パイ「お願いっ」
―みんなを助けるために、力を貸して―。
そう祈るように願いながら―藤井八雲、そしてアマラの神民達を全滅から救うために、
女神ラートリーの幽閉を解く「呪鍵」の発動を求めてひざまずく少女、パイ。
その懇願はアマラの分身、そして呪鍵の制御を司る「安全装置」(リトルアマラ)に向かってのもの。
皆を救うために恥も外聞もなく両手をつき、頭を深く垂れ、土下座という格好をとってまでして、
パイは呪鍵の発動を乞う。だがその彼女の健気さは、彼―リトルアマラに発動を受諾させるどころか、
かえって子供の容貌の奥に眠る、凶暴な感情を目覚めさせてしまう事となった―。
リトルアマラ(以下アマラ)「―なめなよ」
ゾッとする程冷たく唇を歪ませたアマラが、埃被りのローブから左足を出して少女に向ける。
パイは一瞬何を言われたのかがわからずキョトンとしてしまったが、アマラの素足が目の前に構えられ
そのまま動かない事で、ようやくその意味を理解した。そして―不覚にも、頬を赤く染める。
アマラの要求―そう、それはパイにさらなる屈辱を与えるためのもの。
パイを「初めての家来」と称し定めた挙句、その証として―アマラの足を舐める事を求めているのだ。
すでに眼前の少女が屈服しきっているのを知って、なお辱めて愉しむために。
パイ「……」
屈辱の要請を察して息を呑むパイの表情を嬉しそうに見下ろしながら、アマラの言葉は続く。
「なめたらもっと前向きに考えてあげる―クスクス」
無邪気が故に隠せない残酷な笑みが、アマラの足を見つめるパイへと降り注いだ。
―安全装置さんに、もう逆らわないって約束したもの…。約束は、守らなきゃイケない―。
パイは(どこかがズレているにせよ)予期せぬ要求に揺れた心を懸命に定めようとした。
しかし彼女とて決して羞恥を知らぬ娘ではない。例え逆らえないとわかっていても、
命じられるまま己の口で相手の足を舐めるという行為には、どうしたって抵抗を覚える。
従う他に選択肢はない。だけど「意志」を持つ以上、どうしてもためらいが振り解けない。
思わずうつむいてしまったパイの頬はより熱くなり、一筋の汗が伝っていく。
アマラ「さぁどうする?早くしないと、みんな死んじゃうよ」
馬鹿正直にその表情で―その仕草で感情を表すパイは、まさにアマラにとっての格好のオモチャ。
そんな可愛いオモチャをもっとからかって―いじめてみたくなって、小さな暴君はゆさぶりをかける。
アマラ「別に悩まなくたっていいさ、僕に逆らいたければ逆らえばいい―」
やりとりを何度も交わし、既にパイがそう振る舞えるような娘ではないのを承知した上で、
アマラは意地悪にそう囁いてみせた。その上で改めて、何より強烈なとどめを言い放つ。
アマラ「でも絶対に呪鍵の発動なんか、させないよ」
その言葉が―両の眼を閉ざし、沈黙を続けていたパイの背中を押した。
そう―アマラに従わない限り、呪鍵の発動は叶わない。どうせ従わなければならないのなら、
もうこれ以上ためらっている時間などはない。自分がどんなに恥ずかしくても、悔しくても―
どんな目に合おうとも、皆の全滅だけは絶対に避けなければいけない―。
長く綺麗な睫毛に伏せられていたパイの瞳が、再び静かに開かれた。
実際の時間ではほんの十数秒の―だけども彼女にとっては永く苦しかった葛藤を経て、
ようやくパイは屈辱に甘んじる決心を得た。アマラの本物の家来となる、決心を。
パイ「……」
