不条理な世界。
 
 
 
 
――――――ここは…何処?
 
僕は今、どうなっている?
 
ねぇ、誰か……
 
…御剣――――
 
この苦しみの中から、僕を救い出して……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
薄暗く、寂れた郊外に位置する廃墟となった倉庫に、人の影が見えた。
私は昨日まで海外で検事の研修をしていた。
たまたま、私はその倉庫の近くにある宅配業者に海外から送った荷物を泊めて置いたので
荷物を取りに行くべく、そこを車で通りかかったのだった。
 
そんな、誰も居るはずの無い倉庫に映る人影――――――
 
……これは、何かあるかもしれない
 
私の直感がそう告げた。
 
 
倉庫の傍らに、車を止めて倉庫へと向かう。
冷たくて重い、錆臭い倉庫の扉を開けると…
床にぐったりと横たわる男性の姿が目に飛び込んできた。
 
 
 
見慣れた髪型…
無造作に放られてある青いスーツの胸元には…
向日葵を象り、中央に天秤のマークのバッジ…
 
 
 
 
これは―――――――――――――――――
 
 
 
 
 
「なッ…成歩堂!!」
 
 
急いで成歩堂を抱き起こすが、意識がない。
強めに頬を叩いても、ぐったりとしたままだ…。
 
一体、彼の身に何が!?
 
 
救急車を呼ぶ時間すら惜しく感じ、成歩堂を抱きかかえると自分の車の後部座席に乗せた。
一刻も早く、彼を病院に連れて行かなくては…
後ろに居る成歩堂を気遣いつつも、急いで病院へと車を走らせた。
 
 
 
 
 
 
 
――堀田クリニック 第一病棟――
 
 
 
 
 
 
辛うじて意識を取り戻した僕の目に飛び込んできた光景は…
心配そうな面持ちで僕を見つめる御剣だった。
 
「!成歩堂、気が…付いたのか?」
 
御剣の、端整で綺麗な顔が目の前にまで迫る。
 
「み…つるぎ…僕…」
「成歩堂、何も喋るな。今はゆっくりと休んでおくことだ。」
 
御剣は布団を掛け直し、僕の隣に腰掛けた。
御剣の傍に居るのに安心して、僕はもう一度眠りについた。
 
次に目覚めたら…今日のこと、御剣に話さなければならないだろうか。
 
―――ねぇ、御剣…本当のこと話して、僕のこと軽蔑しない?
 
僕、もう…君の知っている僕じゃなくなっちゃったんだよ…―――――
 
 
 
次に僕が目覚めた時、日は変わっていた。
どうやら御剣は仕事の為、病室には居なかった。
少し、淋しい気もしたけれども…昨日の事を話す機会が遠のいた事に安堵感を抱いた。
 
目覚めてから暫くして、担当の先生が僕の病室に検診に来た。
 
「成歩堂君、具合はどうだい?」
「あ…まだ、身体の所々が痛いです…でも、だいぶ落ち着きました。」
「そうか、それなら良かった―――それにしても、君…昨日の事、警察には届けないのかい?」
 
ドクン―――と、僕の胸に衝撃が走る。
 
「―――――え?……な、何のことでしょうか?」
 
「白を切ってもダメだよ。昨日、君の身体を診察して解ったよ。―――輪姦(まわ)されただろう?その…大きく裂傷があったから…」
 
 
 
 
二度と思い出したくも無い、過酷な記憶。
 
 
そう…僕は昨日、あの倉庫の中で――――
男に輪姦されたんだ……
 
こんなこと、誰にも知られたくなかったのに。
特に、御剣だけには絶対知られたくない―――――
 
本当なら、今すぐにでも警察に被害届を出したいよ。
………出せるものなら、ね。
僕が被害届を出そうものなら、必ず御剣の所まで情報は流れるだろう。
 
そんなの、絶対に嫌だ!
…こんなに汚れた僕のこと…知られたくないよ。
 
 
 
 
 
 
なんで、こんなことになっちゃったんだろ……
 
 
 
なんで、この世は不条理なことばかりなのだろう…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ…それから、血液検査で解ったんだけど…性欲促進物質アフロディジアック、つまり…催淫薬のようなものが検出されてね…」
「え…?さ、催淫薬…ですか?」
「多分、一種のドラッグだと思うんだけど…どうも強力らしくて。暫くしたらきっと、また症状が現れると思うんだ…」
「それって…やっぱり…」
 
