上半身裸になるのは、男にとっても結構勇気がいることらしい。







              魅惑の筋肉トーク  @





“あの”シーンで俺は裸になる。

そういえば、山南役で肌を見せることは無かったように思う。

今回初めてだ。

まだしばらく先の話だけど、撮影の時のために鍛えておいた方かいいだろう。

もともと線の細い、太らないタイプだし。

まぁ舞台のために多少の体力作りはしてきたつもりだからそこそこ筋肉はある方だけど。

でもやっぱり昔の剣豪の役なんだから、それなりに鍛えないとだめだなぁ。

この薄い上半身、何とかしないと。

ああでも、俺体動かすこと嫌いなんだ・・・

ジムになんて絶対行きたくないし。

貧血起こして倒れちゃうのがオチだね。

かといって、家に鍛えられるような道具も持ち併せてないし。

そうだ!

耕史くんにでも聞こうかな。

あの人ならきっと持ってるだろう。

香取くんとたまーに筋トレの話してたし。




というわけで、収録の合間に聞いてみた。

「え、まあいっぱい持ってますけど」

土方の格好をしたままシュークリームを頬張る姿はどこか滑稽で。

「よかった!じゃあそれ貸してくんない?」

「いいですよ。…あ、でも堺さんにどれが合うかちょっとわかんないんですけど」

「そんなにいっぱいあるの?」

驚いて声が裏返る。

「まあ一通りは。」

少し得意そうにシュークリームを持った土方が云う。

「じゃ今日耕史くんち行ってもいいかなぁ、」

「…えっ!!」

「迷惑ならいいんだけど…」

「ぜ、全然っスよ!!」

「よかった。じゃ、今日収録終わったら…あ。」

「?」

頬についた生クリームを見つけた。

これじゃせっかくの美形が台無しだ。

そう思って指で拭ってやる。

「!!」

あ。

倒れた。

わー。

マジかよ。

俺んち来るだなんて。

この恋愛で百戦錬磨の山本耕史がドキドキしてる。

さっきの不意打ち堺さんの行動にも失神しそうだったし(いや、倒れたけど)、変なヤツって思われてるかも…。

あの人の前だと、自分じゃなくなっちゃうんだよなぁ。

これも恋の力ってやつ?

堺さんには内緒だけど、本当はあんまり彼に鍛えてなんか欲しくないんだ。

そう、例えばの話だけど。

例えば!

俺とあの人が“そういう”関係になった場合、恋人同士お互い抱き心地って結構重要じゃん?

あのまま華奢な堺さんでいてもらった方が俺としては嬉しいし…。

だって正直堺さんのマッチョな姿って想像出来ない。

第一似合わないと思う。





「いやぁ、ごめんごめん。待たせちゃって」

収録後、先に自分の車に乗って一人待っていた俺を見つけて堺さんは駆け寄ってきた。

だいぶ待たされたのに私服の彼を見て思わず顔が弛む。

ああ何だか恋人同士みたい。

「竜也くんに呼び止められちゃって。」

「!!」

アイツ。

竜也のやつ何かと堺さんにひっつくんだよ。

あの性格だからしゃーねえけど、何も抱きつく必要なんてねーだろ。

絶対わざとだ。

オダギリといい、どうしてこうも敵が多いんだ…。





こうなったら。


今日にでも決めてやる!

他のやつに手が出せないように、堺さんを俺のものにしてやる。

見てろ。

このマッチョな素晴らしい肉体で堺さんをメロメロにしてやるぜ。
運転しながらメラメラと意気込みに燃えている山本の隣で、自分の身の危険を知りもせず、


堺は車酔いに頭がフラフラするのを懸命に堪えていた。




「き、気持ち悪い…」






Aへつづく。





   
  初・耕雅。
  一万ヒットお礼ということで、書きなぐってみました。
  さらっと読み流してください。












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