パイはアマラの前で両膝をついて正座の姿勢をとり、―震える手をぐっと握りしめる。
その頬は―今や耳までも真っ赤に染まって、さらに弱々しく開かれているその綺麗な瞳は
恥ずかしさのあまりに涙を滲ませている。幼いながらも美しさをたたえるその顔立ちの全てを
羞恥で彩らせたまま、少女は微かに唇を開き―暴君の左足の親指へと近づかせてゆく。
アマラ「……」
そんなパイの姿が―一人苦しむパイの姿があまりにも楽しくて、アマラは不敵に笑んでみせた。
初めて出会った自分以外の生命体が、今、困り果てて屈服し、こんなザマを見せてくれる現状―。
千年生きて初めて味わう昏い精神的愉悦が、今、明らかにアマラの意志を闇に浸さんとする。
パイ(ヤクモッッ)
屈辱に堪えられるだけの、ほんの少しの勇気が欲しくて―パイは大好きな人の名を心の奥で呟く。
そしてアマラの思惑通り―パイの可憐な唇は、完全なる服従を証明した。
千年という時を経て、ひび割れ、さらに垢も染みたかのように薄汚れたアマラの足の皮膚。
そんな左足の先端―親指の爪と肌の境目に、パイの瑞々しい唇は確かに触れていた。
僅かに開けた唇で、軽く含むようなそのキスは―隷従を誓う恥辱のキス。
今でもパイは、アマラが何故このような行為を強制してきたのかがどうしてもわからない。
―だけども、それに従う自分がとっても惨めな事をしているという事は十分にわかる。
パイ(ヤクモ…)
こみ上げてくる悔しさとともにパイの瞳からは涙が溢れて、あどけない頬を伝う。
パイ「んっ…」
だがもう少女はためらう事なく、ほんの少しだけ舌を出して、そっと―主の足に這わせた。
アマラ「うっ」
瞬間、アマラは左足の親指から背中へスッと抜ける心地よさに声を上げる。
パイ「だっ…大丈夫?」
うめき声を痛みか何かかと思ったのだろう、パイは思わず口を離してアマラの様子をうかがう。
アマラ「何でもないってば…。…心配してるフリしてごまかそうったって、ダメだよ」
パイ「パ、パイはそんなつもりじゃ…」
無論パイにはごまかしも時間稼ぎのつもりなども毛頭ない。しかしアマラは善意さえ勘ぐった後、
少々苛立ったように左足を軽く振った。
アマラ「家来は黙ってご主人の足をキレイにしたらいいんだ、―もっとちゃんと、なめてよ」
そううながされて、パイは見上げていた視線を再び真正面―アマラの足先の方へ戻す。
パイ「……」
もう一度アマラの左足の親指に優しいキスを交わすと、今度はさっきよりももう少し舌を伸ばす。
それを親指の腹の方へ這わせ―絡ませてゆくと、ピチャリ…と、唾液が微かな水の音を鳴らした。
パイ「っ…」
そんな音を立ててしまった事が奇妙に恥ずかしく思えて、パイは眼を伏せがちにしてしまう。
ただそうであっても舌の動きを止めはしない。なるたけ唾の音は立てないようにしながらも―
求められた通りに女家来は愛撫を続ける。
アマラ「クスクス、こういう事してる時ってどんな気持ちなの?やっぱり悔しい?恥ずかしい?」
パイ「……」
パイはそれに返答する事はしないで、ただ一途に口元をアマラのつま先に寄せている。
だが朱に染まった表情と潤み続けるつぶらな瞳は、押し黙っていようと答えを示すも同然。
それがアマラにとってはたまらなくおかしく、足元に伝わってくる感触―くすぐったさとあいまって
大きな声で笑い出しそうになるのを我慢するので苦しくなりそうだった。
