〜N/Bエクストリーム アフター&アウトサイド・アフター〜  
 
とある市街地に立つ集合住宅の通路を、一人の男がのんびりと歩いていた。  
長身痩躯に纏ったスーツは軽く着崩れて、怠惰な勤め人然とした雰囲気を醸し出している。  
その男の名はニコラウス。数ヶ月前まで政府の非合法徴税吏として、裏社会を騒がせていた内の一人だ。  
しかし、今の彼の穏やかな風情を見て、その苛烈な過去を窺い知る事が出来る者はそう多くはない。  
目指す扉に辿り着くと、ニコルは取り出した鍵で施錠を解いて入り込み、部屋の奥へと声を掛けた。  
「ただいま」  
ニコルの声に続いて中から軽い足音が近づき、玄関に小柄な少女が姿を現した。  
アンドロイドであるニコルを作った博士の娘にして、彼の大切な家族の一員でもあるブリギッタだ。  
今は彼女も物騒な武器を包丁とお玉に持ち替え、『主婦』という新たな生き方を選び、日々奮闘している。  
割烹着に三角巾という古風な出で立ちの彼女は、まだ少しぎこちない微笑みと共に小さく呟いた。  
「お帰りなさい、ニコル」  
「うん、ただいま」  
特筆するような事ではない、単なる日常的な帰宅風景。  
けれど、それを取り戻すまでの苦難の道を思えば、こうした何でもない会話すら正しく夢のように感じられた。  
もう、忍び寄る破滅の足音に怯える事も、意に添わぬ死線に愛する家族を晒す必要もない。  
笑みを貼り付けた仮面などなくとも、新たに作った顔で自然と穏やかな微笑みを浮かべられる。  
「肉体および精神的な疲労度の蓄積状況は?」  
「いや、まあ、大した事はないよ」  
<ゾーン>のセキュリティ・アドバイザーという新たな仕事による気疲れも、その充実感の前では霞んでゆく。  
先導するように身を翻したブリギッタの後をついて、ニコルは居間へと足を踏み入れた。  
 
「おや、シンメルとベルヒトはまだ帰ってないのかい?」  
残る二人の家族の姿を探して、ニコルは居間の中をくるりと見回した。  
危険な仕事を辞めたベルヒトは子役として芸能活動へ身を投じ、シンメルはそのマネージャーを務めている。  
最初の本格的な仕事である教養番組も好評だったらしく、徐々に新たな仕事も舞い込んでいるらしい。  
「共演者の不都合により収録時間が延長。帰宅は明朝になる可能性が濃厚との連絡あり」  
「事項了解」  
ブリギッタはキッチンへ歩み去りながら、淡々と戦況報告をするような口調でニコルの問いに答えた。  
ニコルは脱いだ上着をソファーの背へ適当に掛け、これからの苦行に備えて密かに気合を入れる。  
しばらくすると、可愛らしいミトンを嵌めたブリギッタが、名状し難い芳香を放つ鍋を掲げて戻って来た。  
「今夜は、新しい料理に挑戦してみた」  
「へっ、へえ……。これはまた、いつにも増して、その、個性的な……」  
魔女の大釜を覗き込む心境で、ニコルはその『新しい料理』とやらに目を向けた。  
未だ難航しているブリギッタの家事習得の中でも、特に調理技能のそれは最大の課題の一つだ。  
緑褐色に濁り、ボコボコと溶岩にも似た泡を立てる半流体は、その構成要素を混沌の内に留める。  
珍奇な食材や奇抜な調味料を使うでもなく、ここまで独創的な料理に仕上げるのは、ある意味才能と言えよう。  
その後も、素材の原型を留めない品の数々がテーブルに並べられ、ニコルの前に難攻不落な包囲網を形作る。  
「い、いただきます」  
「……『どうぞおあがり』」  
ニコルが悲壮な決意を固めてスプーンを一口頬張ると、眉間を痛打されたような衝撃が襲い掛かってくる。  
「二人のぶんもあるから、沢山食べて」  
(あ、あいつら、これを予想してたんじゃないだろうな……?)  
平穏な日常の中にあっても、何故か頻繁に訪れる生命の危機に、ニコルはたらりと脂汗を流した。  
 
