樺恋3

 

 かび臭く、薄暗い通路を首輪につながれ、鎖で引き歩かされる全裸の樺恋。

 窓一つ無い通路は、薄暗く時間を連想することが出来ない。拉致されてどれくらいの時間がすぎたのか…。

 革靴は脱がされることはなかったが、全裸に靴下と靴だけの姿は卑猥で非日常をかもし出させていた。

 監禁された部屋から幾つかの扉の前を通り過ぎる。先行していた男が立ち止まって、腰にぶら下げていた一抱えもある鍵束をとりだして鍵を開けた。

 鉄製の重い扉を開けて聞こえたのは、猫の声…。樺恋にはそういうふうに聞こえた。

「うごぉぉぉぉぎぃうぉおおう」

「んんん・・・・んーんー」

 樺恋は、うずくまって腰を引けて逃げようとしても、首輪から伸びる鎖を引いて廊下にしゃがんだまま引きずりいれた。

 部屋の中は地下駐車場を改造したのだろうか?

 コンクリートむき出しの壁と床。高い天井。広い部屋に太い柱が幾つか並んでいる。ずっと向こうに薄汚れたシャッターが下りていた。

 昔は地下駐車場だった場所らしい。

 駐車場と違うのは、幾重にも連なっている鉄格子で何十にも区切られており、区画の扉には見たことも無い大きな南京錠がしてあった。

 さらってきた女を逃がさないための鉄格子が壁となっている。

 天井からは太い鉄の梁から何本もの鎖と鉄環がぶらさがっていた。

樺恋が見たことも無い巨大なジャングルジムのような鉄の塊や、腰ぐらいまでの鉄柱の上に鎮座している三角の塊。

床には幾つかの染みがまだらにあった。ここで何が行われたのか、これから何をされるのか、樺恋はすくみあがった。

鉄格子を幾つか越えて、部屋の真ん中にくると、一メートル四方しかない犬小屋みたいな檻がたくさん並んでいた。その中の一つに黒い塊がぴくぴくと蠢いていた。

『コレ』から声がしていたのだ。

声を出すのは全身を黒いラバースーツで覆われ、頭すら全頭マスクで覆われ髪の長さすら知る事は出来ない。胸のふくらみで、女性であることがわかるか、体格からでは、ある程度の年齢までしか知る事は出来なかった。

両手をアームバインダーという器具でひじを伸ばした状態で拘束され、拳はボールのような手袋をされ指の自由すら奪われていた。

よく見れば股間からしっぽの様に伸びたコードが檻の外にある小型発電機に繋がれていた。

樺恋の頬が真っ赤にそまった。

この女性は、かなり長い時間、股間の中に責め具を押し込まれ、機械的に責められていることを察したのだ。

女は、樺恋の変化に敏感に気づいて、鎖を引いて顔を覗き込んだ。

「んぐぅ…んんー」

 首を振っていやいやする樺恋の顎を上げて表情を観察する。涙目になって膝を震わせて女の顔をみあげた。

 涎が雫となって女の指先についた。

 女は、樺恋の顎先から指をはずして、セミロングの髪で涎を拭いた。

 それから、女は肉の塊になっている女の檻から一つ開けた檻の中に樺恋の鎖を引いて入るように促した。

 樺恋は麻縄で拘束されているので身体を丸めることが出来ない。狭い入り口に文字通りに、女のハイヒールで押し込められた。

 いくら樺恋が小柄でも、一メートルの立方形の中では背筋を伸ばすことは適わない。さらに拘束されているのでかなり窮屈な体制で檻の中で座り込んだ。

 女は樺恋の首から鎖を外してやると幾つか伸びているフックにぶら下げ、そして檻の扉を閉めてから南京錠で鍵を閉めた。

「早速、明日から調教を始めます。窮屈だけどしっかり眠っておきなさい。明日からきついですよ」

 女はそれだけ言い捨てると立ち上がって男のそばに寄った。

 男の手が女の頬打った。

「売り物に傷をつけるな!」

「ひぃ! お許しを」

 男は、女が樺恋を檻の中に押し込める時にハイヒールで押し込んだ時に傷ついたことに腹を立てているようだ。

 たしかに、樺恋のお尻やふとももといった柔らかい部分は筋のような赤紫色の後がてんてんとついていた。

 女は男の足元にひざまずいて、腰を出来るだけ高く、額を擦り付けるようにして男の靴にキスをしていた。

「お許しを…」

 男は履き捨てるように女を見るとまるで相手をしないように歩き出し、女はすがるように四つん這いで後に続いた。

 樺恋は、その異常な光景をずっとみていた。

 一瞬女のと目が合って、ものすごい目つきで睨まれると、ずっと床ばかり見ていた。

 

 それから、暫くして女のうめき声しか聞こえなくなった。

 女は、時々全身を痙攣させて声を止める以外変化は無く、ずっと潰れた猫のような声を上げ続けている。

 落ち着くと裸なので、寒気を覚えた。寄りかかった檻の鉄棒や冷たいコンクリートにぬくもりは無く、寒さに凍えるしかなかった。

 眠ろうとも拘束され、窮屈な檻の中で寒さに震えるばかりで眠れそうになかった。

 それに、さっきからずっとオシッコを我慢しているのだ。

 状況を考えるとトイレなどいけそうも無いし、朝までといってもどれくらいの時間を待つかも知る由も無い。

「んふーんふぅんんーんんー」

 トイレに行きたいと叫びたいが開口具によって言葉にならない。

 このままじゃ高校生にもなっておもらしをしなければならない。拭くものもないのだから、

 

 

 

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