差し向けた足の親指を、パイが舌で満遍なく濡らしたのを見てアマラは満足げな表情を作る。
だがもう、奇しくもパイによって目覚めさせられたその残忍性は―止まる事などない。
アマラ「親指を舐め終わっても、ちゃんと5本の指を―指の股まで舐めなきゃダメだからね。
あ、それと急いでいるからって手を抜くなんてのもしないでよね」
何を言われようと従うだけのパイは、足から舌は離さないままで従順にうなずく。
そして―唾液のあとを残しながら、足の親指と人差し指の間へと舌を移した。
パイ(っ…)
肌のそれとは違う舌触り―ぬめった粒にも似た小さな固まりを、いくつか感じる。
―それは足の股に溜まっていた垢に違いなかった。しかしパイはそれにも構わず舌を這わせ続けた。
「5本の指を、そしてその股も舐める」―そう誓った以上、それは彼女にとって当然の事へと変わる。
足の指一本一本に対し、一所懸命に舌を動かして垢を舐め取り、さらにキスを繰り返す―
それをパイは延々と行う。恥じらいも悔しさも消えはしない、だけど―堪えなければ皆が全滅する。
そんな真摯な思いが、彼女をこんな無様な行為へと突き動かしてしまう。
パイ「ん…んん」
熱を帯びて汗ばむ頬にかかってくる髪を指先でのけつつも、パイはただひたすらに舌で
アマラの足指への愛撫を続ける。ミルクを静かに―音なく舐め取る子犬のように、愛らしく。
少女の可憐な唇はキスを重ね続け、舌は愛撫を繰り返す。そして唾液がまぶされる事により、
垢まみれの少年の汚ない足が次第次第に清めてられていく。―その倒錯した光景には、
確かにエロチシズムさえもが存在していた。
アマラ「……」
滑稽なくらい真剣に奉仕を行うパイに対し、軽口を叩いていたアマラはいつしか言葉を失っていた。
罵る事に飽きたからではない、嗜虐のカタルシス―そして足の指をしゃぶられ続けられる感触の快さ、
精神と肉体ともに味わう快感に酔った末、自分自身に異常を感じ始めていたからだ。
アマラ(この娘をちょっとヒドイ目に合わせて楽しむだけのつもりだったのに…
どうしてなんだ、僕、何だかドキドキしてしまってる…。それに…)
アマラは一人焦りつつ、今もっとも違和感を―異常を感じる場所を、ローブの上から手で押さえる。
場所は股間―そしてそこはまるで、ローブを布とした天幕のように張り詰めていた。
そう―哀れにも服従し続けるパイの健気な姿に、今まさに千年の時を少年として生きていた
アマラの「男」が覚醒しようとしていたのだった。
アマラ「ね、ねえ…足はもういいよ」
パイ「…はぁっ」
ようやくアマラの足指の全てを舐め終わったパイは、そう言われてようやく唇を離す。
つう…とよだれが細い線を引いていくが、彼女はそんな事に構わずに頭上を見上げた。
パイ「パイは…パイは、あなたの言う事をちゃんと聞いてあげたよ。約束を守ったよ。
…だからお願い安全装置さん、早く呪鍵を発動させてっ…!」
奉仕をしていた時と同様に膝立ちの格好を続けながら、涙目で呪鍵発動を願うパイ。
―約束はきちんと果たした、だからこれで自分の願い「呪鍵の発動」はきっと叶えてもらえる―。
そう信じていたのに。
アマラ「何を言ってるの?」
パイ「えっ…」
ここに来て予想だにしなかったアマラの言葉が、パイの表情を呆けたようなものに変える。
アマラ「僕は前向きに考えてあげるってだけで、発動の約束なんてしちゃいない」
パイ「そんな!!」
思わず弾かれたようにパイは声を上げた。当然である、彼女は約束を確かに果たしたのに、
