くたりとソファに身を任せるルカの腰――スカートに手をかけた。
 服の構造は既に把握している。だから後は、
「ルカ。少し腰上げて」
 一つの指示と、
「……っ」
 それにルカが従うだけでいい。
 ルカはそっと顔を俯かせてから、のろのろと腰を持ち上げた。あまりにも今更過ぎる照れというか羞恥心だとは思うのだが、ツッコむだけ野暮というものだろう。
 スカートをするりと抜き取ってしまえば、ルカに残されたのは下着だけだ。上は既にずらされていて意味をなくしてはいるが。
 手にしたスカートは折り目を揃え、床に置くのもどうかと思い、ソファの背もたれにかけておいた。
「何か言いたいことがあるなら言ってくれていいぞ」
 俯いていたはずのルカの視線が、いつの間にかスカートを扱うこちらの手元に注がれていた。
「……ほんとにマメだなーって」
「俺のせいで使い物にならなくなった、って言われたくないからな」
 さっきと同じことを言うルカに、全く言葉を返してやる。気にしなくてもいいのに、ともごもごと呟くのが聞こえ――その顔が一瞬引きつるのが見えた。どうやらこちらと同じ事を思い出したらしい。
「そういえばルカ。さっき、何か言ってたよな? 俺にならどうとかって」
「っし、知らない! 何も言ったりしてないよっ!?」
 すかさず差し入れたツッコミを全力で否定したルカは、明後日の方向へ首を曲げた。おかげで耳まで真っ赤なのがよく見える。
「そうだっけ? 何か言われたと思ったけどな。えーと確か、俺になら――」
「わ、忘れてって言ったじゃないーっ!」
 また今日の自爆は早いな。
「あ、あれは別にその、深い意味とかないからっ、ただ、そのぅ……と、とにかく何でもないからー!!」
「そうなのか」
 あっさりと頷いてみせてから、
「……使い物にならなくしちゃってもいい、って?」
 そっと耳元にリピートしてやると、ひぃっ、とルカは本気で怯えた声をあげた。
「どういう意味だったのか詳しく説明してくれると助かるんだが」
「し、知らない知らないー!! もう忘れてっ私も忘れたからっ!」
「俺は覚えてる」
 言葉を聞いた瞬間、脳裏を駆けめぐった想像というか妄想と共に。
 ちなみにこれは、ルカの言うように俺がえっちだから、とかいう話じゃないと思う。あの不意打ちを受けてもなお無心でいろというのは色々と無理が過ぎる。
「だっだから忘れてって……っ!?」
 ぎし、とソファが沈む。
 顔ごと視線を逸らそうと必死なルカの耳に息を吹きかけ、怯んだところへ頬にキス、それから頬に手を当てて強引に前を向かせ、唇を塞ぐ。
「んむ、んぅ――!」
 暴れる元気と酸素がなくなるまで咥内を蹂躙して、唇を離した。
 顔同士がくっつきそうな距離のまま、にっこりと訊く。
「それでルカ。どういう意味なんだ?」
「だ、だから、知らない……」
「なら俺なりに勝手な解釈をするけど、それでもいいよな?」
「ふぇっ!? それはそのぅ……た、たとえば、どんな……?」
「どんなと言われてもな。うーん……正直説明に困るんだが」
「じ、じゃあダメっ! なんか怖いからダメー!」
 一体どんな想像をしてると思われたんだろうか。
 そんな突飛な想像でもないと思うんだが……まあ何にせよ、実際にやるかどうかはまた別の話なんだが、それは言わないでおくことにしよう。

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