習慣格差 後編

「来週の日曜、部活休みやけんどっか行かん?」 「良いですよ、あの場所だったら付き合ってあげても」 部活後、家に帰宅してから一時間して仁王くんから電話がかかってくる。 これは習慣と化していて、私も食事を迅速に済ませてから読書をしながら、机の右端に携帯電話を置いて電話を待っている。 「なん、それ柳生が良い想いするだけやん。俺つまらんちゃけど」 「しかしながら、私はあそこ以外は付き合う気は有りませんよ?」 いつの頃からだろうか?仁王くんから電話のかかってくる行動に煩わしさを感じなくなったのは。 もう、何年も前の話になるのだろうか…良く思い出せない。 「…解ったぜよ。いつもん所、ところ天で良かとね?」 「はい、本当、此処のところ天は絶品ですからね。確か仁王くんが教えてくれたのでしたよね?」 仁王くんは不服そうに私に問い掛けた。 最近は、私が仁王くんに振り回されると言うより振り回している様な感覚である。 その感じが自分でも楽しいので、ついつい皮肉交じりな返答になってしまう。 「そうたい、俺が柳生に教えてやったとよ。有り難く思っときーよ」 「そうですね。それは、感謝すべき事ですね」 でも、余り意地悪なことばかり云うと流石に自分の良心が痛むので、素直な受け答えもしている。 詐欺師と云われる仁王くんは、電話の時は何か微妙に雰囲気が違っていて面白味が増す。 「あ、柳生〜!今、ヒューイット特集ありよる!!」 「そうなんですか!?何チャンネルで放送されているか、是非教えて下さい」 「1チャンネルたい。MHKでありよるよ」 部活中に隣りで話していて、電話越しで話していて、様々な仁王くんを知ることが出来る。 一見冷たそうに見える仁王くんも、電話では本当無邪気な単なる中学生だなと実感してしまう自分がいた。 「…何か、バリ嬉しか〜」 「…仁王くん?突然どうしたんですか??」 「…ん、良かと。こっちの話たい」 「…非常に気になるんですけど……」 「…それが狙いたい、柳生」 電話の向こうで仁王くんが微笑んでいるのが、想像できる。 この頃からかっている仕返しのつもりだろうか。こっちだって負けていられない。 「…そうですか。では、明日の話はなかった事に…」 「あーズルか〜卑怯過ぎるっちゃないとー?」 「それならば、云って下さいよ」 「……煩か、明日教えちゃるけん黙っとき」 何やら、声のトーンがいつもと違う。ここはひいてあげた方が良いみたいだ。 まぁ、とりあえず明日まで待ってあげることにしましょう。 「それでは、明日必ず教えて下さいね」 「男に二言はなかよ」 死んでも言える訳なかろーが。 俺の方言ば解ってくれる様になったけん、バリバリ嬉しくて泣きそうになったとか。 明日は、どーにかしてこのピンチを乗り切らないかん。 「それでは、明日」 「ん、明日」 明日はどうやって心の内を暴いてしまおうか…? そんな、企みを常に抱えている、五十歩百歩な今の俺たち。 終。 前編を21日の春コミで無料配布させて戴きました。お手にとって下さった方々、有難う御座いました!! あってるを、福岡では普通に放送されてるの意で使用するんですよね〜。 上京してきて方言だと判明した時はショックでした。皆、解らんって首傾げるんやもん…!(涙) なので、仁王にもそういう経験絶対あるはず!と思い、この話が思いつきました。ほかにも何かそういう言葉がないか探してます(笑) 一応、単品でも読めますが、前後編合わせて読んで頂けたら嬉しい作品です。前編は中1で後編は中3で書いてます。電話の二人。 付き合ってない…かな?どうだろ…微妙なライン所ですね。二年前は理解出来なかった事が、同じ習慣があることにより理解出来る様になる。 お互いの距離が縮まるって話が書きたかったんですが…どうでしたでしょうか?感想など戴けますと励みになります! 20040403 戒堂訛音

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