非日常の回


11月3日

広樹:「ストーカー?」
 昼休み、俺とことりは中庭で弁当を食べていた。
 ことりが相談したい事があると言ったので話しを聞くことにした。それがこのストーカー事件
 である。
ことり:「うん。一週間前から後をつけられたり、誰かに見られてるような気がして・・・。」
広樹:「ふむ・・・。」
 確かにことりは学園のアイドルといわれている。そういった行動に出る輩も少なくないはずだ。
 しかし恋人である俺がいるのにストーカーとは・・・。
杉並:「挑戦者出現だな。」
広樹:「・・・・・・・・・。」
 どっから出てきたんだお前は。
広樹:「・・・・何しに来たんだ?」
杉並:「いやいや、最近白河嬢がつけられてるという情報を耳にしたのでな。」
ことり:「ど、どこからその情報を・・・。」
杉並:「フッ。非公式新聞部の情報を甘く見てもらっては困るな。」
 どうでもええわ。そんなの。
広樹「まぁ、なんにせよ対策を考えないとな。」

 家に帰ったあと、俺は自室のベッドに寝転がっていた。
 ことりのストーカー対策を考えていた。が、なかなか思いつかない。
広樹:「にしても・・・ホント許せねえよな・・・。」
 誰に対してでもなく呟いた。
???:「その意見には私も同感だ。」
 俺の呟きに対して誰かが答えたが気にしなかった。誰が答えたかは知っている。
 俺の中にあるもう一人の自分。それが誰かは言えない。知られたくない。知られてはいけないか
 らだ。
 そんなことを考えていると・・・。
うたまる:「にゃあ〜。」
広樹:「お?」
 窓からうたまるが入ってきた。
 うたまるはさくらが飼ってる(?)ネコだ。風見学園にもたびたび現れる。
 しかし・・・いつ見てもネコらしくない体型のネコだよな、コイツ・・・。
うたまる:「にゃあ〜。」
 うたまるがここにいるってことは・・・。
さくら:「お〜い。うたまるぅ〜。」
 やっぱりいたな。さくらのヤツ。
広樹:「さくらー!うたまるならここにいるぞー!」
 さくらは俺の従姉妹だ。6年前にアメリカに引っ越したが突然帰ってきた。
 それも6年前の姿のままで。
さくら:「うにゃ?うたまるそこにいるの?」
広樹:「ああ、いるぞ!」
うたまる:「うにゃあ〜。」
 その時・・・。
 「ヒュンッ!!」
 何かが飛んできた。
広樹:「おわっ!!」
 とっさに体を右にやることで回避した。
うたまる:「うにゃあっ!!!」
 ・・・・うたまるは当たったが。
さくら:「お、お兄ちゃん!?」
広樹:「大丈夫、俺は大丈夫だぞ。」
 俺は、な。
うたまる:「うにゃあぁ〜・・・。」
 うたまるの近くには小石が落ちていた。
 さっき飛んできたのはこの小石だろう。
広樹:「・・・明らかに俺を狙ってたよな・・・?」
 窓の外を見てみたがさくら以外誰もいなかった。

11月4日

 ここからは視点を変えさせてもらう。
ことり:(今日もつけられてる・・・。)
 街を歩きながらことりは自分がつけられてることに気づいた。
 念のため振り返ってみる。
ことり:(どうみてもあの人よね・・・。)
 ことりが怪しいと思ったのは一人の男性だった。
 紺のジャケットに黒の帽子、そしてサングラスと明らかに怪しい格好の人物である。
ことり:(よぉし、こうなったら・・・。)
 ことりは桜公園に向かうことにした。

 桜公園の近く、幾つもの桜の木がある場所でことりは木陰に隠れていた。
ことり:(そろそろ来るかな・・・。)
 するとことりの予測どおりあの怪しい格好の男が来た。
 男は辺りを見回しながら近づいてくる。そして・・・。
ことり:「えいっ!!」
 男の顔面を持っていたバッグで思いっきり叩いた。
男:「ぶあっ!!」
 突然の不意打ちに対応できず、男はよろめいて尻餅をついてしまった。
ことり:「何で私の後をつけるんですか!?」
 今までに見たこともないような剣幕でことりは男に怒鳴る。が・・・。
男:「ま、待てことり!落ち着け!俺だ!俺!」
ことり:「え・・・?」
 ことりはその声に聞き覚えがあった。
ことり:「もしかして・・・朝倉君?」
広樹:「もしかしなくてもそのとおりだ。」
 サングラスと帽子を外した男の顔は紛れもなく広樹だった。
ことり:「朝倉君がストーカーだったの!?」
広樹:「なんで恋人なのにストーカーにならねばならんのだ・・・。」
ことり:「でもさっき私の後を・・・。」
広樹:「ああ、あれな。あれは・・・。」
 広樹は事情を説明した。
ことり:「朝倉君も被害に遭って・・・。」
広樹:「そう。で、犯人見つけるために尾行したわけ。」
ことり:「でもその怪しい格好は・・・?」
広樹:「変装。俺だと気づかれちゃまずいだろ?」
ことり:「そんな怪しい格好までしなくても・・・。」
広樹:「言っただろ?俺がことりを守るって。」
ことり:「朝倉君・・・。」
 ガサッ!!
広樹:「!!」
 広樹が振り向いた先には一人の男子学生がいた。
広樹:「捕まえたぁ!!!」
 学生は逃げようとしたがすぐに広樹に捕まってしまった。

