Sweet Home 

夜の闇に浮かび上がる白い姿
夜目にも鮮やかな白い鳥
鮮やかな色彩に、姿に目を奪われる



深夜、閉館した美術館に集った人々の群れ
美術館の中と外に見える警官達の姿
原因は1通の予告状
派手に公開されたソレは、こうして深夜の観客達を引き寄せた
観客達の間から、予告時間へのカウントダウンが始まる
離れた距離ながらも遠く聞こえてくる喧噪
一際高く沸き上がった歓声が、あいつの登場を教える
微かに高まる体温、鼓動
覚えのある緊張感
微かに感じた存在感に、感覚が引きずられる
感覚を沈めようと閉じた目に浮かぶのは
派手に繰り広げられるパフォーマンス
そして
凛と張りつめた空気と冷涼な雰囲気
遠く美術館の方角に浮かび上がる白い色彩が遠目にも良く見える
誰の手も必要としない孤高の鳥
次第に大きくなる白い鳥の姿に
凭れていた壁からゆっくりと背を離す
上空から降り注ぐ淡い月の光
長く細く吐き出した吐息
暗号で示されていたこの場所には、自分以外の人間の気配は感じない
ビルの周辺からも、危険を告げる気配はしない
気が付けば間近に迫った白い姿
まるで空との名残を惜しむかの様に、ゆったりと上空を旋回し、音も立てずに舞い降りる
姿が影に隠れる位置取りとはいえ、あいつが気付かないはずの無い距離
いつもの様に宝石を月に翳す姿
微かに見せる緊張に、殊更ゆっくりと歩み寄る
僅かに落ちた肩に
―――今度も違ったんだな
冷静な判断が下る
足を止めると同時に、ゆったりとした動作であいつが振り返る
「良い月夜ですね、名探偵」
微かな笑みを浮かべたキッドに、俺は強引に距離を詰める
「ちょっ………」
「用が済んだんなら、さっさと返しやがれ」
慌てたような身体を強引に封じ込めて、手の中の宝石を奪い取ってやる
「用済みなんだろ?」
触れた手に感じた心地よい体温
微かに嗅ぎ取った甘い香り
「これは返しておいてやるよ」
耳元で低く囁いた言葉に、腕の中の身体が微かに揺れる
「先に帰って休んでろ」
弾かれたように上がった顔に、間近で覗き見た瞳が戸惑うように揺れる
“キッド”とは違う表情、仕草
一瞬の間に、様々な感情が去来する
無意識の内に力を入れようとした腕の中から、僅かの差で細い肢体が抜け出していく
手を伸ばせば届く程の僅かな距離
強く吹いたビル風に白い衣装が揺れる
小さく動いた唇が、音の無い言葉を告げる
遠くから、パトカーのサイレンが聞こえて来る
「それでは、また月の夜に………」
観客の居ない舞台の上で、いつも通りの仕草を残し、鳥が再び飛び立っていく
「月の夜ねぇ………」
夜空に浮かぶ、白い鳥
危なげなく飛び去る姿を見送って、新一はようやく動き出す



手の中の宝石は、夜の街を走る警官の手へ
怪盗の手から奪い取ったのはただの気まぐれ
連日の仕事をこなす彼の為では決して無く
あくまでも自分の為



―――ありがとう、新一―――
とろけるような笑みでと共に今宵飛び立った夜の鳥は
暖かな家で羽根を休める

あとがき
陸先輩にお強請りして頂いてきた作品です。
リクエスト内容は『甘々vv』でした(笑)
……甘いですよねv
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