悩める青少年 12
今日は夏休み最後の日曜日。
私、ミリアリア・ハウは、恋人のトールと一緒に買い物をしにデパート街へと繰り出した。
どこのデパートでも、夏物のバーゲンをやっている。
女の子としてはやっぱりオシャレに気を使いたいけど、お小遣いのことも考えるとなかなか難しいのだ。
9月に入ってもまだまだ暑い日は続くのだから、このバーゲンを見逃す手はない。
掘り出し物にはめぐり合えなかったけど、安くなってるしこれならいいかと妥協して手に入れた洋服。
予想外にかなりの量になってしまって、ここまで荷物持ちさせてしまったトールの労をねぎらう為に
お茶でも…と思ったその時。
「なぁミリィ、もう買い物終わり??」
「え、ええ。だからお茶…」
「あ、それならオレ、6階見たいんだけどいいかな?」
6階…それはおもちゃ売り場で。トールの見たいものとはラジコンのおもちゃだということはすぐに察しがついた。
はぁ、とミリィが小さくため息をつく。
「…いってらっしゃい。」
力なくミリィが応えると、とぼけた顔でトールが言った。
「アレ?ミリィは行かないの??」
「…いつものとこで待ってるわ。」
「あ、そう?じゃ、後でね!」
ミリィの呆れ顔を気にすることなく、トールは嬉しそうに上りエスカレーターへと走っていった。
よいしょと、トールに持たせていた荷物を持ち、いつもの場所へ向かう。
”いつもの場所”とは、このデパートの4階にある本屋と隣接した喫茶店。
トールと買い物に来ると、このパターンは毎度のことなのだ。
その喫茶店に着き、空いている席を探す。バーゲン中の日曜と言うこともあってかなり満席に近い状態ではあったが
運良く、座ることが出来た。
荷物を向かいの椅子に置き、自分も席に着くとすぐにオーダーを取りに店員がやって来た。
アイスカフェオレを注文し、ミリィはふぅとまた一つため息をつく。
全く、まだあの年にもなってラジコンのおもちゃに夢中になれるなんてある意味尊敬するわ。
まだまだコドモね、トールも。
そんなコドモらしいところも可愛いんだけど、と自分の中で惚気てしまい、そんな自分が急に恥ずかしくなってしまった。
頬が熱くなっているのが自分でも分かる。運ばれてきたアイスカフェオレに手を伸ばすと、それが異常に冷たく感じ、
頬との温度差をまざまざと感じさせられた。
頬の火照りを冷ますために、アイスカフェオレを一気に半分ほど飲み干したところで、一息つき何気に店内を見回す。
店内は、買い物を済ませたカップルや親子連れ、また隣接している本屋で買ったらしい本を読みふける人たちで溢れかえっていた。
一通り店内を見渡した後、隣接している本屋のほうへと視線を移動させる。
ココから見えるのは、料理や園芸、編み物といったいわゆる趣味の本が置かれた棚だ。
そこにいたのは一組のカップル。
ストローをもてあそびながら、ミリィはそのカップルを観察し始めた。
きっと二人で料理の本でも見てるんだわ〜。彼の大好物なんか作って、二人きりでテーブル囲んで…
そんな話してるんでしょうねぇ…あ、横顔でしかもココからだとはっきり見えないんだけど、彼氏のほうなかなかカッコいい人ね…
彼女も…ショートで男の子に見えなくもないけど、ボーイッシュって感じかしら?結構年齢差があると見たわ…v
アレだけ彼氏が大人なら甘えさせてくれるわよねぇ〜・・あそこまでとはいわないけど、トールにも見習わせたいくらい・・・
…と残り少ないカフェオレを一気に飲み干そうとしたその時、そのカップルが振り返った。
!!??!…んぐっ…げほげほっ!!!
あまりの衝撃に、上手く飲めなかったカフェオレでむせてしまい、咳き込んでしまう。
「なに、咳き込んでるの?ミリィ。」
急に話しかけられ、その方を向くと咳き込んだときの涙で視界が多少ぼやけてはいるが、トールが傍らにいた。
「あっ…ゴホゴホっあれっ!…んぐっ」
咳が止まらない。
「まぁ落ち着けよ。」と、トールが自分の水を差し出した。
「…で、一体どうしたの??」
「ふぅ…あ、あのね…」
咳き込んだわけを話そうとしたが、一旦冷静になって考えてみた。
…ちょっと待って、この事は私だけのヒミツにしておいたほうがよさそうね。
自分の胸の内だけに止めておこうと決めたミリィは、なんでもないといつもの姐さん女房的話術でこの話を煙に巻く。
相手のトールはといえば、一瞬不思議そうな顔をしたが大して気にも留めず6階で得てきた戦利品について活き活きと話し始めたのだった。
* * * *
「フラガ先生、今夜は何が食べたいですか???」
今日デパートの本屋で買ってもらった、『365日の食卓』という料理本を眺めながら、キラは言った。
「キラ。」
「っ!!///」
大真面目な顔で即答するフラガに、キラはパクパクと口を動かすことしか出来ず、顔はタコのように真っ赤だ。
そんなキラの恥らう姿をいとおしく見つめ、フラガはペロリとキラの頬を舐めた。
「なっ!///」
「んーとりあえず、前菜はタコのマリネでv」
彼らの関係がミリアリアに気づかれてしまったことを、2人はまだ知る由もなかった。
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何とか無理矢理年内UPにこぎつけました。
しかも内容がヌルイどころか常温です。全く持ってド健全です!ゴメンナサイゴメンナサイっ!
…フラキラの出番がほとんどなかったですね…今回はミリィ視点のお話と言うことで。
お決まりだとは思うんですけど、ミリィにはバレてほしいんですよね〜。
この子ならイロイロとキラたんのお悩みも聞いてくれそうな気がします。
あぁこの後キラたんはきっとフルコースで戴かれてしまったんでしょうね〜☆
続く。
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