 広樹が捕まえたストーカー、男子学生は付属校の1年だった。
 話によると文化祭での生演奏を観たのがきっかけだったらしい。
 そしてストーカーという行動にでた、というわけだ。
広樹:「さらに俺の部屋に石投げたのもお前だな?」
学生:「はい・・・・・・。」
 理由はおそらく、ことりと一緒にいる広樹が妬ましかったんだろう。
広樹:「・・・とりあえず、これだけは言わせてもらうぞ。人を好きになるのは別に構わない。
    でもな、その気持ちを間違った方向に持っていったら意味がない。嫌われるだけ
    なんだよ。」
学生:「う・・・・・・・。」
広樹:「このことを胸に刻んどけ。一週間もことりをつけまわした事を後悔するんだな。」
学生:「い、一週間!?僕は3日前から白河先輩を・・・。」
広樹:「この期に及んでまだ・・・・。」
学生:「ホ、ホントです!嘘じゃないです!ホントですから!!」
広樹:「・・・・・・・・・。」
 ことりは一週間前から被害にあっていると言っていた。
 だがこの学生は3日前からつけていたといっている。
広樹:「どうなってんだ・・・・・?」
ことり:「・・・朝倉君。」
広樹:「ん?」
ことり:「誰か・・・居る。」
 ことりに言われて広樹は辺りを見回した。
広樹:「誰だ!!」
 広樹の視線の先には一人の人物がいた。
 ローブのようなものを着ていて素顔は見えないが非常に怪しい格好だ。広樹の変装
 以上に。
???:「・・・・・・・・・・。」
 気づかれたことを知り、ローブを着た人物は逃げ出した。
広樹:「待てぇ!!」
 広樹はすぐに追いかけた。
広樹:「どりゃぁ!!!」
 距離を縮め、広樹は背後からのタックルでローブを着た人物をその場に倒す。
広樹:「ことりをつけまわしてたのはお前か!?ストーカーの真犯人は!!」
 広樹は倒した人物からフードを剥ぎ取るが・・・。
広樹:「いっ!!」
 広樹は思わず驚いてしまった。
 目の前の人物には顔がない。複数の発光器のようなものが顔の代わりにあるのだ。
???:「ヌゥン!!」
広樹:「おわつ!!」
 謎の人物は広樹を払いのけ、再び逃げていった。
広樹:「ま、待てっ!!」
 広樹は追いかけるが桜公園を出たところで見失ってしまった。
広き:「逃げられた・・・。」
ことり:「朝倉く〜ん。」
 ことりが後ろからやってきた。
広樹:「あいつは?」
ことり:「何度も謝って帰っちゃいました。」
広樹:「そうか・・・。」
ことり:「それより朝倉君、さっきの人は・・・。」
広樹:「悪ぃ、逃げられた・・・。」
ことり:「そっか、逃げられちゃったか・・・。」
広樹:「悪ぃ・・・。」
 その後、二人でクレープを食べた後、ことりは帰っていった。
広樹:(言えるわけないよな・・・。)
 広樹は家に帰りながらそう思った。
広樹:(宇宙人だった・・・。なんてさ・・・。)
 この後、惨事が起きることを誰も知らなかった。

