breath

夏休みが終わって、最初の体育の授業。
じりじりと日差しが、自分の身を焦がしていくのが実感出来る。
後、数える位しかないプールの授業。水の中に入り、身体全身を水中に沈めた。
己の身体を暑くさせた日差しが、水中ではキラキラと輝いている。綺麗だ。
ブクブクと口から空気を出しながら、その光に一時見取れていた。
そして、頭を勢い良く出してみると、アイツが目に入って目が反らせなくなった。
プール内に入る時に少し跳ねたと思われる水が頬を伝い、唇が少し潤っている様に観えた。
髪を掻き上げる指から水が滴り落ち、髪がしっとりと濡れていく過程をじっくりと見入ってしまった。
ピーーーッと体育教官の笛が耳に入った。そこで、我に還る。目があった。
俺は反射的に目線を横へそらし、身体を体育教官の方へ向けた。
一体アイツはどんな表情をしているんだろう。この心臓の高鳴りが煩くて仕方ない。
嗚呼、今日も絶対俺は海堂よりも遅いタイムでしか泳げないのは確定だ。


 □  □  □


「おい」

予想した通りだ。着替えを済ませて素通りしようとした俺を呼び止めた。

「何だよ、話なら部活ん時すりゃ良いだろ」

目線を合わせずそっけない返事をし、ドアノブに手を掛けた。

「桃城テメェ…待てって言ってんのが解んねーのか!」

海堂が完全無視の俺の態度が相当気に食わないらしい。肩を掴んで無理矢理引きとめられた。

「しつけーんだよ!どうせ後何時間かしたら嫌でも顔合わせんだろうが!」

握り締められている肩を引き払い今度こそ海堂に背中を向けた。

「…っざけんな!」

遂に海堂が桃城に手を上げ、桃城の右頬に海堂の右ストレートが命中した。

「…こっちこそ…ふざけんな!」

桃城も我慢していた苛々が露わになり、海堂の左頬に左ストレートで反撃した。
泳いだ後で消耗しているはずの身体、一体この体力は何処から出てくるのだろうか。
そう二人の殴り合いに巻き込まれない様そーっと出て行く面々は思っていた。
そして、その異様な雰囲気を感じ取った体育教官が更衣室に入るや否や呆れた表情をした。

「…またお前らかぁああああ!」

その二人の行動は体育教官の声によって静止した。


 □  □  □


「はぁ………」

放課後、罰をして言い与えられたプール掃除。
まだ水が張っている状態なので中を洗う事はないが、プールサイドだけでも中々大変なものだ。
緑色のデッキブラシ片手に制服のズボンを膝上まで捲り上げて海堂と二人佇んでいた。
只でさえ気まずいってのに本当最悪だ。徹底的に無視して惚けようと考えていたのにこれじゃあ不可能だ。

「さっさと終わらせんぞ…」

しかし、海堂は黙々とプールサイドをがしがしと磨いている。問いかけてこない。
あれだけ更衣室では食いついてきたのに何故だろうか。これじゃあこっちが拍子抜けだ。
けど、あんまり部活に遅れを取るのもいけないって気持ちがあるのでそれなりに俺も真面目に掃除した。

――30分後

「…ふぅ……」

荒いところとか所々体育教官に突っ込まれそうな所があるが一通り終わった。
タオルをバッグの中に忘れてきたので、制服のシャツで汗を拭っていたら海堂も全く同じ事をしていた。
そして凝りもせず俺はまた海堂を見てしまっていた。

「…で、またお前は惚けるのか?」

不意にかけられた声。俺は目を見開いて、下俯き加減でシャツで汗を拭く海堂を見た。

「…俺はお前に見られるのは嫌いじゃない。けど、無視されんのは我慢なんねぇ…只それだけだ」

そう告げた海堂は、俺に目を合わせることなく背中を向けて出口へと向かっていった。
俺は突然の出来事に気持ちのやり場が解らず、後ろポケットに右手を忍ばせて下を俯いた。

「…俺も………」

消え入る声で呟いた後、左肩にデッキブラシを抱え一歩ずつ海堂の後に続いた。


END


2007年初更新となりました。前々から書きかけていて早く仕上げたいという気持ちが強かった作品です。
プール掃除の刑…罰掃除でおちゃらけてる感じが出したかったんですけどね〜どうしてこう暗いというか意味不明というか…。
後、桃城視点がどうしても多いので海堂視線のお話も書きたいです。海堂視点で書くのが苦手なのかと思う今日この頃。
今度は色々とプロットが出来てる話を小出し出来れば良いなと思ってます。 20070328 陵 灯呂

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