紅葉が落ち始め、空気が冷たくなってくる秋と冬の境目の季節。
山の中に自然にできた小さな広場にテントと1組の男女がいた。
麻耶と闘真である。
闘真は焚き火でお湯を沸かしてコーヒーを作っている。
「はい、麻耶」
黒い液体をひしゃげたステンレスのコップの中に注ぎ込み、切り株の上に腰をかけた麻耶へ渡す。
麻耶はコップを受け取り、冷たくなった手を温めるように両手で包み込むように持つ。
「ありがとうございます。兄さん」
麻耶は愛する兄へ上品に笑顔を投げかける。
スフィアラボの事件の後、闘真と麻耶は山奥で1日をともに過ごし、過去の事や鳴神尊の事を話した。
麻耶にとっては唯一心を許せる人と2人だけで過ごす心休まる時間であった。
その後、1年に数回はこうして2人でキャンプをするのが恒例となっていた。
ただ景色を眺めたり、話をしたりするだけだが、2人にとってはかけがえのない家族との団欒である。
2人の時間はゆったりと流れ、気づいたら空が薄暗くなっていた。
横を見ると麻耶がごそごそと大きなバッグをあさっている。
「に、兄さん。もう暗くなってきたことですし、そ…そろそろ寝ましょう」
寝袋をぎゅっと抱きしめてこちら探るような上目遣いで当麻を見つめる。
麻耶はこちらの顔を見るのが恥ずかしくなったのか、顔をほんのり赤く染めながらキョロキョロと目を動かす。
「う、うん。そうだね。そろそろ寝ようか」
麻耶が取り出した寝袋は1つである。
以前、寝袋が1つだけではどうだろうと感じて自分の分の寝袋を持ってきたら、麻耶に烈火のごとく怒られたのだった。
なんで怒っていたのか分からないが、それ以降麻耶が寝袋を用意する決まりになっていた。
小さなテントの中に2人で入り、小さなランプに明かりを灯す。
麻耶は笑顔でいそいそと寝袋を用意していた。
「さあ、兄さん!ここです。ここに入ってください!」
寝袋をぽんぽんっと叩いて闘真を急かす。
「はいはい。わかったよ…」
闘真は寝袋の中に体を滑り込ませる。
寝袋に付いた麻耶の匂いに包まれ、少し恥ずかしくなった。
闘真が寝袋の中に入ると、すぐに麻耶も中に入ってきた。
やっぱり2人は少し狭い…。
麻耶と闘真の体は否応なしに接触してしまう。
「ふふっ、やっぱり兄さんの隣が一番安らげます」
と言って、体を寄せて闘真の手をきゅっと握ってくる。
そのまま他愛のない話をしばらくして時間を過ごす。
「そろそろ寝ようか」
「はい。兄さん」
闘真がランプの明かりを消すと、テントの中に暗闇と静寂が訪れる。
………
……
…
数十分、いや数時間はたっただろうか。
寝袋の中がもぞもぞと動き出す。
「兄さん……寝ましたか?」
返ってくる返事は、すぅすぅという規則正しい寝息のみである。
「に、兄さん……?」
麻耶は闘真の肩を恐る恐る揺すってみる。
麻耶の肌は緊張で汗ばみ、隣の兄に聞こえてしまいそうなほど心臓をドキドキさせていた。
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初めてのキャンプからだった。
その時、麻耶は初めて寝袋というものを使った。
愛しい兄と狭く暑い寝袋の中で密着し、肌が擦れ合う度に心臓をドキドキさせてしまい眠れなかった。
麻耶は胸の奥とお腹の奥が締め付けられるように疼き、つい兄に対してイケナイいたずら事をしてしまった。
その後、自分のしてしまった事に反省し、もう2度とそんなことはしない!と誓ったはいいが……。
麻耶は兄とキャンプに来るたびに同じ事をするようになってしまっていた。
いつも兄が深い眠りに付くのを静かに待ってから、『する』のだった。
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「んっ…兄さん……」
麻耶は左手で自分の太ももの間に手を差し込みながら、右手を闘真の体へ向ける。
麻耶の右手は闘真のシャツのボタンにゆっくり伸ばされる。
「はぁ……はぁ……ぁっ……はぁ……ぁぅ……」
手を震わせながら慎重に……闘真を起こさないように……ボタンを慎重に外していく…。
ひとつ……ふたつ……。
そして、ボタンが外されて出来た隙間へ麻耶は右手をすっと滑り込ませた。
ボタンを外している間も麻耶の左手は自らの太ももの間でもぞもぞと動いている。
麻耶は左手を刺激で体をピクンッと震わせながらも、右手で闘真の胸やお腹を愛しそうに撫で回し続ける。
「ぅぁ……っ……あっ………兄…さんッッ……」
こんなこと、淑女であることを貫いてきた真目家のお嬢様の自分がするなんて絶対にいけない事だ。
そう、思いつつも背徳感と兄に対する愛情で麻耶は興奮が高まっていくのを抑えられない。
不意に麻耶の右手が当麻の服の中から引き抜かれる。
もう麻耶のいたずらも終わり…………。
と思いきや、引き抜いた左手で闘真の胸を服越しに撫で回した後、胸から下へゆっくりと撫で下ろしていく。
胸からお腹へ……下へ…下へ……お腹からさらに……下へ……。
いたずらが終わったのではなく、ただお腹を触るだけでは我慢できなくなっただけだった。
麻耶の右手がズボン越しにさわさわと闘真の股間にあるモノを撫で回す。
触れるか触れないかの微妙なタッチで撫で回し、蟻を摘むかのような手つきで手のひらを使ってやわやわと揉みしだく。
「う……ん………うんぅ……」
と、闘真がうなり、身じろぎする。
麻耶はそれにびっくりし、さっと両手を引っ込めて縮こまる。
しばらく寝たふりをして兄の様子を見るが、別に起きた様子はない。
慎重に……暗闇になれた目で兄を表情を確認しながら、さっきまでの行為を再開する。
麻耶は必死に理性が蕩けそうになるのを堪えつつも、自分の股間にある左手と兄の股間にある右手の動きは荒々しくなっていく。
闘真の股間にあるモノがどんどん膨らんで、硬くなっていくのを手のひらで確かめるように麻耶の右手が動きまわる。
「ぅっ…ぅっ…っ…ぅっ…ぅぐぅ……」
麻耶は快楽と興奮で声が漏れないように自分の服の襟を噛み締めて、いやらしい行為を必死に続ける。
最初は兄の体に少し触れるだけだった。
それが、キャンプの回数を重ねるごとにどんどんエスカレートしていき、前回は兄のアソコに始めて触れてしまった。
なら、今回は?