ことり:「ふぅ・・・。」
 ことりは自室にバッグを置いてリビングに居た。
 今、家に居るのはことりだけだ。
ことり:「どうしよう・・・・。」
 自分は今も狙われている。まだストーカーはいるのだから。
ことり:(朝倉君と一緒に居ればよかったかも・・・。)
 広樹と一緒に居れば大丈夫なはず。そうことりは判断した。
ことり:「うぅ・・・電話は苦手だけど・・・。」
 広樹に電話しようと立ち上がったとき・・・。
???:「クックックックックックッ・・・・・・。」
ことり:「!!」
 背後からの笑い声。その声の主は広樹が追いかけた人物だった。
ことり:「だ、誰!?」
バイス星人:「私はバイス星人。君の後をつけていたのは私だ。」
ことり:「私を・・・私をどうする気!?」
バイス星人:「利用させてもらう。」
ことり:「利用・・・。」
バイス星人:「少し・・・眠ってもらおうか。」
 そう言うとバイス星人は目から光線を放った。
ことり:「キャアッ!!」
 光線はことりに命中し、ことりは気を失って倒れてしまった。
バイス星人:「ククククククククク。」

 ここからまた朝倉広樹の視点へ。
広樹:「・・・・・・。」
 心配だ。非常にことりが心配だ。
 そのせいで全然落ち着かない。さっきから同じところをぐるぐると回っている。
 ・・・なにしてんだよ俺は。落ち着け。落ち着け、俺!!落ち着けーー!!
バイス星人:「クックックッ。相当心配しているようだな。」
広樹:「あぁ、ことりのことが・・・って誰だ!?」
 声の主を探すが見当たらない。
バイス星人:「彼女は私の手中にある。」
広樹:「ことりに何をした!!」
バイス星人:「少し眠ってもらっただけだ。私の目的のために利用させてもらうのでな。」
広樹:「目的?目的はなんだ!!」
バイス星人:「この星をいただくのさ。そのために、そのために彼女を利用させてもらう。
        私のボラガンゾと共に。すでにボラガンゾは街に放った。」
 窓の外を見ると黒い煙が上がっていた。街の方からだ。
広樹:「ちいっ!!」
 大急ぎで家を飛び出した。

「ギギギギ−ッ!!」
 街中で怪獣ボラガンゾは暴れていた。
 人々が逃げる中、俺は一人路地裏を走っていた。
広樹:「好き勝手暴れやがって!!」
 右手を掲げ、中指にはめているウルトラリングが輝く。
 まばゆい光と共に俺が変身した姿、ウルトラマンエースが現れた。
エース:「デウウウッ!!」
 空中からのキックでボラガンゾがよろける。
「ギギィ!!」
 立ち直って迫り来るボラガンゾ。
エース:「ヴェッ!」
 エース(俺)はそれに対し、正面から立ち向かう。
 やがて両者はぶつかり合う。
エース:「デアァッ!!」
 エースのチョップが炸裂し、さらに膝蹴りを一発。
「ギィ!!」
 だがボラガンゾもそれに負けず、エースを弾き飛ばす。
エース:「ダアッ!」
 エースは立ち上がり、再び立ち向かっていく。エースとボラガンゾが激しい攻防を繰り
 広げる。
バイス星人:「待て、ウルトラマンエース。」
 エースとボラガンゾが戦う中、エースの背後にバイス星人が現れた。
バイス星人:「ボラガンゾに付いている十字架を見るがいい。」
 言われたとおりボラガンゾの体に生えている(刺さってるようにも見えるが)十字架を見る。
 そこには・・・。
エース:(「ことり!!)
 十字架にはことりが貼り付けられていた。
 気を失っているらしく、目をつぶったまま動かない。
バイス星人:「クククククク。これでは迂闊に攻撃できまい。」
 このまま攻撃すればことりの命を奪いかねない。
 エースは身動きできない状態になってしまった。
バイス星人:「やれ!ボラガンゾ!!」
 バイス星人の命令を受け、ボラガンゾはくちばしから火炎を放つ。
エース:「ヴゥン!!」
 火炎がエースに命中する。
 さらにバイス星人も攻撃を仕掛けてくる。
津上:「卑怯な手ぇ使いやがって!!
ともちゃん:「エース!ことりを助けて!!」
みっくん:「エース!!」
 クラスメイトの津上やみっくん達の声が聞こえてくる。おそらく下でこの戦いを見ているのだろう。
 だがその希望に応える間もなく、エースはバイス星人の攻撃でなぎ倒されてしまう。
ことり:「う・・・・ん・・・・・。」
 気が付いたらしく、ことりは目を覚ました。
 そしてすぐに理解したのだろう。自分が人質になっているということに。
ことり:「エース!!」
 ことりの叫びが伝わる。
ことり:「私に構わないで!私に構わないで戦って、ウルトラマンエース!!」
 ことりはそう叫ぶがことりを見捨てるつもりはない。
 俺が愛した人を、俺の恋人をその手で殺めたくない。
 だがこのままでは戦えない。どうする・・・・。
 そう考えてる間にもバイス星人は目から光線を発射する。
エース:「デアッ!!」
 光線を受け、エースはふらつきながら倒れこんでしまう。
「ギギギギギギギーッ!!」
 さらにボラガンゾが追い討ちをかける。
 エースに打撃を与え、振り回し、投げ飛ばす。
エース:「デア゛ア゛ア゛ア゛ッ・・・・。」
 胸のカラータイマーが赤く点滅する。時間はあとわずかしかない。
ことり:「エース!!」
 ことりの叫びは届くがどうすることも出来ない。
「ギギギギギギギギーッ!!」
バイス星人:「カカカカカーッ!!」
 勝ち誇ったようにバイス星人が笑い、ボラガンゾが雄叫びを上げる。
 ・・・・・・・守りたい。
 ことりを。みんなを。この星を。
 俺の愛するものを守りたい。
 俺の愛する人を!ことりを!!
エース:「トアアアアッ!!」
 立ち上がってバイス星人にドロップキック!我ながら結構卑怯な戦法だ。
エース:「ヴェッ!!」
 ボラガンゾの方を向き、
エース:「ウルトラナイフ!!」
 手刀でボラガンゾから十字架を切り離した。
ことり:「キャアアァッ!!」
 倒れる十字架をすぐにキャッチし、、ボラガンゾを蹴り倒す。
 十字架を津上たちがいた場所に置いた。
ともちゃん:「ことり!」
みっくん:「ことり〜!」
 ともちゃんたちがことりに駆け寄り、ことりを解放する。
ともちゃん:「うん、大丈夫。私は大丈夫だよ。」
 安心するともちゃんたち。
 ことりは無事に救出した。後は・・・。
「ギギーッ!!」
バイス星人:「お、おのれぇっ!!」
 こいつらをたおすのみ!
エース:「ヴェッ! デウウウゥッ!!」
 エースはバイス星人めがけて突進していく。
エース:「デウウウッ!!」
 バイス星人の腕をつかんで・・・。
エース:「デエエエエイ!!」
 背負い投げで投げ飛ばす。
 さらにボラガンゾの方を向き、高々と持ち上げる。
エース:「ヴェッ!!」
 空中に放り投げ、落ちてきたところで受け止め、その場で回転する。
エース:「ダアアアアッ!!」
 そして投げ飛ばす!
 地面に叩きつけられたボラガンゾは爆発した。
エース:「ヴウッ!!」
 バイス星人が目から光線を放つ。
 その光線をバク転で避ける。
 バイス星人は二発目の光線を放つがエースはそれを前転で回避する。
 さらに三発目の光線。これをジャンプで回避し、空中で回転する。
 そしてバイス星人めがけて空中からキック。
 キックで倒れるバイス星人。エースは距離をとり、腕を振りかぶって・・・。
エース:「デウウウウウッ!!」
 L字状に組んだ腕から必殺のメタリウム光線をが放たれる。
 メタリウム光線が命中し、バイス星人の体は燃えていった。
エース:「ジェアッ!!」
 戦いを終え、エースは空へ飛んでいった。

