六、屈辱にむせび泣く人質奴隷    


 「う…、うぅ…」
 低い呻き声が聞こえる。それは、茂原が発したものであった。パッと、クモの子を散らすかのように浅野と河村が離れる。
 そこで理緒は見た。茂原の腹部に、深々と突き刺さっているナイフを。
 ほとんど根元まで埋まっており、まるで腹から柄が生えているかのように見える。みるみるうちに茂原の着ているシャツに赤黒いシミが広がっていく。
 (し…茂原さん…)
 少女の身体が小刻みに震えだした。信じられないものを見たことで、浮いていた腰が再び尻餅をつく。
 おそらくはもみ合っているうちに誤って刺してしまったのであろう。刃物を持ち出した時によくあるアクシデントである。
 茂原がうめきつつその場に崩れ落ちた。
 「ひっ…、い、いや…!いやあぁっ!」
 理緒の絶叫で、その場にいる全員が一時的な金縛りから解放された。全員の視線が茂原に集まる。
 理緒はあわてて這うように茂原に近寄る。丸まった背中
を必死で揺らすが、反応はない。必死に揺さぶると茂原の身体がごろりと仰向けに床の上に転がった。その腹からほぼ垂直にナイフが突き出ている。
 「お、俺は悪くないぜ。事故だからな…コイツは!」
 ナイフを持っていたはずの浅野が、うろたえつつ口走る。
 その時、上村が動いた。茂原の近くに歩み寄ると、上から倒れた茂原の様子をのぞき込む。
 「ふん…、見た目は派手だが、出血もさほどじゃない。内臓が傷ついているわけでもなさそうだ。ふん、厚い脂肪に阻まれて命拾いしたな…」
 氷のように凍てついた上村の言葉である。だが、今の理緒はそれに反発を覚える余裕も無かった。
 「お願い、早く茂原さんをお医者様に…」
 理緒が上村に必死に訴える。
 「そう大騒ぎすることもなさそうだ。それに、何でおれたちが人質の言うことを聞いて、わざわざ裏切り者を助けなきゃならない?」
 「でも…!」
 「言ったろ?すぐにこのままおっ死ぬわけじゃない。それに、こうなったのは香里が原因だからな。俺達の責任じゃない」
 「えっ…?」
 「俺はずっと見ていたが、香里が河村さんの脚にしがみついてバランスを崩したから、もつれ合っていつの間にかてしまったんだ。従って、河村さんも浅野さんにも責任はない」
  絶望と焦慮、混乱と当惑がグルグルと少女の頭の中で渦巻いている。突然責任の所在をどうこう言われても、とっさにそこまで考えられない。彼女にしてみれば、茂原を
一刻も医者の手に委ねたいというのが最優先である。
 (そ、そんな…、どうしたらいいの…)
混乱する少女を後目に上村は冷たい目で茂原を一瞥すると、突然脚で傷口の辺りを踏みにじった。
 「うっ…、ぐぉお…!」
 茂原は絶叫し、床の上で悶え苦しむ。
 上村の非情な嫌がらせに、河村と浅野は鼻白んだ。
 (エグい真似するぜぇ…。俺らに対するときは全く別人だ。もしかすると、コレがやつの本性…?)
