繋いだ手 <後編>
「ゴメンな。」
小さなお堂の石段に座って、
キラのまっすぐな髪を梳き、グイとこちらへ引き寄せた。
俺の肩口に顔をこすり付けるように、ぶんぶんと首を横に振るキラ。
そんな擦ったら、目元が赤くなるぞ、と俺はキラの顎を掴んであげさせる。
俺に向けられるその瞳は、先ほどまでの涙でとても潤んでいて。
そのまっすぐな瞳に、俺は堪らずキラの唇を塞ぐ。
「っ・・・んぅ…ふ…」
口端から漏れる、声と唾液。
しかしそれにも構わず俺は更にキラの口内へと侵食する。
歯列を割り、うごめく舌を絡めとった。
息が苦しくなってきたのか、俺の浴衣を掴むキラの手に力が入るのが判り、
名残惜しくも、俺はキラから唇を離した。
唾液で濡れた小さな唇、そしてそこから覗く舌。
浴衣も少し着崩れてきていて、昨夜付けたキスマークがチラリと見えた。
屋外にもかかわらず、俺は欲情してしまっている。
うっとりとした表情で俺を見つめるキラも同じはずだ。
向かい合うように俺の膝の上へと座らせれば、
既に高ぶり始めたお互いの中心の熱さにもう戻れないことを知る。
キラ、と名を呼びながらソコを擦り付ければ、それに答えるようにキラも
腰を押し付け、同時に切羽つまったかわいい喘ぎ声が聴覚を侵した。
「キラ…」
「・・っ・・ぁ・・・や、だ、だめっ…」
次の行動を示唆する俺の手の動きに、キラは口だけで反論をするが、
身体がOKサインを出しているのは明白だった。
「でも、家まで我慢できないだろ?」
我慢できないのは俺も同じだ。
「やぁ…誰か・・・き、来たら・・・っ・・・」
息も絶え絶えにそんな言い訳をするが、如何考えても家まで持つわけがない。
それに、恐らくここには人は来ないだろう。
さっきからだいぶここにいるが、誰一人の足音とて耳にしなかった。
欲望よりも理性が先立ってしまうキラ。
そんな理性を一発で取り払う決めゼリフを、キラの耳へと直に吹き込んだ。
「なぁ…キラ・・・挿れたい・・」
「っ!!!」
どうやら俺は獲物をしとめる事に成功したようだ。
初めからこの狩りに成功する自信はあったが。
くたりと俺の肩口に顔をうずめるキラ。
そんなキラの髪に、わがままを聞いてくれた礼のキスをし、
俺はキラを膝の上から立たせた。
流石にここで始めるのはまずいと、俺はやや性急にキラの手を引き、歩き出した。
「おいで、キラ。」
「っぁ・・ちょっ・・どこへ…」
* * * *
「っ。。あぁっ・・・・・んぅ・・あっ、あっ・・」
連れて行かれたのは、お堂の裏。
木に寄りかかるように立たされ、今にも足が崩れそうな状況だが、
足の間にいるムウさんでそれは免れた。
僕の内股を、ムウさんの少し癖のある髪と浴衣がくすぐる。
中心部をムウさんの口に含まれ、自分のいやらしい声をどうしても抑えきれない。
そして僕の腰も揺れ始めてしまっていて。
今日はお祭りに来たはずだったのに、今僕たちは。
いつもより、身体が熱い。
ここが屋外でいつもと違う状況だからなのか、
それとも普段よりもかなり性急なムウさんの愛撫のせいなのか、
もうそんな理由さえどうでもよくなってしまっている。
先端の窪みをぐりっと舌で押し込まれて、でも根元は押さえつけられていて。
イキたいのにイケなかった。
汗と同時に、涙も溢れてくる。
「あっ、あっ。やぁ・・ムウさんっ・・・オネガっ・・・」
理性のタガ。
そんなものは、もうとっくに外れている。
解放を、ねだった。
「キラ。イキたいのか?」
わかってて、ムウさんは必ずこう聞くのだ。
でも今はそれに反抗する余裕などあるはずがない。
「んぅっ…オネガイっ…はぁ・・ぁ・・イカ、セテっ…んふっ・・」
いつもは恥ずかしくていえない言葉も、今日は抵抗なく口に出来た。
それに気を良くしたのか、ムウさんの愛撫も一層強まる。
僕はムウさんの髪に手を沿え、ただただ解放を待った。
「キラ…」
「あっ・・ム、ムウさっ・・あぁ、ぁ、んっ・・アァァっ!!!」
せき止められていた根元を外され、僕はムウさんの口の中へと放ってしまった。