                      ◇  ◇  ◇  
 
「こ、今夜の料理は、一段と強烈だったな……」  
絶望的な戦況を気力だけで乗り切ったニコルは、自室のベッドにぐったりと腰掛けていた。  
数時間も経ってようやく落ち着いてきた腹部をさすり、深々と溜息をつく。  
料理を作った当のブリギッタが、相変わらず平静な表情のまま、普通に食べていたのが信じられない。  
味覚が鈍いのか独特なのかは判らないが、この分では腕前が上達するのもかなり望み薄だった。  
「……ニコル」  
「なっ、何だどうした?」  
そう考えていた時、扉の向こう側から軽いノックの音と共に声を掛けられ、ニコルは慌てて姿勢を正した。  
特に用件も無く、ブリギッタが彼の部屋を訪ねてくる事など滅多にない。  
僅かに言い淀む気配の後、珍しく躊躇いの感情を乗せた少女の声がドア越しに届く。  
「……入っても、いい?」  
「あ、ああ、それは構わないけど……」  
行動の宣言ではなく、こちらの機嫌を伺うような物言いは、普段の彼女とは明らかに異なっている。  
どうやら重大な話らしいと察して、ニコルは最近何か変わった事があっただろうかと、頭の中で思考を巡らす。  
記憶の検索も済まない内に、部屋の扉がおずおずと開いて、ブリギッタの姿がニコルの視界に入った。  
「いったい何……って、るっ、ルーっ!?」  
その格好を目にした瞬間、ニコルは驚愕の余り、以前の仕事で使っていたコードネームで彼女に呼び掛けた。  
まだ肉付きの薄い肢体を包むのは、小さなショーツと肌の色が透けて見えるほどの薄いネグリジェのみ。  
いつもはツインテールにしている髪も肩まで下ろし、その頬は羞恥の為に赤く染まっている。  
なだらかな胸の膨らみの頂点に鎮座する、淡く色づいた蕾を目撃し、ニコルは風を切る勢いで顔を逸らした。  
 
「じゃない、ブリギッタっ! そっそ、その格好は一体なんの積りだっ!?」  
「……夜這い」  
「よよよっ、夜這いっ!? って、うわぁ!」  
気が動転したニコルは、ポツリと告げられた言葉にどもりながら振り向き、あたふたと目元を掌で覆った。  
戦闘においては百戦錬磨でも、ことこう言った事態に関してはニコルもまるで免疫がない。  
ブリギッタは緊張と恥じらいにその身を震わせながら、それでも静々と歩を進め、彼に近づいていく。  
「一般に、夜、男が女の元へ忍んで行くこと。転じて、相手の承諾を得ずに性交を求める行為を指す」  
「言葉の意味を訊いてるんじゃないっ! そんな事をする理由の方を訊いてるんだっ!」  
辞書の記述を読み上げるような答えを返す少女に、ニコルは焦りに掠れた声で叫ぶ。  
彼の間近まで歩み寄ったブリギッタは、そこでピタリと足を止め、思考を纏めるかの如く黙り込む。  
出来るだけ首から下を見ないようにニコルがそっと顔を見上げると、彼女はようやく胸の内を語り始めた。  
「……ニコルが、何度要求しても、私の提案を承諾してくれないから」  
「だ、だからいつも言ってるだろ? そういう事はその、もっと時間を置いて考えるべきだって!」  
ブリギッタが何を求めているかを理解したニコルは、その話題が出る度に用いてきた言い訳を述べた。  
彼女は『主婦』を務める事を宣言した時から、幾度となく彼にその『配偶者』たる事を望んでいる。  
そして、その法的な同意に踏み切る決心を持てないニコルは、言を左右にして返答をはぐらかし続けていた。  
「男性が消極的な場合、女性から積極的に働きかけるのも、有効な戦術の一つ」  
「どこで仕入れたそんな知識っ! というかこれは流石に積極的過ぎるだろっ!?」  
そのツケが回ってきた事に気付いても尚、ニコルは未練がましく反論し、彼女の決意を覆そうとした。  
しかし、思い詰めたブリギッタは、逃げようとする彼の肩をしっかりと両手で捕まえ、全身で圧し掛かる。  
「……『初めてだから、優しくしてね』?」  
「うわーっ!?」  
ニコルの背を一気にベッドへ押し倒しながら、ブリギッタは著しく状況にそぐわない台詞を囁きかけた。  
 
「わ、判ったブリギッタ、冷静に話し合おうっ! だからまずは、俺の上から降りて……」  
「駄目。明白な既成事実がないと、ニコル、また逃げるから」  
「いやだから、少し落ち着いてくれって!」  
何とかこの場を逃れようとするニコルの言葉にかぶりを振って、ブリギッタは彼の身体の上へ馬乗りになった。  
一見細身に見えても、元は戦闘用サイボーグである彼女の腕力は、ニコルとほぼ同等である。  
意識の混乱に体勢の不利が重なり、まさか本気で突き飛ばす訳にもいかず、結局は口先で翻意を促すしかない。  
「じゃ、じゃあ、前向きに検討するから! だから、こんな真似はむぐっ!?」  
「んんっ!」  
ブリギッタはニコルの頬に両手を添えて強引に上向かせると、自らの唇で言葉を遮るように彼の口を塞ぐ。  
カツンと前歯が音を立てる不器用なキスに、ニコルの目が大きく見開かれる。  
胸板で潰れる二つの柔肉の感触が、彼女の激しく高鳴る鼓動の響きと共に伝わってきた。  
「ひょっ、まへっ! むっ、う、んおっ!?」  
「はぷ……んっ! ちゅ、はむっ、んうっ……」  
じたばたと押し退けようとするニコルの腕に身を捩って抗い、ブリギッタは続けて舌を伸ばし始めた。  
忍び込んで来た小さな舌先が、深い繋がりを求めて彷徨いつつ、躊躇いがちに歯列を辿ってゆく。  
気弱な小動物のように震える肢体に、彼女の緊張と不安を見て取って、跳ね除けようという意思が阻害される。  
その間も、ブリギッタは息を止めてニコルの口内を探り、彼の感情を昂ぶらせようと目論む。  
「むぐ、ぬをっ、むっ、うう……」  
「んんんっ、んっ、んちゅ、んむぅ……」  
ブリギッタはようやくニコルの舌を探し当て、つたないながらも情熱を込めた口付けを懸命に繰り返す。  
舌同士が擦れ合う感触と、身体に掛かる柔らかな肢体の重みに、ニコルの理性は揺らぎ始めていた。  
 