 「やめてぇっ!」
 見かねた理緒が叫ぶ。だが、まるでそれをあざ笑うかのように上村の脚に力がこもり、再び傷口を圧迫する。もはや、茂原は激痛で声すら満足に出ない。
 「やめてぇっ、お願い、やめてっ!」
 理緒は、香里が河村にしていたように、必死に上村の脚にすがりついて、暴虐を止めようとしていた。幾度も振りほどかれ、その都度すがりつく。
 「…やめてってば…。本当に死んじゃう…」
 なす術もなく、少女は上村の脚を胸の中に抱え込んだまま、泣きじゃくっていた。  
 「…そんなに茂原を助けたいか…」
 「…」
 返事はなかった。代わりに、脚を抱え込んでいる腕に力を込めた。それが返答であった。
 「助けてやってもいいぜ。条件次第だがな」
 理緒がふっと顔をあげた。むろん、今の彼女には他の選
択肢がない。受け入れるより他にないはずだ。
 上村は『条件』の説明を始めた。




            *



 数十分後、怪我を負った茂原はソファーに力無く座っていた。両腕を肘掛けにロープで固定されている。
 上半身はハダカで、包帯を袈裟のように巻いている。
 一応手当は施されているが、この別荘に置いてあった薬箱を
使った程度のものなので、あまり本格的なものではない。もちろん、本格的な治療は必要である。さもなくば、徐々に体力が失われ、やがて衰弱して死に至ってしまうだろう。
 だが、すぐにどうにかなるというものではなさそうだ。
 その目の前に広がる空間には、河村と浅野、上村が輪になって立っており、その中心に目を覚まして風呂場で身を清めた香里と、体操着姿のままの理緒の二人が座らされていた。
 「理緒…ちゃん…」
 香里が、かたわらの理緒を気遣って声をかける。だが、理緒は返事をせずにじっとしたまま座っていた。
 再び声をかける。だが、やはり返事はない。香里の手が少女の肩に触れようとする。
 次の瞬間、その手を理緒は振り払った。それは、手厳しい拒絶だった。
 その理由が、香里には分かった。
 上村が言ったことが、少女の心にトゲのように引っかかっていた。茂原が怪我を負った原因が、香里にあるということだ。
 香里にしてみれば、理緒を助けようとして動いた結果であるし、なおかつ誘拐犯人の一人である茂原が負傷を負ったからといって、恨まれるなど心外である。
 「へへ、ずいぶん嫌われたじゃないか、香里センセイ」
 浅野が揶揄をこめて香里をからかった。
 「さあ、理緒。協力してもらうぜ」
 上村がそう言い、河村が少女の腕を掴んで立ち上がらせる。理緒は特に逆らう素振りも見せない。
 ここで言う協力とは、茂原を手当する代わりに理緒が呑まされた条件のことである。
 もともと、今回の誘拐の目的は理緒の父、藤野健吾への復讐である。そのために娘を誘拐し、彼女がさまざまに性的辱めを受けるシーンをあらゆる手段で見せつける。そうして、彼に存分に屈辱を味あわせた上で社会的にも抹殺する、というのが最終目的である。
 そのために今日までの間、少女愛好趣味の持ち主で扱いにも手慣れているはずの茂原に理緒を手なずけるようにしていたのだ。だが、予想外にも二人が情愛を通じさせたことによって、思わぬ方向に話が変化していったのであった。
 その意味では、茂原が負傷を負った今の状況は、上村にとっては歓迎すべき状況だといえる。なぜなら、茂原の命そのものを取引材料として活用できるからである。
 そして、上村が出した条件というのが、『藤野に対して送りつけるメッセージの作成に協力すること』であった。
 「ダメよ、言うことを聞いちゃ…!」
 立ち上がった少女にすがりつこうとした香里であったが、すげなく振り払われ、孤立感を深める。その両肩を背後から河村がグッと押さえつけた。
 「センセイは俺の担当だ。仲良くやろうぜ」
 「そんなっ…、理緒ちゃ…」
 河村が逞しい腕で香里を羽交い締めにする。香里は締め上げられ、呼吸の苦しさに耐えながらも必死に教え娘に呼びかける。
 だが、そんな彼女の思いとはうらはらに、少女は香里の方を見ようとはしない。香里がひたむきに理緒を助けようとすればするほど、理緒の拒絶は増すばかりであった。
 同じ人質という立場の二人の間に、初めて溝が出来ていた。
 この時、ふと香里の間に理緒への反発心のようなものが生まれていた。それは当人すら自覚しえない程度の小さなものでは
あったが、彼女の心の根底にぴったりと根付いた。
 言ってみれば、香里はこの件では単に巻き込まれただけなのである。それは彼女が単に藤野の娘・理緒の家庭教師であったということに尽きる。
 そのわずかな心情の変化を、上村は香里の表情から敏感に察していた。
 (ん…待てよ…?)