 
 
 
「そう、物凄い性欲に襲われるよ。」
 
 
 
 
 
「…………………。」
 
僕の顔は耳まで赤くなっていたかもしれない。
担当医を直視できなくて、僕は項垂れたまま固まっていた。
 
「申し訳ないけど、中和剤のようなものは無いから…こちらとしては、どうしようもできない。」
「そ、そうですか…解り…ました…。」
「辛くなったら、いつでも相談してくれたって良いから。それじゃ、また後で。」
「はい。ありがとう御座いました…」
 
 
 
 
 
 
検診が終わり、僕は再び眠りについた。
起きていたって、悩んでいるだけだから…
 
けれども、無情にも昨日の出来事が怒涛のように僕に押し寄せてくる。
 
 
 
 
 
 
やめて…
 
 
 
嫌だ…
 
 
 
許して――――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕が弁護士なりたての頃…ある裁判で僕の依頼人が有罪になってしまったんだ。
…執行猶予すらつかない、禁固3年。
刑務所に拘置され、何もできない過酷な刑罰。
3年と言えども、当人にとっては辛いものだろう。
 
その依頼人は執行猶予期間中に、次々と罪を重ねていったそうだ。
そして、依頼人は再び裁判にかけられ…
当然のことながら、有罪。
その時の裁判を、僕が弁護していた訳だ。
 
 
 
 
 
 
 
先日その依頼人が出所して…僕の事務所に押し掛けて来たんだ。
すっかり風貌は変わっていて…そうだな、痩せこけてた…かな。
 
…それで、依頼人が僕にいきなり飛び掛って来て…真宵ちゃんも居なくて。
いきなりの事で、僕は頭が真っ白になった。
倒れた拍子にデスクに思いっきり頭を打ち付けてしまって…
 
 
そこで、僕の記憶は一旦途切れている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――気が付いた時は、どこかの薄暗い倉庫に居たよ。
手足を縛られて…依頼人の他に、男が3人居た…。
 
僕は必死にもがいたけれど、それは空しい抵抗だった。
 
 
 
「テメェ、よくも俺を有罪にしてくれたな!…この3年間は絶対に忘れねぇぜ!」
「そ…そんな!何も僕だけの所為じゃ…。」
「うるせぇ!いいか、せめて有罪でも執行猶予をもぎ取って貰いたかったんだよ!それなのに…!」
「ご…ごめんなさい、許して下さい…」
 
不条理とは思いながらも、ひたすら謝った。
けれど、依頼人の怒りは収まらない。
 
「だからなぁ、久々の娑婆を楽しむべく…今までの代償としてテメェをいたぶってやるからな。」
「―――――!!」
 
男4人に押さえ込まれ、次々と衣服が剥ぎ取られていく。
あまりの恐怖に、ただ泣き叫ぶ僕の姿を、彼等はデジカメやビデオに撮っていた。
 
 
 
「今日のこと、他言したら…この画像を全世界にバラ撒くからな!」
 
 
 
や、やめてくれ!
こんな姿…アイツにだけはッ―――!
 
 
 
 
 
 
僕はただ、なすがままの状態だった。
怖かったんだ…犯されることもそうだけど…こんな姿、世間に…アイツにだけは晒されたくない。
僕はもう、無抵抗のまま彼等に次々と陵辱された。
 
 
「ふー…やっぱ、初めてっつーのはキツくて堪らねぇな!」
「いきなり突っ込むからだよ。ほら、裂けちゃって出血してるじゃん。」
「処女ソーシツってか。こりゃケッサクだ!」
「どうだい、弁護士センセ。…男が男に突っ込まれるのは。」
 
「……………。」
 
僕の心は半分壊れかけていた。
ぷつり、と糸の切れた操り人形のように、床に横たわったまま……
 
「おい、反応がねぇよ。…折角これからだってのに。」
「つまんねぇよ、これじゃあ。」
「…なぁ、コレ…使おうぜ。」
「そりゃいいね。きっと、弁護士センセもラクになるさ。」
 
僕の腕に刺すような痛みが走る。
 
「な、何?…痛ッ―――!」
 
「へへへ、これは性欲を増幅させる、おクスリだよ。」
「――――――!?」
 
男たちに押さえつけられて注射を打たれると、すぐに意識が混沌した。
 
「あ…あぁ―――ッ!」
 
世界が回る。
激しく動悸が走る。
僕の身体が熱いモノを求めている……
 
 
 
誰でも良いから、僕を抱いて…
 
 
 
こんなこと、口が裂けても言えない…!
さっき、陵辱されたばかりの奴等に求めるなんて―――!!
 