「っはぁ、っ……。次の、手順は……」  
「うっ、く!」  
大きく息を継いで身を起こすと、ブリギッタは両腕を交差させ、薄いネグリジェの裾を手繰り寄せた。  
衣擦れの音を立てながら、劇場の幕が上がるようにして、彼女の白い素肌が露わになってゆく。  
胸の膨らみが掲げた腕に合わせて縦にたわんでいき、肩を落とすと柔らかく弾んで、元の丸みを取り戻す。  
成熟し切ってはいないが充分に魅惑的なその肢体に、ニコルはぐっと息を呑み、思わず目を奪われる。  
脱いだ薄絹をベッドの脇に滑り落とすと、続けてブリギッタは彼のシャツの襟元へと指を伸ばした。  
「ちょっ、ブリギッタ、やめろって!」  
「……嫌。ニコルが承諾してくれるまで、やめない」  
「だからよせって、おい、こらっ!」  
抗うニコルの手と揉み合いながら、ブリギッタは断固とした態度で一つずつボタンを外していった。  
生地に皺が寄るのにも構わず、慣れない手付きでニコルの服を剥ぎ、胸板を外気に晒してゆく。  
やがてニコルのシャツは、彼女の手によってボタンを残らず取り払われ、そのまま左右にはだけられる。  
そして、再び肌を隠す余裕も与えずに、ブリギッタは寄り添うようにしてニコルの胸へ倒れ込んだ。  
「露出した肌を触れ合わせ、相手に異性を感じさせると共に、自分の状態を伝える……」  
「あ、あの、だからな……」  
記憶してきたらしいマニュアルを諳んじるブリギッタに、ニコルは対処に困って意味の無い言葉を発した。  
その発言通り、火照った肢体の感触がこれ以上ないほどの生々しさで、彼女の今の状態を認識させる。  
ニコルの胸元に広がるしなやかな髪は、ブリギッタが身動きする度にさらさらと流れて、肌をくすぐる。  
控えめな乳房の中心で、小さな乳首がつんと尖り始めているのさえ、克明に感じ取れる。  
生体部品で構成された下腹部にじりじりと力が漲ってくるのを、ニコルは抑え付ける事が出来なかった。  
 
「あとはこうして、手や口を用い、愛撫を重ねる……んっ」  
「うおっ!? ブ、ブリギッタ、なにを……っ!」  
ブリギッタは、ニコルの上に身を寄せたまま、鎖骨の窪みにそっと唇を寄せた。  
同時に、両手は彼の肉体を確認するが如く、緩やかな動きで胸板や腹を撫で始める。  
愛しげに肌をさするブリギッタの小さな掌が、ニコルの背筋に慄きにも似た痺れを引き起こしてゆく。  
彼女が肩口から首筋へとキスを散らす度、押し付けられた双丘がふにゅんと形を変え、その柔らかさを示した。  
「ん……、脈拍数が、更に上昇……。ニコル、興奮している……?」  
「いっ、いや、これは……」  
ふと顔を上げたブリギッタに問い掛けられ、ニコルは気まずげに言葉を濁した。  
心地良さを感じている事を認める訳にもいかないが、口先だけで否定しても見抜かれてしまう気がする。  
彼女に触れたいという想いと、状況に流されてしまう事を諌める理性がせめぎ合い、激しい葛藤を巻き起こす。  
そんなニコルの内心も知らないブリギッタは、軽く目を細めてふわりと微笑んだ。  
「良かった……。知識だけで実戦経験が無いから、これでいいのか不安だったの……」  
「そっ、それは違うぞ? 何と言うか、もっと根本的な処で間違ってる!」  
どういう偏った知識を蓄えたのか、妙に安心した様子で呟くブリギッタの言葉を、ニコルは即座に否定した。  
すると、彼女は少しきょとんとした顔をして、ニコルの台詞に小さく首を傾げる。  
「間違ってはいない筈。だって……」  
そして、軽く腰を浮かせて片腕をするすると下に伸ばし、彼の股間に手を宛がう。  
「……ニコル、大きくなってる」  
「っ!?」  
断言と同時に、硬く膨張した剛直をズボンの上から優しく握られて、ニコルの抑制は一気に弾け飛んだ。  
 