 ふと、上村は理緒に対する香里の今の感情を逆手にとる、良いアイディアを思いついた。そこで、理緒を身動きが出来ないようロープで縛り上げて座らせた上で、香里を男三人で取り囲む。
 「…な、何を…?」 
 おそれおののく美女の身体から、バスローブが剥ぎ取られる。その下は、オフホワイトのノーブルなデザインの下着だ。
 ブラジャーごと、乳房を荒縄で引き絞り、くびれたウエストにもしっかりと巻き付ける。
 さらにパンティの上から秘裂にしっかりと食い込むようにきつく縄掛けを施す。 
 さらにその両腕を天井から吊り下がる照明のクサリに結びつけた。長さは微妙に調整されていて、やや腕を曲げた状態で立っていることになる。かといって座れるほど長いわけでもなく、実に巧妙だ。
「あんまり体重をかけると、照明が落っこって来るから気をつけろ」
 こともなげに河村が言う。ふと、香里は自分を見つめる理緒の視線に気付いた。その瞳は蔑みに満ちていた。
 (なぜ…?そんな目で見るの…?)
 確かに今の自分は無惨な格好をさせられている。だが、少な
くとも理緒だけはそのような瞳をするべきではないはずだ。
 香里のうちにふつふつと怒りがわき出してくる。それは、人としてごく自然な感情であろう。
 上村はその傍らへとしゃがみ込む。手でブラのカップごと乳房を握り締める。それこそ、指の痕が柔肌にくっきりと残るほど強く。 
 「うぅ…、い、痛ぁい…」
 香里は力無く泣き声をもらした。上村はそれを耳にして満足そうにうなずくと、一旦立ち上がった。部屋の隅に置いてあった旅行用の鞄を取りに行ったようだ。鞄を手に理緒の前に戻ってきた。
 バッグの中身をひとつずつ取り出し、丁寧に床の上に並べていく。
 大小長短、さまざまなサイズのバイブレータ。
 媚薬各種。
 ロープひとまとめ。
 赤、白、黄、青のローソク。
 洗濯ばさみも単にプラスチック製のものではなく、金属製、そしてレトロな木製のものなど。
 手錠、鼻フックなどの小物各種。
 その他いろいろ。
 およそ、理緒にはその用途すら満足に理解できないような、さまざまな品物がずらりと並ぶ。
 だが、その中でもっとも異彩を放っているのは、いくつかの玩具であった。透明なプラスティックで出来た水鉄砲。 爆竹の束。ネズミ花火。
「さあ、理緒。どれを使ったらいいと思う?」
 理緒は返事をしなかった。
 もちろん、いくら今の理緒が香里に漠然とした反発を抱いているにしても、あからさまにそのようなことを聞かれて答えられようはずがない。
 しかし、人間としての自然な反応として、どうしても一番興味を引かれる物に視線が行ってしまう。そして、少女がずらりと並べられた責め具の中でもっとも気になったのは、爆竹であった。
 一本一本がダイナマイトを模したそれは、子供がよく玩具屋で買うアレと全く同一のものであった。それ故に、いったい何の用途に使うのかが全く理解できない。
 そんな少女の思考を敏感に察した上村は、にやりと笑ってローソクを拾い上げて火をつけた。
 あかあかとした炎が勢いよく燃える。揺らめく炎の向こうに、上村の笑みが不気味に浮かぶ。
 「い、嫌…、助けて…」
 香里が蝋燭責めをされると思い、恐れおののいた。緊縛された肢体を逃がそうとするが、両手を頭上に吊り上げられたままなので、動ける範囲はたかがしれている。
 上村が爆竹の束をほどいていく。一本一本にばらけた爆竹のひとつを手にすると、ローソクの炎に近づける。
 シュウゥ…、と白く細いケムリと派手な火花、そして火薬のにおいを辺りに振りまき、爆竹に火がついた。
 「そら!」
 かけ声とともに、火のついた爆竹が放物線を描いて香里の足下近くへと落ちた。導火線はあっという間に燃え尽きていく。香里はあわてて後ずさった。
