身体が堅くなって、中心から腐っていきそうだ。 バラバラになっていっそ息を止めたら ------ 切ない幸福 近くなれば近くなるるほど、もっと近くに居たくて。 すれ違いも少なくなった最近は、互いを求めずにはいられなくて。 こんなに近くに居るのに。 寂しい、なんて。 「何も考えずにいられれば」 いいのに。 *------ あの日、代わりに空が涙を流してくれていた。 本当は気持ちが重たくて、胃はキリキリしていたし、目を瞑ってしまいたかったけれど。 空を見上げると灰色に染められて、泣いていたから。 背負ったギターケースが少し気になったけれど、幸いにもハードケースだったから。 コンビニの前に売り出された傘も見送って。 駅までの道をゆっくりと歩いた。 この街は人が多すぎて。 すれ違う人の中に視線も感じないし、イヤホンから流れる音楽に耳をすませば周り全てを遮断出来る。 -------- 視点の定まりきらないまま、キスをした。 触れるだけ、だったけど。 行為の前置きとしては十分だった。 善徳が欲しかった。 「んっ…ぁ」 「拓…磨、」 寂しかっただけだから。 善徳なら抱いてくれるって思ったから。 そう、ごまかして。 ああ。 そんな瞳をさせたいわけじゃないのに。 きっと。 もう耐えられないくらいに指先まで全てが善徳を欲しがってる。 でも。 善徳はまだ誰かを忘れていなくて。 ふとした瞬間の視線の先だったり、埃のかぶった合い鍵だったり。 それに気づいてしまう自分も嫌なんだけど。 もっと自分のことだけ考えて人を愛せれば、こんなに苦しくなんてないのに。 善徳の胸の奥を支配している誰かが居る限り、きっと、つらいままで。 そんな気持ちもごまかして笑っていることなんて出来ないんだ。 矛盾した感情の上に矛盾した行為を重ねて。 いつか善徳に感情の糸が絡まって動けなくなって助けを求めてくれるのを待ってる。 ------------ 同じベッドにもぐりこんで、薄い布さえない、肌が触れ合ってこの体温を感じて。 朝なんて来なきゃいいなんて、ちょっとだけ思ったりして。 少しかための黒髪が額をくすぐって、すぐには寝付けなかった。 枕元の時計の秒針が嫌に気になって、電池を外してやろうとするのだけれど、身体に巻き付いた細い腕がそうす ることを止めさせる。 「寝れんの?」 「…寝てええよ」 「ごそごそ動かれたら寝れんし」 「ごめん」 より深く抱きしめられ、傷んだ金糸を何度も何度も梳き撫でられる。 甘やかされるのは得意じゃない。 けど、この腕を捕まえていると、安心して。 善徳の寝息が聞こえたら自然と瞼が重くなった。 ---------- 「帰る」 「ん…?」 「寝ててええよ」 シーツに埋まったくしゃくしゃの黒髪の隙間から覗く重そうな瞼を開かせる理由はなかった。 「鍵、新聞ポストに入れとく」 テーブルの上のキーケースと昨日の夜から電源を切ったままの携帯を手に取ると、足音をなるべくたてないよう にそっと部屋から抜け出た。 ドアを開けると、眩しい光が目を射して、暖かい空気が洗い立ての髪をくすぐった。 言った通りに鍵を落とすと、おやすみ、と呟いて背を向けた。 ----------- 「乗って?」 唇の片側をあげてニヤリと笑った善徳がさも当然かのようにベッドに寝転がる。 ほら、と言わんばかりに手を差し出してきて微妙な体制で固まる自分を急かす。 「イヤ」 「ええやん偶には」 「イヤやって!ハズイやろ!」 「俺とお前で今更」 上半身だけ起こして音を立ててわざとらしくキスをすると、俺の腰に手を添えて身体を跨ぐように促される。 「ホンマにやんの」 「うん」 膝立ちになって善徳の肩に手を置いて、顔が赤くなるのが分かったから目を逸らして逃げようとするのだけれど 。 視界の端に映った善徳の顔がさっきの笑みとは違って優しい目をしてたから。 「っ……」 高ぶった善徳のソレに片手を添えて散々慣らされた所へ押し入れて行く。 いつも以上に視線を感じて身を捩るとより深くへ入っていって、高い声をあげると善徳は嬉しそうに肌に吹いつ いてくる。 「やっ…痕残るやろ!」 「こんな深いVネック着んやろ?それこそチチこぼれんで」 「無い言うねん!」 色気もない言い合いをして、気を抜いていたら腰に添えられた手に力が込められる。 「動いて」