 
でも、もう…我慢できないよ!
 
 
 
「…ッ―――お願い、は、早く…挿れて…!」
 
 
 
何を言ってるんだ、僕。
 
 
 
「おい、弁護士センセがケツ振ってるよ。」
「見ろよ、アソコがヒクついてるぜ。」
「チンポも更に硬くしてらぁ。透明な糸が滴り落ちてるよ。」
「じゃ、お望み通り…」
 
暗く、湿った倉庫の中に肌と肌が触れ合う音と濡れた音が響く。
激しく貫かれる度に、僕の声が漏れる。
 
 
「あ…ッ―――!あぁッ!」
 
 
 
 
 
「クッ…弁護はイマイチだけど、身体は最高だよ、弁護士センセィは…!」
 
 
 
 
 
代わる代わる男たちを受け入れる僕は、まるで…
 
発情期真っ只中の動物のようだ。
 
僕は、もう…汚れてしまったんだ。
 
陵辱されていながら……性欲に勝てず、自分から求める卑しい人間なんだ。
 
 
 
あぁ、頭が…身体が痺れる……
 
 
 
御剣―――――――――
 
助けて…
 
こんな淫らで汚れた僕を……
 
果たして君は、許してくれるかい――――――――?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
暗い…果てしなく暗い闇。
そんな暗闇の中、僕を呼ぶのは――――――
 
 
 
 
 
「…堂…成歩堂!」
 
気が付くと、御剣が心配そうに僕を見つめていた。
 
「御剣…僕…」
「大丈夫か?だいぶうなされていたぞ?」
「あ…うん、だいじょ…」
 
精一杯我慢していたつもりが…
僕の目からは次々と大粒の涙が溢れ出す。
 
「どうした…?―――昨日、何があったか話せ。」
「―――ダメ!それだけはッ…」
 
再び、僕の身体に衝撃が走る。
また…昨日の悪夢が蘇る。
 
 
「あ…ン…ぁっ…!」
 
 
御剣の前で…なんて声、出してるんだ。
 
 
 
「な、成歩堂?大丈夫か、顔が赤いぞ…」
「ン…だいじょ…ぶ。何とも無…」
 
口からだらしなく涎が垂れる。
意識は混沌とし、息遣いも早くなる。
 
「ね…御剣…僕を…」
「どうした、成歩堂?」
 
「お願い…僕を…抱いて―――!」
 
 
 
 
もう、どうなっても構わない。
御剣が、これ限りだとしても僕を…汚れた僕を癒してくれるなら…
金輪際僕は、君に軽蔑されようが構わないよ―――――
 
 
このキモチ、薬だけの所為じゃないよ。
僕は、本当に心から君のこと大好きなんだ…!
 
 
 
 
 
 
「…いいのか?成歩堂。」
「うん…御剣…。でも僕、男だけど…構わない?」
「弱気な君は、らしくない。…私も成歩堂を抱きたいからそれに答えるだけだ。」
「み…つる…ぎ…。」
「…なるべく、身体に負担はかけないようにする。」
 
そっと、御剣の顔が近づく。
 
「ん………。」
 
 
甘く、優しいキス。
昨日の事なんて、忘れさせてくれるほど…温かいよ。
 
 
 
御剣は、手際よく僕の病院着のボタンを外していく。
…唇、首筋、胸、と順に舌を這わせて。
その度に、僕は甘い吐息を漏らす。
 
御剣の息遣いも、段々速さを増していくのが解る。
狭い病院の個室に、僕達の声が淫らに響く。
 
御剣の愛撫は、次第に下へと移動する。
やがて、僕は生まれたままの姿になった。
 
 
 
 
 
あぁ、身体の傷を見れば…きっと君は知ってしまうだろう。
 
僕はもう、君の知っている成歩堂龍一じゃない―――と。
 
 
 
 
ゆっくりと、僕の足を割る御剣が息を呑んだ。
 
 
「―――!!何てこと………成歩堂…辛かっただろう。」
 
どうやら、御剣は僕の痛々しい傷跡を見て、全てを知ってしまったようだ。
 
「ごめんね…本当のコト、話したら…僕のことなんて…」
 
もう、悲しくて声にならない。
悔しくて、切なくて。
涙が溢れて止まらないよ…。
 
 
 