「ああ、くそっ!」  
「え? あ、きゃっ!?」  
大きな叫び声でブリギッタが怯んだ隙に、ニコルは勢い良く体勢を入れ替えて、彼女の身体を組み伏せた。  
驚きに小さく身を竦めた愛する少女の顔を、肩の脇に両手を突いてじっと見下ろす。  
その真剣な眼差しに、ブリギッタは悪戯を咎められた子供のように、寄る辺無い表情を浮かべる。  
しばらく無言のまま、ニコルが凶暴な衝動に苦労して手綱を掛けていると、やがて彼女は恐る恐る口を開いた。  
「あの、ニコル、怒って、る……?」  
「少しな。こんな事、強引過ぎると思わなかったのか?」  
「ごめん、なさい……。でも私、どうしてもニコルと、正式な『夫婦』になりたくて……」  
ニコルが軽く咎めるように目線を強めると、ブリギッタは瞳を潤ませて切々と訴えた。  
そこまでして形式を求める心情は理解し難いが、それも自分を想う故である以上、あまり強くも言えない。  
ニコルは彼女の頬に掛かった髪を指先で払ってやりながら、今度はやや自嘲気味に囁き掛ける。  
「降参だよ。もう俺も、責任取らざるをえない処まで行かなきゃ、収まりがつかないからな」  
「え……? それは、どういう……?」  
「こういう事だよ」  
「んっ……!?」  
戸惑うブリギッタに顔を寄せ、ニコルはその可憐な唇に優しく口付ける。  
一瞬丸く見開かれた彼女の瞳は、すぐにそれが求めていた返答だと察して、安堵と喜びに細められていく。  
「ん、ふぁ、んふぅ……」  
ニコルがキスを重ねつつ細身の肢体に手を這わすと、ブリギッタの口から甘い喘ぎが零れ出す。  
ささやかな胸の膨らみを掌でそっと撫でながら、ニコルは熟れた果実のような唇を何度もついばんだ。  
 
「あっ、ん……。私も、胸が、高鳴って……、んっ、はぁっ……」  
「ブリギッタ……」  
ニコルの手が白い素肌を撫でてゆくにつれ、ブリギッタの吐息は短く、荒くなっていった。  
親指の腹で乳首を捏ね回すと、ぷるりと肩を震わせて、込み上げる快楽に肌の火照りを増してゆく。  
耳朶に口元を寄せて軽く食むように刺激すれば、未知の感覚に戸惑いながらも、首を傾けてそこを差し出す。  
居場所を求めたブリギッタの細腕が静かに持ち上がり、ニコルの首の後ろに回って緩やかに交差した。  
「ニコルの手……。とても、心地良い……」  
「そっ、そうか?」  
「うん……。身体の、芯が……、んっ! 熱く、痺れて、くる……」  
一方ニコルは、乏しい知識を総動員しながら、出来る限り乱暴にしないように心掛けるのが精一杯だった。  
香る肌の匂いが、切なげな声が、信頼と愛情を湛えた瞳と華奢な肢体の感触が、雄の欲望を滾らせる。  
滑らかな肌に舌を這わすと、そんな訳がないのに、どこか甘い味を舌に感じる。  
ニコルの五感の全てはブリギッタに集中し、手指は彼女の悦びを探って、休み無く動き続けていた。  
「んっ、ちゅ……」  
「はぁんっ! あ、ニコル、そこっ……」  
硬くしこった胸の頂きを口に含んだ途端、ブリギッタの背が強く弓なりに反り返った。  
舌で転がすようにそこを舐め回していくと、細い肩や膝がぴくぴくと動き、首に回された腕に力がこもる。  
「ここ……は、嫌か?」  
「いや、じゃないっ……。けど、身体が、勝手に、……んうっ!」  
敏感な乳首を強めに吸い上げると、ブリギッタは縋るようにして、ニコルの頭をぎゅっと抱き締める。  
短い髪をくしゃくしゃと掻き乱されながら、ニコルは愛しい少女の身体に没頭していった。  
 