肝心のアマラは突然にそれを無効と言い立ててきた。しかもその無効は八雲や神民達、
つまりは惑星アマラにいる全ての者の尊い命を左右する、致命的なものなのだ。
パイ「お願い!もう時間がないの!!」
ローブを指先でつかんで必死に懇願してくるパイが何もかも予想通りである事を内心笑いながら、
いよいよアマラは己を満たす―もとい癒す為の新しい要求の交渉にかかる。
アマラ「言っとくけど、決して君は間違ってたわけじゃないよ、もし僕の足をなめなかったら、
その時は絶対に発動なんてさせやしなかったんだからね。少なくとも君もすっかりしおらしいから、
そろそろ発動させてあげようと思ってる。それは本当なんだ」
パイ「だったら…」
涙に濡れたまなざしを拭う事も忘れて、パイはただアマラに縋りつく。
アマラ「ただ条件がある。今の僕は、君のせいでおかしくなってしまった。君のせいで、
僕は千年生きて初めてこんな場所が腫れてしまった。…この責任を君が取ってくれたら、ね」
パイ「え?」
アマラ「君のせいだよ、君が僕の足を一所懸命なめすぎちゃったから、こんなに…」
バッ
言いがかりそのものの文句をつけながら、暴君は纏うローブをめくって己の下半身をあらわにする。
そこにあるのはか細くても確かな男性器。そう、すなわちペニスが天に向かい屹立していた。
ただそんなモノが目の前にあっても、無垢にすぎるパイはまたもキョトンとしてしまうだけ。
驚きの声も上げる事もなく、ただ向けられたペニスをジッと不思議そうに見つめる。
アマラ「見てよ。どうしてかはわからないけど、今の僕のここはこんなになっちゃってるんだ」
パイ「……」
ちなみに男女の事にことごとく疎いパイではあるが、男のペニスを見た事はけして初めてではない。
かつて八雲と4年振りの再会を果たした時、彼にも今アマラが見せているようなモノがあった事を―
おまけに好奇心から指でつっつきまでした事も覚えている。結局それが何かは(今なお)知らないが。
しかし目の前にあるアマラのそれは、そんな記憶と比べても何だか妙に可愛らしい気がしていた。
突っ張ったように上を向いてはいるけれど、細くて、小っちゃくて、とてもおとなしそうで。
―そう、アマラのペニスはおよそ成年男性の風体ではなく、まさに子供・少年のもの。
すっぽりと未だ粘膜全体に皮を被った、俗に言う「包茎」と呼ばれる類のものだった。
パイ(ヤクモにあったのとは違う…。なんだか、動物園のゾウさんみたい…)
しかしそんな呑気な感想さえも抱いているのに、何故か―見つめるうちにパイの頬はまた熱くなる。
ウブであってもパイもやはり「女」であり、そうである以上剥き出しの「男」を見てしまえば、
自分自身ですら気付けない本能の部分が素直に反応してしまうのだろう。
アマラ「…ねえ、触ってみてよ。こんなに固くなるなんて、今まで一度もなかったのに。
…変なんだ、初めてなんだ」
パイ「う、うん…」
八雲の同じ部位に相対した時のように―パイはアマラのモノをちょんと人差し指でつついてみる。
パイ(あれ…?)
何度繰り返してつついてみても、その感触はおぼろにあった記憶とは全く違っていた。
思い出の中のそれは何だかプラプラとしていて、とても柔らかかったのに―今触れてみたモノは
まるで芯が一本あるかのように固くって、そして何より凄く熱かった。
パイ(…やっぱりヤクモのと違う…。何コレ…?)