 そして、けたたましい破裂音が響く。とたんに、周囲に濃厚な火薬の匂いが立ちこめる。
 「へえ、爆竹なんて久しぶりだな。よう、俺達にも遊ばせろよ」
 浅野がしゃしゃり出て、上村の手から 爆竹の束を一束取り上げた。河村も同様に、一足の束を受け取ってほどき始めた。
 それから、香里の地獄が始まった。
 男達が、それぞれてんでに爆竹に火をつけて、香里の身体めがけて放り投げるからだ。立て続けに、爆竹の乾いた破裂音が鳴り響く。
 中には、火花をあげながら香里の身体に直接ぶつかるものもあった。破裂時にも、熱い火薬カスが飛び散るので、美女の柔肌は次第に痣や細かい火傷だらけになっていく。
 香里の顔面は恐怖に蒼白になり、身体は小刻みに震えている。
 爆竹をよけるため、必死に逃げまどうさま、その狼狽ぶりは見ていて哀れなほどだ。だが、行動を著しく制限された環境において、娯楽に飢えている男達にとってはそれがたまらなく面白いらしい。
 何かに取り憑かれたように爆竹に火をつけ、放る。三人がそれを交互に繰り返すので、香里は息つく暇もない。
 動ける範囲内で、髪を振り乱して逃げまどう。
 (…)
 理緒は、その光景を見ながら何とも複雑な思いに駆られていた。わだかまりを抱いている今、香里が目の前で無様な姿を見せているのはある意味満足できるものであった。
 だがその一方で、香里に同情する気持ちも確かに存在する。それは、上村達に対する反発心からであった。
 すなわち、現在の理緒が精神的には上村達に対して屈服していないことを示している。 
 かつては一度、従順に飼い慣らされたはずが、今なお心の中に反抗の炎を燃え上がらせているのだ。
 そんな理緒の心中はつゆ知らず、男達は爆竹あそびに熱中しきっていた。 
 その時、誰かの投じた一本の爆竹が、香里の太腿の表面近くで炸裂した。
 「ひぎっ…!」
 肌の表面で爆竹が破裂するというのは、想像する以上に衝撃を覚えるものである。それは、鞭で打たれるにも似た苦痛であった。
 「クゥッ…!」
 苦痛の呻きと共に、香里は一気に脱力してその場に膝を折った。その勢いで、ブラジャーに包まれた双乳が弾むように揺れる。
 あまりのことに一瞬その場が静まり返る。
 「あーあ、せっかくのきれいな肌が台無しだな…」
 唯一上村が、平然とした口調で言い放つと、うずくまった香里の傍らにしゃがみ込む。手を伸ばすと、香里の太腿の肌の、爆竹が炸裂した辺りを軽く撫でる。
 わずかに皮膚に痣のような痕が出来ているのと、火薬カスがこびりついている他は、特にけがのようなものは見あたらない。
 「フン…?」
 あることを発見した上村が鼻を鳴らした。
 「見て下さいよ。この女、小便を漏らしている」
 「どれどれ、あ、本当だ…!」
 光沢のあるオフホワイトの下着の布地がじっとりと湿っている。内腿をつたって足首にまで生暖かい液体がしたたり落ちていた。
 「ありゃぁ…。高価いカーペットに染みが出来ちまった」 
「これも藤野に対する復讐のひとつということで…。何しろ、この別荘もヤツの持ち物ですから…」
 河村と上村が減らず口を交わしあう。香里はショックでもはや反抗の意志すら失ってしまい、動く気力すらないようだ。
 「…大人しくなってもらっちゃ、面白くないな…」
 上村が浅野に何かを耳打ちする。それを聞いた浅野の表情が実に意地悪いものになった。猿のようにはしっこい動きで、浅野が部屋の壁際に備え付けてある化粧棚の中から、洋酒のボトルを数本抜きだし、腕の中に抱えて持ってきた。
 「よう上村、こんなもんでいいのか?」
 「ずいぶん高価い酒がそろってますね。藤野の自慢のコレクションといったところかな?」