「あ……。ニコル、少し、待って……」  
「ん、どうした?」  
しばらくして、猶予を求めてきたブリギッタの声に、ニコルは愛撫の手を休めて彼女の顔色を窺った。  
ニコルの問いへ言いにくそうに唇を何度か動かしてから、彼女はやがて思い切ったように小さく告げてくる。  
「あの、下着……、汚れそう、だから……」  
「あ、ああ、そうか……」  
もじもじと脚を擦り合わせる仕草を見て、鈍いニコルもようやくその意味に気付いた。  
両手をシーツの上に突いて身を離し、まだ肉付きの薄い腰に貼り付いた、小さな布地に視線を投げる。  
起き上がるブリギッタへ気圧されたようにニコルが身を引くと、彼女は緩慢な動作でベッドの中央に移動した。  
「いま、脱ぐ、から……」  
「ん、う、ああ……」  
ブリギッタは両膝を立てて座り込むと、蚊の鳴くような声で宣言し、自ら下着を脱ぎ始めた。  
片方ずつ尻を浮かせ、太腿の付け根まで寄せてから、丸めたショーツをするりと膝まで押し上げる。  
内股の合わせから覗く淡い秘毛の陰りに、ニコルの胸が一際強く脈を打つ。  
ニコルが息を詰めて凝視する中、細い爪先が布の輪から引き抜かれ、シーツの上に降りる。  
脱いだ下着を身体の脇に押しやると、羞恥に耳の先まで赤らめた彼女は、上目遣いにニコルの顔を窺った。  
「ねえ、ニコル……」  
「あ、うぁ!? な、なんだ?」  
「ニコル……も、脱い、で……?」  
「お、おお、そうだな……」  
か細い声で促され、我に返ったニコルは慌ただしく自分の衣服を脱ぎ出した。  
少女の眼差しに強烈な照れ臭さを覚えながら、前をはだけたシャツから腕を抜き、腰のベルトを外す。  
下着を脱ぎ捨て、自分の全てをブリギッタの眼前に晒すと、ニコルは再び彼女の元へにじり寄った。  
 
「じゃあ、続き、して……?」  
「ああ……」  
ブリギッタはシーツの海に細い肢体を静かに横たえると、両手を差し伸べてニコルを招いた。  
閉じていた膝も緩やかに左右へ開き、艶やかな内股と僅かに湿りを帯びた秘所を彼の視界に晒す。  
ぴったりと合わさった陰唇は薄い桜色を示し、自ら慰めた事すらろくに無いであろうと容易に推測できる。  
彼女の上に覆い被さると、ニコルは片手を滑らかな下腹部へと伸ばし、指先を秘裂にそっと触れさせた。  
「んんっ!」  
ニコルが火照った粘膜の感触を確認すると同時に、ブリギッタはきゅっと目を瞑り、短く声を上げた。  
反射的に閉じかけた膝は彼の身体を軽く打ち、そこで堰き止められてしまう。  
その過敏な反応に、ニコルは壊れ物を扱うが如き慎重な手付きで、宛がった指をゆっくりと動かし始める。  
やがて花弁の奥からは新たな潤いがじわりと滲み出し、穏やかな愛撫を更に滑らかなものへと変えていった。  
「あっ……ん! ニコ、ル……ん、くぅん!」  
ニコルが少し力を入れると、寝かせた指の腹がブリギッタの肉襞の狭間に浅く沈み込んだ。  
ぴったりと吸い付くような妙なる感触に魅せられ、そのまま細かく左右に揺らし、更にそれを味わう。  
その途端、ビクンと激しく身体を跳ねさせたブリギッタに、ニコルは慌てて指の力を抜く。  
「わ、悪い。痛かったか?」  
「ううんっ……、その、気持ち、いい、の……。ニコル、それ、もっと……」  
「あっ、ああ……」  
しかし、ブリギッタはニコルの問いに軽くかぶりを振って答え、甘えた声で続きをねだってきた。  
薄く開いた唇を舐める小さな舌の艶めかしさに、いきり立った股間がズクンと脈動する。  
ニコルは彼女の細い首筋に顔を寄せ、優しくキスを重ねながら、指の動きを徐々に早めていった。  
 