熱と硬度で指に抵抗してくるペニスに対し、パイは初めての動揺を隠せない。
こうなってくると心なしか、さっきまで本当にある種の可愛ささえ感じられていたモノが、
今は自分に向かって「どうしてくれる」と怒ってるような気さえしてくる。
パイ(もしかして…こうなったのは全部パイのせいなのかな…)
そんな見当違いな思い込みを始めると、パイは(やはり何故かはわからないけれど)その顔全体を
もっともっと火照らせていってしまう。
アマラ「君の舐め方がきっとおかしかったんだと思う。…というかそれしか考えられない。
だから君が責任とってこの腫れを治して、おかしくなった僕を救うんだ」
端から聞いても訳のわからない―少なくとも手前勝手にすぎないアマラの言いぐさなのだが、
もともと過剰な「加害者意識」の持ち主であるパイは、彼の言葉で強い自責の念にかられ始める。
パイ「そんなに…そんなに苦しいの?安全装置さん…」
アマラ「うん…すごく苦しいよ、君のせいでね。だけど君がそのお口でこれをなめてくれたら、
きっとこの腫れはひいてくれると思うんだ。…僕のここはそう叫んでる、わかるでしょ?」
パイ「……」
その身を反らせて、威嚇してくるような―少なくとも今はそうとしか映らなくなってしまった
ペニスの雰囲気に気圧されて、パイはまたしてもうつむいてしまう。
パイ(どうしよう…)
アマラの求める事が、俗に「フェラチオ」と呼ばれる性交渉であるというのを彼女が知る由はない。
が、それでも本能的にぼんやりと、強要される上では相当の屈辱であるというのは察する事ができた。
おそらくは足を舐める事よりも、ずっとずっと。
だけども―それでも、押し迫る全滅へのタイムリミットがある限り。それに加えて、
パイ「よくわかんないケド…安全装置さんのがこんなになっちゃったのは、パイのせいなんだよね」
無知や無警戒では片付けられない、時に状況さえ忘れ他人を思いやれるその心がある限り。
この娘が乞われた要請を拒む事などは、決してありえない。
パイ「…わかった、安全装置さん、パイが何とかしてあげるから」
顔を上げて、アマラを真っ直ぐに見つめながら―ただパイは、受け入れる。
アマラ「君ならそう言ってくれるって信じてたよ。じゃあ…お願いだ、僕のココを助けてよ。
僕のこの腫れがひいたら、その時は呪鍵を―」
パイ「うん…」
深くうなずきながら、両手を己の膝につけたパイは小さな口元をアマラのたぎりへ近づけた。
いきり立った生臭いペニスを慰めるかのように、少女の甘い吐息がそっとかかった。
パイ「ん…っ」
消え去らない躊躇を懸命に抑えつけて、頬を染めっぱなしのパイは柔らかな接吻を贈る。
さっきまでアマラの足に捧げていたものと同様のそれを―今度は先端で包皮がしわ寄せる男根へ。
アマラ「ぐうっ」
包皮越しで直接ではないといえ、足よりもっと敏感な部位に伝わる唇の艶めかしさにアマラはうめく。
その反応はどうしても気にかかったが、もうパイは彼のペニスへのキスを止める事はしない。
皮のすぼまりを甘く含んだ後に、今度は舌先をチロリと出してゆっくりと舐めていこうとした。
パイ「…ふ…ぅ…」
殊更に煽るような派手さや激しさはない。傷口を癒すために行うような優しい舌の動きが、
アマラをじわじわと愛撫する。何もかも包皮の上からだけども―小さな亀頭のまわりを、
そしてよじれた先端の皮の下に隠れている尿道さえをも、パイは舌先でいたわってみせる。
長い睫毛を伏せながら―ただ差し向けられた男性器の腫れ上がりを収めるために。
肉棒をすっぽりと覆っている皮は、美少女の唾液にまんべんなく濡れて僅かにふやけ始めている。
アマラ(…ダメだ、すごく…すごく、気持ちいい…)
勿論パイの舌使いというものは、性の技巧としては(そういう意識自体がないというのもあって)
およそ幼稚の極みに過ぎない。が、それでも彼女自身の思いやりに支えられたその動きは、
男の歓喜を呼び起こすには十分過ぎるもの。それが女を知らなかった少年が相手なら、尚更だ。
アマラ「ハアッ、ハアッ…僕のここの皮、むいてよ…」
しかし、いかに湧き上がっても最後の最後で煮えきらないのが一枚越しの快感。それに焦れて