 贅沢が好きな藤野は、別荘にも常に数十本の洋酒を取り揃えていた。浅野が選んだのは、その中でも特にアルコール分が高いものばかりであった。
 「これをどうする?女共に呑ませるのか?」
 河村が怪訝そうな表情で聞く。
 「いや、こいつはこう使うんです」
 床に並べられた責め具の中から、銃身が透明な水鉄砲を
拾い上げた。グリップの底が注ぎ口になっていて、洋酒をそこが注水口になっている。上村は酒瓶の封を開けると、内部に琥珀色の液体をなみなみと注いでいく。
 水鉄砲、いや、酒が入っているから酒鉄砲だろうか。その銃口が、香里の白い顔に狙いを付ける。 
 「香里センセイ、目を覚ませよ。あんたが眠りこけてちゃ面白くないぜ」
 指が引き金を引く。銃口から勢いよく酒がほとばしり、香里の顔めがけて引っ掛かった。
 「うっ…、う、うん…」
 冷たい酒精を顔に浴びたせいで、やや意識がしゃっきりとした香里は、ゆっくりと顔を上げる。その顔を、三つの銃口がねらっている。
 「それっ!」
 かけ声と共に、酒の弾丸はすさまじい勢いで美女の身体に降りかかる。白絹のような肌、ノーブルな雰囲気の下着、珠玉の艶を誇る黒髪を、酒精が徐々に濡らしていく。
 特にパンティは透けてしまい、秘部の黒々とした翳りがハッキリと浮き出てしまった。
 ツンときついアルコールの匂いが鼻をつく。香里が液体の正体に気付いた頃には、すでに全身アルコールで濡れネズミ状態になっていた。
 「気付いたか。酒まみれになった気分はどうだい?それとも、精液まみれの方がお好みかな?それなら、酒の代わりに俺らの精液を弾丸にしてやるぜぇ」
「じょっ、冗談はよして…!」
 再び、何度もアルコールの水流が美女の肢体を濡らしていく。気化した濃厚なアルコールが周辺に立ちこめており、この場にいるだけで酔ってしまいそうだ。
 とくに、理緒などは年齢的に酒に免疫がないせいか、ぽうっとした顔をしている。
  上村が酒鉄砲をおろす。すると、他の二人も自然とそれにならった。
 上村の手が、爆竹の点火用に使っていたローソクを取り上げた。ほとんど燃え尽きて、かなり短くなってはいたが、上村はそれを無造作に美女の酒に濡れた柔肌に近づける。
 不意をつかれ、香里はとっさに避けることが出来なかった。
 次の瞬間、なんと香里の肌の表面が青白い炎をあげて燃え上がった。アルコール分に引火したのだ。
 「きゃっ…!いやあぁっ!」
 その悲鳴が終わらないうちに、炎はあっというまに跡形もなく消え去った。多少のアルコール分など、瞬く間に燃え尽きてしまうからである。
 だが、香里の肝を冷やすにはじゅうぶんなほどであった。
 「どうだ、気分は…?」
 いいはずがない。だから、香里は男達を精一杯にらみつけた。だが、上村はそれを無視して言葉を続ける。
 「よく考えて見ろよ。本来、キミがこんな目に遭う理由は無いんだぜ。そうじゃないか?」
 「…」
 「誰が原因かは、分かっているはずだ。」
 正直言って、それが誘導的な会話であることは明白だ。 だが、今の香里は、何よりも理緒の態度に引っかかりを覚えていた。それが証拠に理緒の方に目を向けると、少女はわずかに酔っぱらったような顔を背け、明らかに視線を逸らせたような気がしたのだ。
 「そう思わないか?なあ?」
 再びローソクが、肌の間際にまで接近する。わき腹の辺りに引火して、その部分が燃え上がる。
 「ひいっ、熱ぅい…」
 狼狽し、半狂乱でもがき、苦しむ。わずかに、産毛の焦げる匂いが鼻をつく。だが、またしてもすぐに炎は消え失せた。
 「ひどい話だよな…。キミは、単に巻き込まれただけなんだ…」
 その理不尽な状況に香里を陥れている張本人が、ぬけぬけと
すべての責任を理緒と藤野に押しつけるような言辞を弄している。
