抑えられないこの気持ち2
俺の隣のベッドの住人は、
亜麻色の髪の少年から、
紺色の髪の少年に変わった。
亜麻色の髪の少年・キラと、紺色の髪の少年・アスランは幼馴染らしく、
重傷のアスランをキラは日に何度も見舞いに来ていた。
深夜。
どうやらこのアークエンジェルという戦艦は海中に潜伏しているようで、
太陽光を感じることはないのだが、
昼間と夜間を分けて稼動している。
一日中ベッドにくくりつけられている状態であるため、
体力は有り余っているので深夜になっても眠気が来ないことがよくある。
今もそんな状態だ。
隣のベッドとは夜の間はパーティションで区切られる為、
様子を見ることは出来ないが、規則正しい寝息が聞こえてくることから
アスランはぐっすり眠っていることだろう。
隣の規則正しい寝息を聞いたり、無機質な天井や壁を眺めたりして
眠れないという苦痛をなんとか紛らわしている、そんなときだった。
シュッという空気の抜ける音と共に扉が開かれた。
逆光で入室してきたシルエットが見えた。
―キラ。
なるべく足音を立てないように入室し、
そしてこちらへ近づいてきた。
「…今夜も来たのか?」
「はい」
ハスキーな声を潜めて。
だがしっかりと答えた。
そしていつものことを始める。
俺の髪に指を差し入れ一梳きした後、
額にかかる髪を掻き揚げて、そこへ口付ける。
そしてそれは瞼、頬、唇へと移動していく。
まるで何かの儀式かの様に。
慎ましく。
静かに。
ゆっくりと。
行われていく。
この儀式は、キラがまだ隣のベッドの住人であった頃から
始まっていた。
流石にキラが最初にここに運ばれてきた日ではなかったが、
確か、二日か三日目くらいからだったと思う。
自由に動かない身体に顔をゆがめながらも、
この少年は深夜になると自分の傍らに来ては、口付けを落としていったのだ。
初めは意味がわからなかった。
しかし、時折涙を零しながら行われるそれに、
キラの、ムウ・ラ・フラガに対する真っ直ぐな心が知れた。
何度も「俺はムウって奴じゃない」と言っても
キラは断固として言い続けた。
―貴方はムウさんなんです、絶対に。
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