アマラはその原因である包皮を剥くよう、顔を寄せて屈服し続ける家来の少女に迫る。
パイ「…う、うん…。でも苦しそうだけど、ホントに大丈夫?」
興奮して息の荒い少年を案じつつ―パイは愛撫を一旦止めて口を離す。続いて目の前にある屹立に
細くなめらかな指先をそっと添え、亀頭を包んでいるあり余った皮をゆっくり剥き始めていった。
パイ(いったい…どうなっているんだろ…)
パイのノドから、緊張のあまりかゴクリ…と唾を飲み込む音が微かに聞こえた。
今まで一度も―千年も外気に晒されなかった赤い粘膜が、ジリジリとその姿を見せ始めていく。
パイ「っ…」
しかし素の粘膜が姿を見せた瞬間、思わずパイは声を上げそうになってしまった。
永い時を経て初めて解放された亀頭の全体に、白―もとい黄色のカスがこびりついていたのだ。
特にあまり発達してないカリ首の回りにビッシリ、まるで灰が重ねて塗り込められているかのように。
パイ「うぅっ」
発酵したからというだけでも理由がつかぬ堪え難い臭いが鼻をつき、パイの目尻からは涙が滲んだ。
久々に期待通りの反応をパイが示してくれたというのがあり、アマラはつい破顔してしまう。
アマラ「こんな所洗った事ないもん…いっぱいカスがたまってるでしょ?けどいいんだ、
家来の君が今からこれを舌でなめとってキレイにしてくれるんだから。…そうだよね?」
悪臭を我慢しきれずについ顔を逸らしてしまってた少女へ対し、小さな暴君は容赦なく要求する。
パイ「!…」
アマラ「…逆らいなんか、しないよね」
パイは言葉を返す事はしなかった―が、代わりにコクリと頷いてみせた。そうするしかないのだから。
パイ(ヤクモ…)
大好きな人の名前は、パイにとっては勇気を振り絞るための呪文でもある。そして彼女は再び
ペニスの方へ顔を向けて、まずはアマラの(既にカウパー腺液が大量に滲む)尿道口に唇を与えた。
アマラ「う!」
麗しい唇が、初めて曝け出した過敏な粘膜に直に触れてきた。それによる快感はアマラにとって
間違いなく衝撃的とさえ呼べるもので、思わず背筋をピンと張らせてしまった。
パイ「ん…んう…」
しょっぱくて苦い透明な液を唇で受け止めながら、パイは己のためらいを押し切るようにして
ゆっくりと舌を差し出していく。少年の亀頭のまわり、不潔な恥垢のまとわりついた部分へと―。
汚れを知らぬ少女―パイの舌が、小さい肉棒のカリ回りにこびりついた醜いカスをとらえた。
パイ「んぅっっ…!」
その瞬間に伝わった味はあまりにも堪え難くて、胸が焼けてしまいそうな錯覚を覚える。
今まで三百年間生きてきた中でも、このようなものを口にして味わった経験などは到底なかった。
パイ「くっ…んん…」
一気にこみ上げてきた嘔吐感を何とかごまかしながら、パイは舌先をねっとりと這わせて
アマラのペニスを覆う恥垢をいくらかこそぎ落とした。こそぎ落としたものは全て、
彼女が自らの舌の上で引き受ける結果となってしまってはいるが。
少女の舌―桃色の粘膜の上を犯すかのようにまとわりついてきた白い垢の群れ。
いっそ吐き捨ててしまえば、いくらかでも楽なはずなのに―パイはそれらを飲み込もうとする。
パイ「……んっ…」
あどけなさの色濃い美貌を歪ませながらも、泣き出しそうになりながらも、
どうしようもないくらい悲惨な味に苛まれても、そのままノドをコクリと鳴らしてしまった。
―そして、再び己の舌を捧げようとする。目的はただ一つ、主の男根の汚れを清めるため。
パイ「うっ…んくっ」
子犬のように奉仕する度、自らの唾液に溶け口に染み渡る酷い臭いと味。だけども吐こうとはしない。
屈する惨めさをかみしめながら、何度も―這わせる都度に舌へたっぷり乗ってくるただれを、
ためらわないで全て胃の中へと収める。
パイ(安全装置さんに従わなきゃイケない…。そうしなきゃヤクモも、みんなも…)
打算や駆け引きは知らない。ただ「舐め取れ」と言われて従った以上、それに准じるだけ。
パイ(それに、もともとはパイのせいだもん…。ちゃんとパイがなんとかしなきゃ…)
愚かしいくらいに言われた事を果たす―交した「約束」を守るだけ。
三只眼吽伽羅の数少ない生き残り―心優しき聖魔「パイ」とは、そんな娘だった。