 本来ならば、そんなたわごとを聞き入れるほど香里は愚かではない。だが、ショックの連続で砂漠のように乾ききった香里の心に、魔的な浸透力を見せて染み込んでいった。
 「なあ、そう思うだろ…?」
 上村はまるで催眠術をかけるように、執拗に同じ言葉を繰り返す。何度も何度も、耳元で囁き続ける。
 「やめて!聞きたくないわ、そんな話…!」
 首を左右に振って、必死に悪魔の誘惑を振り払う。
 「そうか…、じゃ、もう少し巻き込まれてみるか?そうすれば、気が変わるかもしれない」
 そう言って上村が、後ろを見る。振り返った先には、すでに衣服を脱いで準備が整った河村が立っていた。
 香里は思わず息を呑んだ。
 全裸の河村は黒い皮のビキニパンツを穿いていた。何よりも目を奪うのは、そこからペニスが二本、ニョッキリと突き出ていたためだ。
 だが、よく見てみるとその正体はすぐに判明する。一本は確かに河村の自前のイチモツだが、もう一方は巧妙に色と形を似せて作られた、擬似ペニスだ。つまり、擬似ペニスのついた皮パンツを穿いていたのである。
 「コイツで狂わせてやる」 
 河村は乱暴に香里の腰を持ち上げて、背後に突き出させた。アルコールと小水に濡れたパンティを一気に引き下ろし、魅惑のヒップを剥き出しにさせる。
 「いやあぁぁっ、助けてぇっ!」
 絶叫し、つられた両腕をガシャガシャと鳴らす。ロープが結
びつけられた照明が揺れ、クサリが金属音を立てる 
 「引っ張るなって言ったろ?照明が頭の上に落ちて来るぞ」
 河村は平然と言い放ち、グッと美女の腰を抱え込むと、後背位から二つの穴にそれぞれ先端をあてがった。
 前の穴に生の肉棒、後ろの穴に人工の肉棒がそれぞれ侵入を果たそうと力がこもる。
 グニュ…、と二つの肉穴の入り口がひしゃげ、肉棒を拒むように押し返す。だが、河村はここぞとばかりに腰を強引に押し進め、きしむ肉壁をこじ開けながら、ゆっくりとゆっくりと内部深くへと侵入していく。
 「はあっ…、ぎ…、うぅん…」
 香里は息も絶え絶えで、必死に河村を払いのけようとするだが、まるで力が入らない。
 たっぷり十分ほどもかけただろうか。 
 ついに強引に根元まで侵入を果たした。大きくため息をついて一休みをする。逆に香里の方は、下半身にふかぶかと突き刺さってくる異物のせいか、満足に呼吸もできない。
 しばし休んでから、河村はおもむろに腰を動かし始める。
 ゆっくりと余裕を持って、やや下から出し入れそのものを楽しむように、抽送を繰り返す。
 苦痛ではないが、あまりにも衝撃的な体験であった。
 「くはっ…、いやぁ、出てってぇ…!」
 香里の懸命の叫びにも、男達はまったく聞く耳を持たない。逆に、泣き声を聞いてげらげらと笑い転げる意地の悪さだ。
 香里の叫びが際限なく続く。
 何よりも、肉体がパニック状態に陥っている。それは媚肉がぶるぶると痙攣していることで河村にもわかった。
 だが河村はそんなことはお構いなしに、ぐりぐりとえぐるように犯しまくる。二本のペニスが直腸と膣の間にある薄い肉壁を挟んでゴリゴリとぶつかり合う。
 「あうっ…、あぅ…、あう…ぅん…」
 香里の唇から、あられもない声が際限なくこぼれ出る。それを聞くと、男達の気分も高揚する。
 「すげぇ感じ方だな、なあ?」
 浅野が隣の上村に話しかけ、上村もうなずく。理緒は部屋の隅のソファーの上でじっと身を固くして、決して聞くまいとしていたが、その耳には確実に香里のよがり声が届いていた事であろう。
 「どうだい、理緒が憎いだろう?」
 上村が再び香里の耳元に顔を寄せ、小声で囁く。香里は満面に汗をにじませながら、その言葉を振り払うかのようにみたび首を左右に打ち振った。
 (ちっ…、なかなかしぶといな…。なら、次の手だ…!)
