ある日、1人の学生が『ああ探偵事務所』の扉をたたいた。
そこにいたのはコスプレをした1人の男が掃除をしていた。
「――――――――……」
絶句する学生。
「おや?どうされました?」
楽しそうに話しかけてくるコスプレ男に学生は問う。
「な、何者だ!?あんたは―――!ここは探偵事務所じゃないのか?」
コスプレ男は怪訝そうな顔をして
「ここ?そう、ここは君が言う通り探偵事務所ですよ?私はこの探偵事務所の代表で探偵の妻木です。
そう言う君は?―――もしかして依頼人ですか?」
「…そ、そうだけど……、あんたが代表なのか…?」
依頼人と知った妻木はパァーーと明るくなる。
「そうですか!!どうぞ、どうぞ、こちらに!」
嬉しそうにソファーへと導く妻木に少年は不信そうな目を送り、
「――いや、やめとく。他をあたる。」
そう言ってドアに向かって歩きだす少年を妻木は慌てて引き止める。
「!!あああ!待ってください!お話だけでも!お話だけでも聞かせてください。聞くだけなら無料ですから!」
慌てて取り繕う探偵が哀れで少年は溜息をつき、
依頼が依頼だし、こう言う探偵の方が聞いてくれるかもな…
少年はそんな事を思いながら返事をした。
「―――ま、そこまで言うなら。」
「……ってか、あんた、何でそんな恰好してるんだよ?」
探偵に導かれてソファーに座った少年の第一声がそれだった。
「―ああ、これはですね。変装の練習ですよ」
平然と言う妻木にあっけに取られる学生は、急に笑い出した。
「プッ!!変な探偵!!あはははは!」
「……へ、変ですか?……そうかなぁ…カッコイイと思うんですが…」
「あはは!へん!変だって!!普通、変装して掃除なんかするかよ!あははは!」
笑いが止まらない少年に少しムッとしながらも釣られて笑う妻木がいた。
「あはは!おもしれ~~~!決めた!!ここに決めたよ!探偵!」
そんな少年の言葉に妻木は ぱあああ と顔が明るくなり、
「本当ですか!?」
「おう!あんたなら俺の依頼、やってくれそうだしな…」
「あああ、、ありがとうございますうぅ~~~」
妻木は少年の手を取り嬉し涙を流した。
少年は嫌そうな顔をして妻木に握られた手を振り払い、自分のカバンをガサゴソと取り出した。
「と、とりあえず、だな、」
少年がカバンから取り出したモノに妻木は目の玉が飛び出すほど驚いた。
テーブルの上にドンッと置かれた1万円札の束に妻木は目を白黒させた。
こんな学生が意図も容易く自分のカバンから1万円札の束を出したことも驚きだが
少年の依頼内容にも驚きだった。
「――で。やってくっれるの?俺の依頼。この金額で足らないならまだ出すけど?」
カバンの中に手を入れてもう1束出した。
―――こんな大金を目の前に断れる筈があるだろうか。
この少年の依頼内容は『男と女のセックスを生で見たい』と言うとんでもない依頼。
少年にはまだ早い気もするが、世の中もっと進んでいるヤツはごまんといる。
AVビデオを進めるも、
『そんなのリアリティに欠けるね。ドラマみたいじゃん?邪道だよ。』
との返事。夜のデートスポットの覗き?で納得しそうにもないな…。
風俗を進めるには年齢的にアレだし…。ここはやはり、誰かに頼むしかないのか…(汗)
さて誰に頼むか。こりゃ困った。
泉さんか涼子さんか…。
ここはやっぱり百戦錬磨の泉さんに頼むか…
と決めかけた頃、少年が思いついたように話し出す。
「あ、俺の好みとしては髪の長い女性で処女。んで相手は、もちろん、探偵!あんただ!」
「はぁ??ワ、ワタシですか??」
「うん、あんたがどんなエッチをするかも見てみたいし。くくくっ」
楽しそうに笑う少年に妻木は深いため息を吐くのであった。
商談がまとまった時、少年はようやく探偵事務所を後にした。
少年が帰った後、妻木はどっと疲れが出てソファの肘掛に寄りかかった。
…決まってしまった…。
あんな学生にとんでもない依頼とその依頼金。プラス成功報酬100万。
ありえない、ありえないぞ、世の中!!世の中どうなってんだ!
いっぱしの社会人でも持ってないような金額をあんな学生が持つなんて…!
う、うらやましいぃぃ~~~!!!
等と訳の分からないコトを思ってしまうほど今回の依頼にはたまげた。
さて、どうするか、この依頼。
頼めそうなのは涼子さんしかいない。
って待てよ?涼子さん、処女かな…?
あれだけの美貌とスタイルなんだし今まで彼氏の一人や二人居て、
経験してしまってる可能性が高い。。。
そんなことをぐるぐる悩んでいると時計の針は18時を指し、そろそろ涼子さんが来る時間になっていた。
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