息切れが激しくて、まだ上手く喋ることが出来ない。
息が整うまで、もうちょっと待ってて、と思った矢先。
「っぁ!」
身体をひっくり返され、僕は木へ掴まりお尻をムウさんへ向ける姿勢をとらされる。
まだ先ほどの射精感が残っていて力の入らない足。
崩れないようにと、僕の腰を支えるムウさんの大きな手。
「ぁ・・な、何・・?」
「しっかり掴まってろよ。」
そう言うと、ムウさんは僕の浴衣を捲り上げた。
突き出すような格好となり、お尻が外気に晒されるのが判る。
両方の臀部に軽いキスを降らせた後、開かされた後ろの蕾を舐められた。
「やぁっっ!!」
うごめく舌とごつごつとした指が、僕の中を刺激する。
虫の鳴き声と、遠くで聴こえる祭りの音。
それとは不釣合いな二つの荒い息遣いと、くちゅくちゅという水音。
聴覚をも侵される。
さっきイッたばかりなのに、もう僕の欲望はそそり立って
淫らな蜜を零し始めていた。
「キラ・・・挿れるぞ・・」
「ぁ・・・」
ムウさんが熱い吐息が耳元へかけられ、
そして固くて大きくて熱いものが押し付けられた。
さっきから欲しくて欲しくてたまらなかったものがようやく与えられる悦びに、
僕はぶるっと身を震わせる。
「あぁぁっ!!!んはっ…くぅっ…」
こんな体位でするのは初めてだった。
いつもと違う角度からの侵入に、恥ずかしながらも興奮してしまう。
ムウさんの顔が見えなくて不安だけど、
それでも耳をくすぐる荒い吐息と時折漏れる声はムウさんのもので。
今はただお互いの熱を交換し合うだけが精一杯だった。
ムウさんは、僕のイイトコロだけを確実に突いてくる。
だらしなく開いた口からは、唾液と嬌声が零れた。
息をするのも苦しいくらい、ムウさんを感じて。
「あっ、あぁっ・・・あんっ・・はっ・・も、もうっ・・・」
「くっ・・キ、キラっ・・・」
僕は限界を伝える。
たまらなく気持ちよくて、でももう意識が飛びそうだった。
木にしがみついた手が、汗でずるりと滑る。
もうしがみついていられない、と思った瞬間、
その上からムウさんの手がかぶせられた。
指と指を絡ませあって。
抽挿を繰り返し精液に塗れた下肢からよりも、
繋がった手から想いが互いを行き来する。
最後に、更に強く指を絡ませあったことまでは、覚えていた。
* * * *
気づけば、すっかり「後の祭り」となっており、
祭りの客もほとんどいなくなっていた。
激しい交わりの所為で、すっかり足腰が立たなくなってしまった僕は、
ムウさんの背中でゆすられている。
人目がほとんどないことが、不幸中の幸い?とでも言うのだろうか。
お祭りは全然楽しめなかったけど、ムウさんと想いを再確認し合えて
良かったと思ってる。
いつもは余裕たっぷりなムウさんだけど、今日は…家まで我慢できないくらいに、
その…僕を求めてきてくれて。
嬉しかった。
「っ///」
自分で考えていたことに赤面してしまい、それを見られるのが恥ずかしくて
僕はムウさんの、少し汗のにおいのする肩口に顔をうずめた。
おぶわれているのだし、真っ暗だから
ムウさんに顔を見られるわけがないのだけれど。
「…キラ?」
僕の行動を不審に思ったのか、ムウさんが僕の名を呼ぶ。
「…な、なんでもありません…」
やや消え入りそうな小さな声で答えつつも、
来年のお祭りは、ムウさんと手を繋いで行こうと胸の内で決心し
僕は抱きつく腕を一層強めた。
end
うわー長っ。久々にR18書きました。やっぱり疲れますね。
今、なんとなく屋外萌えなので、やってしまいました(爆)
このお話は、地元のお祭りの日に考え付いた妄想です。
うちの地元では何かイベントがあると、
朝、花火で開催を知らせるのですが、他の地域は如何なんでしょうか?
最初は日記に書いただけで終わりにしようと思ってたのですが、
萌えが続いてしまい、ノベルにしました。
ちょっと日記に書いたものとは変わってます。
…次こそは長編の続きを…!
2004.08.01