「あっ、ん、ニコルっ……! 私っ……、どんどん、溢れて……んんっ!」  
入り口を捏ね回す指先に誘われて、ブリギッタの秘所は快楽の証を止め処なく生み出した。  
さらりとした愛液が花弁を潤し、濡れた粘膜の立てる小さな水音が、ニコルの欲情を昂ぶらせてゆく。  
指を静かに折り曲げると、湯の泉のように熱い内部へぬるりと滑り込み、そこできゅっと締め付けられる。  
ニコルはその感触に、親に縋る幼子の手にも似た愛おしい温もりを感じ取った。  
「ブリギッタ……」  
「はっ、あ、んくぅ、あっ、あ、あぁ!」  
膣口に収めた中指を慎重にのたくらせながら、ニコルはその上の肉芽を親指で押さえ、円を描いて刺激した。  
こりこりとした陰核を弾かれる度、ブリギッタは艶のある声を洩らし、華奢な肢体を身悶えさせる。  
その声をもっと聞きたい、彼女にもっと悦びを与えたいという欲求に従って、ニコルは一心に手を動かす。  
狭い秘洞はますます潤いを高め、埋めた指の動ける範囲が徐々に大きくなっていった。  
「んっ……あ!? ニコル、これ、さっきより……?」  
「う、いやその……」  
緩慢に足掻く細い脛が、ニコルの硬い剛直を掠めた途端、ブリギッタは驚いたように動きを止めた。  
視線を彼の顔から腰の辺りまで巡らせ、前にも増して張り詰めた肉棒を、不思議な物を見るような目で眺める。  
自身の反応をまじまじと見て取られたニコルは、息を詰まらせて曖昧な返答を呟く。  
「ニコル、私なら、もう平気だから、……来て」  
「え、いや、しかし、だな……」  
ニコルの顔に目線を戻すと、ブリギッタは僅かな怯えを押し隠して、たどたどしい口調で囁いた。  
けれど、指の一本でさえきつい場所へ自分の物を入れる事に、ニコルは今更ながら躊躇いを覚える。  
そんなニコルの想いを察したブリギッタは、彼の頬に掌を寄せると、深い愛情と信頼を込めて微笑んだ。  
 
「痛くても、構わないから……。お願い、私、ニコルと一つになりたいの……」  
「あ、ああ、判った……」  
愛する少女に繰り返し求められ、ニコルはそっと中から指を抜き、代わりに剛直の先端を近づけた。  
押し下げた亀頭を秘裂へ宛がうと、柔らかく湿った外側の襞が、蕩けるような心地良さと共に左右に分かれる。  
ニコルがもう一度だけ、確認するようにブリギッタの顔を窺えば、彼女は小さく、だがしっかりと頷く。  
そこからほんの少し腰を進めると、ニコルの大きく張り出した傘の部分が、彼女の内部につぷっと沈み込んだ。  
「んうっ!」  
「く……。やっぱり、辛いか……?」  
「ううん、だいっ、丈夫……、だからっ、そのままっ……」  
破瓜の痛みに眉を歪めたブリギッタに、ニコルは動きを止めて気遣わしげな声を掛けた。  
想像通り、彼女の中は大きな異物の侵入に強い抵抗を示し、まるで握り締めるかの如くきつく食い付いてくる。  
ブリギッタはニコルの問いに苦痛を堪えて答え、何度も大きく息を吐いて身体の緊張を解してゆく。  
締め付けが和らいでいくのを待ってから、ニコルは壊れ物を扱うような細心さで、静々と奥を目指していった。  
「はっ……、ん! はぁ、はあぁっ……んんぅ!」  
「うっ! す、すまん、痛かったろ?」  
硬い幹の半ば以上が入った処で、ブリギッタが長く息を吐いた拍子に、彼女の中がふわりと綻んだ。  
不意に緩んだ抵抗に、ニコルの剛直が一気に根本まで滑り込み、先端が最奥の肉壁に突き当たる。  
くっと唇を噛んだブリギッタにニコルが慌てて謝ると、彼女は長い睫毛を震わせながらゆっくりと目を開く。  
「へ、いき……。だって、やっと、ニコルと、結ばれたん、だもの……」  
涙を浮かべながら健気に訴えるブリギッタの言葉に、ニコルの胸へこの上ない愛しさが込み上げてくる。  
ニコルは彼女の目尻から零れた雫を唇でそっと吸い上げると、溢れ出す想いをそのままの形で告げた。  
 
「本当に、愛してる、ブリギッタ……」  
「うん、私も……。んっ、ん……」  
ニコルはその言葉を証し立てるような想いを込めた口付けをしながら、小さく何度か腰を揺すり上げた。  
ブリギッタの内部は蕩けるほどに熱く、濡れた襞が彼の剛直を余す処なく締め上げてくる。  
その動きで痛みが走ったのか、彼女はピクンと身を竦めたものの、喜びの笑みを崩すまでには至らない。  
続けて欲しいと無言で訴えてくる瞳に頷き、ニコルは緩やかに小刻みな動きを重ねていった。  
「ん、あ……。こうして、いると……、ニコルと、繋がっている、のが……、んっ、良く、判る……」  
「ああ、俺もだよ……」  
愛する者の温もりをもっと感じようとしたのか、ブリギッタはニコルの身体にぎゅっとしがみ付いた。  
ニコルも片腕を彼女の背中に回し、小柄な肢体を胸板に引き寄せて、優しく抱擁する。  
彼がブリギッタを抱き締めるのと同じように、彼女の秘洞は硬い剛直をしっかりと受け止める。  
互いに相手を包み込んでいる一体感が、甘美な法悦にも似た感慨を呼び覚まし、心を満たしていく。  
最初は締まるだけだった狭い膣道は、その豊かな想いに誘われて、次第に柔らかなうねりを伴い出した。  
「はぁ……、んっ、あ、ん、んん……っつ!」  
「あ、悪い……。ちょっと、辛かったか……?」  
無意識に動きを早めてしまっていたニコルは、ブリギッタが洩らした短い苦痛の声に、ピタリと腰を止めた。  
初めての事で加減が利かないとは言え、必要以上の我慢を強いるのは忍びない。  
しかし、それはブリギッタも変わらないらしく、ふるふると首を振ってニコルの言を否定する。  
「痛く、ても……、辛くは、ないから……。ニコルの、したいように、動いて……」  
その言葉に甘える訳にもいかないが、あまり時間を掛けても、却って痛みを長引かせる事になりかねない。  
慈しみに満ちた視線でブリギッタの顔を見下ろすと、ニコルは彼女の耳元にそっと囁きかけた。  
 