軽蔑される―――――――――そう思っていたのに。
 
 
 
 
御剣は、僕をきつく抱きしめた。
 
彼もまた、泣いていた。
 
 
「み、御剣が…どうして泣くんだよ。」
 
「私に…君の傷を癒すことができるだろうか。」
「な…何言ってるんだい?御剣…。」
「君が…こんなひどい目に遭ったのも…私の所為でもある。」
「バカな―――なんで御剣が謝らなきゃ…」
 
「私は…昔から君のことが好きだった。しかし、私にはそれを伝える勇気が無かったのだ。…もし、私が君の傍にずっと居てやっていれば…
こんなコトにはならなかった筈だ。――――済まない、成歩堂…済まない…。」
 
 
意外だった。
 
御剣も僕のことを好きでいてくれていたなんて。
 
僕はもう、それだけで十分だよ。
 
「御剣の所為じゃないよ。君が僕を想ってくれていると知っただけでも十分癒された。…ありがとう。」
「…成歩堂。」
 
 
 
 
今度は僕から口付ける。
 
お互いの、心の傷を舐め合うように僕達は何度も激しく口付ける。
 
御剣は、僕の熱く…硬くなったモノを口に含んだ。
 
 
 
「あ…ッ…」
 
 
 
身体に電流が走った。
本当に好きな人と求め合う――――なんて心地良いのだろう。
この、不条理な世界に…光を射す太陽のようだよ、御剣…。
 
 
お願い…汚れてしまった僕を…浄化して――――――――
 
 
 
 
 
御剣の容赦なく、甘い愛撫に僕は翻弄される。
 
 
「み、御剣…僕、もう…!」
「…挿れても大丈夫なのか?」
「薬の所為かは解らないけど…痛みは感じないんだ…お願い、御剣の…ちょうだい。」
「もう、どうなっても知らないからな…」
 
 
僕の中に、御剣がゆっくりと挿入ってくる。
痛みなんか感じない。
心が…癒される。
 
大好き、御剣…
 
今までも、これからもずっと――――――――――
 
 
御剣は、僕の身体を気遣いながら動いてくれた。
やがて…僕の中で果てた。
 
お互い、ベッドの上で抱き合って―――――そして泣いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あれから一月が経った。
御剣に勧められて僕は、被害届を出した。
 
 
「成歩堂…身体の具合はどうだ?」
「うん!もうバッチリだよ。」
「そうか…それなら良かった。」
「あ、朝ごはん作ったから食べよ!」
「あ…あり…がとう。」
「フフッ、相変わらず御剣は御礼を言うのが下手だね。」
「ム、精進する…」
 
 
 
退院してからは、御剣のマンションに一緒に住んでいる。
御剣はもう僕を、一人にはしないと言ってくれた。
僕も、あれ以来御剣の傍から離れたくないと、ますます想うようになった。
 
 
僕の全てを受け入れてくれた御剣の心の広さに…頭が上がらないよ。
 
 
 
ありがとう、御剣。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
被害届を出して暫くすると、あの事件の裁判が行われた。
 
勿論、検事は御剣。
 
御剣の惨酷までな攻撃により、僕の依頼人だった人達は終身刑となった。
 
陵辱画像は、なんと御剣が警視庁のパソコンから彼らのパソコンにハッキングして画像を消去したそうだ。
 
僕の為とは言え…終身刑やハッキングとは物凄いよ、御剣。
 
でも、それほどまで僕のことを想っていてくれる御剣に…今日は何かお礼をしないとね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――――――――――そうだなぁ…デートしようか、御剣。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<了>


 
あとがき
当初はこんなに長くなる予定じゃなかったんだけどなぁ。(苦笑)
単に、成歩堂が陵辱されてる所が書き(以下自主規制)
今回は、なるほどくんの初めての相手はミッたんじゃなくて可哀想な事したなぁ、と。
次回は、ちゃんとミッたんとラブラブさせてあげたい・・・けど、お姉さんは意地悪しちゃうよー?
んー、でもその前にゴドナルやトロナルが書きたいかも。

…それにしても、堀田クリニックでしゃばってますね〜。(w
病院ネタがスキって訳じゃないんだけどねぇ。
扱いやすいと言うかなんと言うか。
催淫薬についてのツッコミは受け付けませーーーーん!(天杉風に)

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