ドクンッドクンッドクンッと胸が張り裂けそうなほど麻耶の心臓が高まっていく。
麻耶は自分の理性の糸が切れる音を聞いた気がした。
麻耶は迷わず闘真のジッパーを下ろし、その隙間へ手を滑り込ませた。
ズボンの中にあるパンツを引き摺り下ろして硬く、大きくなった肉棒を握り締める。
「あ、あぁぁ……兄さんの……兄さんのぉ……」
麻耶は兄の肉棒の硬さを確かめるように握り締め、形を確かめるように上下に扱き上げる。
お腹の奥の疼きも、胸の奥の締め付けも最早限界に達していた。
「兄さんもっ……さわってっ!」
麻耶は自分の股間を嬲っていた左手で闘真の手を掴み、自分のスカートの中、さらにショーツの中に滑り込ませる。
もう麻耶のスカートは大きく捲り上げられて、寝袋の中ではしたない姿をさらしていた。
左手で股間に当てられた兄の手を押さえつけ、腰をうねらせる。
麻耶は快楽に溺れて意識はすでに朦朧としていて、兄に見つからないようになどまったく頭になくなっていた。
動きはどんどん激しくなる。
「あっあっあっあぁっあっあっ」
びゅぐっ…びゅぐっ…びゅぐっっ。
麻耶の右手の中の熱い肉棒がドクンッドクンッとうねり、熱い液体が麻耶の太ももに降り注ぐ。
それを感じた麻耶の頭の中に”兄”、”精”、”液”という漢字が飛び交い、それを本能で理解した瞬間、一気に頭の中と視界が真っ白に染まる。
「ひぃぅぅぅっ……ぅっ……ぅぅっ……」
麻耶の体は硬直し、ふるふると痙攣する。
その十数秒後、麻耶は脱力し、ぐったりとして荒い息をついた。
「はぁはぁはぁはぁ…はぁ…はぁ……はぁ………はぁ…………」
寝袋の中は汗と熱気と精の臭いが篭って大変なことになっていた。
しかし、麻耶はそんな事はどうでもいいとばかりに気絶するように深い眠りに落ちたのだった。
………
……
…
ちゅんちゅん!
鳥の声で目が覚める。
麻耶がぼんやりとした目を開けると隣で目を閉じた兄の顔があった。
その顔を数十秒見つめた後、愛おしさのあまり無意識に顔を近づけてちゅっと一瞬唇を重ねた。
「ん……んぅ……あ…麻耶……おはよぅ……」
その数瞬後に闘真は目を覚まし、麻耶に挨拶をした。
「おはようございます。兄さん」
兄へ挨拶を返したそのとき、昨日の行為の痕跡…精の臭いが寝袋の中から漂ってくるのが麻耶の鼻に付いた。
麻耶は焦ったように寝袋の外へ出て、闘真を引きずり出そうと強く引っ張る。
「に、にに、兄さん!早くそこから出てください!」
「え、な、なに?どうしたの麻耶?」
何が何やらわからないといった風に麻耶に引っ張られながら首をかしげる闘真。
「いいから早く!出なさーーーい!」
麻耶がぐいっと引っ張ると闘真の体がずりずりと寝袋から引き出される。
寝袋が空になると、急いで回収して自分のバッグの奥底に押し込める。
「ふぅ……」
「麻耶、一体どうしたの?」
闘真が当然の疑問を投げかける。
「な、何でもありません。気にしないでください」
麻耶は汗をだらだら流し、目を泳がせながら答える。
いかにも怪しいが、闘真は気にした風でもなく「そう…?」と答えて終わらせる。
「ではそろそろ、帰る準備をしましょうか。兄さん」
「うん、そうだね」
2人でテキパキと荷物を片付けていく。
荷物をまとめ終わった2人は、並んで山を降りていく。
「ふふっ……楽しかったです。兄さん、また来ましょうね!」
「ああ。また一緒に来よう」
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闘真自宅にて。
「ふぅ……疲れた。それにしても今回の麻耶はいつもより激しかったなぁ……」
とかなんとか言いながら闘真は窓から空を見上げるのだった。