 心中でひそかにそう呟いた上村は、目で河村に合図を送った。余裕しゃくしゃくで抽送を繰り返す河村は、それを受けて、右手を自分の腰の後ろにやった。
 皮パンツのちょうどその部分に、人工バイブのコントローラーが固定されている。指がスイッチを操作し、徐々にパワーを上げていく。
 「…!」
 香里の背中がビクンと跳ね、徐々に反り返っていく。目覚めたバイブは、胴体部のパールの部分が回転し、先端部がくねるように回転する。さらに、自体が伸びたり縮んだりピストン運動を繰り返す。あまりの激しさに、香里の汗が周囲に飛び散り、床がべとべとになる程だ。だが、もしかするとその中には蜜液が混じっていたかもしれないが、それは定かではない。
 まさしく、肉と肉のぶつかり合いであり、人がヒトに進化する以前の獣の交わりであった。
 思春期の少女にとっては、そんな光景を目にすることは特につらいことであろう。理緒は、ただソファーの上で身を固くしていた。
 (助けて…、誰かぁ…。私、もういや…)
 理緒は、この異常な状況から救出されることを真剣に望んだ。だが、いやが応にも香里の生々しいあえぎ声や、粘膜が擦れあって蜜液が発生させるいやらしい音は容赦なくその耳に届く。
 「せっかくだ、香里センセイのこの顔を記念に撮っておこう」
 泣き悶える美女の顔にフラッシュが焚かれ、次々とポラロイド写真が出来上がっていく。
 顔のアップだけではない。
 男に背後から貫かれている姿。その結合部分。男の手に握りつぶされた美乳。蜜液で濡れた恥毛。さまざまな姿が存分に写真の中に収められていく。
 「そのうち、理緒にも肛門セックスの味を教えてやるよ」
 河村が額に汗を浮かべて腰を前後させつつ、少女に話しかけた。突然呼びかけられたことで、理緒は縮こまらせた身をさらに小さくする。
 「ここからは性教育のお時間だ。いいか、お嬢ちゃん。香里先生はこんなに泣き叫んでいるように見えるけどな、本当は違うんだぜ。ビンビンに感じまくっているんだ」
 河村はそう言うと動きを弱め、手を伸ばしてブラのカップをめくるようにずらした。下向きになってなおも形の崩れていない乳房が、ようやく表にでた。
 「見ろよ、これが証拠だ。女もボッキするんだ」
 指先でコリコリと先端部を刺激する。香里が身悶えした。
 「もう一カ所ボッキする場所があるがな。それはお前自身がよく知っているだろう?」
 理緒自身、秘部でその部分が固くしこり、ブルマーの布地にこすれて痛い。河村はそれを見抜いてわざと当てこすっているのだ。
 「ほら、目をそらさずによく見てやれよ、センセイの恥ずかしい姿を」
 浅野が少女の頭を両手で挟むように掴んで、正面の香里の方を向かせる。まぶたを閉じようとしても、指で強引に開かせる。
 身も世もない羞恥に全身を震わせながら、二つの穴を同時に蹂躙される。もはや脚からは完全に力が抜け、膝がガクガクと震えている。足首に引っ掛かったままのパンティが、寂寥感を覚えさせる。
 だが、際限のないレイプに変化が訪れる。上村が吊られていた香里の両腕をロープから解放する。支えを失って、両手で上半身を支えることを余儀なくされた。
 だが、細い腕では支えるのにも限界がある。すぐにプルプルと小刻みに震えだし、やがてガクリと折れた。
 床に顔をうずめて、ただただ絶叫する。その浅ましい姿を、じっと理緒の瞳が見つめる。