「じゃあ、少し大きく動くけど、あんまり痛かったら言ってくれよ?」  
「うん、でもきっと、大丈夫、だから……。んっ、ふうっ……! あ、んん……!」  
ニコルは今まで小さかった注挿の幅を広げ、幹の半ばまでをブリギッタの膣内から引き出した。  
そこから絡み付いてきた襞を押し込むようにして腰を沈めて、再び奥へと突き入れていく。  
引く度に雁の裏を微細な襞の連なりが舐め、突く度に濡れそぼった内部が締め付けながらも柔らかく道を譲る。  
湧き起こる快感に意識を集中し、ニコルは一心に最後の高まりを追い求めた。  
「あ……っ、んぅ! はぁ、ニコルっ、んっ……、はっ、あ……!」  
「ブリギッタ、本当に、辛くないか……?」  
「へい、きっ……! ニコル、優しい、からっ……んっ! ニコ、あ、ニコ、ルぅっ……!」  
ブリギッタは、痛みを紛らわせるかのように繰り返しニコルの名を呼び、彼の身体に縋りついた。  
それほど早くはない律動でも、やはり肉棒が行き来する度に、引き攣るような痛みが走るのは隠し切れない。  
しかし、出来るだけ負担を掛けまいとするニコルの優しさは充分に伝わり、彼女の苦痛を和らげてくれる。  
踵を上げた足先をシーツの上に突っ張らせ、彼の肌へ爪を立てないよう、背に回した両手を強く握り締めた。  
「はぁっ、くっ、ブリギッタ、もう、少し、だから……」  
「ん……、ぅんっ、来てっ、ニコル、来て……っ!」  
その仕草も切なげな声も、全てがニコルにとって愛おしく感じられ、肉の昂ぶりを更に押し上げていった。  
むず痒さにも似た衝動が剛直に熱く凝り固まり、出口を求めてじりじりと先端まで水位を高めてゆく。  
切れ切れに訴えてくるブリギッタの求めに、ニコルの心と身体は一つになって応じ、急速に昇り詰める。  
「うっ、く……!」  
「あ、んんっ!」  
最後に深く挿入したまま素早く何度か腰を揺さぶると、ニコルはブリギッタの中で全てを解き放った。  
 
「はぁ、ふぅ、はっ、はぁ……」  
「……は、はぁっ、んっ、ニ、コル……」  
動きを止めて力強く抱き締めてくるニコルの顔を、ブリギッタは潤んだ瞳で見上げた。  
膣内で脈動するように跳ねる剛直の感触と、奥に何かが満たされてゆく感覚に、強い充足感を覚える。  
断続的な精の迸りが収まってから、ニコルは短く息を継いで呼吸を整え、腕を緩めていく。  
それを合図にブリギッタもくたりと四肢の力を抜き、開いた掌でニコルの広い背中をそっと撫でさすった。  
「ニコル、疲れた……?」  
「いや、それほどでもないよ。ブリギッタの方こそ、だいぶ我慢させたみたいで済まなかったな」  
「ううん、私も、大した事ない……。それよりも、ニコルが応えてくれた事が、とても嬉しいから……」  
喜びの涙を目尻に溜め、輝くような微笑みを見せるブリギッタに、ニコルは強く胸を突かれた。  
これまで自分の優柔不断の為に彼女を無用に待たせていた事が、改めて申し訳なく思えてくる。  
その内に、ニコルはいつまでも中に入ったままでは辛いだろうと思い至り、静かに腰を引こうとする。  
けれど、それを止めるように、ブリギッタは背に回した腕で彼の身体を緩やかに抱き寄せた。  
「……ブリギッタ?」  
「あの、ニコル……。もう少し、このまま……」  
「……ああ、そうだな」  
我侭を恥じるようなブリギッタの遠慮がちな態度に、ニコルは柔らかく破顔した。  
実を言えば、少しでも長く繋がっている実感を得ていたいという思いは、彼の方でも同じ事だ。  
愛する少女と心まで重なっている喜びを表して、ニコルは彼女の唇を軽くついばむ。  
ニコルの手が長い髪を優しく撫で始めると、ブリギッタは陶然と瞼を閉じる。  
彼女の中で剛直がゆっくりと猛々しさを失ってゆくのを感じながら、ニコルも至高の幸福感に浸っていった。  
 
