「由宇、その・・・もし良かったら一緒に暮らさない?」  
訓練という名の甘い時間の中で幾度となく体を重ね合わせたというのに、この青年は何故今更そんな質問をするのか。共にいなければ生きていられない程、自分の体も心も奪った青年の自信なさげな態度に溜息が出る  
「初めからそのつもりで一緒にやってきたんだろう。一緒にいよう。・・・君が困らないのであればずっと」  
 
人口の光ではなく日光の眩しさで目を覚まし、最初に目に入るのは無愛想な監視兵ではなく隣で寝ている青年で  
その青年、坂上闘真は昨日の激しい行為など微塵も感じさせない?気な寝顔を晒していた。  
由宇は怠惰な猫の様に身動ぎする。まだ腰が痛い、いつも優しくしてくれと言うのだが、大抵途中から、自分から激しさを求めてしまって結局度が過ぎてしまう  
「全く、服の一枚でも着ればいいものを」  
上から下まで素っ裸の闘真を見て、昨日の行為を更に鮮明に思い出したのか、赤面する由宇  
かく言う由宇も、着ている物といえば行為の後に闘真が掛けてくれたと思われる闘真の仕事用のYシャツ一枚なのだが  
(今ベッドから出たら起きてしまうだろうか?)  
今日は休日だが、麻耶と会う約束があるので起きなくてはならない  
が、自分の腰には闘真の腕が回されている  
それは前に由宇が「君に抱かれていると安心する」と言ったことを闘真が覚えてくれているからこその行為だった  
(全く、寝ている時ぐらいそんなことしていなくて良いのに)  
口からこぼれる溜息とは裏腹に、嬉しい気持ちでいっぱいになる  
闘真に愛されていると実感出来ることが堪らなく嬉しかった  
「由宇?」  
「うぁっ!?」  
悦に浸っている所で突然声をかけられた由宇は危うくベッドから落ちそうになる  
「大丈夫由宇?やっぱり一緒に寝るには一人用のベッドは小さいね」  
「・・・何時から起きていた?」  
助けられて闘真の胸に収まった由宇は恥ずかしそうに聞いた  
「全く、服の一枚でも着ればいいものを、って由宇が言った辺りからかな。寝起きの由宇も猫みたいで可愛かったよ」  
「・・・・・」  
御馳走様でしたとでも言うように締まりの無い笑顔で微笑む闘真に、言い知れぬ敗北感と恥ずかしさを感じ押し黙る由宇  
「ねぇ、昨日の続き・・・しない?」  
「はっ?何を言って・・・、んっ!?」  
そう言うや否や、闘真は由宇に覆い被さなって唇を重ねる  
「んっ・・・は、闘真、今は朝だぞ!」  
じゃれる様なキスから解放された由宇は寝起きの頭で考え付いた精一杯の非難の声を浴びせるが  
「朝だから?由宇とするのに朝も夜も関係無いよ。それに、昨日は由宇途中で失神しちゃったじゃない」  
「ひゃんっ!?」  
 
「だから、続き」  
寝ぼけた闘真には非難の言葉などどこ吹く風で、由宇の首筋を舐めると彼女が唯一着ていたYシャツを脱がす  
「や、やめろ闘真」  
「なに?」  
よく聞こえなかったふりをする闘真は、由宇の胸に顔を埋めながら生返事を返す  
「今日は私が麻耶に会いに行く日だぞ」  
「分かってるよ〜。でももう少し・・・」  
甘える様な声を出す闘真に、もう少しならいいかと心が傾きかけるが、ここでそれを許したが最後、腰が砕けるまで解放されないだろう  
「・・・麻耶は私と会うのを楽しみにしていた。君が実の妹より目の前の性欲を取ったと麻耶が知ったらさぞ悲しむだろうな」  
「ヴっ」  
闘真の胸を鋭く撃ち抜くことに成功した由宇は意地悪く笑うと、ベッドから出て服を着始める  
「そんなに嫌だった?」  
それを見ながら、悲しそうに呟く闘真  
「うっ、・・・そんなことはないぞ。帰ってきたら・・・し、しような」  
惚れた弱みか、悲しそうに言う闘真が可哀想に見えてきて、そんなことを言ってしまう  
玄関で靴を履きながら、最近甘やかし過ぎだろうかという気になるが  
「待って、待って」  
「な、なんだ?」  
今までベッドでゴロゴロしていた闘真がたどたどしい足取りで玄関にやってくる  
「行ってらっしゃいのキスがまだだよ由宇」  
「き、キスはさっきしただろう?」  
「あれはおはようのキスだよ?だからもう一回」  
「・・・仕方ないな」  
満更でもなさそうなにそう言うと、二人は軽く唇を重ねる  
「ご飯作って待っているからね。行ってらっしゃい」  
という闘真にはどうしても甘くなってしまうのであった  
「ああ、行ってくる」  
そう言って由宇は家を出た  
 
 

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