千影が見た風景 第2章 その3

 千影は唇を噛んで痛みに堪える。ゴロンと横になって裸身を晒してハエを見上げ、柔らかい乳房や兄くんにすら見せたことがない秘密の場所。このような下賎なやからに肌を見られて恥を感じる気にもなれない。

 初々しい乳房は、ようやく膨らみ始めて釣鐘型をして白い。クチビルと同じ小さなサクラ色の乳首。千影はハエの視線を感じて一瞬だけ隠すようなそぶりを見せたが、見せつけるように短い四肢を広げた。気にしないように勤めても、心臓が激しく打ち付け息苦しくなる。

「はぁん? なんだその態度は言いたい事があるなら言ってみろよ」

「ふん・・・・・別にないよ」

「そうかい、しかし良い身体だね。何より肌の白さがいい、それにまだまだ貧弱だが将来は楽しみだよ。飼い主としてうれしいよ」

 気まぐれな男はさっきまでの怒りは何処とやら、千影の身体を見るとこれからの調教を考えると胸が踊り機嫌をなおす。

「いやいや、まさか姫君の身体を隅々まで見せてくれるとは嬉しいよ。思った以上にバランスが取れてスレンダーじゃないか。もっとも私はもう少し大きい方が好みだが、こっちは時間が立てば大きくなるし、成長を楽しみだな」

 千影の胸を舐めるように見て、惜しみない賛嘆の声を浴びせる。自らのペットに誇張などなく心からの声だ。それほど千影の肌は機目細かい。斑の痣が加虐心を刺激する。まだ、少女とも大人とも言えない成長過程な身体。未完成の完成品。ハエの趣味ぴったりの肉付きだった。

 じっとりと粘着的な視線。そんな視線に絶えるだけの誇りがあっても、だからこそ誇りや気高さと無縁のいやらしい男の値踏みに一瞬だけ目をそらす。千影がはじめて見せた羞恥の表情。ハエが見逃すはずも無く、この高貴な犬にたっぷりと屈辱を与えてやろうと考えた。

「ああかわいそうに、こんなに痣だらけになって・・・」

 いいながら鎖を引く。たるみが無くなると首輪に千影の全体重がかかる。

「ぐぅ・・・」

 首輪にかかる体重を和らげるために手を使おうとしても四本の鉄棒が空しく泳ぐ。

 ハエの胸の高さまで千影を持ち上げる。ブラブラと揺れる白く青痣だらけの肉の塊。背中に舌を這わせる。うなじから背筋を通って、お尻の割れ目まで押し付けるように舐め上げる。背中で這い回る舌の肉厚の気味悪さに鳥肌が立った。

「やめ・・・・苦し・・・ぐ・・・ぎぃ・・・・」

 抵抗すら出来ないで鎖一本でぶら下がれ舐め回される。手足が無くなった分だけ死にいたらない過重が首にかかる。それなのに舌が這う時だけ体重が支えられ楽になる。死を身近に感じさせながら他人の粘膜が肌を這い回る悪寒。

「おっと・・・苦しかったね」

 鎖を滑らせるように力を抜いて床に落ちる。

「げほッげほッ・・・ごほん・・はっはぁはぁ」

 肩を上下に揺らして咳き込む。美しい野生動物のようだ。震える。心が震える。野生動物を嬲るのは宝石を愛でるように楽しい。さっそく、肩を蹴り上げて仰向けにして千影の顔を見る。

「うーん。柔らかそうな毛だ。生え方も小さくまとまってとても上品だよ。お手入れはしているようだが、もう二度と出来ないだろうな『下の毛』のお手入れは・・・・ヒヒヒ。おっと下品だったかな・・・・。そうだな、このままほっといて下品に生え放題になるのは飼い主として心苦しいな・・・」

 得意そうに咳き込む千影を見下ろしながら喋りつづける。視線は千影の股間に熱っぽい視線を見る。

「・・・・はぁはぁはぁ・・・ごほごほ・・・何を・・・言っている? げふん」

「よし・・・毎朝、『下の毛』はツルツルに剃ってやるぞ。ハヒヒヒヒ・・・」

 自分の口にした言葉にいつまでも笑いつづけた。

 千影は今日二度目の感情を露にした。

「・・・・殺す・・・」

 解説

  まったり進行中。反応は凪さんのみ。キャッチボールサイトに移行中。少し痛いけど楽しいからいいかな

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