チョコより甘く
苦い君。 (3)
愛しい恋人がうずくまるベッドに腰を掛けると、
2人の分の重さにベッドが軋む。
「キラ。」
シーツの上から、キラにそっと手を掛け呼びかけてみたが、
ぴくりと、一度動いただけで何の返答もない。
しかし何度か呼びかけると、こちらのしつこさに観念したのか、やっとキラが口を開いた。
「…なんですか。」
返された言葉は未だシーツ越しで。
それでも返事をしてくれたということは、俺と話す気はあるということだ。
今回の場合、別に俺がやましいことをしていたわけではないし、
言ってしまえばキラの一方的な嫉妬で、このような状況になっているわけで、
それをキラも判っているから、俺に顔を見せられないのだろう。
「キーラ。何怒ってるの?」
判っているけど、敢えてキラの口から言わせて見たくて問う。
そんな俺の腹の内をきっとキラは察知しているのだろう。
「バレンタインチョコを女の子から貰ったってことを話したから?」
「…」
返事はなかったがぴくりとキラの体が動いたことで、俺の質問にYESと言ったも同然だ。
「昔の話だし、あの場は仕方なかったろ?」
判ってる、判ってる。
ミリィが予想外に気を悪くしたから、あの場を取り持つためにも
少佐があんな話をしたってことは判ってた。
コレが単なる僕の嫉妬ということだってわかってる。
でも、でも…
「…でも。」
「ん、『でも』?」
「……だ、からって…あ・あんなに嬉しそうに、話さなくてもッ…」
頭では判ってる筈なのに、心がついていかなくて。
語尾が震えてしまったから、きっと僕が泣いていることを少佐に気づかれてしまっただろう。
泣き声を押し殺そうと、枕に顔を押し付けた。
枕カバーが涙をどんどん吸い込んで濡れて冷たくなっていく。
その自分の涙の冷たさで、更にボクは感情が高ぶり涙をとめることが出来なくなった時、
急に背中が温かくなったのを感じた。
フラガ少佐が、僕をシーツごと抱きしめたのだ。
「キラ…」
「…ひっく…僕は…女の、子じゃな・いから…チョコをっあ・げよう、とか思いつか・なかったし…」
「キラ、誰だって人からプレゼントされれば嬉しいだろ?そんなレベルさ。ただそれだけだ。
別に『チョコ』が欲しいわけでもないし、キラに女の子の役目をして欲しいなんて思ってないぞ?」
「…っ・・く・・」
「この艦に女の子がいないわけじゃないんだから、女が欲しけりゃそっちに手を出すさ。
こんなにキラが好きだって言ってるのに、信じられない?」
シーツ越しにフラガ少佐がキスの雨を降らせてきた。
言葉では言い尽くせないかのように。
僕の嫉妬の涙が流れ出た分、少佐の優しさがしみこんでくるようだ。
確かにこの艦には多くはないが、女性がいないわけではない。
艦長や副艦に至っては、かなり美人な方だと思う。
それでも僕を選んでくれた、と自惚れてもいいのだろうか?
恐る恐るシーツから顔を出し、少佐の瞳を見つめた。
「…ほ、ほん・とに?」
「あぁ。好きでなきゃ、こんなことしないだろ?」
「んっ」
目じりに少し残っていた涙を掬い取るように、少佐の唇が吸い付く。
そのキスが、すごく優しくて。
子供みたく嫉妬した自分が恥ずかしくて。
また涙が溢れ出す。先ほどとは違う、涙。
「っく・・・ひっく…ん・・」
「こら。もう泣くんじゃないの。俺が塩分取りすぎになっちゃうだろ?」
「うんっ…」
それでもまだ僕は流れ出る涙を止めることは出来なかった。
この涙は、少佐への気持ちだ。
好きで、好きでどうしようもない。
この人の優しさに甘えてるのかもしれないけど、それでも止め処なく溢れ出る少佐への気持ちに
僕は苦しくなる。
フラガ少佐の大きな手が僕の頬を包む。
そして、涙で濡れた僕の唇に軽くキスをした。
「塩分取ったから、今度は糖分補給v」
「っ…///」
ウインクしながら言うそんなキザなセリフに照れつつも、
僕は、望み通り糖分を与えるため、少佐の首に腕を回した。
続く。
*******************************************************************************
なんとかくっ付いてくれた。
思っていた以上に難産で(ToT)
作品を作るときは、書(描)きたいシーンがまず浮かび、そこから肉付けしていくという感じなので、
肉付け部分にいつも苦戦してます。
あーあ自分の体への肉付けなら無意識にいとも簡単にできるのになぁ…(泣)
|