それでも僕は貴方に囚われている<前編>
…ヴヴヴ
「…ぁ・・・っ・・」
「キラ?どうかしたのか?」
隣席に座るキラの様子がおかしいことに気づき、
これから外回りへ出る為の準備をしていたアスランは手を止めた。
さっき一緒に昼食をとったときは別段具合が悪い様子はなかったが、
今はやや顔が赤いような気がする。
熱でもあるのだろうか?
そう思い、キラの額に手を当てようと腕を伸ばしたが、なんでもない、とキラに制された。
「なんでもないって…そうは見えないよ。具合が悪いなら医務室に…」
…ヴヴヴ…
「ぁッ…ぅ・・・」
医務室に連れて行こうと腕を掴んだ瞬間、キラがまた呻いた。
「おい、キ…」
「ザラ君、君は外回りの時間だろう?」
突然の声に顔を上げれば、そこには上司のフラガが立っていた。
「はいっ、ですが、ヤマトの具合が…」
キラの顔は赤く、やや呼吸も浅い。
外回りよりもキラのほうが大事だと、アスランは訴えたが、
フラガの視線の冷たさに全てを告げ終える前に言葉を失った。
「ヤマト君は私が医務室へ連れて行く、君はもう行きなさい。」
「ですがッ…」
「お客様を待たせるつもりなのか?君は。」
「っ…す、すみません。それでは・・お願いいたします。」
真っ青なスカイブルーが威圧的にアスランを射る。
しかし、”スカイ”と言うよりは、”アイス”の方が的確かもしれない。
アスランは、この上司フラガが苦手だった。
眩しいほどの金髪、澄んだスカイブルーの瞳を持ち、
長身で、いかにも男らしいといった容貌。
性格は明るく、ややいい加減なところも見られるが
やる時はやるといった感じで、彼を慕うものは男女問わず多い。
しかし、何故か自分に対しては非常に機械的な態度を取るフラガ。
キラに相談しても、「フラガさんがそんなことするはずない」の一点張りで。
どうやら、自分に対してだけ態度が違うようだと気づいてからは
この上司との接触を極力避けるようにしていた。
そんな上司がキラを支えるのを苦々しく感じつつ、
アスランは、後ろ髪惹かれる思いで、オフィスを後にした。
「さて…と、ヤマト君、医務室へ行こうか?」
「・・・ッ・・」
ニヤリと口端だけを吊り上げて笑うフラガを睨んだが、
キラはおとなしくフラガに支えられ、オフィスを出た。
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