 上村は、ズボンのチャックを下ろし、自らのモノを際限なく声を上げ続ける美女の口に押し込んだ。香里は声を上げることも封じられ、泣きむせぶしかなかった。
 その様子をじっと見物するだけだった浅野も、だんだんと欲望を高ぶらせていった。それを、手近なモノで発散させることにした。
 すなわち、理緒の肉体で、である。
 「おやぁ…、こりゃあ何だぁ?」
 まばゆいほど白い体操着のシャツの胸の辺りがポッチリと浮き出ている。もちろん、香里のなまめかしい声に刺激されて、自然と固くなってしまったらしい。
 シャツ越しにそれを指でつまんで、グリグリと揉みつぶす。
 「いけない娘だ。こんなに乳首を固くして…。もうすっかりオトナだな」
 浅野の右手が、ブルマーの上から固くなったクリトリス
をこすりあげる。脇から指を忍ばせて、恥毛のシャリシャリとした感触を指先で楽しむ。
 「やっぱりな…。恥ずかしがらなくてもいい。それが、肉体の自然な反応なんだから」
 少女のその部分が、潤みを見せているのを浅野の指は敏感に察知していたのだ。
 「どうだ、感想は…?」
 「…」
 その時、全身をまさぐられる理緒の目前で、突然香里の様子が変わった。全身をプルプルと震わせ、グッと背中をのけぞらせる。
 その姿に興奮した上村は、思わず舐めさせていた肉棒から白濁を吐き出していた。
 ほぼそれと同時に、香里も絶頂に達したらしい。
 「ハアッ…、ヒイッ…、ウゥウン…」
 生臭い喘ぎを噴きこぼしながら、香里は全身から脱力させ、その場に崩れ落ちた。だが、河村は相変わらず一定の間隔で、休みなく動き続けている。
 「うっ、うん、うん、うぅん…」
 香里は半失神の状態のまま、なおも後ろから突かれ続けられて、力無く呻いていた。
 やがて河村の腰の動きのピッチが、自然と早まっていく。 そして、もういい加減達するであろうと上村や浅野が思ったその瞬間、河村は動きを止め、肉棒をゆっくりと引き抜いた。蜜液にまみれつつも未だ隆々とそそり立つそれは、まだ射精していないようだ。
 河村はゆっくりと歩き出し、ソファーに縛り付けられた
理緒の前に立つと、手で自分の肉棒を数度しごく。
 そして、パッと白い飛沫が少女の顔めがけて飛び散り、見事に命中した。
 あまりに突然のことに、理緒自身も、そして見ていた上村や浅野も呆気にとられていた。だが、少女の顔をベットリと汚している粘ついた白い液体は、まごう事なき現実であった。
 「これからは、俺達の精液は一滴残さず理緒、お前の顔で受けるんだ。いいな?」 
 河村の人差し指が少女の顔の白濁をすくい取り、唇に押しつけた。一度空気に触れたソレはかなり匂いがきつく、理緒は気味悪さに顔をしかめた。
 「さあ!」
 少女の口がわずかに開く。そこへ精液まみれの指がこじ入れられた。
 「ムッ…、ムグゥ…」
 口腔内の粘膜にたっぷりと精液を塗りつけられ、自然と嘔吐感を催させる。せき込む少女にムリヤリ指をしゃぶらせ、完全にキレイになったところで指を引き抜いた。
 理緒は口中の感触が気持ち悪く、口を大きく開けたまま閉じるに閉じられない状態で、泣きそうな表情を浮かべている。
 「上村、理緒のこの表情、しっかり撮っとけよな。これも藤野へ送りつけてやるんだ、なあ?」
 少女の泣き出しそうな顔が、ポラロイド写真と化していく。

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