広樹:「ホント、災難だったよな。」
ことり:「人生最大の災難だったよ。」
 俺がエースに変身して戦った後、俺とことりは桜公園のベンチに座っていた。
 ことりは俺の隣で先ほど買ったクレープを食べている。それも3つ。
 広樹:「エースがいなかったらどうなっていたことやら。」
 自分のことだがエースに感謝したいところだ。
広樹:「ウルトラマンエースのおかげだな。」
ことり:「ウルトラマンエースじゃなくて、朝倉君のおかげだと思うな。私は。」
 どっちも俺のことだけどな。
広樹:「・・・それもそうだな。」
 あの時ことりを助けたいと願ったのは俺の方だ。
 ウルトラマンエースとしての俺ではなく、朝倉広樹としての俺が願ったのだ。
ことり:「ありがとう、朝倉君。」
 ことりのその言葉が俺の頭の中に響いていった。
 愛する少女のその声が・・・。
広樹:「・・・・・・・・ん?」
 気が付けば教室の中にいた。
 どうも授業中に寝ていたようだ。
広樹:「・・・・・・・・・・夢か。」
 なんつーオチだ、おい。

あ・と・が・き

今回からあとがきをつけるようにしました。
しかしなんで朝倉広樹君をウルトラマンエースに変身させたんだろう・・・。
特撮の観すぎでしょうかねえ。今後のストーリーがややこしくなるから夢オチにしましたけど。
出番は少ないけどさくらも登場してます。次回は登場しないでしょうね。絶対。
あとオリキャラ「津上始」もちょっとだけ出てます。
さて、次回は「二人で旅行の回 前編」の予定。期待しないで下さいね〜。

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