どうにか押し込んだそこはひどく狭かった。いや、狭いというよりは、きついと言うべきなのか。
「は……っ、く……少し、待て」
「苦しいのか」
「そうではない……あまり、急かすな。そういう男は嫌われる」
「ほう、そうか」
 かなり無理をして色々を装いながら、やはり無理をして自身を引き抜き、その半ばでまた中へと戻した。面白いように悲鳴があがる。柔らかく汗ばんだ肢体がびくりと強張ったのがわかった。
「こ、このっ……」
「好きにさせてもらうと、言ったはず、だ……っ!」
 息継ぎの合間に歯を食いしばりながら、もう一度同じ行為を繰り返す。ただし今度は、抜けそうになる寸前まで引いて、勢いをつけて押し込んだ。
「は、くあっ……!」
 何度か続けるうちに、幾分スムーズになった。それは俺がやり方のコツを掴んだのかもしれないし、C.C.の身体が順応してきただけかもしれなかった。まあそんなことはどうだっていい。
 正直に言わせてもらえば、このとき俺の思考はだいぶまともでなくなっていた。ダイレクトに容赦なく伝わってくる感覚に何もかもが奪われつつあったのだ。
 思考も、冷静さも、この女に対する応対の仕方も。
「あ、あうっ、あぁっ」
 悲鳴が次第に熱を帯びてくる。そのあまり聞いたことのない声色に、おかしくなってきているのは俺だけではないのかもしれない、などとぼんやりとする頭の片隅で思った。
 そもそも何故この女はこんなことを言い出したのか。「契り」とはまた古めかしいことを言ってくれたものだ――まあ、少なくともこいつは、人間のように年は取っていないようだからな。もしかしたらそんな単語が常識だった時代から生きているのかもしれない。
 そんな馬鹿げた考えが浮かんでは、頭の中を素通りして消えていく。
(……っ)
 関係のないことを考えて普段の思考を取り戻そうと試みた結果がこのザマか。
 作戦が見事なまでに失敗に終わったことを悟り、俺は半ば自棄めいた心地で組み敷いた相手を見下ろした。
 白い肌は薄桃に染まり、触れると汗ばんでいることがわかった。
「ふぁっ、あ、ひゃ、ぅん……ッ!」
 片手で胸を掴み、その先端を弄ってやる。何かに耐えるように僅かに首が横に振られたが、それを無視してさらに突き込んでやった。白い喉元を仰け反らせて、C.C.から甲高い嬌声があがる。
 ふと――そういえば、先ほどまではいちいち文句をつけてきたはずの奴が、ずいぶんと静かになっていることに気付いた。まあ言葉にならない発音はずっと聞いてはいるのだが。
 俺は上体を倒すと、仰け反って見えなくなっていたC.C.の顔を覗き込んだ。奴の潤んだ瞳が俺に焦点を合わせ――途端、そこに剣呑さが宿った。
「ふ……っぅ、この、へたくそめ」
「なっ」
「初めてにしても、もう少し、……っ、気を遣え、ばかもの……ッ!」
 どう返せばいいのかわからず、瞬間的に混乱する。
 ――落ち着け。俺はこの女に罵倒された。それも何かやたら理不尽なことで。
 まあ確かに原因を求めるならば俺にあるのだろう。だがこちらも気遣う余裕というか、そも何をどう気遣えばいいのか初めてでわかれという方が無茶なんじゃないのか――しかしへたくそと言われて黙っているわけにも……!
「っ、うるさいっ、だいたい、これは……っ、おまえが勝手に始めた、ことだろう……!」
「乗ってきた……っぁ、のは、おまえも、だろう?」
「俺は拒否したっ」
「だがこうして私に……ッ、乗っているじゃないか?」
 誰がうまいことを言えと!
 ……もういい、こいつと話したところで何も解決しはしない。そのうるさい口を黙らせてやる。
「――っん、んぅ……!」
 素早く唇を重ねる。逃げられないよう、俺はC.C.の頭を抱え込むようにがっちりと固めた。
 当然、互いに口で呼吸ができなくなり、何かを喋ることもできなくなり――くぐもった声と、荒い鼻息と、重ね合わせる角度を変える僅かな合間に吸い込む呼気の音――それから、下で合わさっている部分からの卑猥な水音、それだけが部屋に響く。
「ふ、んん、んぅ、ん……!」
 触れている場所以外にも、どこもかしこも熱かった。目眩にも似た感覚で頭の中が霞みがかり、何も考えられなくなっていく。
 苦しい。息が――
「っはぁッ、は、く……ッ!」
 俺は口を塞ぐことを止め、必死で酸素を取り入れながら、ただひたすら腰を動かす。その度にC.C.はがくがくと揺さぶられ、切れ切れの悲鳴をあげる。
 もういいかげん限界だった。表情を取り繕うのも、喉奥から勝手に出そうになる声を飲み込むのも、衝動を押さえつけるのも。
 最後の力を振り絞るように、激しくC.C.の中を突き上げる。
「あ、ああっ、や、ぁう、ルルーシュ……!」
 呼ばれた名前に誘われるように、再びその唇を塞ごうと顔を近づける。が、途中でふと思い立ち、耳元へ口を寄せた。
 そして――荒い呼吸の合間に、そっと囁いてやる。
「……!」
 うまく虚を衝くことができたらしい。瞬間、僅かに力が抜けた――ように思えた――C.C.を容赦なく攻め立てる。
「ぁ、ひゃ、あ、ああっ、あ、――ッ……!」
 C.C.がひときわ大きく震えた瞬間、俺も一番大きな抑制を解放した。
 抜くタイミングを逸したのは、……正直どうにもならなかった、とだけ言わせてもらう。

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