘んでみる。  
「あっ、んっ――!」  
 楓子が背中がバスマッドからはなれるほど背を反らした。  
 そのまま脚と乳房を手で、膣道を性器で犯しつつ、楓子の淫らな姿に視覚的な官能を得  
ながらハルユキは夢中で腰を送り込む。  
「あっ……あっ、あんっ……鴉さんっ……! あぁんっ……!」  
 甘く切ないその音色を耳に、ハルユキは昂っていく。  
「はぁ……師匠……!」  
 熱くとろけたそこを削り取るようにかき回し、膣道を揺さぶるように腰を叩きつける。  
「ああっ……んっ、んっ、鴉さんっ……わたし、もう――! くぅっ!」  
 限界が近いのか、楓子はすがるように乳首をいじめるハルユキの手を掴んだ。手繰るよ  
うに両指を領指にからませる。ハルユキも、同じように楓子の手を強く握りつつ訴えた。  
「あ、あのっ、僕も、もうっ――!」  
 つながる心地よさがやがて限界を迎えた。背筋が焼けつくような快感に囚われつつ、ぐ  
ぐっと、性器を押し付ける。  
 こりこりした子宮口に尿道をくすぐられ最後の堰が外れてしまった。  
 ハルユキは楓子にむかって射精した。膣の奥――女性にとって重要な器官へむけて、大  
量の精液を注ぎ込む。  
 
「あ、ああああっ、やああああああっ!」  
 どぷん、どぷん――  
 三度目の射精とは思えないほど濃い精液が楓子の奥へと殺到していく。  
 
「んっ、熱っ――!」  
 それを受けた楓子は、背中をのけぞらしながら、絶頂へと上り詰めた。  
 膣道がぎゅぎゅっ、と収縮し、尿道にのこっていた精子すら搾り取る。  
「師匠……全部……」  
 絶頂の余韻に酔っているのか、楓子はいまだとろけた表情でぼんやりとハルユキをみつ  
める。  
「はい……鴉さんので、お腹いっぱいです……火傷しちゃいそうですよ」  
 射精の心地よさに酔いしれつつ、ハルユキは楓子に覆いかぶさるように倒れかかった。  
頬で押しつぶした柔らかい枕のようなモノを感じつつ、ゆっくりと瞼をとじた……。  
 
 

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