                      ◇  ◇  ◇  
 
「……ん、あれ、ブリギッタ……?」  
その翌朝、隣から愛する少女がいなくなっている事に気付いたニコルは、閉じていた瞼を薄く開いた。  
寝惚け眼でベッドの上を眺めても、淡く清楚な移り香が残っているだけで、ブリギッタの姿は既に無い。  
先に目覚めた彼女が、自分を起こさないよう静かに部屋を出て行ったのだと理解し、ニコルは小さく嘆息した。  
「水臭いというか、少し助かったというか……」  
ニコルは上体を起こしてポリポリと頭を掻きながら、何とも言えない表情で呟いた。  
一夜が明けてみると、最初にどんな風にして彼女と言葉を交わしたら良いのか、まるで見当がつかない。  
あれこれと考えつつ身支度を整え、ようやく覚悟を決めてから、ニコルは私室から居間へと続く扉を開ける。  
しかしそこには、収録から帰って来ていたシンメルとベルヒトが、普段通りの態度でソファーに座っていた。  
「あ、おはよーニコル!」  
「おはよう。今日は随分ゆっくりしてるんだね?」  
「う、あ、ああ、おはよう二人とも。は、早かったな、じゃなくて、大変だったな、ははは……」  
考えていた筋書きが最初からつまづいて、ニコルは引き攣った顔で力無い声を出した。  
ブリギッタの事で頭が一杯で、彼らへの対応をすっかり失念していた為、どうも態度が不自然になってしまう。  
ひどく狼狽したニコルの様子に、二人が訝しげな表情をすると、彼の思考はますます混乱する。  
「……ニコル、夕べ何かあったの? ブリギッタも、今朝は妙に態度がおかしいんだけど」  
「いっいや、特にその、何ってほどの事は……」  
問い詰めるベルヒトの台詞に、昨夜の事が鮮明に脳裏へ蘇り、ニコルの顔が一気に赤味を増した。  
動揺を隠し切れない顔に、ニコルは感情を隠してくれる硬質な黒い仮面を、切実に取り戻したくなる。  
胡乱げな顔で彼の表情を窺っていたベルヒトは、やがて急に目を見開くと、勢い良く立ち上がった。  
 
「あーっ、分かったぁ! ニコル、とうとうしたのねっ!?」  
「なっ、なななななっ!?」  
核心を衝いたベルヒトの叫びに、ニコルは一瞬にして硬直し、うろたえまくった声を上げた。  
同時に、ブリギッタがいるであろうキッチンから、鍋や食器がひっくり返る、けたたましい騒音が響く。  
正解に辿り着いたと確信したベルヒトは、得意げに鼻を鳴らし、勝ち誇った笑みを洩らす。  
そして、好奇心に瞳を輝かせ、大きく身を乗り出して言葉を続けた。  
「やっぱり、ブリギッタのプロポーズ、とうとうオーケーしたんだ! ねえねえ、どういう心境の変化?」  
「え、あ? ど、どういうって言われても……」  
『した』の意味が『結婚を承諾した』という事だと判って安堵しつつも、ニコルはもごもごと言葉を濁した。  
一度高まった動悸はなかなか収まらず、また幼い家族の前で本当の処を言う訳にもいかない。  
自分の示した推理のもう一つの側面には気付いていない様子で、ベルヒトは矢継ぎ早に質問を繰り出す。  
「ブリギッタは何て言ったの? ニコルは何て返事したの? 一緒にキスぐらいはしたの?」  
「いいいいや、そういう事は、あまり人に言うもんじゃ……」  
「いーわよ、だったらブリギッタに訊くから! ねーねーブリギッタぁ!」  
「あ、お、おい……」  
ニコルの口が重いと見るや、ベルヒトはそう言って、止める間もなくバタバタとキッチンに駆け込んでいった。  
宙に浮いた手を所在無く彷徨わせるニコルに、我関せずを決め込んだシンメルが冷静に忠告する。  
「放っておいていいの? あの勢いだとブリギッタ、洗いざらい白状させられるかも知れないよ?」  
「あっ、いや、それは色々まずい! おい待てベルヒト、少し落ち着け!」  
自身も充分に落ち着きを無くしたまま、我に返ったニコルはあたふたとベルヒトの後を追った。  
一人居間に残ったシンメルは、キッチンで巻き起こる大騒ぎに、大人びた苦笑を浮かべて軽く肩を竦める。  
「まぁ、僕も一応、気付かなかった事にしておくよ。ついでに時々、泊りがけの仕事も入れた方がいいかな?」  
ベルヒトと違い、事の真相を正確に把握したらしいシンメルは、悠然とした態度で小さくそう呟いた。  
 
〜END〜  
 

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